「し、しまったわ…。 ヤツが…ヤツが逃げ出したわ!」

 どうしたんですか、イネスさん?そんなに慌てて?

「…ここから二行上を読みなさいよ」

 いや、読みましたけど…何があったんですか?

「ちょっとね…実験で新しいウィルスを開発したのよ。それをヤツに注射して
 みたら凄いことになっちゃって…。 でも、ヤマダ君にも注射したのに、
 何故かヤマダ君には効かないのよねぇ…」

  …それはあなたがヤマダ君で遊んでいるからですよ。 やばい薬を
 何回も注射されればイヤでも耐性はつくと思いますけど?

「じゃあ、今度はウィルスの量を二倍に…じゃなくて、早くヤツを
 捕まえないと大変なことになるのよ!」

 だから、ヤツって誰です? 早く教えて下さいよ、話進まないんですから。

「…ムネ茸」

 へ? …それはまずいじゃないですか! 早く捕まえないと!!


      この小さな事件が、ナデシコを恐怖に陥れる…。


 

 

機動戦艦ナデシコ 時の流れに外伝
ナデシコであった、本当に怖い話Vol.4
Revenge of Munetake
ムネ茸の逆襲



「ふう、今日も一日よく働いたなぁ…(コキコキ)」

と首をならしながら食堂に向かっているのは、我らが主人公、
テンカワ・アキト君その人だ。

 どうだった、女湯に入った感想は(前作、彼氏?彼女?の事情参照のこと)?

「ルリちゃんとラピスに体を洗ってくれって頼まれたし(汗)、サラちゃんと
 アリサちゃんは頼んでもいないのに体を洗ってくれるし…(大汗)。後は
 思い出したくない…(滝汗)」

 …ふーん…。 だけどさアキト、君爺クサイよ。

「日本帰ったら何食べたい?って聞かれて、〈焼き鳥〉なんて答えたヤツに
 言われたくないぞ。一体どっちが爺臭いんだよ、全く(呆れ)」

 良いじゃないか、ネギマ食べたいんだから。

「アキトさん、ご飯食べに行きませんか?(抱きっ)」

「アキトーっ(抱きっ)」

 そこに、ナデシコが誇る電子の妖精姉妹、ナデシコメインオペレーターの
ホシノ・ルリ、同じくサブオペレーターのラピス・ラズリが現れた。

 二人して抱きついている。 ちなみにルリが右腕で、ラピスが左腕だ。

「ううっ…ルリさぁぁぁぁぁぁんっ(泣)!!」

 通路の陰からアキトに憎しみの視線を送る少年Hことマキビ・ハリ。

「うおっ!? …な、なんだ、このすさまじいまでの憎しみの視線はっ!?」

 …自分の胸に聞いてみな、アキト。

「うーん…。…別に思い浮かばないけど?」

 …ダメだこりゃ。 …完璧に天然だな、オマエ。
今時こんな鈍いヤツは、特別天然記念物並だぞ。

「…こんな事をする人は、決まっていますね…」

「…ルリ、そこ…」

とラピスが指を指した先には、不幸の代名詞(笑)こと、少年Hがいた。

「……(怒)」

 ……ギュピーン!!

「ビクッ!?」

 しかし、ルリとラピスのメデューサ(ギリシャ神話の頭髪が蛇の神のこと。
その目に睨まれた者は、恐怖のあまり石化すると言う伝説がある)のごとき
視線で少年Hを睨み返す。

 コキーン!

 …いや、本当に石になった(笑)。

「アキトさん。 …ちょっと待ってて下さい」

「ルリ、私も行く」

 スタスタと、通路の陰に消えるルリ、ラピスの二人。
そして数分後、何かが砕ける音とともに爽やかな顔をした二人が通路の陰から出てくる。

「お待たせしました、アキトさん。さあ、ご飯食べに行きましょう」

「早く行こうよ、アキト♪」

「あ、ああ…。 …さっきの音、何だったのかな?」

「「気にしちゃダメ(です)、アキト(さん)」」

「そ、そう…」

 …そのまま二人は食堂に向かって歩いていった。
付け加えるなら、さっき砕け散った物体はクルーに踏まれて粉々になっている。

 その石だったモノの名前は、皆さんのご想像におまかせします。




「ふうっ…。やっと席とれたね…」

「ええ…。やっと籍がとれましたね…(うっとり)」

「……(プルプル)」 ←(握り拳を震わしている)

 席に座る、アキト、ルリ、ラピスの三人。 
だけどさ、ルリちゃん。 …字、違うぞ。
それに、まだ籍入れられる歳じゃないじゃないか。

「何言ってるんですか! これで合ってるんです!!」

 そ、そう(汗)。 でも、僕は隣のラピスの目がすごく怖いんですけど。

「ヤッホー、アキト。 ここ座っていい?」

「ご一緒してもよろしいですか、アキトさん?」

と一応アキトに断っているが、ちゃっかり座っているサラとアリサの二人。
アキトが女性の頼みを断るはずがないのを計算済みである。

 もちろん、ルリ&ラピスはアウトオブ眼中だ(笑)。

「よう、アキト。 俺も座らしてもらうぜ」

とナオまでやってきた。

「てめえっ! オマエのせいで俺はホウメイガールズに
 当て逃げされたんだぞ!!」

 大丈夫、今回はナオさん活躍するから。期待してて下さい。

「本当か?」

 もちろんですとも。

 …一方その頃、サラとアリサの二人はどちらがアキトの真向かいに座るべく
言い争っていた(ちなみに両隣は言わずとしれたルリ&ラピス)。

「何をそんなに怒っているんだい? 美人が台無しだぜ?(キラーン)」

と歯を光らせながら現れたのは、木蓮のナンパ師こと
タカスギ・サブロウタである。

 …どうでも良いが、火に油…と言うより、バレンタイン時に、
もてない男の群にチョコを放り込んだ状態(笑)に近い彼女達に
声をかけることは、自殺行為だということをいまいち
認識していないようだ(爆笑)。

「「うるさい(です)!!」」

 ドゴシャッ!!!!

「うぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 サラとアリサのダブルハイキックをくらい、吹き飛ぶサブロウタ。
哀れな…。

「…イ、イチゴに…クマサン……(感激)。 わ、我が人生に…
 一遍の悔い無し…(ガク)」

 意味不明なことを口走りながら、床に沈むサブロウタ。
死ぬ間際、一体彼は何を見たのだろうか? ちょっと謎である。

「「ぜえぜえぜえ……」」

 二人そろって荒い息をつくサラとアリサ。

「二人とも、ご苦労様。 先にいただいてますね」

「「!?」」

と驚くサラとアリサの二人の先には、アキトの前にちゃっかり座っていた
メグミ・レイナードの姿があった。

 …漁夫の利ですか、メグミさん。

「ちょっと、何やってんのよ!?」

「そうですよ。私達がこの席を最初に取ったのに…」

「油断するサラさん達が悪いんですよ(ニヤリ)」

 怒り狂うサラ、アリサの二人にさらに追い打ちをかけるメグミ。
なるほど、ナデシコ一の策士というのは、あながち間違いじゃないかも。

「ちょ、ちょっと二人とも? 喧嘩はよそう…」

「「アキト(さん)は黙ってて(下さい)!!」」

「…はい」

 何とか仲裁を…と試みたアキトだったが、あえなく撃沈。

「おいしいですね」

「うん、おいしい」

「結構うまいな、コレ」

 そんなアキトに我関せずのこの三人。 
上から、ルリ、ラピス、ナオの三人の順である。

 そんな時、慌てた様子のナデシコで一番年増…いやいや完全無欠な美人女医の
イネス・フレサンジュがやってきた。

 …思えば、Vol.1とVol.3の直接の原因ってこの人なんだよなぁ。
…アキト君も大変だ。

「そんなんだったら、書くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 明後日の方角に吼えるアキト。 何か最近、独り言増えたんじゃない?

「ちょ…ちょっと(ハアハア)…ア…アキト君(ハアハア)」

 どうやらずっと走ってきたらしく、かなり息が切れているイネス。

「どうしたんです、イネスさん? そんなに慌てて。 …ハイ、水です」

とアキトが差し出した水を、ひったくるようにして水を飲むイネス。

「ふう…。 …ところでアキト君。 ムネ茸見なかった?」

 いきなり突拍子のないことを言い出すイネス。
その科白には、かなりの焦りがある。

「何言ってんすか。 ムネ茸はこの前の戦いで死んだじゃないですか」

「それがね…」

 その質問を笑い飛ばすアキトだが、イネスは何か言いにくそうだ。

「…生きてるのよ…(ポツリ)」

「「「「「「「「へっ?」」」」」」」

 ポツリと呟いたイネスの言葉に、目が点になる一同
(といっても、ナオはサングラスをかけているので表情はよく分からないが)。

 その時!!!

「「「「「「「「「「うぐっ!!!!!?????」」」」」」」」」」

 な、何だ? うぐって??

 突然、賑やかだった(というよりは騒がしい)ナデシコ食堂内は、
アキト達を除き、水を打ったかの様に静かになった。

「あ〜〜〜〜〜(ナデシコ食堂のアキト達を除いた面々)」

「ア、アキトさん…」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっ、怖いよ〜、アキトーッ(泣)」

 ビビリが入っているルリと、あまりの恐怖に泣き叫ぶラピス。

「わーっ…『Resident Evil』みたい…」

「姉さん…。その例え方、分かり難いですよ」

 ポツリと呟くサラに、冷静に突っ込むアリサ。

 コラコラ、『Resident Evil』だなんて言われても分からない読者が
多いじゃないか。ということで、イネスさん。出番ですよ。

「よろしい、説明しましょう(ウキウキ)♪ 『Resident Evil』というのは、
 二十世紀のゲーム市場で一世を風靡したカプコンの名作『バイオハザード』
 の事を指します。内容は、ただ日本語が英語になっただけね。…そうそう、
 サブタイトルも日本とアメリカは違うわね。たとえば『バイオハザード3』
 の『LAST ESCAPE』というのが『THE NEMESIS』というようにね」

 説明、どうもありがとうございました。
アメリカは年齢制限が厳しくて、バイオシリーズは18禁なんです。
何でも、グロテスクなシーンが多いからだそうで。

 じゃあ、何で日本の子供は小学生から「バイオシリーズ」をやっていても
平気なのだろうか…? …ちょっと、気になる。

「な、なんかだんだんこっちに来てますよ!!」

 焦るメグミ。

「これはムネ茸の中毒症状ね」

「「「「「「「「ムネ茸ェ!!??」」」」」」」」

 イネスの言葉に、叫ぶ一同。

「アキトさん! こんな所にちょうど良くキノコ図鑑が!!」

とキノコ図鑑を見つけるルリ。

「…何か、都合良くないか? まあいい、とにかくそのムネ茸について
 教えてくれ!!」

 あまりのご都合主義に納得のいかないアキト。 いいんだよ、所詮漫画
なんだから。

「はい。 …えっと… 『ムネ茸。マイタケに似たキノコで、美味であるが
 神経性の毒があるため、食用には向かない。 …ナデシコ内の元ムネ茸の
 部屋で初めて確認された。』…だそうです」

 ちなみに、本の名前は『あったらいいな、こんな世界の珍キノコ辞典』で
お値段1580円(税別)。 角○書店発行です(ウソ)。


「おほほほほほ!!! どう? アタシの新しい力は?」


 突然食堂に響きわたる懐かしいカマ言葉。

「こ、この声は!?」

「まさか!?」

「そう、そのまさかよ!!」

 ピコッと音を立てて現れたウインドウの中には、ムネ茸…いやいや、
ムネタケの姿が映っていた。

「なあ…。 ムネタケってさ、確かにキノコ頭だったけど…この物体は
 なんて言えばいいんだ?」

とアキトが呆れるのも無理はない。何せウインドウに映っているムネタケの
姿はそれこそキノコだったからだ。

 具体的に言うと、でかいシイタケに手足が生えている感じ。 
ちなみに、茎からちゃんと人間の首が生えている。 ただの化け物…
いや、マタンゴか?

「ほほほほほほほ!! アタシはそこにいる年増の医者によって地獄から
 蘇って来たのよ!!! 感謝するわ、イネス・フレサンジュ!!!!」

 おい、マタンゴ。

「何よ!? ちゃんと名前を呼びなさいよ!!」

 誰もおまえの話なんて聞いてないぞ。 現に、誰もいないんだから。

「きーっ!!!」

 やれやれ、自己中心的なヤツってやだねー、全く。



「ムネ茸ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

 怒りに燃える瞳でナデシコ内の通路を爆走するアキト達一行。

「でも…この運ばれ方はないと思いますけど…」

「同感…」

 ルリの呟きに、ラピスが同意する。

 それもそのはず、ルリとラピスは、アキトの小脇に抱えられていた。
ちなみに、ナオはサラ&アリサ姉妹で、イネスとメグミは棺桶に
片足突っ込みかけたサブロウタである。

「俺の活躍って、これだけかーっ!?」

「「ちょっとナオさん!私みたいな美人と一緒なのに
  嬉しくない(の、ですか)!?」」

「俺には、ミリアが…(泣)」

 …自分で言うか、この二人は(汗)。 まあ、確かに美人なんだけどさ(笑)。

「「よく分かってるじゃない(ですか)」」

 はあ。
 
『…くぅーっ! 何で俺がムネ無しツルペタ姉ちゃんと年増の説明女を
 運ばなきゃいけねえんだーっ!!(泣)』

 心の中で泣きながら走るサブロウタ。
それは、オマエの日頃の行いが悪いからだろ、サブロウタ?

 その前にさ、オマエ全国(推定)一億人のメグミファンとイネスファンを
敵に回したぞ、たぶん。

 特に、メグミファンはディープなファンが多いから…もしかしたら、
オマエ朝日拝めないかもよ。

「「何か文句ある、サブロウタ君(ギロリ)?」」

「い、いえ、なんでもないっす…」

 二人の目線に黙るサブロウタ。そんなこと言わなきゃいいのに。
あ、そうそう。思ったんだけど、なんで君達キノコの毒が効いてないの?

「それは私が説明します。まず、私(ルリ)とラピスはIFS強化体質のため、
 毒物が効きにくい体になってます。次に、サラさんとアリサさん達は
 メグミさんと喧嘩していたためご飯を食べてませんし、もちろんメグミさん
 も食べてません。サブロウタさんは気絶してましたし、ナオさんは
 イネスさんの実験で耐性がついてます。最後にアキトさんですが、
 ユリカさんの殺人料理に比べればこんな毒物は微々たるものですよ」

 なるほど、納得。

 ところで、爆走してるところを水差すようで悪いんだけど、どこに
向かってるんだ?

「決まっているだろう! キノコをこの世から消してくれる(怒)!!」

 当ては?

「あります。 バカと悪人は高いところが好きと言うじゃないですか。
 おそらく、ブリッジにいるはずです(怒)」

 ホントか?

『ルリ、キノコはブリッジにいるよ!!』 ← by オモイカネ

 ホントだ…(溜息)。



「オモイカネ!! この扉を開けて下さい!!!」

 ついにブリッジの前に到着したアキト達一行。 しかし…。

『ゴメン、ルリ。 その扉は物理的に閉じられている。 僕じゃ開けられない』

とすまなそうなオモイカネの答えが返ってきた。

「ここまで来て…」

 悔しさに歯がみするアキト。

「…私の出番のようですね…」

と指をポキポキ鳴らしながら前に進み出たのは、メグミである。

「メグちゃん?」

 訝しむアキト。

 でもどうするの? 君の声じゃいくら何でも破壊できないんじゃ…。

「たーっ!!」

 ババッ!!  ←服を脱いだ音。

 そこに現れたのは、体操服姿(もちろんブルマーだ)のメグミだった。
ご丁寧に、名札に『めぐみ・れいなーど』と書いてある。

 メグちゃんの体操服姿……似合うかも。 メグちゃんファンが
狂喜乱舞しそうだ。

「迫撃のゲートよ! 私に力を!! …オープン・ザ・ゲート!!!」

 ドゴーン!!

 あっけなく吹っ飛ぶドア。 しかし…メグちゃんはゲー○キー○―
だったのか。そりゃあさ、声優さんが高野直子さんでメグちゃんと確かに
一緒だけどさ。

「良く来たわね、ゴミども。 アタシの新しい力、見せてあげるわ!!」

 ゴミはどっちだ、全く。

「食らえ、毒胞子!!」

 バサバサバサッ!  ←胞子が飛んでくる音。

「…オモイカネ。 換気扇、全開」

『了解、ルリ』

 ゴォォォォォォォォォォォォォォ!!

 あっけなく換気扇に吸い込まれていく毒胞子。

「…バカ?」

 お、懐かしいね、その科白。 久しぶりに聞いたよ、ルリちゃん。

「そうですか?」

 うん。

「…さて、それでは殺り…いえ、やりましょうか。
 カモン、ハーリー君!!」

「はい?」

 突然呼ばれたハーリー。 まだ事態が飲み込めていない…っていうか、
お前粉々に砕け散ったはずなのに良く生きていたな。

「ルリさんのためなら、例え火の中、水の中、土の中、森の中、穴の中まで
 お供します!!」

 …根性だけは立派だな、ハーリー。

「では、僕の必殺技、左片手平突きを…」

と、どこからともなく刀を取り出すハーリー。
銃刀法違反だぞ、コラ。

「ちょっと待って下さい、ハーリー君。 あなたは一度使ったネタをもう一度
 使うつもりなんですか?」

 うむ、ナイスな判断だ。 実は僕もそう思ってた。

「そう言うことで、あなたには罰を与えなければ行けません。
 ラピス、ちょっとこっちに来なさい」

「うん?」

 テコテコテコとルリの元に歩み寄るラピス。
そしてルリと暫く話していたが、納得がいったのか、大きく頷く。

「いきますよ、ラピス!!」

「うん♪」

 ガシッ  ← ハーリーの首根っこをつかんだ音。

「へ?」

「「いけ、人間ロケット、ハリドン!!」」

 ブンッ!  ← ハーリーをムネ茸に向かってぶん投げた音。

「なんで僕だけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!??」

 ムネ茸に向かって飛ぶ人間ロケット『ハリドン』。
もちろん、ドップラー効果のおまけ付きだ。

 グシャッ!!  ← ハーリーが顔面軟着陸した音。

 しかし、人間ロケットハリドンは、ムネ茸のすぐ側を通り過ぎていった。
やはり、命中精度に問題があるようだ。
 しかし、本家本元を作った国は、今頃どうしているのだろうか?

「ちっ…。 手元が狂いましたね…。」

「もう少し、上だったかなぁ…?」

 思いっきり悔しがるルリとラピスの二人。

「ちょ、ちょっとホシノ・ルリにラピス・ラズリ!
 あんたらには血も涙もないの!?」

 キーキーと、五月蝿いくらいに騒ぐキノコ怪人ムネ茸。

「あなたに言われる筋合いはありません」

「そうそう」

 おーい、ハーリー君はどうするんだ二人とも?
そこで、もがいてるけど?

「ハーリー君…。 あなたのことは三分間だけ忘れません。
 でも、悲しくなんて無いです。 …だって…あなたは…
 遠いお空のお星様になったのだから…(遠い目)」

「要するに無視するんでしょ、ルリ」

 …あ、そう。

「くっ、こうなったら…」

と、またもやキノコの胞子を出すムネタケ。

 ポコッ! ポコポコポコッ!!  ←  ちびムネ茸が生えてきた音(笑)

「げ!!」

「「こ、これは…(汗)」」

「「夢に出てきそう(ですね)(嫌悪感丸出し)」」

「マ、マジかよ…」

「実に興味深いサンプルね♪(喜)」

「…元はといえばあなたが原因なんじゃ?」

「やれやれ、こんな生活に慣れたくないけどねぇ」

 …上の科白で、誰が誰だか分かりますか、皆さん?

「行きなさい、私の下僕達よ!!」

「「「「「「イーッ!!」」」」」」

 迫る〜ショッカ〜♪ 地獄の軍団〜♪♪

「…一体何時の歌を歌っているんですか、あなたは?
 まあ、いいです。サブロウタさん、やっちゃって下さい」

「了解! くぅ〜、やっとまともな科白が言えるね〜。 では!」

と訳の分からないことをしゃべりながら構えを取るサブロウタ。
彼の体に、凄まじいまでの気が溜まっていく!!

「木蓮式格闘術! 獅子戦吼!!」

 グォォォォンッ!!

 サブロウタから放たれた気が、ちびムネ茸共を吹っ飛ばす!
ハーリーも巻き込んでいるけど。

「次は私の番ね」

 二番手はイネス。いつの間にか、右手に訳のわからんモノを装着している。
そう、まるでメカっぽいボクシンググローブみたいな…。

「いけっ、『ブロウクンマグナム!!』」

 ゴォォォォォォォォッ!!

とイネスさんから放たれた拳が、唸りを上げながらちびムネ茸に向かって
飛ぶ!! ついでに、同一線上のちびムネ茸は、跡形もなく消滅していた。
やっぱり、ハーリー君を巻き込んでいたりして。

ってちょっと待てぇい! なんでアンタがブロウクンマグナム
なんてモンを放てるんだ!! あんたは勇者王かい!?

「ウリバタケさんが作ったのよ。キャッチフレーズは
 『ウリピー印の必殺兵器!』だそうよ。 
 ついでに昨日コレをウリバタケさんで試したんだけど、ウリバタケさん
 100M先まで吹き飛んで悶絶してたわよ」

 ひ、ひどい…。

「よしっ、次は俺だ!!」

とナオが叫んだかと思うと、空高く舞い上がる!!

「極上! メテオドライヴァー!!」

 ドゴォォォォォン!!

 炎をまとったナオが上空からちびムネ茸に突撃し、ちびムネ茸の約半分が
消滅する。

 …ハーリー君も燃えているし。

「もう一つおまけだ!! 超ウラ必殺!!!」

と地面にしゃがみ込むナオ。

「ケイジングプリズナー!!!!!」

ドバァァァァァァァァンッ!!

 ナオから放たれた刃上の気が、全てのちびムネ茸を切り裂いていく!
やる気満々ですね、ナオさん。

「当たり前よ! ここで活躍しておかないで、どこで活躍する!!」

 でも、ハーリー君も少し切れているんだな、これが。

 残ったのは、親玉一人。
そう、言わずと知れたナデシコの騒がしい燃えないゴミ、ムネ茸の登場である。

「ふふっ…惨めね」

「全くです」

 思いっきりムネ茸に向かって侮蔑の言葉を放つ、サラ、アリサ姉妹。

僕も同感です。

「さて、こんなキノコはさっさと始末しないといけませんね。
 ということで姉さん、あの技を使います」

「ええ、よくってよ、アリサ」

 ん? どっかで聞いたことがあるような…

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

といきなり叫び出すアリサ。

「スーパー!」

 勢い良く地面を蹴って、艦橋空高く舞い上がるアリサ。

「イナズマ!」

 続いてサラも飛び上がる。
ま、まさか…。

 そのまま二人は空中で一回転し、サラは右足、アリサは左足でキノコに
蹴りかかる(要するに、エヴァ初号機と二号機のダブルキックですね)。

「「キィーック!!」」

 メキョ!!

「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 二人の放った凄まじい蹴りは、キノコにも凄まじいダメージを与えたようだ。
ついでにと言うか、やっぱりと言うか、ハーリー君も巻き込まれている。

「くっ、これはどうかしら? 殺人キノコビーム!!」

とキノコの目から怪光線が放たれた。

 しかし…そのまんまじゃん。 ネーミングセンスねえな、お前。
そのままアキト達に迫り来る殺人キノコビーム。

「ラピス! 貴方の力を見せてあげなさい!!」

「もっちろん♪」

 ルリの言葉に呼応し、イヤに張り切っているラピス。
なんだ? なんか秘密兵器でもあるのか?

 ぴきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ!!

と変な音を発しながらラピスを中心に六角形の不可視の空間ができ、
殺人キノコビームは反射されてムネ茸のビームを跳ね返した。

 …A.T.フィールド?

「ぐはぁ!!」

 でも、やっぱりハーリー君にまた当たっているんですね。

ところでラピス…君までウリバタケ製品を使っているのかい?

「ううん、これは元々出来るよ」

 …一体どういう体をしているんだい、君は? 君は綾○レイの
生まれ変わりなのか? でも、それだったら、ルリちゃんの方が似てるよな。

「それだったら、ルリの方がすごいよ」

 例えば?

「ヘル&ヘブンとか」

 …マジで?

「うん」

 ナデシコで一番強い人って、もしかしたらアキト君じゃなくて
ルリちゃんかも知れない。

「くっ、私をここまで追いつめるなんて…なかなかやるわね。
 こうなったら…」
 
 ばさばさばさ

「また胞子ですか? …こ、これは!」

 ルリが驚くのも無理はない。ムネ茸が、一気に五人に増えたのだ!!
夢に出てきそうだ…。

「ほほほ、これならどう、ホシノ・ル…」

「ハンマーコネクト!」

 がしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ!!

 ルリの右腕に、さっきのイネスさんの三倍くらいあるボクシンググローブが飛来し、
そのままルリの右腕に装着される。

「消えなさい、ケダモノ! 
 鋼鉄粉砕!! 
 ゴルディオンハンマー!!!」

 ひゅぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ!!

 ルリのはなった一撃は、本体を残し、分身全てを光の粒子に
変換してしまった。

 ついでに、ハーリー君も光の粒子になっていたりする。
大変だな、ハーリー君も。

「大丈夫です。ハーリー君ならほっとけば30秒で生えてきますよ。
 ゴキブリ並の生命力ですからね」

 まあ、そう言われてみればそうだけど…。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 泣き叫ぶハーリー君。 て言うか、もう生えてきたのか、お前は!?

「さあ、後はアキトさんの出番ですね」

「うう、やっと科白が言えるよ、ルリちゃん。
 みんなに活躍の場面を取られてばっかだったからね。
 オレ、主人公なのに…(泣)」

とか何とか言いながら、なんで刀なんか持ってるんだ?
くどいようだけど、銃刀法違反だぞ。

「大丈夫だ。ちゃんと登録してある」

 そう、なら大丈夫だ。 ← そう言う問題か?
ちなみに、銘は?

「二代目和泉守兼定(いずみのかみかねさだ、と読みます)。 通称ノサダだ」

 ほう、大業物二十一工の一つか。妖刀と恐れられたあの刀ね。

(古くは戦国の武将、細川幽斎、忠興親子から、豊臣秀吉の猛将、森式蔵守、
 新選組副長の土方歳三が使ったという刀の事です。かなり切れ味が
 鋭いらしく、鉄まで切り裂けると言う伝説がある)。

「最近、司馬遼太郎の『燃えよ剣』が愛読書になってるんだっけ?」

 うん。 まあ、僕のことはいいから続き続き。

「そうだった。 とうっ!!」

とナオと同じように、空高く飛び上がるアキト。
そして剣を振り回し、自分の周りに気の光球を集め始めた。

「木蓮式抜刀術奥義!
 メテオ・ザッパー
 重閃爆剣!!」

 ドガガガガガガガガガガガガガガッ!!

「あべしっ!!」

 次々とムネ茸を襲う光球。 しかし凄いのは、アキトはハーリー君に
一個も光球を当てていないことだ。 よかったね、ハーリー君。

 立っているのもやっと、と言うムネ茸に、さらなる攻撃が加えられる。

「木蓮式抜刀術最終奥義!
 地獄極楽山海天地二等分断剣っ!!!!」

 …もはや、効果音書くのが馬鹿らしくなるほどの凄まじい音を立て、
ムネ茸はこの世から消滅していった…。

 しかし…。 ハーリー君まで消滅させちゃまずいんじゃないか?

「しまった! すっかりハーリー君のこと忘れてた!!」

 ひでぇ…。

「大丈夫ですよ、アキトさん。 言ったはずですよ?
 ハーリー君は30秒で生えて来るって。 心配無用ですよ。
 それよりアキトさん、私お腹空きました」

「アキト、わたしもお腹空いた」

 ルリ、ラピスがアキトの腰に抱きつき。

「ねえ、アキト♪ 何か作ってくれない?」

「アキトさんが作ってくれるなら、何でもいいですね♪」

 サラ、アリサがアキトの両腕に抱きつき。

「アキト君、火星丼テンカワスペシャルお願いね」

とイネスさんまでアキトの首に手を回す。

「ちょっと! 私の抱きつく場所が無いじゃないですか(怒)!!」

 出遅れたメグミが抗議の声を上げる。

「そうだ、アキト。 オレにも大盛りチャーハンよろしくな」

「同じく」

 それを面白そうに見ているナオ、サブロウタの両名。

「ちょ、ちょっと待った! オレ一人で作るのか!?」

「「「「「「「「もちろん(だ、です)」」」」」」」」

「なんでだー!?」


 戦いは終わった…。 しかし、我らが主人公テンカワ・アキト君の戦いは
終わらない。いや、むしろ始まったばかりなのだ…(笑)。






 戦え、テンカワ・アキト! 頑張れ、テンカワ・アキト!!
勝利の向こう側にある物は!?


「疲労だけですよね」


 そうかもしれない。









Fin








おまけ





一週間後

「ふっ! はっ!!」

 ここはナデシコトレーニングルーム。
アキトは日々鍛錬を欠かさない。体作りというのもあるし、
生来彼は真面目な性格だからだ。

「こんにちは、アキトさん」

 そこに、運動とは無関係だと思われるホシノ・ルリ嬢が現れた。
ついでに、ルリの頬は少々赤く染まっている。

『…アキトさん…。 …かっこいい…(ポッ)』

「どうしたの、ルリちゃん? ルリちゃんがここに来るなんて珍しいね」

「いえ、新しくサンドバックを購入したので、まず初めにアキトさんに
 使ってもらおうかな、と思いまして…」

とルリは自分が押してきた台車を指さす。 そこには、真新しい
サンドバックがあった。

「へ〜。 じゃあ、早速」

 手近なところにぶら下げるアキト。

 …と言うか、片手で持ち上げてかけるアキト君って凄い。

「はっ!」

 どむっ!

『ぷろべっ! 何するのよ、テンカワアキト!!』

「ル、ルリちゃん? サンドバックがしゃべったけど?」

「ええ、これはイネスさんが新しく開発したサンドバックでして、
 ムネ茸の脳を移植してあるんです。 だからもちろん、痛覚もありますよ♪」

 驚くアキトに、恐ろしいことをサラッと言うルリ。
こ、こえぇ…。

「ほお…。 それじゃ…」

 ニヤリ、と劇場版で浮かべていたあの笑みをアキトは浮かべ、
おもむろに一発入れてみた。

 がすっ!!

『げぼばっ!!』

「これはいいな。 ありがとう、ルリちゃん」

「いえ」




 …これから暫く後、ナデシコクルーの間にサンドバックを殴ることが
流行ったという…。









後書き


 …すみません。 思いっきり遅刻しました。
「全くね」 (サラ)
「でも姉さん、今回は結構書いたようですよ?」 (アリサ)
「ダメだぜ、アリサちゃん。 そう甘やかすからいけないんだぞ?」 (ナオ)
「そうそう」 (サブロウタ)
 仕方ないだろう! 使っていたワープロが大往生する、
時差はとれない、免許は取らなきゃいけない、学校には行かなきゃ
いけないし!!
「あ、逆ギレした」 (サラ)
「カルシウム不足じゃないですか? はい、牛乳です」 (アリサ)
 あ、ども。
「しかしコイツ、ラスベガスで二十一歳以上に見られたんだよな」 (ナオ)
 う゛。
「しかも、自分の姉(20歳)より年上に見られたらしいし」 (サブロウタ)
「あとで泣き通したらしいですよ」 (アリサ)
 気にしてるんだから、言わないでちょうだい…(泣)。
でも凄いね、ルリちゃんは日本の高速道路で交通安全ポスターに使われてたし、
アメリカの雑誌でルリちゃんのコスプレを見たよ。
「へえ、ナデシコって結構人気あるんだ?」  (サラ)
ありますとも。

 では、次回予告。

 ナデシコであった、本当に怖い話Vol.05
『彼方から来たりし幸せ・あるいは災厄』
 を、みんなで見よう!

 意見、感想、クレーム等待ってます。
どしどし送って下さい。

「でもワープロ壊れてんだから、更新スピードは思い切り
 落ちるんじゃないか?」 (ナオ)
 …それを言われるとキツイです…(汗)。
「何はともあれ頑張らないとな、Excaliber」 (サブロウタ)
 …善処します…。

 

 

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

ExcaliberさんからSSの投稿です!!

お久しぶりのExcaliberさんです!!

いや〜、彼が復活するとはね(苦笑)

まあ、何時も通り不幸な幕切れだったけど(笑)

でも、ナオ達が格段にレベルアップしてるよな・・・いろいろな意味でさ(汗)

それにしても、アメリカにまた帰られたんですね。

日本への帰郷はどうでしたか?

 

では、Excaliberさん投稿、本当に有難うございました!!

 

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