やっとナデシコは宇宙に出ました。

 

誰一人欠けることなく、です。

 

ただし、あの人以外、という条件付でですが・・・

 

もうすぐ、あの三人がナデシコに来るはずです。

 

もう一度進み始めた時間を戻すことはできません。

 

だから、私はもう迷いません。

 

いえ、迷えないんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

誰かのいない世界で

「いなかった」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらナデシコ。サツキミドリ二号、応答願います。」

 

メグミさんがサツキミドリ二号に通信を入れると

間髪いれずに緊迫した返事が返ってきました。

 

「おう、ナデシコか待ってたぜ。

これから最後まで残っていた俺達も脱出するからしっかり逃がしてくれよ。

じゃ、通信切るからな!!」

 

「ちょ、ちょっとサツキミドリ二号応答願います。

サツキミドリ!!・・・一体何なの。」

 

そんな突然の返事にメグミさんが混乱しています。

 

やがてメインモニターにサツキミドリが映し出されると

同時にその大きな構造物の外周部が無数の岩に分割され

放射状に散らばっていくのが映し出されました。

 

「前方、サツキミドリ二号に爆発を確認。

衝撃、ナデシコに・・・・来ます。」

 

 

 

 

 

ドオオォォォン!!

 

 

 

 

 

「ルリちゃん。ナデシコと周囲の状況チェックしてください。」

 

衝撃の直後にすかさずユリカさんが状況を確認しようとしています。

 

「了解、今の衝撃でナデシコ左舷のディストーション・ブレードに中程度のダメージ。

前方、サツキミドリ二号を再確認しました。

一部破損していますが健在です。」

 

「・・・解りました。ナデシコはこのままサツキミドリ二号と距離を取りつつ、

非難してきた人たちの回収にあたります。

整備班は、ナデシコの破損した個所に急行して修理にあたってください。

メグミさん、通達をよろしく。」

 

「えっ、は、はい。」

 

 

・・・・・サツキミドリ二号は確かに私の予言通りに木星蜥蜴に襲われました。

しかし、前回と違いサツキミドリにいたほとんどの人たちは

プロスさんが手配してくれたおかげで襲われる前に月に非難しました。

先ほどの通信していた人が恐らくリョーコさん達をナデシコに合流させるために

バックアップをしていた最後のグループの一人でしょう。

これで多くの人達が助かったはずです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

格納庫でムネタケを撃ち、サツキミドリの事を予告をした後、

私はプロスさん個人用のオフィスでプロスさんとゴートさんにムネタケを撃ったことが正当防衛であることを話し、

サツキミドリの人達を避難するように進めました。

 

・・・・・本当ならこんな回りくどい事をせずにムネタケは艦内の防衛システムでヤマダさんが撃たれるのを防ぎ

サツキミドリにはハッキングしてそこにいる人たちを避難させることもできたんです。

しかしそうせずに私が実質上ナデシコを運営しているプロスさんたちに見つかりやすく行動し、

サツキミドリのことを話したのは「ある疑問」をもたせるためでした。

 

―――― 数時間前 ―――――

 

「・・・・・おっしゃっていることは解りました。

しかし、どうしてサツキミドリ二号が襲われるのを知っているのですか。

説明していただけますかな、ルリさん。」

 

プロスさんの口から待っていた質問がでました。

後は私の考えたとおりに話しが進めていけば目的を達成できるはずです。

 

「ある人から情報を頂きました。」

 

「ホウ、それは・・・・

ぜひとも私もその方と面識を持ちたいですなぁ。」

 

・・・さすがにプロスさんも信じていないはずです。

 

胡散臭くなってしまいましたが、こうしなければつじつまが合わなくなってしまいます。

今、私はプロスさんやゴートさんに全てを話すつもりはありませんから・・・・

 

「それは恐らく無理だと思います。

なかなか人見知りの激しい方ですから。」

 

「ウーン、そうですか残念です。

リークしていただければそれなりの報酬をお渡しするつもりだったのですが。」

 

「・・・そこで私がある人から得た情報をネルガルに流す代わりに

もう少し私のわがままを聞いてもらえませんか。」

 

狙いはこれです。

私が経験して得てきた情報をプロスさんに売ることでネルガルに協力させて

計画が実行しやすくなるようにすることです。

 

「わがままだと、ルリ君。

君はテンカワ・アキトという架空の人物を我々に認めさせて

まだ我々に要求するするつもりなのか。」

 

ゴートさんがうんざりした顔で私を睨んでいます。

そこにプロスさんがゴートさんをとりなすようにして私に話し掛けてきます。

 

「まあまあゴートさん、それは前回のお話しで終っているはず、

それにもう新技術も頂いていますし、信頼性もありますよ。

それで、ルリさんのわがまま、とは一体何ですか?」

 

「全部で三つあります。

一つ目はナデシコが地球に戻ってきたときにある人を乗せること。

二つ目は私が書いた設計図を元にネルガルである物を作ってもらうこと。

そして最後に、情報収集の為に行動をある程度自由にしてもらうこと、です。」

 

この三つの条件を通らなければこれからの計画に支障が出てしまいます。

なんとしてでもプロスさん達に納得してもらわなければいけません。

 

「三つも要求があるのか・・・」

 

「ええ、でもこの条件さえ飲んでいただければ

かなり重要度の高い情報が入ってくると思うのですが?

・・・・悪い条件ではないと思います。」

 

「・・・・ムウ。」

 

ゴートさんが黙ってしまうと

話しが止まらないようにプロスさんが私に聞いてきます。

 

「ネルガルで作るある物とは何ですか。」

 

これも交渉術の一つなんでしょうか。

あまりの流れの良さにそんなことを感じてしまいます。

 

「新型のエステバリスです。

ネルガルの知らない技術も多く取り入れています。

もちろんその技術のノウハウもそのままネルガルに提供するつもりです。」

 

「そうですか。

では最後にナデシコに乗せる「ある人」とは誰ですか。」

 

「私と同じIFS強化体質の子供です。

今はネルガルの研究所で実験体扱いになっているはずですが・・・」

 

もちろんこれはアキトさんと一緒にユーチャリスに乗っていた

ラピス・ラズリという少女の、・・・・・いえ今は女の子のことですのことです。

早くあの研究所から出さなければ歴史通り北辰たちに連れ去られてしまいます。

 

それとハーリー君も呼ぶことも考えたのですがやめました。

彼もこの時代では6歳の子供です。

やはり両親のそばにいたほうがいいはずです。

 

わたしの話しを聞いてしばらくプロスさんは考え込むと

にこやかに私に言ってきました。

 

「解りました。ルリさんのわがまま、でしたかな?

それらを全て認めましょう。

サツキミドリの事を知らせてくださってありがとうございました。

後は私が何とかしますよ。今後も良い情報をお願いしますよ。」

 

「ミスター、いいのですか。

特に最後の条件はナデシコ運営の上で支障が出る可能性がありますが。」

 

「いえいえ、この情報はナデシコだけでなくネルガルにとっても重要な情報になりそうですし

何よりルリさんはまだ余裕があるみたいですから。」

 

にこやかに話していますが目が真剣そのものです。

「私はあなたの行動を全てチェックいました。」と、暗に言っているみたいです。

 

まあ、今回は見つかりやすく行動したのでチェックしやすかったでしょうが・・・

 

「・・・それでは、設計図のデータは追ってお渡ししますのでよろしくお願いします。

あ、それともう一つこれはあくまで希望ですが・・・」

 

話しを終えると私はお辞儀をしてプロスさんの部屋の出ました。

これで私の計画を実行するための条件が揃いました。

 

 

・・・これから数十分後にナデシコからサツキミドリに通信カプセルが射出されるのを確認しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナデシコが現状を維持し始めてからから数分後

サツキミドリ二号を脱出した人達を乗せた船やカプセルが横切っていきます。

 

 

「こちら整備班、あらかた修理できたぜ。」

 

ウリバタケさんが報告してきました。

今回ディストーション・ブレードに刺さっていたのはツールボックスだったそうです。

 

・・・後はリョーコさん達と合流するだけです。

 

 

 

 

 

ピッ

 

『エステバリスの機影を確認』

 

・・・・・来たみたいです。

 

3機のエステバリスが前を進み、後ろの1機を牽引しています。

この様子だと今回はヒカルさんとイズミさんも一緒のようです。

 

そして、リョーコさん達が乗った

4機のエステバリスがナデシコに着艦しました。

 

 

 

 

 

「それじゃ、行ってきま〜す。!!」

 

ユリカさんがパイロットから状況を聞くために

プロスさんとゴートさんを従えて格納庫へ行ってしまいました。

 

 

 

 

 

「あ〜あ、パイロットがどんな人達か見にいきたかったな〜」

 

「メグちゃん、それは仕方ないわよ。」

 

「そうですよ。もし、私たちまで格納庫に行ったらブリッジに

誰もいない状態になってしまうんですよ。」

 

「あの〜一応僕もいるんだけどな〜」(ちなみにフクベ提督は自室で待機中)

 

私達三人は周囲の状況を知るためにブリッジにつめていなければいけません。

 

 

 

 

 

ウオオオォォォオオオオォオォォォン

 

 

 

 

 

 

「えっ!一体なに」

獣の遠吠えのような音にメグミさんが怯えてます。

 

 

 

 

 

 

ウオオオォォォオオオオォオォォォン

 

 

 

 

「ちょ、ちょっとこれ何なの、ルリルリ」

 

「警報の類ではありませんよ、ミナトさん。」

 

「それはそうでしょうけど気味が悪いわ・・・・・」

 

 

 

 

 

ウオォオォォ・・・・オ?

             

               ピシッ!!

 

 

 

 

「今度は『ピシッ』いいましたよ。『ピシッ』って!!」

 

「ルリルリ!何が起こっているのかすぐに調べて!!」

 

無気味な音に二人はパニック寸前です。

 

私も気になるのでオモイカネと奇妙な音の発生源を調べます。

・・・・ここですか

 

「ミナトさん、音がどこから出ているか解りました。

メインモニターに出します。」

 

映し出されたのは凍りついているメカニックの人達と

ウクレレを弾いて薄笑いしているイズミさんでした。

 

『私は、マキ・イズミ。よろしく〜〜』

 

「なにこれ?」

 

「さあ?」

 

あまりの状況に呟いたメグミさんも

それに返事をしたミナトさんも理解できないみたいです。

 

 

 

・・・・オモイカネ一体格納庫で何が起こっていたの?

 

『パイロットの自己紹介のようでしたが』

 

ブリッジまで聞こえたあの音は何?

 

『整備斑の雄叫びです。』

 

 

 

格納庫からブリッジまで聞こえてくる雄叫びって一体

・・・・・・・・相変わらずウリバタケさんを始めメカニックの人達は非常識な人達です。

 

 

・・・それでオモイカネ、メカニックが凍りついている理由は?

 

『解りません。マキ・イズミが何か言った後に凍りついたようです。

言っていた言葉はなぜか記録できませんでした。』

 

 

 

・・・・・凍りついた原因はイズミさんの

「オモイカネでも本能的(?)にメモリするのを拒否した」ダシャレ、ですね。

 

イズミさんのダジャレに免疫がない、

もしくは耐性がない人が聞くとどうなるかここに実証されました。

 

 

 

 

 

 

 

プシュ!!

 

「・・・・オヤ、皆さんどうしました?」

 

プロスさん達が到着したみたいです。

この後再起動したリョーコさんがサツキミドリの状態を話し始めました。

 

内容は、サツキミドリ二号が木星蜥蜴の攻撃を受けたこと

その時既にほとんどの人達が脱出していたこと

マシントラブルで前回同様エステバリスを一機サツキミドリに置いてきたこと、です。

 

このことを聞いてユリカさんが発した命令は

やはり、サツキミドリに残されたエステバリスの回収でした。

 

「それじゃ行ってくるぜ!!」

 

「素潜りしてきまーす。」

 

「元モグラ・・・モト・・・素・・・素潜り(苦しい)。プッ、ハハハハ」

 

「俺が先頭だぞ!!」

 

順にリョーコさん、ヒカルさん、イズミさん、ヤマダさんがナデシコから出て行きました。

 

今回、テンカワ・アキトは、おやすみです。

エステバリスが4機しかないというのもありますが、問題はサツキミドリの内部に入るということです。

前回のジュンさんとの戦闘でもわかるように

ナデシコとの通信が取れなければエステバリスの動きが止まってしまうからです。

もっともそれを解決するための手段はありますが時間がかかってしまうので

結局、「おやすみ」になりました。

 

 

『あ〜!!おーきい真珠みーっけ!!』

 

『よし、それじゃこれを持って帰るとするか。

ナデシコ受け入れ準備よろしく。』

 

サツキミドリに潜ったリョーコさん達は

すぐに置いてきたエステバリスを見つけみたいです。

今回は何もない・・・・・

 

『ガリガリッ!!

           ドカッ!!』

 

・・・・あるみたいです。

 

『クソォ、一体なんだ。

ナデシコ、こちらスバル機だ。

置いてきたエステバリスと戦闘になった、そっちも警戒してくれ・・・・ザザーーー』

 

そう言うと常時繋がっていたエステバリスからの通信が切れてしまいました。

 

「いったい中でどうなっている。

レイナード君、通信はできんのか!!」

 

「ダメです電波が拾えません!!」

 

「フム、ここはナデシコをサツキミドリから離すべきだろう。」

 

「提督の言う通りナデシコはエステバリスがない丸裸状態。

確かに危険ですなあ。」

 

「ユリカ、どうする!!」

 

一人一人が自分勝手に意見を言始め

ブリッジがパニックなる寸前にユリカさんが混乱を制しました。

 

「ナデシコは現状を維持しエステバリスが帰還するのを待ちます。

また、敵に襲われるようならナデシコ直掩としてデルフィニュウムでアキト・・・さんに出撃してもらいます。

・・・・・異議のある方いらしゃいますか?」

 

「さすが艦長、凄いわね〜

やっぱり連合大学の主席は伊達じゃ無いって所かしら。」

 

私の隣でミナトさんが感心しながらそんなことを呟いています。

 

・・・私がアキトさんが他人であると言ってからユリカさんは完璧な「艦長」をしています。

私には結構無理をしているように感じるのですが。

 

やはりユリカさんには本当の事を言うべきなのでしょうか?

正直言って今のユリカさんを見ていると迷ってしまいます・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・メグミさん、周囲の状況は?」

 

「依然としてナデシコ周囲に機影なし、

同時にエステバリスのサツキミドリ脱出も認めれません。」

 

「解りました。引き続き周囲の警戒にあたってください。」

 

「了解。」

 

ナデシコの手足のようなエステバリスを通信という神経が麻痺して見失ってから

とても長い緊迫した十数分が経ちました。

ブリッジでの会話らしい会話はさっきしたようなやり取りが数回あっただけ・・・

それ以外は誰も言葉を発することなく沈黙を守っていました。

 

たくさんの人がいるのに誰もいないような静寂

私の知っているナデシコからとても想像できないような雰囲気です。

 

 

 

「エステバリスのスタンドアローンでの行動限界まで後数分です。」

 

「艦長、そろそろこの状態でもいられなくなってきたと思うが

他に何か手はないのかね?」

 

私の報告を聞いたフクベ提督がこのも潮時と考えたのか

ユリカさんに他の策を求めてきました。

 

「ありません。

それに私は、エステバリスが動かなくなる時間まで

ナデシコを現状のままにしようと思っています。」

 

「艦長!!

・・・それはあまりにも無策すぎませんか。

時間がたてばたつほど無防備な我々が敵に発見される危険性が増している筈だ。」

 

ユリカさんの言葉にゴートさんが驚いた様子で非難しています。

 

 

・・・確かにゴートさんが言っていることはもっともです。

 

リョーコさん達に限ってそんなことはないと思いますが

もしも、このままエステバリスが戻ってこなかったから

ナデシコは起動兵器を失い両腕をもがれた状態になります。

いくらグラビティーブラストという強力な牙があっても

バランスを失ったナデシコは木星蜥蜴と戦う戦力にはなりえないからです。

 

そして、戦闘能力低下するかもしれないほぼ丸裸の状態のナデシコで

何の行動もとらない・・・・

 

普通なら絶対にそんな危険なことはしないはずです。

 

 

 

「ゴートさん、私もこのままではナデシコが危険であることはわかっています。

でも、ナデシコは火星に行く戦艦ですよね。

そして、『エステバリスも一緒に』です。

もし、エステバリスがこの程度の事で戻って来れなくなってしまったら

火星に行くなんて絶対に無理です。

大丈夫です。

パイロットの皆さんの腕は一流のはずです。

きっと戻ってきますよ。」

 

「しかし!!・・・・・問題は今だ。

ナデシコに乗っている乗員全ての命を握っているのは

艦長、貴方だ。

そして現在、音信不通のエステバリスのフォローよりも

この空域を離脱しナデシコの安全を選択するほうがベターなはずだ。」

 

「ナデシコならしばらくは木星蜥蜴の攻撃も耐えられます。

でもナデシコがこの空域を離れたら

帰ってきた時にエステバリスのエネルギー回復が行えず

見殺しにしてしまうかもしれないんですよ。

それに私は、ベターよりベストのほうがいいです。」

 

「しかし、そのためにみすみすナデシコを危険な目に

合わす事はないだろう。」

 

ユリカさんとゴートさんがブリッジ上部で激しく討論をしています。

エステバリスが帰ってこないと仮定しているゴートさん

逆に帰ってくると決めて行動しようとするユリカさん

二人の意見が分かれるのは当然と言えば当然で会話は平行線をたどっていきます。

 

・・・・・しかし、どうもゴートさんの仮定はくつがえられそうです。

 

「エステバリスの機影を確認、機数は5。」

 

「何ッ!!」

 

「はて、通信の切れるまでの話しでは置いてきたエステバリスと戦闘になったはずですが・・・・」

 

その報告で驚くゴートさんの隣で

プロスさんが不思議そうにしています。

 

「通信も回復しました。

こちらナデシコ、エステバリス聞こえますか」

 

ピッ

 

『オウ、聞こえるぜ。』

 

『通信状態良好だよ〜ん。』

 

『キコちゃんの応援、きこエール、聞こえる!!

通信状態のリョーコ、通信リョウコー、通信状態良好!!

プッ!!アハハハハハハハハ』

 

『(ぼ〜〜〜〜)・・・・・・・・・・・・』

 

そんなせりふを言いながら映し出される4つのウィンドウ。

リョーコさん達三人は元気そうですが

なぜかヤマダさんだけは意識が朦朧としているみたいです。

 

私がもう一度機影を確認してみると

5機中2機からスラスターからの光が出ておらず

残りの3機に牽引されています。

 

そして三人がヤマダさんに愚痴をこぼし始めました。

 

『全くヤマダが無茶すっから手間取っちまったぜ』

 

『ホントホント、私なんかヤマダ君が特攻するのかと思っちゃたもん。』

 

『ヤマダ・ジロウ・・・・・決して長生きできないわね。(ハードボイルドモード)』

 

ある意味イズミさんの言ってることは当たってます。

何しろ本当なら既にこの世の人ではないんですから・・・・

 

『だ〜か〜ら〜俺はダイゴウジ・ガイ!!』

 

『『『五月蝿い!!』』』

 

はい・・・・・』

 

『とにかくこれからは無茶な行動をするんじゃねーぞ

いいな解ったな!!』

 

、ハイッ!!』

 

『リョーコちゃんまるで鬼教官みたいだよ〜』

『リョーコが教官・・・・血を見ずにはいられない。(ニヤリ)』

 

『テ、てめ〜ら一体どういう意味だ!!特にイズミ!!』

 

『あ、リョーコが怒ってる〜。』

『触らぬ神に祟りなし。クワバラ、クワバラ』

 

『もう十分触れてるわ!!』

 

こんな軽口(?)を言い合ってナデシコに帰還してきました。

これから何とかチームとしてやっていけそうですね。

 

 

 

・・・で、結局サツキミドリ内でどうなっていたかというと

 

置いてきた一機が前回同様デビルエステバリスになっており

リョーコさん達に同時に通信をジャミングし攻撃を仕掛けてきたそうです。

 

その攻撃をかわしたヤマダさんが真正面からタックルを仕掛けて

相手が怯んだ隙に後ろから羽交い絞めにしてあの独特の動きを止めたそうです。

 

しかし、デビルエステも必死に振りほどこうとして暴れたために他の三人が迂闊に近寄れず

取り押さえるのに時間が掛かってしまったそうで

その間ずっとヤマダさんはデビルエステから抵抗されて

何度も壁などにたたきつけられてしまい機体はその衝撃でスラスターが故障し

本人は先程の通信での復活までグロッキーだったみたいです。

 

最終的にはデビルエステを4人で取り押さえ暴走の原因である

エステを乗っ取っていたバッタを引き剥がしてエステを停止させたそうです。

 

 

こうして襲撃されたサツキミドリから予定通り5機のエステバリスを回収し、

被害を最小に収めたナデシコは当初の目的地である火星を目指し始めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、ミナトさん、メグミさん

次のシフトが早いので休ませてもらいます。」

 

「「ルリルリ(ルリちゃん)、ご苦労様。」」

 

そう言って私は次のブリッジ勤務のため

ミナトさんやメグミさんより早く休息を取ることになりました。

 

ブリッジを退出ししばらく私の部屋に向かって歩いていると

プロスさんが通路で待ち構えていました。

・・・一体何のようでしょうか

 

「・・・・何か御用ですか」

 

「ええ、・・・・サツキミドリのことで」

 

プロスさんが神妙な顔で話しています。

?・・・いまさらサツキミドリに何のようでしょうか

そこは既にナデシコのはるか後方に位置しているはずです。

 

「・・・・実はサツキミドリに最後に脱出した全員が

何者かに襲われ亡くなってしまいました。」

 

「!・・・そうですか。」

 

「せっかくルリさんに教えていただいたのに

その情報を生かしきれなっかのは痛恨の極みです。

一応、情報提供をしていただいたあなたには全てをお話ししようと思いまして・・・」

 

「・・・それはわざわざ、わざわざありがとうございます。」

 

私が落ち込んでいるとプロスさんが励ますように話し掛けてきます。

 

「そんな暗い顔をしないでください。

逆を言えばそれ以外の方は無事だったんですから」

 

「ええ、ですが・・・・」

 

「それとこのことは他言無用でお願いしますよ。

士気にも影響しますからね。」

 

「え、でもお葬式は・・・」

 

「〈ナデシコには目標以外に余計なことはさせない〉

このルリさんの希望が通りましてね

他で行ってくれるらしいです。」

 

「・・・・・・・」

 

・・・・私はボゾンジャンプのことを言ったつもりだったのですが

 

「私からはこれだけです。

あまり気を落とさずにしっかり休養してください。

では・・・・・・。」

 

 

・・・・・やはり思惑どうりに行かないことは予想していたつもりだったのですが

気持ちはそれを理解してくれていなかったみたいです。

 

「サツキミドリの死者はいなかった。」

 

これが歴史に残す私の青写真だったんですから・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――おまけ――――

 

「クーマクーマ、クーマクマ!!

 

・・・・・・ふう、エリナ君。あと幾つだい。」

 

そう言って僕はエリナ君に恐る恐る残りの葬式の数を聞いてみる。

全くこんな変わった格好を何度もさせられたら堪ったもんじゃないよ。

 

「あと37、ですわ。会長」

 

「そ、そんなに!!」

 

エリナ君がニコニコしながら僕にそう答える。

そんな膨大な量たった僕一人でするのかい?(汗)

 

「仕方ありません。全員が全て違う葬儀を希望していたんですから」

 

「だ、だったら他の重役達とかに振り分けられないのかい。」

 

ウン、我ながらナイスな考えだね。

普段僕にいけ好かない態度を取っている奴らに全部押し付けてしまおう。

エリナ君も奴らのことを嫌っているし、これならうまく逃げられるはずだ。

 

「無理ですね。

社内報で「会長直々に全て行う」と発表してしまいましたから・・・」

 

「全て」だって!!

通常の仕事はどうするつもりなんだい?

まさか、葬式の間にするなんてことないだろうね。(冷汗)

 

は、計ったなエリナ君。

 

「当たり前です!!

一体仕事をほったらかして昨日一日どこに行っていたんですか!!」

 

「ほったらかしたなんて心外だな、僕はちゃんと仕事をしていたんだ。

・・・実はある人をスカウトしていたんだ。」

 

そうそう、凄腕の用心棒だった人を、ね。

またこれが気が合いそうな人なんだ

お陰ですんなり契約することができたよ。

 

「ハイハイ!!(怒)

どうせその人って女性でナンパでもしていたんでしょう!!

とにかく、お葬式は会長に全部、取り仕切って頂きます。」

 

「そ、そんな〜〜」

 

エリナ君が僕を思いっきりこれ以上ないぐらいに睨みつけてくる。

こ、これは危険だ。ここは素直に葬式を終らすほうが賢明みたいだね。

はぁ〜、こりゃ一ヶ月残業確定だね。(涙)

 

・・・・・・・それにしても信用がないね、僕は(滝涙)

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

どうもです。F.Kです。

とりあえずアカツキを苛めてみました。

どうだったでしょうか?手ぬるいと思う方、申し訳ないです。

他の方を見習ってもっと激しくできるように頑張るのでご容赦を

それとアカツキがスカウトした凄腕の用心棒は次回、正体がわかります。

・・・・それにしてもゴートがよくしゃべる。

 

それでは6話「それでも私は」を読んで頂ける事を願って