日本の何処かにあるのどかな町、ナデシコタウン。
人口八千人くらいしかない、小さな町である。

ガシィィィィィィィィィィッィィィィンッ!!

 ぶつかり合う、鋼の体と体。 
飛び散る汗の代わりには、破損箇所から流れでるドス黒いオイル。
・・・ここ最近人気が出てきた、ロボットプロレスだ。

「そこよっ! そこで後ろに回りこんでブレーンバスター(プロレス技の一種)を・・・。 よーし、よくやったわ!!」

 突然閑静な住宅街に響く怒号・・・いや、歓声。 
その声のあまりの大きさに、近所に住んでいる鈴木のじいさん(72歳)はショック死を起こしかけたとか・・・(汗)。

 ・・・どうやらその声は、イネス・フレサンジュ総合科学研究所という建物が発生源らしい。
どうしても、悪の研究所にしか聞こえないのだが・・・いったい何を作っているのやら・・・(汗)。

『−さて、来週の・・・』

 ピッ!

「あー、おもしろかった。 いつか、私の作品も出場させてみたいわね・・・」

 試合結果に満足したのか、ウ〜ンと背伸びをしながらテレビの電源を落とす女性。
・・・皆さんご存知の通り、イネス・フレサンジュである(汗)。
イネスさん、実は大のプロレスマニアだったらしい(大汗)。

「でも、あなたが出場すれば優勝・・・ううん、世界も狙えるわよ? ・・・ねえ、北斗?」

 イネスが振り返った先には、静かに佇む炎のような紅の髪を持つ少女の姿があった。



         突発的電波SS(汗)
         ナデシコアナザー ついんほくちゃん!
         第一話   俺(わたし)の名前は北斗(枝織)!!




「駅に迎えに行くから待っててねって言ってたのに・・・。 イネスさん、完璧に俺の事忘れてるな?」

 駅の改札口から出てきたのは、いろんなSSでカタパルトによって加速させられる
戦闘機の如く不幸度が増している我らが主人公、テンカワ・アキトその人である。

「どうしようかな・・・交番にでも行って道でも聞こうかな?」

 クイクイ・・・

「ん? ・・・君達、何か俺に用かい?」

 交番に行って道でも聞こうかなと考えていた所を、不意に服の裾を引っ張られ、我に返るアキト。
そこには、12,3歳くらいの少年と少女が裾を引っ張っていた。

「え〜と・・・テンカワ・アキトさん・・・だよね?」

「ボク達、イネスさん言われて迎えに来たんだ」

 ・・・既にお気付きの方も多いと思うが、ディアとブロスの二人である。

「迎え? ・・・肝心のイネスさんは?」

「・・・どうしてもロボットプロレス見たいからって、アタシ達が迎えに来たの」

「まだ治ってないのか、イネスさんのプロレス好き・・・(汗)」

「それで苦労しているんだ、ボク達・・・(苦笑)」

 ディアとブロスの二人が溜息混じりに愚痴をこぼす。
・・・これから、上手くやっていけるんだろうかと不安になって来るアキト。
実は、アキトはあのマッドイネスとしばらく一緒に生活する事になっているのだ!!(爆)
理由は簡単、アキトの両親とイネスが知り合いで、アキトの両親が長期の出張に出かけたからだ。
(というのは建前で、出張という名のバカンスだったりする)





 ・・・改造されない事を、切実に願うアキト君であった・・・(汗)。





「へぇ〜・・・。 じゃあ、ディアとブロスの二人はイネスさんが造った
 ヒューマンフォーム・ロボットなんだ・・・。 人間にしか見えないな」

「ヘッヘ〜、ありがと、アキト兄。 でも、アタシ達はロボットだよ」

「ん〜、まあ、正確に言えばボク達は生体部品を使って出来ているからね、
 いわば生きている機械なんだよ〜、アキト兄」

 ・・・あれから三十分、アキトはすっかりディアとブロスの二人と打ち解けていた。
もともと子供には優しいアキト、ディアとブロスの二人はすぐにアキトに懐いたらしい。

「あれ? ・・・ということは・・・ご飯も食べるって事?」

「だいせ〜かい、アキト兄。
 お風呂だって入るし、睡眠だってちゃんと取らないと体調維持出来ないんだよ」

「ディアがお風呂に入ると一時間は出てこない、おまけにロボットなのに低血圧(?)だから
 朝起きてくるの凄く遅くて困るんだよね・・・」

 そんな取り留めない話をしているうちに、ついにアキト一行はイネス・フレサンジュ総合科学研究所に到着した。
・・・いや、到着してしまった、と言った方が正しいだろうか?(汗)

「・・・覚悟はいい、アキト兄?」

「ここまで来たら、もう後戻りは出来ないよ。
 本当にいいの、今ならまだ引き返せるんだよ?
 ・・・何が飛び出してきても、ボク達は責任持たないからね?」

 ・・・ビックリハウスか、イネス・フレサンジュ総合研究所は?(汗)
背中に流れる冷たい汗を、今更ながらにハッキリと自覚したアキトだった。

「ドアを開けてくれ、二人とも。
 ・・・覚悟は、イネスさんと生活するって決まった時に出来てるさ・・・」

 震える声で二人にドアを開けるよう促すアキト。
もちろん、心の中で何も出てきませんようにと祈りながら、だ(笑)。
そんなアキトの悲壮な決意を感じ取り、ドアを開けるディアとブロスの二人。

 ギィッ―――――・・・

 少し軋んだ音を立て、徐々に開いていく悪魔の巣窟の扉。
・・・いや、イネス・フレサンジュ総合科学研究所のドアが開いていく。 
そこで、アキト達三人が見た物は!

「!?」

「アラ、お客さん? よく来たわネ、ゆっくりして行ってヨ」

 深い緑色のメイド服(冥土服?)を着た、歩くキノコ・・・もとい、ムネタケ・サダアキの姿だった(汗)。
しかも、頭には可愛らしいピンクのリボンが乗っかり、ふりふりエプロン(魅力の訓練効果が1.5倍)まで装着している(大汗)。

 あの〜・・・。 普通、男なら執事の服を着ると思うんですが・・・(汗)。

「自前よ、コレ」

 どうやら、ムネ茸の趣味(爆)らしい。 これぞ、生きる悪趣味の極みである(滝汗)。

「アキト兄、大丈夫? ・・・顔色、すっごく悪いよ?(汗)」

「ディア、誰だってアレ(ムネ茸のメイド服姿)を見せられたら気分が悪くなると思うけど・・・(汗)」

 玄関に崩れ落ちたアキトの背中を、心配そうに擦るディアとブロスの二人。
誰だって、あんなの見せられちゃ、ねぇ・・・(苦笑)

「アラ、大丈夫? 顔色悪いわネ、この子。 ・・・私の美しさに、酔っちゃったのかしらネ?」

 クネッと、シナを作ってみせるムネ茸(爆)。
どうでも言いが、自分が原因と言う事に気付いていないのだろうか?(汗)

「うう〜ん・・・(気絶)」

「「わーッ、アキト兄ーッ! 気持ちは分かるけどしっかりしてーッ!!(汗)」」

 ムネ茸の作ったシナを見て、人間が持つ自己防衛機能が働き、気絶するアキト(汗)。
いや、普通の感性の持ち主なら、一生トラウマものの出来事なんだが(大汗)。

「美しいって、罪ネ・・・」

 何故か、明後日の方向を見ながら呟くムネ茸。
コイツは自分が本当に美しいって思っているのだろうか?

 


 んなわきゃない。    ←魂のツッコミ





「ふふっ・・・ムネ茸のメイド服姿を見て気絶するなんて、まだまだ甘いわねアキト君?」

「・・・慣れたくないですよ、イネスさん。 トラウマになったらどうしよう・・・」

 イネス・フレサンジュ総合科学研究所内、リビングルーム。
研究室から出てきたイネスと一緒に、お茶しているアキト達の姿があった。
ちなみにイネスがコーヒー、アキトは紅茶、ディアとブロスの二人はホットミルクである。
・・・もちろん、ムネ茸が入れてくれたものだ(爆)。

「ところでイネスさん、俺、これからイネスさん達と一緒に住む事になるんですけど、
 この家の経済状況ってどうなってるんですか?」

「・・・それって、私がちゃんと仕事しているかって事かしら?
 失礼ね、ちゃんと立派に研究者しているわよ?」

 胡散臭そうに尋ねるアキトに、ジト目で睨み返すイネス。
ちなみに、ディアとブロスの二人は我関せずホットミルクをちょっとづつ啜っていた。

「・・・わかったわ。 そこまで言うのなら、ちゃんと証拠を見せてあげるわ!!」

「え? ちょっとイネスさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!?」

 ガシッとアキトの首根っこを掴み、そのままズルズルとアキトを研究室まで引きずっていくイネス。
その姿はまるで、新しい玩具を見つけた子供の様だ(汗)。

「また始まったよ、イネスさんの悪いクセ・・・(汗)」

「アキト兄、ちゃんと生身で研究室から出て来れるかな?(汗)」

 そして、その姿をディアとブロスの二人は同情の篭った目で見ていたりして(笑)。



 ――――場所は変わって、研究室内。

「これが・・・いえ、この子が私の最高傑作になるであろう生体アンドロイド、HOKUTO・・・北斗よ」

 イネスが見つめる先には、冒頭で登場したあの少女の姿があった。
燃え盛る炎のような紅の髪、野生動物を思わせる無駄のない整った体。
ただ、その目は閉じられていており、瞳を見ることは出来ないが、それでも掛け値なしの美少女だ。

「・・・女性型なんですね。 彼女も、ディアやブロスと同じ・・・?」

「ええ、生体機構を組み込んであるわ。
 99.8%人間と同じ構成・・・作ろうと思えば、子供も作れるわよ」

 子供も・・・って・・・そういうのは人間というのでは?(汗)
思わずそう突っ込もうとしたアキトだが、この事に突っ込んだら
二時間は説明タイム(笑)になってしまうのでやめておいた。
実に賢明な判断である。

「で? ・・・動くんですか、彼女?」

「ええ、一応は、ね。 ちょっと問題もあるといえばあるんだけど・・・」

 カタカタカタカタ・・・・・・  ← キーボードを叩く音

 ――――ピクンッ

「あ、動い・・・」

 ドゴンッ!

 バキッ!

 グシャッ!
 
 プシュ―――――ッ・・・・・・

「私は強いロボットが好きなのよ。 ロボットプロレスのファンを自認するくらいだしね」

「それで・・・戦闘型ってワケですか・・・(汗)」

 北斗の滑らかな動きにウットリするイネスに対し、アキトは苦い顔。
それもその筈、北斗はそこら辺にあった機械群を瞬く間にスクラップに変えてしまったからだ。

「この際だから、アキト君の好きなように性格設定してもいいわよ?
 何なら、彼女って言う設定にして上げましょうか?」

「か、彼女って、イネスさん!(赤面)
 ・・・北斗って名前は男っぽいので、枝織って名前に出来ませんか?」

「え? ・・・それはいいけど、何で枝織ちゃんなの?」

「俺が女の子だったら枝織って名前になるそうだったんですよ。 理由はただそれだけですけど・・・?」

 それが?という顔で尋ねるアキトに、ううん、何でもないと首を振るイネス。

「わかったわ、でもこの子の仕上げは夜以降になりそうね。
 ・・・そうだ、アキト君、久しぶりにアキト君の火星丼が食べたいわ。 頼めるかしら?」

「それくらいお安い御用ですよ。 じゃあ、先に下に降りて準備してますね」

 夕食の準備に向かったアキトを見送り、ドアを閉めるイネス。
そして北斗・・・いや、枝織の方に振り替える。

「・・・幸せ者ね北斗・・・いえ、枝織ちゃん。 いい人と出会えたわね・・・」

 そんなイネスの小さな呟きは、誰にも聞き取られる事なく虚空に消えていった。
そう、すぐ側で佇んでいる北斗・・・いや、枝織ですら。





 コンコンッ・・・

「イネスさん、コーヒー入りましたよ・・・って、いないのかな?
 まあいいや、お邪魔します」

 現在、夜中の一時。
夕食後直ぐに研究室(別名イネスの聖域)に引き篭もってしまったイネスの為に
コーヒーを差し入れに行った心の優しいアキト君だが、生憎イネスは席を外しているらしい。

「しかし、すごいよなぁイネスさん。 殆ど人間と変わらないもんな」

 コーヒーをイネスの机の上に置きながら、改めてイネスの腕に舌を巻くアキト。
調整用なのだろうか、体の至る所からコードが延びている以外を除けば、北斗は全く普通の人間と変わらない。

「さて、邪魔になるだろうから早く部屋に戻らないと・・・って、うわっ!?」

 部屋に戻ろうとしたアキトだったが、何故かそこにあったブリタニカ大事典に蹴躓く。
どうやらイネスは、日々説明のために隠れた努力をしているらしい(笑)。
ちなみに、ブリタニカ大事典とは世界でも有数の百科事典で、とっても厚い事でも有名。


「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 ズテーン!

「イタタタ・・・イネスさん、ちゃんと片づけくらいやって下さいよって・・・またぁぁッ!?」

 ・・・今度は、そこら中からのびているパソコンのコード類に足を引っかけるアキト。
その拍子に、コンセントからスーパーコンピューターのコードがすっぽ抜ける。
そう、北斗の制御装置に繋がっているスーパーコンピューターのコードが、である。
Excaliberもコードに足を引っかけて、姉から借りていたノートパソコンを机の上から床に落とした事がある(汗)。
みんな、足元には十分気をましょうね(笑)。 ちなみに、落っことした事はまだばれてません(爆)。

 しゅううううううううう・・・・・・

「こ、これって・・・もしかしなくてもかなりヤバい状況!?」

 ドカーンッ!!!

 アキトの叫びと同時に、イネスの研究室は凄まじい閃光と爆音に包まれた。




「まったく・・・どこに行っちゃったのよ、アキト君・・・。
 せっかくセクシィーダイナマイトボディ(古!)なイネスお姉さんが夜這いしに来てあげたのに・・・」

 時間は少し戻る。
アキトの部屋から少し・・・いやとんでもなく残念そうな顔で出てきたのは、
何を隠そうイネス・フレサンジュその人である。
夜這いって・・・イネスさん、アンタ歳いくつ?(大汗)

「うるさいわね、私だって体が疼くのよ・・・(ポッ)。
 あの夜這いの星に誓うわッ、絶対アキト君とナニするのよ!!」

 ジュルリと涎を垂らしながら、窓から見える星に誓っているイネス。
だが、誓っている内容はお星様に誓う様なものじゃない(汗)。
つーか、夜這いの星ってなによ?(大汗)

「・・・仕方ないわね、目的のアキト君も居なかった事だし、
 北斗・・・違った枝織ちゃんの仕上げでも始めようかしら」

 パタン、とアキトの部屋のドアを閉めて研究室に戻ろうとするイネス。
そして、イネスがアキトの部屋を出て少ししたところで・・・。

 ドカーンッ!!!

 という爆音が鳴り響くわけだ。

「な、何事なの!?」

 慌てて研究室に向かって走り出すイネス。

「な、何があったの?」

 あの爆音で飛び起きたのか、所々髪の毛が刎ねているパジャマ姿のブロスが部屋から飛び出してくる(ちなみに、今は夜中の一時)。

「なんだお〜、人がせっかくいい気持ちで寝てたのにうるさいお〜・・・」

 その後ろから、もの凄く目つきの悪いナイトキャップを被ったディアが大きな枕を引きずりづつ部屋から出てくる。
ディアのパジャマ姿・・・可愛いかもしれないが、いかんせん寝起きが悪すぎ。
・・・あれ? だお〜ってどっかで聞いたような・・・?

「困るわネェ、睡眠不足はお肌の敵なのヨ?」

 そして、極めつけは、ピンクのネグリジェ姿のメイドムネ茸(汗)。 
しかも、腕の中にはテディベア! 精神衛生上もの凄く悪いので、モザイクが掛かってます。
・・・ご了承ください(笑)。

「研究室から煙が出てるのよ!」

「「「そんなのいつもの事(でしょ・だおー・じゃないのヨ)」」」

 緊迫感溢れるイネスの声に、いつもの事だっていう雰囲気で欠伸をする三人。
実際、こんな小火騒ぎはまだ可愛い方で、以前には家が半壊するほどの爆発を起こした・・・らしいのだが、
当のイネス本人はサイババも真っ青のアフロになっただけである(笑)。
そして次の日には研究所は完璧に、それこそ傷一つなく復元されていたりするのだから、よくわからない研究所である事は確かだ(汗)。

「あ、アキト君? そういえばアキト君は何処!?」

 キィ・・・

「し、死ぬかと思った・・・」

 煙の出てくる研究室のドアを開けて出てきたのは、少々煤で汚れている当のテンカワ・アキトその人であった。
もちろん、ケホッと黒い煙を吐くのも忘れない。 つーかアキト君、普通は死んでいるはずだぞ?

「あ、アキト君? そこで何をしてるの!?」

「イネスさんにコーヒーの差し入れにいったら、
 事典やコードに蹴躓いて・・・それから・・・研究室が閃光と爆音に包まれたんですよ・・・」

 煤で汚れた顔を拭いながら、イネスの質問に答えるアキト。

「ほ、北斗はッ!? 北斗はどうなったのッ!!?」

 慌てて研究室に飛び込むイネス。
そこには・・・先ほどの爆発でぐちゃぐちゃになった資料やら研究素材やらが散乱していたが・・・
肝心の北斗の姿は何処にもなかった。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
 いないっ!!! 北斗がいなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいぃっ!!!!!!」


 キャラのイメージを崩壊させて叫ぶイネス。 イメージ的には、劇画調である(笑)。
そして、そこら中のガラクタをひっくり返して北斗・・・いや、枝織の姿を探し始める。

「お、落ち着いて下さいよイネスさん。 
 ・・・ここの壁に穴開いてますけど、ここから出て行ったんじゃ?」

「・・・アキト君。 北斗・・・いえ、枝織ちゃんはこんなに小さくないわよ」

 アキトが見つけた三十センチくらいの穴を見て、イネスが溜息をつきながら北斗探しに戻る。

「万が一って事もありますから、とりあえず俺外見てきます。 
 ディアとブロスの二人はもう遅いから寝てていいよ、ムネ茸さんも」

「じゃ、僕達はまた寝るねって・・・ディア! 立ったまま寝ないでよ!!」

「うにゅ〜・・・くー・・・」

「・・・そうさせて貰うワ。 でも、私はムネ茸じゃなくてムネタケなのヨ!」

 三者三様のセリフを残し、それぞれの部屋に戻っていく三人。
しかし、何故ムネ茸はアキトのセリフが誤字変換されている事に気がついたのだろうか?
ムネ茸七不思議の一つである。

「さて・・・枝織ちゃんを探しにいくか・・・」

 ジャンバーを引っかぶると、アキトは枝織を探すべくドアを開け、外に出て行った。





「ここ・・・どこかなぁ・・・?」

 ・・・えっと、目が冷めたら、だだっ広いココに倒れてたんだっけ。
さびしいよ・・・誰かいないの・・・?

「う・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!」

 誰か・・・迎えに来てよ・・・。





「なっ・・・なんだこの大きな泣声は!?」

 耳を抑えながら、声のした方向に足を向けるアキト。
そこには、鼓膜が破れかねないほどの大声で泣いている小さな女の子がいた。
暗くてよく分からないが、ポニーテールがゆらゆら揺れている。

「こんな夜遅くに・・・何処の子だろう・・・」

 とりあえず小さな女の子の側に行き、優しく抱き上げるアキト。
もちろん対人(女性限定だが)最強兵器、アキトスマイルも忘れてはいない。

「泣かないで、もう大丈夫だから、ね?」

「う、うん・・・(ポッ)」

 ・・・恐るべし、アキトスマイル。
さっきまであれ程泣き喚いていた女の子を一発で泣きやますとは・・・。

「君のおうちはどこだい?」

「おうち・・・しらないの・・・」

 ・・・迷子なのかな? 
全く、こんな可愛い子を野外に放置するなんて、親失格なヤツだな・・・とアキト。
十二歳未満の子供を家に残して外出するだけで逮捕されるくらい子供に関する法律が厳しい国もある。

「じゃあ、君の名前は?」

「えっとねぇ・・・しおりー」

 ・・・はい? 何ですと?(汗)

「し、しおりっ!? そ、そういえば、面影が・・・」

「どぉしたの? えっと・・・」

 突然叫びだしたアキトにビックリして少々涙目になっているチビ枝織。
その可愛さは、某○ンリオのたれパンダと同等かそれ以上だった、と後にテンカワ・アキトは語る。

「お、俺はアキト。 テンカワ・アキトだよ。 ・・・でも、こんな事ってあるのか・・・?」

「うにゅ〜、ア〜くん♪(はぁと)」

 悩むアキトを他所に、枝織はアキトに抱かれているのが嬉しいらしく、幸せそうにはしゃいでいる。
どうやら懐いてしまったらしく、スリスリと頬擦りまでしている。

「く、くすぐったいよ枝織ちゃ・・・へっ、へっくしょん!」

「!!」

 アキトがくしゃみをした瞬間、ネジが切れた人形のように動かなくなる枝織。

「ど、どうしたの枝織ちゃ・・・どわっ!?」

 ボンッ!

 疑問に思ったアキトが枝織を見た瞬間、枝織の体から盛大な白煙が発される。
そしてその煙は、すぐに枝織の姿を覆い隠してしまう。

「だ、大丈夫? 枝織ちゃ・・・ん!?」

 ――――ユラリ

 そんな時だった。 アキトが、白煙の中に彼女の姿を見たのは。

「・・・!」

 腰まで流れる炎のような紅の髪、野生動物を思わせる無駄の無いしなやかな体。
開かれた紅の瞳は強い意思を宿して光り輝いている。

「我が名は北斗! 強さを追い求めし真紅の羅刹! 我が拳に砕けぬものなし!!」

と、突然ポーズを決める枝織・・・いや北斗のあまりの豹変振りに、ボーゼンとなるアキト。
さっきまで『アーくん』(はぁと)』って言っていたのに、いきなり体が大きくなり、
しかも『我が名は・・・』なんて言いながらポーズを決められたら、誰だって脳がフリーズするだろう。

「・・・誰だお前は?」

 偉そうに腰に手をあて、ぶっきらぼうな言葉で話す北斗。
どうやら、人格まで180°反転してしまったらしい。
さっきまでの可愛い枝織ちゃんはいったい何処に行ってしまったんだ・・・と軽い頭痛を覚えたアキトであった(笑)。

「テ、テンカワ・アキトだよ。 君の生みの親である、イネス・フレサンジュの知り合いの・・・」

「・・・テンカワ・アキト? ・・・思い出した、アキトだな?
 俺はお前の彼女として設定されたHOKUTO・・・北斗だ。 以後、よろしく頼む」

「あ、ああ、よろしく・・・って、ちょっと待て! 彼女だって!?」

 とりあえず北斗と握手をするアキト。 
枝織といい、自分のくしゃみが原因で変身した北斗といい・・・分からない事だらけだ。

「ああ、そうだが? ・・・知らんのか?」

「彼女って意味、わかっているのか!!?」

「・・・別に、ただ一緒にいるだけだろう?」

 ・・・絶対違う(汗)。

「とりあえず、イネスさんに原因をせつめ・・・違った原因を解明してもらわないとな・・・」

 ――――その頃、研究室では。

「・・・誰か、私の説明を必要としているの?(ギュピーン)」

 何時の間にか北斗を探すのをやめ、コーヒーを飲みながらブリタニカ大事典を眺めていた
イネスの目が光ったように見えたのは、決して目の錯覚ではない・・・と思う。
・・・いや、思いたい(汗)。


 



「え? 枝織ちゃんが大きくなったり小さくなったり?
 ・・・アキト君、その冗談はあんまり面白くないわね。 出直してらっしゃい」

「嘘じゃないですよ、イネスさん!」

「・・・何をゴチャゴチャ話している?」

 あれからイネスの研究室に戻ったアキトは枝織と北斗の身に起こった事を
詳しくせつめ・・・いやいや詳しく伝えているところだった。
ちなみに、科白は上からイネス、アキト、北斗の順である。

「とにかく・・・アキト君の話を整理すると、くしゃみをしたら枝織ちゃんが北斗に変身したってワケね?(コチョコチョ)」

「ええ、そうですって・・・何を・・・ヘッ」

「な、何をしている?(汗)」

 どこから取り出したのか、アキトの鼻を紙のこよりで擽り始めるイネス。
恐らく、イネスさんの白衣は某二十二世紀から来た猫型ロボットの四次元ポケットの様になっているらしい。
・・・イネスさんなら本気でやりかねないから恐ろしい(汗)。

「そのまた逆も然り・・・と」

「へっくしょん!」

「うおっ!?」

 ―――ポンッ!

「ほえ〜・・・あ、アーくん〜。 だっこだっこ〜」

「ほ、本当だわ・・・(解剖して調べてみようかしら?)」

 小気味いい音と共に姿が縮む北斗を見て、呆れたように溜息をつくイネス。
だが、裏ではすんごく物騒な事を考えていたりする(汗)。

「・・・これは推測なんだけれども・・・。
 以前に入力した北斗の人格・・・格闘用の性格プログラムと今回入力した枝織ちゃんの人格・・・
 女の子の人格プログラムがコンフリクト(衝突)している・・・と私は考えているわ」

「はあ・・・。 じゃあ、俺のクシャミで変形するのは?」

 枝織をだっこしながら尋ねるアキト。 しかも、それが何か凄く似合っている(爆)。

「プログラム暴走中にクシャミ連発してたんじゃない? そして、それが変形のコマンドワードとなった、と・・・」

「な、なるほど・・・」

 立て板に水の如く喋りだしたイネスの姿は・・・すっごく嬉しそうである(笑)。
尤も、アキトは話の内容を半分も理解していなかったが(爆笑)。

「とりあえず、私はこれからデバッグを始めるつもりだけど・・・
 今夜はもう遅いし、明日からにしましょうか。 枝織ちゃんも眠そうだし」

 眠そうに目を擦っている枝織を、微笑みながら見つめるイネス。
いや、次の瞬間には寝息を立てて寝ている枝織であった。

「・・・そう、ですね・・・。 そうします、おやすみなさい」

 ――――パタン。

「・・・デバッグするのやめようかしら? そっちの方が、研究素材になるし・・・(ボソッ)」

 一方、アキト達。

「・・・(ブルルッ)」

「どうしたの、枝織ちゃん?」

「ううん、何でもない。 ・・・寒気がしただけだよ」

「・・・? そう?」

 ・・・アキトと枝織が出て行った後に、ポツリとイネスがこう呟いたのは秘密(汗)。
なし崩し的に始まったアキトの不思議な物語の始まりである。




 次回予告


「アキト君、突然だけど家族が四人増えるわ」

「ヘッ?」

 学校から帰って来たアキトを向かえたイネスの第一声はこれだった。
新しい住人とは? そしてアキトの貞操は大丈夫か?
まて、次号!! 

 ・・・すんごく更新遅いと思うけどね。




 後書き

 みなさんこんにちは、Excaliberです。
そろそろ暖かくなり始める頃ですね、風邪ひいてませんか?
今年の風邪はキツイですねー。

「ディアでーす! Excaliberはインフルエンザにかかって三十九度六分まで出したもんねー。
 自己記録を更新したんだって!」

「ブロスでーす! ところでExcaliber、このSSってさ、完璧にあの漫画のパクリだよね。
 アキト兄のクシャミで変形する北斗さんは・・・シグナル?」

 うむ、枝織ちゃんがちび役だ。 これ以上はないってくらいハマリ役だと思うぞ。
アキトは信彦で、教授がイネスさんだ。 教授役はウリバタケさんとどっちにしようか迷ったんだけどな。
他のキャラも順次登場予定だ。 ただ、設定をパクっただけだから、原作通りには行かないと思う。

「ところで、次は誰が登場するの〜?」

「うん、それ僕もすっごく気になるよ〜」

 それは次回のお楽しみ。 ただこれだけは言っておく、普段あまり目立ってない人達さ。
それでは、次回でお会いしましょう!

「「まったね〜♪」」

 ってちょっと待った! 忘れてた!

「「なに?」」

 アメリカ版ナデシコのビデオ見たんだけど、詳しい事知りたい人いるかな?
一編『なぜなにナデシコいんゆーえすえー』とか題打って書いてみたけど、何かただの自慢話の様な気がしてきてさ・・・。
代理人さんのコメントを参考にしてみようと思うんだ。 代理人さんのコメントって核心をついてるし。

「「・・・う〜ん・・・」」

 あ、また新しいSSを考え中で〜す。 ・・・あと二つね。
今年もなにとぞお願いしま〜す。

「「よろしくおねがいしま〜す」」





代理人の感想

一応解説しておきますと、元ネタは「ツインシグナル」(大清水さち、エニックスガンガンコミックス)です。

初掲載が九十二年ですから・・・もう十年も前の漫画です。

また原作では「シグナル」は主人公の「兄」として設定されていたり、「教授」は主人公の祖父だったりと、

かなり別物に仕上がってますね。

 

・・・・この配役だとどう考えてもスラップスティックコメディにしかなりそうにないんですが、それはそれでよし(爆)。

 

>普段余り目だってない人たち

ジュンは「影が薄い」で逆にキャラを立ててるし、ハーリーは不幸なだけだし、サラは消火器で目立てるし・・・

ナカザト象に至っては変身できるし(爆)。

すると候補としてはアリサ・レイナ・ホウメイガールズあたり?

 

 

>なぜなにナデシコいんゆーえすえー

見せたければ投稿。見せたくなければ死蔵。

私は見てみたいですけどね(笑)。