サレナ 〜希望の花〜 第四話 Cパート

 

 

結局サレナが持ってきた荷物を引っぱり出すだけで2時間のどんちゃん騒ぎだった。

これはナデシコが地球を離れてから最も大きな騒動だった。

普段からナデシコの最後の良心といわれるホウメイ、ミナトですら

この騒ぎの一角をになっていたほどである。

 

だがナデシコの騒ぎにかかせないナンバー1であるウリバタケだが、

自分宛の荷物を見てしばらくすると、そのまま自分の部屋に閉じこもってしまい

結局その日は顔を出すことがなかった。

 

 

ナデシコミーティングルーム

 

「僕はコスモスから来た男・・・・アカツキ ナガレ

よろしくっ」

ピカーン

歯が光るのはお約束である。

 

「で・・・早速だけど、何あれ?」

歯まで光らせてかっこよく決めた「コスモスから来たアカツキナガレ」だったが、

さすがにブラックサレナには驚いていたようだ。

「はい?何でしょうか?」

黒髪の女性が画面の中にいるウィンドウが突然開く。

「いやぁ、綺麗な髪だね。

名前は?

僕はアカツキ ナガレ今日からナデシコに来た助っ人だよ。」

「はぁ、サレナといいます・・・・」

サレナも目を丸くしてアカツキを見ている。

 

「いやはやあのブラックサレナという機体は私たちにもよく分からないんですよ。」

「へぇ、じゃぁだれのものだい?」

「テンカワアキト様の物です。」

「ううっ、違うもん。私がアキトのものだもん。」

「艦長は少し静かにしてください!!」

 

はい!?

アカツキは訳の分からないといった様子で、サレナを見た。

どうしてこんな美人が、あんなぱっとしない男なんかに・・・・と考えてるのだろう。

 

「えっと、サレナ?

君はあのエステの関係者?」

なにげなくサレナを呼び捨てにするアカツキ。

みんなの冷たい視線がアカツキに集まったが、サレナは全く気にしていなかった。

まぁ、向こうではみんなから呼び捨てにされていたので・・・・

 

「はい、私はブラックサレナのメインAIです。」

「え?君機械なの??」

完全に出鼻をくじかれたアカツキ。

 

「ええ、この姿はどうやら私の制作者が勝手に着けたようで、

仕様書にはないんですが・・・・」

ちょっぴり恥ずかしそうにこたえるサレナを人間じゃないと誰が見抜けるだろうか!

(ロボットは守備範囲だったかな)

アカツキはサレナが恥じらう姿を見て、自分の守備範囲を再確認していた。

 

「ふーん、で君の制作者は誰なんだい?

なぜただのコックがマスターなんだい?」

ターゲットの女の子の情報は多い方がいいと最終的な判断を下したアカツキ。

(どうやらロボットも守備範囲だったらしい・・・・)

 

「えっとぉ、すべてはお話しできないんですが・・・・

いいですか?

・・・・・・・・

・・・・・・・・

まず制作者についてですが、それは・・・・」

 

『それは??』

全員のクルーの声がハモった。

 

「ひ・み・つ・です」

ガタン

2・3人がお約束で何もないのにこけた。

ここナデシコには、吉本志望者が多いようである。

 

「ひみつって・・・・

何か言えない事情があるのかい?」

女の子の秘密は蜜の味・・・・

長年の生活から身にしみているアカツキは、その蜜を舐めずにいられない。

 

「いえ、みなさんにお教えするのはまだ先になると思います。

私の制作者はまだ早いという判断ですから。」

 

「じゃぁあなたを作った人物が秘密にしろという命令を出したのね?」

ブリッジにいた全員が、後ろを振り向くと、

制服をぴしっと決めた女性が少しウィンドウをにらみながら話した。

 

「はい、そういうことです。」

サレナは普通に答えを返した。

 

「えっとぉ、どちらさまですか?」

ミナトが、女性に押されておどおどしながら訪ねた。

 

 

「あぁ、まだ紹介がまだだったわね。

私はエリナ キンジョウ ウォン。

今日からナデシコの副操縦士をします。」

物珍しそうな視線でサレナをにらむアカツキ、

まるで値踏みをするかのように強烈な視線を送るエリナ、

その強烈な視線の前でもにこにこしているサレナ。

(アカツキ達の視線は気にもならないらしい)

 

「じゃぁ後はなぜテンカワ アキトがマスターなの?

ただのコックに機動兵器はちょっと荷が重いんじゃないの?

彼よりもスバル リョウコの方がよっぽどあなたの性能を引き出せるんじゃないの?」

エリナはサレナにさらに質問する。

なぜこのような機動兵器がナデシコにあるのか、かなり疑問に思っているようだ。

これぐらいの技術があれば、宇宙軍に売ればそれこそ

ネルガルをひっくり返すことも出来るはずだから。

 

 

「・・・・まぁそれは私の制作の目的に関係します。

テンカワ アキトのために作られた機体ですから

テンカワ アキトのみが私の本来の力を引き出すことが出来ます。

たぶんマスター以外が乗っても私の本来の力を引き出すことは出来ないでしょう・・・・」

サレナの顔が初めて神妙な顔になる。

 

(テンカワ君のために作られた・・・・

まさかテンカワ博士が!?

だとしたら、あの技術も使われている可能性もあるわ)

エリナはこの機動兵器にテンカワ夫妻が関わっているとにらんだ。

 

「まぁこんなところでしょうか?

ブラックサレナはテンカワ アキトの私有物ということでよろしいですか?」

いつもの顔に戻ったサレナは確認するかのようにプロスを見た。

 

「まぁ、問題ないんじゃない?」

アカツキがどうでもいいやという顔をしながらこたえた。

 

「はぁ、確か私有物は100キロまでという規定がありましたが・・・・

この非常時ですので例外ということで処理しておきましょう。」

プロスはアカツキとエリナの様子をちらっとうかがった後、

最終的な決断を下した。

 

「では今日はお開きということで・・・・

あぁ明日重要な発表があるのでみなさんブリッジの方へ来てください。」

解散しようとしたとき、プロスが止めた。

 

「なんですか?」

帰ろうとして止められたのが少し気に障ったのか

メグミはムッとしていた。

「えっと・・・・ナデシコのこれからについてです。」

プロスは眼鏡の位置を直し、キッとした顔でこたえた。

 

 


BACK ROOM NEXT