こんにちわ、ルリです。

 

サツキミドリを通過し、皆さんはしばらくの間休息を取れそうです。

 

まあ休息と同時に次の戦いの準備期間でもあるのですが・・・・

 

私は今までの事で「あの人の穴を埋める」と言うことが

 

どれだけ大変なことか思い知らされました。

 

けれどそれが辛いとは思いません。

 

何よりもあの人のためになるのだから・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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誰かのいない世界で

「それでも私は」

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「ナデシコ周囲及び艦内、全て以上なし。」

 

定時報告ために私が声に出して確認を取ります。

こんな地球と火星の中途半端な空間に木星蜥蜴の大群がいる訳はないので

「形だけ」の緊張感のかけらもないものになってしまいましたが・・・

 

ちなみにブリッジにいるのは私だけです。

前回はメグミさんがいたので一人だけということはなかったんですが

通常勤務時間のブリッジにいる人員が一人だけってそうそうない事だと思います。

 

 

ブリッジのクルーは何をしているかというと

簡単に一言で言えば「全員サボり」なわけで

これほどナデシコがオモイカネに統括されていて

よかった、という気持ちになったことはありません。

 

それで皆さんの「サボり」理由は色々で

 

ピッ!!

 

『ゴメ〜ン。ルリルリ、今から急いでいくからちょっと待ってて』

 

「そんなに急がなくてもいいですよブリッジには私しかいませんから」

 

『ル、ルリルリ。もしかして怒ってる?』

 

「イエ、そんなことないですよ?とにかくお待ちしているので

どうぞごゆっくりブリッジにいらして下さい。」

 

ブチッ!!

 

・・・こうすればミナトさんが急いでくるはずです

 

ミナトさんは前回同様朝寝坊です。

違った点といえばさっきみたいに気付いたときに

急いで来る、ぐらいでしょうか。

 

 

『ふ〜、やはり緑茶は淹れたてがうまい。』

 

フクベ提督は自室で緑茶を堪能中みたいです。

もともと軍からの派遣なのでナデシコですることといえば

戦闘中にアドバイスをするぐらいなので

通常勤務中であればブリッジにいる義務はないのですが・・・・・

 

・・・余談ですがホウメイさんから聞いた話では、

提督は火星に着くまで部屋に篭り「利き茶」を繰り返し

ナデシコにあるお茶というお茶を全て制覇したそうです。

 

 

『いや〜、ルリさん申し訳ない。やはり今日もダメみたいです。』

 

『スマンがルリ君、我々がブリッジに復帰するまでの間、

艦を健全に運営して欲しい。頼んだぞ』

 

上からプロスさん、ゴートさんのネルガルのサラリーマン組からのお言葉です。

なんでも別室で今後のナデシコについての打ち合わせだそうで、

ここ数日、二人共ブリッジに姿を現しません。

 

・・・・まあ、結局私から見ればサボりなんですけどね。

 

何を話しているのか覗こうと思ったのですが

オモイカネの管理外で行われているらしくやめておきました。

無理やり覗くということもできたのですが、

それに気付かれ私とネルガルの関係が悪くなってしまうのを

覚悟して見るほどの内容とは思えなかった、

というのが私のやめた理由です。

 

 

プシュ!!

 

ミナトさんがブリッジに駆け込んで込ました。

私の予想よりもかなり早いです。

 

「遅れてホントにゴメン。

もう絶対に寝坊なんかしないから許して!!」

 

私を怒らせてしまったと思って相当あせってるみたいです。

 

「・・・・・」

 

ミナトさんの必死の嘆願を無視して

私は俯いて黙っています。

 

「ねえ、ルリルリったら

・・・・なんだったら今日の遅番変わるから、ねっ?」

 

「・・・・・・今日だけですか?」

 

私が怒気を含んだ声でそう答えます。

・・・せっかくミナトさんがシフトを変わってくれると言ってくれたので

もうちょっと粘ってみることにします。

 

「ウッ!!・・・・・・・じゃ、じゃあ一週間分で手を打たない?

ねっ、反省してますこのとうり!!」

 

私が俯いた状態からミナトさんを横目で見てみると

両手を合わせて頭を下げている状態で拝み倒そうとしています。

 

・・・潮時ですね。ちょっとした悪戯のつもりだったのですが

こんなにうまくいくとは思いませんでした。

 

「本当ですね!!良かった。

私、やりたいことが山積みで困ってたんです。

どうもありがとうございますミナトさん。」

 

私は顔をあげニコニコしながらミナトさんにお礼を言います。

 

「ル、ルリルリ、あなた怒ってたんじゃ?」

 

「えっ、何のことですか?

私はちょっと俯いていただけですよ。」

 

私は、白々しい受け答えでミナトさんを安心させます。

 

「ル、ルリルリ〜騙したわね〜

そんな悪い子にはこうしてやる。」

 

「ちょ、ちょっとミナトさんやめて下さい。」

 

そう言ってお返しとばかりに

ミナトさんが笑いながら私の髪をクシャクシャにしてきます。

 

前回ナデシコで一番お世話になったミナトさん。

私の「お姉さん」代わりになってくれた人。

血は繋がっていなくても私の「お姉さん」は、ミナトさんだけです。

そんな人を寝坊だけで怒ったり、嫌いになったりするわけないじゃないですか。

 

今回はミナトさんを悲しませることが起きないようにも考えてあります。

・・・だから、今度は幸せはになってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで他の人たちは?」

 

ミナトさんの反撃が終わり

私たち二人が落ち着いてしばらく経ってから

ミナトさんからそんな質問が投げかけられました。

 

プロスさん、ゴートさんは別室で仕事だそうで、提督は自室で待機中。

他に人達については今日はまだ確認を取っていません

 

「そうなんだ・・・まあ別に何してるか予想がつくからいいけどね〜」

 

・・・・そうなんです。

残りのブリッジメンバーはサツキミドリを出てから

ずっと同じ事をしているんです。

 

「でも規則ですから一応、今日も確認します。」

 

「フウン、ルリルリも律儀ね〜。

もっと要領よくやらないとジュン君みたいになっちゃうわよ。」

 

ジュンさんの様にですか・・・・確かに嫌ですけど・・・・

 

〈オモイカネ、サーチをよろしく・・・〉

 

ミナトさんがそう言っている間に残りの人たちのいる場所をサーチして

メインウィンドウに様子をを映し出しました。

 

『・・・・・・』

 

ウィンドウに映し出されたのはナデシコにあるごく普通の通路です。

人は誰もいません

・・・逆にいたら大変なんですけど。

 

「さ〜て、今日は誰が先頭かな〜」

 

隣にいるミナトさんは既に観戦モードに入っています。

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 

 

 

静かだった通路がだんだんと騒々しくなっていきます。

 

「おっ、来た来た。」

 

・・・ミナトさん本当に楽しんでますね、最初はあんなに呆れていたのに・・・

 

ドドドドドドドドドドド

     

     『アキト〜さん、アキト〜さん

       

        『何処ですかアキトさ〜ん』

         

           『テンカワ〜出て来〜い』

                     

                    ドドドドドドドドドドド

 

今日の先頭も艦長か・・・ということは今日で五連勝。

続いてメグちゃん、そしてシーズン途中参加のリョーコちゃんね。

ガンバレ〜!!・・・・で、最後が

 

タッタッタッタッタッ  『ユリカ〜仕事しないと〜』  タッタッタッタッタッ

 

「ジュン君ね・・・・・何かここまで来ると悲惨ね。

・・・・ルリルリ、前言撤回するわ。

あの人以外「律儀」があの域に達する事はないわ・・・」

 

・・・ミナトさんもそう思いますか。

私も絶対マネできるとは思えません。

ジュンさんのそれは才能ですから・・・・

 

「しかし、毎日毎日あの3人は飽きずにあんなことができるわね〜。」

 

私はとぼけるように答えます。

 

「やっぱり叫んでるようにアキトさんが関係しているんじゃないんですか。」

 

 

 

・・・そう、発端はユリカさんがテンカワ・アキトを探してモーションをかけようとしているメグミさんを見つけ、

行く場所、行く場所、全て先回りして妨害をしたのが始まりでした。

 

「ちょっと艦長、何で邪魔するんですか!!」

それに気付いたメグミさんがユリカさんに先回りされないようにスピードを上げ、

 

「メグミさんなんかには負けません!!」

ユリカさんがそれに対抗して更にスピードを上げて

後はパワーゲームならぬスピードゲームです。

 

「オイ、オメーら何やってんだ!!」

そして、後からリョーコさんが参入してきて更にレースはヒートアップしてしまい、

 

「アキト・・・さんに会って本当に別人かどうか確かめる。」

 

「アキトさんに会ってモーションをかけ、あわよくばお付き合いをする。」

 

「シミュレーションでコテンパンに負けたから、もう一度勝負する為に

アキトに会って挑戦状を叩きつける。」

 

・・・・という当初の目的を忘れてしまい三人ともレース三昧の日々を送っています。

 

例によってわざわざ親切に止めに行こうとする人はナデシコには乗っていません。

裏ではウリバタケさんを中心とした整備斑の人達が

これをネタに賭け事をしているぐらいですから。

 

・・・まあ、ナデシコらしいですけど。

それに止めに行っても返り討ちに合うだけですから、皆さんある意味利口かも。

 

 

 

 

 

ピッ!

 

『ブリッジ、こちらナデシコ食堂。

そろそろ出前を出すからあの三人を何とかしてくれないかい?

毎度の事だけどあの状態じゃこの子達をうかうか外に出せないよ。』

 

コミュニケのウィンドウに映し出されたのはホウメイさんです。

その周りにはホウメイガールズの5人が勢ぞろいしてます。

 

「あ、ハ〜イ、わかりました。

それじゃルリルリ留守番お願いね。」

 

そう言ってミナトさんがブリッジから出て行きました。

 

「と、いうことで後数分もすれば

出前ができるようになりますよ。」

 

苦笑しながらホウメイさんが答えます。

 

『そうかい? しかしルリ坊たちも大変だね。

あの連中と仕事場が一緒だから毎日あの騒動を止めに行かなきゃならなんだから。』

 

「止めに行く、では無く中断させに行く、ですよホウメイさん。」

 

『あーはっはっは!!そうかい中断させに行く、かい。

確かに毎日やっていることだし、そっちの言葉のほうがしっくりくるねえ。』

 

「それに実際に行っているのはミナトさんですから、

大変なんて事はありませんよ。」

 

『でも、その間はブリッジにいるのはあんただけになっちまうじゃないかい。

・・・私は十分大変だと思うよ。』

 

ホウメイさんが心配そうにそう話し掛けてきます。

 

「オモイカネがいるから大丈夫です。」

 

『そうかい・・・・・それで今日はどうするんだい?

あたしの方はいつでもいいよ。』

 

・・・そうですね。

今日は遅番でダメかと思っていたんですが、

ミナトさんにかわってもらえたので行けそうです。

 

「じゃあ、今日も昨日と一緒で午後の勤務が終ってから行きます。」

 

『わかったよ、それじゃ待ってるよ。

・・・・ほら、あんた達は、ぼ〜っとしてないで出前の準備をしな

 

ホウメイさんがそう返事をして

ホウメイガールズの皆さん声をかけたところで通信が切れました。

 

 

・・・・ホウメイさん達が出前を出すということは、もうすぐお昼ですね。

今日の午前中のまでで、どれだけ「例のもの」が進んだか

あの人に聞いてみましょう。

 

 

ピッ!!

 

『今回のレースの一位と二位は順にミスマル、レイナードだ。

予想どうりでガチガチなっちまったから今回は低配当だ。』

 

・・・・格納庫が特設の賭博場に変わっています。

昨日はこんなものは無かったんですが。

・・・いつの間に作ったんですか。

 

「ウリバタケさん、ちょっといいですか。」

 

『それと外れた券は必ず各自で責任もって処分しろよ!!

当事者やプロスの旦那に見つかるとやばいからな。』

 

・・・・全くこっちに気付いていませんね。

 

オモイカネ、音声のボリュームを上げて。

・・・そう、ウリバタケさんより大きい声になるくらい。

 

『それじゃ、明日のレースの賭けの受け付けを・・・

 

「ウリバタケさん」

 

うおっ!?・・・・なんだルリルリか、脅かさないでくれよ全く。』

 

「さっき普通に声をかけても気付いてもらえなかったものですから。

・・・それで例のもの制作状況を聞きたいんですが。」

 

『ああ、アレかい。

じゃ、物を見せるからこっちに来てくれ。』

 

そう言うとウリバタケさんは賭けの進行を他の人に任せ

格納庫でも人通りの少ない場所に向かって歩き始めました。

その後ろにウィンドウがついていきます。

 

・・・・はたから見るとかなり奇妙な構図です。

 

 

 

 

 

『しかし、ルリルリがこんなことをするなんて珍しいな。

こういう事はてっきりプロスさんかゴートさんがするとばっかりすると思っていたのに』

 

交渉のことを言うわけにはいきません

・・・・適当な理由で誤魔化しかありませんね。 

 

「プロスさんとゴートさんは忙しいそうなので

私にするように言ました。」

 

『まあ、二人共どこかに缶詰になっている。って話は聞いてるけどな・・・』

 

・・・最初、ウリバタケさんが作っている物にはプロスさん達は気付いていませんでした。

私が命令書を偽造してウリバタケさんに頼んだものですから。

気付いたのは・・・というより気付かせたのはサツキミドリの時です。

交渉の時に提示した条件に含まれているものとして・・・

そのため制作監督は私がすることになりました。

 

 

 

『さあ、着いたぜ。

こんなもんでどうだ?』

 

それは誰も知らないような場所にひっそりと置いてありました。

 

『まあ、調整もあるからこれで完成って訳じゃねえけど

スペックは予定通り目標に達してるぜ。』

 

「火星に着くまでには使えそうですか。」

 

『ああ、十分イケると思うぜ。

とはいってもあっちの配置換えの調整があるから

ギリギリになるとは思うけどな。』

 

私が見たことのあるものを背に自身満々に胸を張ってウリバタケさんが答えます。

 

「それともう一つの物はどうですか?」

 

今度は一変して苦渋に満ちた顔で私に答えます。

 

『ああ、あれか?

ハッキリ言ってそんなにはかどっちゃいねえ

・・・大体、設計図自体が完成していねえからな。

すぐにはできねえよ。』

 

「そこでウリバタケさんの腕を見込んで頼んだのですが・・・」

 

やはり無理ですか・・・・技術自体が実験段階だったので

さっきの物と同時にできるとは思っていませんでしたが・・・

 

『そんなことはわかってるよ、ルリルリ。

でもまあ、取り敢えずテストタイプなら作れるから

火星ではそれを使うことになると思うぜ。

・・・・アイツには悪いが覚悟するように言っといてくれ。』

 

「はい、わかりました。」

 

『それと固定式じゃないと無理だから

設計図通りにはいかなくなると思ってくれ。』

 

「ええ、細部についてはウリバタケさんにお任せします。」

 

・・・後は現場の臨機応変に頼るしかありませんね。

 

『そう言ってくれると嬉しいぜ。』

 

「それではまた明日、見に『ま、待ってくれ!!』

 

何でしょう?

大体のことは聞いたつもりだったんですが。

 

『いやあの、関係ないことだけどな・・・』

 

関係ない・・・

あ、さっきの賭けの事ですね。

 

「大丈夫ですよ。

プロスさん達には言いませんよ。

その代わり火星に着くまでに間に合わせてくださいね。」

 

『すまねえ恩に切るぜ、ルリルリ。

アレは俺の誇りにかけて間に合わせるから任しとけ。』

 

「はい。それでは」

 

 

 

 

 

 

「・・・ふう。」

 

通信を切った後思わず息をついてしまいしました。

意外と緊張してたみたいです。

どのくらい計画が進行しているか聞くだけで

こんなに不安になるなんて思いもしませんでした。

 

ウリバタケさんの方はほぼ順調ですか・・・

これなら火星でもうまくいきそうですね。

後は・・・・

 

「ハイハイ、みんなせめて午後だけはブリッジで仕事をしましょうね〜。」

 

ミナトさんがユリカさん達を連れ戻してきたみたいです。

 

「ぶう〜、そんな事言っても

ただブリッジの席で座っているだけじゃないですか。」

 

「そうですよ。

暇つぶしの雑誌も全部読み終わっちゃいましたし

私、もうやることはありません。」

 

ユリカさんとメグミさんが不満そうにそう言って

ミナトさんの後ろから続いて入ってきました。

 

「でも、ユリカは艦長なんだからブリッジにいてもらわないと何かあった時大変だろ。

それに、書類があるからそれもやってもらわないと・・・・」

 

続いてジュンさんがユリカさんをなだめてブリッジに入ってきます。

 

「じゃあ、私はいいですよね。

ブリッジでやることありませんし。」

 

「ダメよ、何かあったときの通信で情報収集する人がいないと大変よ。

・・・わかったメグちゃん?」

 

ミナトさんがメグミさんの行動を見事に封じ込んでいます。

 

「でも、リョーコさんはどうなんですか。

あの人パイロットだからまだ探してるんじゃないんですか

アキトさんの事。」

 

「それだったら大丈夫よ。

これからトレーニングするって言っていたから、

心配しなくても抜け駆けなんかされないわよ。」

 

そう言いながらミナトさんとメグミさんが自分の席に着きました。

上のデッキでもユリカさんが渋々座席に着いたみたいです。

 

「まあ、ブリッジならリョーコさんの監視もできますが・・・

でも、ほんとに私やることありませんよ。」

 

メグミさんが暇そうにそんな事を言っています。

・・・そこまで言うなら手伝ってもらいましょうか。

 

「じゃあ、メグミさん緊急時の通信マニュアルの確認をお願いできますか?

私、他の仕事で一杯一杯ですから、よろしくお願いします。」

 

「え、それって何万通りもあるんじゃないの。」

 

「ええ、でも暇つぶしには最適ですよ。」

 

暇つぶしも何もオモイカネじゃなければ何ヶ月もかかってしまう情報量です。

これでメグミさんの口から暇なんて言葉は聞けなくなると思います。

 

「良かったわね〜、メグちゃん仕事ができて

これで暇とはおさらばよ。」

 

「そんな〜、ミナトさんも手伝ってくださいよ。」

 

「や〜よ、メグちゃんから借りたこの雑誌まだ読み終わってないもの。」

 

そう言ってミナトさんは本を読み始めました。

メグミさんも最初はブツブツ言っていましたがしばらくしてから諦めて仕事を始めたみたいです。

上でもユリカさんとジュンさんが書類を片付けています。

 

私はオモイカネとエステバリスの戦闘プログラムを組み直しています。

前回のプログラムの弱点、つまりオモイカネがサポートできない通信範囲外でも行動できるように

自立型プログラムへとリプログラムします。

 

それとリプログラムする前に通信範囲外の戦闘の原因を調査しましたが全く解りませんでした。

そして、もう一つの手掛かりであるエステバリスの通信ログも綺麗に消えていました。

 

・・・不自然です。

あまりに綺麗に証拠が消え過ぎています。

ムネタケからナデシコから取り戻したときも・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、ミナトさんお願いします。」

 

「はい、ルリルリお疲れ様。」

 

私の代わりに遅番に就いてくれるミナトさんに挨拶をして私はブリッジを出ました。

やっと今日の勤務時間が終りました。

さすがにちょっと疲れましたがまだ私にはやることがあります。

 

「次の注文は・・・ルリ坊かい、約束どうり来たね。」

 

私がブリッジから向かった先は食堂です。 

ホウメイさんが厨房から私を見つけてくれたみたいです。 

 

「もうちょっと待ってな、もう少しで手が空くから」 

 

そう言いながらホウメイさんは手早く注文された料理を作っていきます。 

その手つきがアキトさんに似ていて思わずあの頃を思い出してしまいました。 

私とアキトさんとユリカさんの三人で屋台のラーメン屋をしていた頃を・・・ 

 

「待たせたね。今日は何を作ろうか?」 

 

私はホウメイさんから料理を習っています。

アキトさんが戻ってきてまたラーメン屋を開くときに

あのチャルメラしか吹くだけしか手伝えないなんて嫌ですから・・・・

 

「そうそう、なかなか良くなってきたね。」

 

私が材料をフライパンで炒めていると

後ろからホウメイさんが誉めてくれました。

これなら食堂で簡単な調理を手伝えるそうです。

 

「前回に比べてだいぶ良くなってきてる

この調子でいけばすぐにうまくなるよ。」

 

私の作った具の大きさが不揃いのチキンライスを味見してホウメイさんが感想を言ってくれました。

私も味見をしましたがホウメイさんのそれとはかなり味が違いました。

それでも一応、食べられるような物ができたと思います。

 

 

 

 

 

アキトさんは今ナデシコにはいません。

・・・・いませんがそれでも私は

・・・・それでも私はあの人のためにできることをしていたいんです。

 

 

アキトさん。

アキトさんならこのチキンライスを味見してなんて言ってくれますか。

 

 

 

 

・・・・感想、待ってます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オモイカネ航海日誌

 

 

 

私は、ND-001ナデシコの統括AI「オモイカネ」。

今回私はルリさんに頼まれ

パイロットのヤマダ・ジロウという人物を重点的に観察している。

 

私の行動を人によっては、監視とか、ストーキングなどというかもしれないが

私にとってルリさんの「お願い」は絶対最優先の物で

余程の事が無い限り「拒否する」ということはできない。

それに何でもこの観察には正当な理由があるそうだ。

 

「時空の復元力があるかどうかを確かめる。」

 

ルリさんの話しでは本当ならヤマダ・ジロウは既に死んでいるらしい。(?)

そのため時空というモノが本当の歴史に近づける為に

彼を何かの事故で死亡させ、歴史を修正する、という可能性があるらしい。

それを防ぐ為に私がこうしている訳だが・・・・

 

―――AM7:00

 

 起床。

 

今日も爽やかな・・・・朝ではないようだ。

何処となく頬がこけているし、どこか辛そうな顔をしている。

 

そして何より

どうしてシミュレータールームで寝ているんだろうか。

・・・AIの私には理解不能だ。

 

今までプライバシーの関係で16時間しか

観察をしなかったが(もちろん常時居場所は確認していた)

今日からは24時間必要のようだ。

・・・とにかく観察を続けよう。

 

―――AM7:37

ヤマダ・ジロウ 自室

 

朝食を食堂で済ませ自分の部屋に戻ってきた。

どうやら彼は疲れをとるために少し眠るようだ。

 

―――AM9:13

 

 再度起床

 

疲れが少しは取れたのか顔に精気が戻ってきたようだ。

しばらくするといつものようにアニメ鑑賞を始めた。

どうやら彼は、このアニメの熱狂的なファンらしい。

 

 

―――AM9:27

 

アマノ・ヒカル 入室

 

同じパイロットのアマノ・ヒカルがヤマダ・ジロウの部屋に入って来た。

彼女は彼の持っているディスクプレイヤーを借りる為にやってきたようだ。

 

二人は「ゲキガンガー3」について話し始めた。

どうやら、このアマノ・ヒカルもこのアニメに詳しいようだ。

話がどんどん展開し、ついにはアニメ談議になる。

 

「そうだヤマダ君、今度このアニメ見てみない?」

 

アマノ・ヒカルが持ってきたディスクをプレイヤーに差込み

ディスクの情報がプロジェクター用の壁に映し出される。

先程のアニメと一緒でロボットが出てくるようだが

こちらの方が現実に近くリアルにできているようだ。

ナデシコのシチュエーションと似ている・・・・・

題名は「エルダム」だそうだ。

 

「熱血が足りない。」

 

・・・これがヤマダ・ジロウの感想だった。

結局この後、またしばらくゲキガンガーの話をして

彼女にディスクプレイヤーを貸し出したようだ。

 

 

―――PM0:48

 

 昼食

 

朝食同様食堂で昼食を取った。

自室に戻る途中、彼はスバル・リョーコと遭遇する。

そして、機嫌の悪い彼女に文字通りヤマダ・ジロウは首根っこを掴まれ

シミュレーションルームへ連行され、半ば強制的に戦闘訓練を付き合わされた。

 

 

―――PM7:12

 

訓練終了

 

スバル・リョーコがすっきりした顔でシミュレーションルームから出ていった。

ヤマダ・ジロウは・・・ボロボロだった。

 

どうやらフィードバックレベルを最大にして訓練をしていたらしい。

普通の人間なら一方的に攻撃を受けていたら一時間も持たずに失神するのに

彼は約六時間攻撃を受け続けても、まだ意識があるらしい。

 

・・・・骨折した時の回復の速さと時いい、時々彼が人間とは思えなくなる。

 

ここでいつもは観察が終了するのだが今日は続ける。

 

―――PM7:23

 

マキ・イズミ ライブ開始

 

ヤマダ・ジロウがシミュレーションルームでしばらく休んでいると

マキ・イズミが私には理解不能な格好で入ってきた。

 

「今日のネタも新鮮だよ〜」

 

そう言うと彼女は何か言い始めたが私には理解できない。

これ以上聞いているとバグが生じるため一時観察を打ち切る。

 

 

―――PM10:57

 

マキ・イズミ ライブ終了

ヤマダ・ジロウ 就寝

 

マキ・イズミが満足そうに部屋を出て行った。

ヤマダ・ジロウは・・・精神的にアブない状態になっていた。

 

彼は体力的にはタフでも精神的には弱かったようだ。

体が硬直し、髪の毛は真っ白になり瞳孔も開ききっている。

どうやら脈もなさそうだ・・・・仮死状態らしい。

 

 

・・・推察するに昨日もこのような状態になっていたのだろう。

しばらく経ったが回復の兆しが全く見えない。

 

今日はこのままの状態で自ら蘇生してこなかった。

 

 

・・・とりあえず、この日の分の記録は入力し終わった。

次の日の分の入力に移る。・・・・

 

・・・尚、ヤマダ・ジロウはこの生活をしばらく繰り返していたのを追記しておく。

 

 

 

 

 

 

「オモイカネ今日もご苦労!!」

 

・・・・・あなたもご苦労様です。

 

 

 

 

 

                          

B part へ続く

 

 

なかがき

 

どうもです。

ぺースを早くすると言ってこのありさま・・・・

本当にスイマセン。(核爆)

 

前回予告した用心棒の正体はBpartで書こうと思います

今回は、ルリパートということで・・・・スイマセン(汗)

それで話を分割する時に自分は「その1、2、3〜」は同じ場面の続きを

「A、B、C・・・・part」の時は違う場面にしようと思います。

突然スイマセン、ヨロシクです。

 

最後に「こんなルリさんは好きですか?」(某宣伝風に(爆))

いや何か最近違うルリさんが流行っているみたいなので(ボソッ)・・・・・

 

それではBpart「However,we」を読んで頂ける事を願って

 

 

 

 

代理人の感想

 

やっぱ違和感があるな〜(爆)。

ちなみに「オリキャラの使用許可は誰に取る?」と言う話ですが、

基本的に時ナデ本編に登場するキャラはBenさんに、

それぞれの投稿作家さんのキャラはそれぞれの作家さんにメールを出しましょう。

業務連絡でした。