機動戦艦ナデシコ

空色の道標 プロローグ



















西暦2195年10月1日。
突如木星側宙域から現れた未確認艦隊――後に木星蜥蜴と呼ばれるソレと、
地球連合宇宙軍第一主力艦隊との間で大規模な戦闘が行なわれた。

その最中、火星最大の都市であるユートピアコロニー上空にて
二機の人型機動兵器による激しい戦闘が繰り広げられていた。

「お前は・・・っ、何で、何でお前がそこに居るぅっ!?

『決まってる・・・こっち側に売られただけさ、アキト』

燃え上がる街。
次々と落とされていく軍の機動兵器。
生き残った火星の住人を逃がす為に撃ち出されるシャトル。
それらを背にしながら、空色のエステバリスのコクピットに座る
銀髪黒瞳の青年『テンカワ・アキト』は
複雑な感情のこめられた雄叫びを上げる。

『俺の目的は知ってるだろう? だから、何処でも良いんだよ。居場所なんて』

灰色の人型機動兵器のパイロットからの通信に、僅かに顔を歪めるアキト。
エステバリスに酷似しているのはエステのデータを利用して造り上げられた物だからだろう。
そうしている内にも激しい攻防は止まず、互いに次々と繰り出される攻撃に
半ば停滞の様子を見せ始めていた。

『アキト! 聞こえるかアキト!!』

『返事をして! アキト!!』

「ガイに・・・イツキか」

通信機から聞こえる親友二人の声。
恐らく音声のみを伝える小型の通信機で呼びかけて来たのだろう。
アキトは場違いだとは思いながらも、
死と隣り合わせの状態で小さく苦笑する。

『アキト!? 今何処だ? 早くシャトルに乗れ! 時間が無えぞ!!』

「スマン、ガイ。眼の前に厄介なのが居てな。
時間までにシャトルに戻れそうに無い。
どうせだからこのままシャトルの護衛をするさ」

『そんなアキト!』

通信機越しに聞こえるイツキの悲痛な叫び。
その途端通信機の向こう側が騒がしくなり、
なにやら言い争う声が聞こえてくる。

アキトを助けに行くんだ、離せぇーッ!! 仲間のピンチを救えないで・・・っ!
親友一人救えなくて正義のヒーロー名乗れるかよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!

恐らく自分を助ける為に飛び出そうとするガイを
周囲の人間が押さえ込んでいるのだろう。
時折何かを殴るような音や、物が崩れ落ちる音が響く。

くそぉぉぉぉぉぉぉっ!! アキトオオオオオオオオオオッ!!!!!!

お願いだから・・・戻って来て、アキト・・・! まだ、私は貴方と話したい事が一杯ある・・・
一緒に行きたい場所も沢山ある・・・貴方に、伝えたい事も、あるの・・・だから、戻って来て、アキトォ・・・・

血を吐くようなガイの叫びと、今にも崩れ落ちそうな声でのイツキの懇願。
そんな二人に対し申し訳無さそうな表情を浮かべながらも、アキトの動きは鈍らない。
襲い来るミサイルをライフルの掃射で撃ち落し、近くに来たバッタに良く似た
黄色の小型機動兵器をナイフ一本で叩き斬る。

「大丈夫だ、イツキ。きっとまた会えるさ。
ガイ、イツキとシャトルの事は任せたぞ!」

『・・・シャトルの事は引き受ける。だがなっ!! イツキはお前が守れ!!
これだけは、絶対に引き受けねえぞっ! だから、だからっ・・・!!

「・・・シャトルのパイロット、聞こえるか?」

ガイとイツキの通信を切り、シャトルのコクピットへと繋ぐ。
こちらは音声だけでなく映像も繋がり、開いたウインドウに
精悍な顔付きの、熟練者のみが纏える空気を持つ男が映し出された。

「準備は出来ているんだろう、早く出発しろ」

『しかし・・・君は・・・』

「俺が選んだ事だ。気に病むな・・・早く行けっ!!」

『すまない、感謝する。・・・今度会った時は一杯奢らせてくれ』

「俺は未成年だ」

『気にするな。私が許す』

「・・・実は弱いんだ」

『それは楽しみだ』

最後に互いに苦笑し、通信を切る。
それと同時に空色のエステの背後にあったシャトルが浮上を始め、
見る見るうちに空の彼方へと消えていった。

『別れの挨拶は済んだか?』

「ああ。だがこれは別れの挨拶じゃない、再会の約束だ。
俺は生きてここから脱出する。そして、もう一度あの二人に会うんだ!」

『確かに不可能じゃないな、お前なら。だがそれも―――』

敵機動兵器の深紅のモノアイが鈍い輝きを放ち、
ゆっくりとジェネレーターの出力を上げていく。

『俺に殺されなければの話だ!!!』

「当然だ! やってやるさ!!!!」

そして、空色と灰色の機動兵器は
熾烈な争いを繰り広げながら戦いの空へと消えていった





この十分後。
いまだ戦闘の続くユートピアコロニーにチューリップが落下。
その場に居たもの全てを巻き込んで、ユートピアコロニーは消滅した。





後に第一次火星大戦と呼ばれるこの戦いは、
こうして連合軍の惨敗という形で幕を閉じる。

























後書き

作者:ども、こんばんわ。作者のFOOLデス。

レニス:進行補佐のレニス・エルフェイムだ。・・・所で、この話は一体・・・?

作者:うむ。旧空色の道標は第一話でも言っていた通り、
    行き当たりばったりだったからな。詰まった。

レニス:オイ(汗)

作者:でもだ。書いてる内に色々とプロットが出来てきたからな・・・
    勿体無いし、書きたいし、どうせだからちゃんと考えて最初から書こうかと思って。

レニス:これ読んだだけでも解るが・・・かなり違うな。もしかして、俺の出番ナッシング?

作者:おう。オリキャラの殆どが削除される。・・・だって死にキャラ何人か居たし(爆)

レニス:・・・オリキャラって何人残った?

作者:完全オリジナルは二人。半オリジナルは三人かな。

レニス:半オリジナルはアキトとイツキと・・・後一人か。

作者:出てくる前に詰まったからね〜(遠い眼)

レニス:削ったからには増やすなよ・・・?

作者:ぜ、善処します(汗)

 

 

代理人の感想

プロットを考えて書くのはいい事です。

と、言うか最低限のそれを考えないで書いてもあんまりいい結果にはなりません。

そう言う意味では10話分をリセットして書き直しを始めたFOOLさんの決断は評価に値すると思います。

 

まー、何気に銀髪のアキトに妙な危うさを感じますが、そう言うわけで次回に期待しましょう!(オイ)