サレナ 〜希望の花〜 第五話 Bパート

 

 

なにぃ〜〜、これから軍と共同演習だとぉ」

えぇぇ〜〜

パイロットからの非難を浴びながら、ゴートはどっしりと構えていた。

 

地球への帰り道のちょうど半分にさしかかった頃だ。

とても目のいい人間なら日本がみれるくらいの大きさになっていた。

 

「『どれほどの実力があるか直接見てみたい』という通達が今さっき軍の方からあった。

これから軍とともに行動するのだからな、仕方がないだろう・・・・」

文句でもあるかといった顔でゴートはリョーコをにらんだ。

軍をよく知るリョーコは何も言い返せない。

 

「ナデシコはどうするんですか・・・・?」

アキトがポツリとつぶやく。

 

「ナデシコはサポートになります。

戦艦同士の演習は費用がかさむので・・・・」

ゴートの横にいたプロスが電卓片手に話す。

 

「あのぉやっぱり、俺も参加するんですか?」

本来ならコックのはずの自分も参加するのかな?とアキト疑問に思い

ゴートではなくプロスに聞いた。

 

ゴートに聞くのが筋だろうが、最も存在感のあるプロスを選んだ・・・・

ゴートでかいくせして、プロスより存在感薄いよ・・・・

(いっそ壊れてみる?>ゴートちゃん byフィラ)

「・・・・・」

 

「ええ、ただ・・・・いちおうノーマルのエステバリスでおねがいします。

得体の知れないエステバリスで軍に被害を出したら事ですので・・・」

何かと面倒なことになるのを恐れてだろうか、

プロスはブラックサレナを使用しないようにたのんだ。

 

「力加減ぐらい出来ます・・・・」

サレナはアキトの横で少しすねていた。

 

「あのぉ、それなんですけど俺のエステまだ修理が終わってないみたいなんです。」

あの後回収されたエステバリスはまだ直っていないのだ。

 

は? それは本当ですか??

整備班、いつもなら修理は終わっている頃ですよね?」

プロスはそばにいた整備班に問いただした。

 

「はいそれなんですが・・・

班長があれ以来全然部屋から出てきてくれないんです・・・・

それでかなり整備が遅れて、ブラックサレナがあるのでアキトの分は後回しだったんで・・・・」

整備班はびくびくしながらプロスにこたえた。

このときのプロスの顔は笑っていたが、その気迫は後にこの整備班を二日ほど寝込ませた。

 

 

「それでは他のエステバリスは・・・・」

整備がすべて遅れていたら、演習を延期しなければならない。

確かにネルガルにとって演習は無用なのだが、

演習できないとあれば軍と同行するに当たって格好がつかない。

危機管理が足りないとか何とかナデシコを完全に接収する材料にされかねない。

 

「それは大丈夫です、後1時間で終わります。

ただアキトの野郎のエステバリスは損傷がひどいので三日はかかります。

あ、これは班長がいての話です。」

それでは失礼しますと、整備班はもとの仕事に逃げるように戻っていった。

 

「・・・・・さて、どうしましょうか。」

プロスは考え込む。

アキトを参加させないという手もある・・・・

しかしそれでは軍につけいる隙を与えかねない・・・・

軍の目的は、演習の結果もし悪ければなんだかんだでナデシコを没収する魂胆と、

たった一機の機動兵器でチューリップを撃破したブラックサレナの視察だ。

ここで、軍にブラックサレナのことを悟られるのはかなり不味い。

あの機動兵器は完全に今の技術を上回っている。

異常な戦闘力を秘めたあの兵器は、最悪の場合軍を完全に敵に回しかねない。

 

「いいんじゃない?

僕もこのブラックサレナって機体の戦いを見てみたいし・・・・」

 

「はぁそういうことなら仕方ないですねぇ。

アキトさんすいませんが、ブラックサレナで演習のほうお願いします。」

アカツキの一言でプロスはブラックサレナを演習に参加させることにした。

ここで軍にカードを見せるのはあまり得策ではないのだが・・・・

 

「まぁあの人も見たいでしょうし・・・・」

アカツキの言葉で納得することにした。

 

 

--------------演習宙域--------------

 

「はぁ、向こうは『レッドショット』か・・・・

懐かしいな」

「そうだねぇ、なつかしいね・・・」

「確かあれは夏だったかしら・・・・なつらしい・・・・なつかしい・・・」

 

「ふふ、まぁ中堅の部隊だね。

相手にとって不足はなしといったと頃かな。

アキト君そのけったいな鎧に振り回されないでくれよ」

演習相手をじっと見てナデシコのエステバリスパイロット達は、

次々と感想を漏らした。

特にイズミ ヒカル リョーコの3人は何か縁のある部隊らしい。

 

一方アキトはサレナにブラックサレナの操縦時の注意点を聞いていた。

「・・・・ですから高機動モードでは・・・・」

「え、それじゃぁなにも・・・・・・ってあぁ呼んだ?」

 

リョーコは何となくアキトとサレナが気になり、ウィンドウを開いた。

 

「アキト・・・・何着てるんだ?」

驚いたようにリョーコはアキトを見た。

 

「そのやけに黒っぽい服はパイロットスーツかい?」

 

「うわぁ、かっこいぃぃ

どこかの騎士みたい・・・・」

 

「黒いパイロットスーツ・・・・

まるで喪服ね・・・」

リョーコの声で他のパイロット達は次々とアキトを見た。

 

アキトはバイザーは着けていないが、

中世の甲冑を思わせる黒いパイロットスーツを身につけていた。

 

その様子はさながら黒い騎士と呼ぶにふさわしい物だった。

ただ、そんなパイロットスーツを着ても顔が赤くなって

恥ずかしがっている姿はやはり今のアキトらしい雰囲気だった。

 

「・・・・アキト君もコスプレするんだ。」

「ははは、一体何のコスプレだい?」

アキトの意外な趣味だと思ったのだろうか?

ヒカルは輝いた瞳で、一方アカツキは冷ややかな目でアキトを見ていた。

イズミは・・・・見た目はいつもと変わらない。

 

「仕方ないだろう!!

サレナさんがこれ着ないとダメだって・・・・」

 

「はい!!

ブラックサレナ用のパイロットスーツを着ないと、私の高機動時のGに耐えられません。」

アキトが真っ赤になって弁明する。

サレナも、アキトを弁護している。

 

「へぇじゃぁその服には対G用の装備があるんだぁ」

「はいそうです。」

へぇーとヒカルがうなずいた時、全員のコックピットにウィンドウが現れた。

 

 

 

「ふっ、エステバリスのGに耐えられんとはまさに素人用の補助輪だな。」

突然現れたウィンドウには、黒い無精ひげを生やした男がいた。

 

「くっ、」

「・・・・我慢してくださいマスター。

これ着けないとマスター死んじゃいます!!」

一瞬スーツを脱ごうとしたアキトだったが、サレナに止められた。

このパイロットスーツは、復讐者が着けていたパイロットスーツをさらに

強化した物である。

この時代のアキトでもブラックサレナを操れるようにと用意された物だった。

何しろ急に用意されたため、外見はほどんど復讐者が着ていた者と変わらない。

そのため完全に浮いてしまうのは仕方がないことだった。

だがこのパイロットスーツがなければ今の時代の誰であろうと、

このブラックサレナを操ることは出来ないだろう。

 

「まぁいいよ、僕はサレナの本来の力をいうのを見てみたいからね。

さて・・・・、君の方もそうじゃないのかな?

でもその前に、何事もまず最初に名乗りをあげるのが礼儀って物じゃないかなぁ」

 

にっと対戦相手をにらむ。

交渉に長けたアカツキが様子をうかがう。

 

「ふん私は宇宙軍所属カリヤ大佐だ。

『レッドショット』の隊長を務めている。」

男は憮然とした態度でこたえた。

 

「俺達のことは知っているだろう隊長?」

リョーコがカリヤ大佐をにらみつける。

 

「ふんあのときのやかましいガキ共か・・・

覚えているぞ・・・・忘れるなというのが無理な話だ。」

一瞬苦い顔をしたカリヤ大佐だったがすぐに本来の顔に戻った。

 

 

「まぁつもる話も何だけどさっさと始めないかな。

僕もあまり暇じゃないんだよね。」

 

ふん、ほざいていろ!!

アカツキをにらみつけるとカリヤ大佐は演習の許可を出した。

 

 


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