サレナ 〜希望の花〜 第五話 Dパート

 

戦闘が終わり、軍との演習ではナデシコ側の大勝利に終わった。

それで今は反省会をかねて話し合い。

ナデシコには会議場もあるんだけど、めんどくさいなどの理由でブリッジにいた。

 

「ふぅ、向こうもこれで私たちの実力を十分理解したでしょうね。」

「まぁこちらの手の内を少しばかり読まれたかも知れないけどね。」

 

満足そうに胸をなで下ろすプロスに、エリナが冷たい一言をぶつけていた。

その言葉にまた顔にタオルを当て汗を拭くプロス。

 

どうみてもエリナがただの副操縦士だとは思えない。

すでにクルー達はただの副操縦士ではないだろうと分かっていた。

社長秘書だとまではまだ割れてはいないが・・・・

アカツキは・・・・・・もちろん怪しまれていた。

ただ、どこかのアイドル崩れのボンボンと思われていた・・・・

 

 

ブリッジのみんながエリナを疑惑の目で見つめる中、

正体を知っているサレナはエリナの行動を気にもしていなかった。

そのためあまりにもサレナの自然な態度にクルー達もアカツキとエリナの追求を

深くおこなっていなかった。

「あ・・・・そんなこと無いです。

あれ、まだ本来の10%ぐらいですから・・・。

それにあの演習は私はただ飛んでいただけですからね。

それに使っていた武器も演習用のものでしたし・・・・」

 

「ふーん専用の武器があるんだぁ。」

いつものように『さりげなく』質問するアカツキ。

(さりげなくを強調する理由は各自考えてください。)

 

「あ、エステバリス用の武器もいくつか持ってきましたよ。

設計図だけの物もありますが・・・・」

「へぇ、それは初耳・・・・」

アカツキはあの騒動の後にきたので、当然プレゼントのことなど知らされていない。

 

「はぁサレナ様がこちらに来られるときにコンテナごと持ってきた物で・・・・」

サレナの報告を聞いたアカツキの前に速やかに書類を用意するプロス。

クルーの目からはプロスの行動は、会長に書類を出すではなくて

ぼんぼんの気を引くサラリーマンに見えた。

 

 

「へぇ、これが・・・・

・・・・・

・・・・・・・・・って、おいおい!!

なんだいこの数は・・・・

データもあわせると100越えてるじゃないか!!

・・・・・・・

おいおい、飛んだ物好きもいたものだね・・・・」

明らかに異常な数に我が目を疑うアカツキ。

 

それもそのはず、リストには間違いなく企業のトップシークレット級の

データがこれでもかと詰め込まれていた。

本来ならこれを送った奴がいれば間違いなく、『間抜け』である。

(これを送ったのは・・・・未来のアカツキなんだけど・・・・)

 

これだけの技術があれば、新しく会社を始めれば1年も経たずに

ネルガルを越えることも可能である。

いや、なぜネルガルにこれほどの技術を提供したのだろうか??

ネルガルを引きずり落とそうとする企業ならいくつでも思いつくが、

そんなことをしてくれそうな企業はアカツキには全く思いつかなかった。

 

 

「はぁどうやらウリバタケさんはその制作をしているようで。

これだけの武器はさすがに一日で終わりというわけでは無いようで・・・・」

プロスはウリバタケがこの武器を制作しているだろうと思い、

エステバリスの修理が遅れたことを不問としていた。

 

「あぁ整備班の班長ね。

だからいないのか・・・・」

「えっと違うと思いますが・・・・」

プロスの思いこみは、サレナの一言で壊された。

 

「はぁ?なぜです。

彼のことですから、このデータを見れば飛びつくと思いますが・・・・」

ウリバタケにこのデータを見せれば、飛びつくのはこのナデシコにおいては常識である。

いやこれに飛びつかないのがおかしい、

飛びつかなければそれ以上の仕事をしているに違いない!

そう納得しようとしたプロスだったが、

 

「はぁまだウリバタケさんには武器のデータ渡してないんです。

あの人宛の荷物を見つけたらそれっきりで・・・・」

サレナのこの言葉で完全に目が覚めた。

よく考えてみるとサレナの持ってきた物はこのデータだけではない。

このデータ以上にウリバタケの気に入りそうな物があったに違いない。

 

「ふふ、私は新兵器の開発をしている物とばかり思っていましたよ。

ですから、仕事を休んでいるのも大目に見ていたんですが・・・・」

(まずいなぁ今のプロス君はマジだよ。・・・・・目が昔に戻ってる・・・・・)

プロスをよく知るアカツキは、プロスを極力視界からはずした。

 

********************

 

「ウリバタケさん失礼・・・・」

すっと部屋に入るプロス。

怒りにまかせ踏み込むわけでもなく、全く音を立てずに入っていった。

どうやら昔の癖が出ているようだ。

(プロス君このままマジで殺っちゃうんじゃないか??)

今のプロスならホントに殺しかねないとおもったアカツキは

ずっとプロスについていた。

 

「ふぁぁっはははは!!」

部屋の中にはやつれた顔で目がイッちゃってるウリバタケさんが

手を組んで立っていた。

 

「ウリバタケ・・・・さん・・・・」

視線で人を殺せるプロスの目がウリバタケを突き刺す。

・・・・・・が、当のウリバタケは全く気にしていなかった。

さすがは我が道を行くウリバタケ。

自分の趣味ならばたとえ暗殺者といえども全く恐れていなかった。

 

「あらあら、プロスさんそんなに怖い顔をして何かあったのかしら?」

さらになぜかイネス先生の姿もあった。

イネス先生と協力して何か作っていたらしい。

ウリバタケと同じくプロスの視線を全く気にしていない。

 

確かに殺気が走ったときは驚いたが、ウリバタケの余りの反応のため

プロスの殺気は一瞬で消えてしまっていた。

イネスが殺気に気がつく前に、プロスの殺気はウリバタケの笑い声に

どこか遠くへ飛んでしまったようだ・・・・・

 

「ふふふふふふ、とうとう出来たぞ!!」

 

「ウリバタケさん!!今まで仕事をせずに・・・・」

異常な事態に少しペースを乱すプロス。

そんなプロスを見ながらククッと笑うアカツキをプロスがにらみ返した。

 

「まぁまて今から見せるからな。

見て驚くなよ!!

・・・・

っと、サレナちゃんはいるか〜〜?」

全くプロスの殺気を気にしない(気がつかない・気がつけない)ほど

ハイになったウリバタケはどこかで見ているであろうサレナを呼んだ。

 

「はいぃぃ何か用ですか?」

すぐにサレナのウィンドウが出てきた。

さすがはプロスの隙をつくだけのことはある。

一瞬の間に現れた。

 

「よう、お前宛の荷物があっただろう?組み立てておいたぞ。」

ウリバタケは『サレナ&おまけにウリバタケ宛』の荷物を組み立てていたのだ。

それはウリバタケにとって武器よりも遙かに魅力的な物があったのだろう。

ほぼ今まで不眠不休で組み立てていたのだ。

イネスさんも協力していた辺り、かなりの大がかりな物らしい。

 

「はぁあの荷物ですか・・・・」

未来のアカツキ達の送る物など予想もできないサレナは

ウィンドウに?マークをいっぱいにしながら考え込んだ。

 

 

「おお、ちょうどいいところだなプロス。

ちょっとこいつを格納庫まで運んでくれ。」

今頃プロスを見つけたウリバタケが巨大な棺桶のような物を指さした。

 

「はぁ・・・・」

『実力優先・性格無視・・・・』この人選がどれほど無謀だったかを

今更ながら実感するプロスだった。

荷物をアカツキと協力して運ぶ姿は、今までのすごみはなく

中間管理職の悲しさだけが漂っていた。

 

一方アカツキは、愚痴をこぼしていたがにこにこしている辺り

結構この荷物の中身が楽しみのようだった。

 

 

 

格納庫

 

「さて、しばらくサレナちゃんはお休みしててくれよ。」

 

「ねぇウリバタケ、ブラックサレナ壊さない??」

 

「やめた方がいいんじゃないアキトくん・・・・」

 

「いやサレナがいいっていったから・・・・」

ブラックサレナのコックピット付近が取り出されていた。

アキトは反対したが、サレナの『ウリバタケさんだから、大丈夫ですよ』

との言葉で渋々承諾した。

 

・・・・・

 

・・・・・

沈黙の30分が経過しウリバタケが出てきた。

「終わったんですか??」

かなり心配していたアキトがウリバタケに詰め寄り終わったかを聞いた。

 

ウリバタケはブラックサレナの方を向いてから、

「ん?後イネス先生が最後の仕上げだ。

さすがに男がやっちゃぁサレナちゃんもいやだろうからな。」

と答えた。

 

「は?男だとまずいんですか?」

アキトは全然ウリバタケの言っていることが分からない。

 

「ふふっ、驚くなよ。

サレナちゃんがパワーアップするんだぞ!!

ふぁっははははははは!!!」

ウリバタケは左手を腰に当て右手でブラックサレナをさして

叫んでいた。

 

「え? エステバリスの強化??

うーん・・・・・

どっちかって言えば、整備は男の仕事じゃないですか??」

ウリバタケの言葉にますます混乱するアキトだった。

 

とイネスがが出てきた・・・・

 

「ふふふふふ・・・・・見てみるがいい。

これが男の浪漫!!

イネスさんが颯爽と歩く後ろで、なぜかスポットライトが照らされた。

(誰が用意したのか不明)

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!

 

『うぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜』

 

一瞬の間の後、歓声が辺りを包んだ。

 

イネスさんの後ろ、歓声の中心には黒い髪の女性が立っていた

 

・・・・・・・・・・そう、立っていたのだ。

 

 

ウィンドウ越しにしか見られないはずの女性が、実体を持って

目の前に立っていたのだ。

 

「ぬわぁはっはははは・・・・

美人のアンドロイド!! これぞ男の浪漫だ〜〜

 

当のサレナはしばらく何が起きたのか訳も分からなかった

・・・・・・真っ赤・・・・・・

しばらく立ってやっと事態を把握したらしい。

 

「これがみなさんからのプレゼントだったんですね・・・」

 

「ありがとう」

そうサレナがつぶやいた声は誰に対してだったのだろうか?

 

 


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