「すいませ〜ん、こちらの補給物資のチェックおねがいします。」

「はいはい・・・おやこれは。いいですよ、倉庫の片隅に置いといてください。」

「あれ?中身のチェックはいいんですか?」

「ま、危険物ではないですし・・・・中身を確認すると彼女たちに怒られますんでね。」


三軍神参上!

第三話


Z・・・・・ZZZ・・・・ZZZZZ・・・・・・・はっ!?

どうやら着いたみたいだな、俺は木星圏ガウメニ・・・なんだっけ?まあいいや・・・俺は木連軍の大島克明少尉だ。今、俺は狭いダンボールの中に居る、何故かと言うと、ナデシコに潜入するためだ。

機体の修理やデーター収集や何やらでしばらく暇なため、情報収集を兼ね、単身敵艦に潜入したわけで・・・でもこんなお決まりの手段で潜入できていいのか?一応ココ軍艦だろ?

搬入時に見つかるのを覚悟で適当なダンボールに入ったんだが・・・まあいい、俺はポジティブシンキングだ。みつかんなきゃ結果オーライってことで、周りも静かだし出るか。

ごそごそ

「よっと」

どうやら倉庫みたいだな、気配は・・・ないか。そこで俺は自分が今まで入ってたダンボールの荷物に気付く、・・・なんだ?ロウソク?しかも低温?こんなもんSM以外に使用法あんのか?宛先は・・

『同盟』?なんの?風俗の?いやいくらなんでも戦艦にはないよな・・・

カラコロカラコロ・・・

!やばい、人の気配だ!




物陰に隠れていると、台車を引いた少女が二人入ってきた。二人とも金色の目、透き通るような白い肌、かなり上質の青田だ・・・十年はかかるか・・・。小さい子供のほうが俺の入ってたダンボール
に駆け寄る。

「ルリ、これかなぁ?」

「どれどれ・・・あ、これは違いますね。今日はアキトさんではなく『組織』が対象ですから・・・・あ、こっちです。」

そう言いながらツインテールの髪の少女が別のダンボールに手をかける、

「わ〜い、アイアンメイデンだぁ!」

「やっときましたか。でもこれは対ハーリー君用なのですが・・・」

「ハーリーまだ逃げてるもんね。」

「まあ、そのうち捕まるでしょう。ラピス、そっちを持って下さい。」

ガタン

                        カラコロカラコロ・・・・

二人の少女はアイアンメイデンを持って出て行った・・・え〜と、まず解ったのは、あのロウソクはアキト・・・すなわち戦神用だったのか・・・ロリコン+アリスコン+SM・・・・人としてやば過ぎるだろ・・・・

戦神は強い・・・・人は何かを捨てることで強くなる・・・捨てすぎだろ・・・あとハーリー?・・・専用処刑道具持ち?・・・どんな重犯罪者だ?






俺はその後、倉庫にあった制服のスペアを拝借し、今、格納庫に居る。幾体もの機体が並んでいて、中々壮観だ。諏訪に噛まれた奴や、最初一人で突っ込んできた馬鹿も、ほぼ修復されてる。

メカニックの腕も一流のようだが・・・なぜ一人も居ない!?その代わりに、なんで血の跡がそこらじゅうにあるんだ!?この血塗れの消火器やスパナは何!?ジェイソンの群れでも来たのか!?

・・・・まあいいや、前も言ったが俺はポジティブシンキングだ、おかげで機体がゆっくり見れる、ヨシとしよう。おっ!これが『ブローディア』か・・・中々近くで見ると荘厳な物がある。ま、近い日にぶっ壊すけど、

ヴォン・・・

ん?今、眼が光ったような・・・まあいいや、今までの怪奇現象に比べれば、こんなの気にもならない。今の精神状態なら、たとえテレビから変なのが這い出てこようと、冷静にロメロスペシャルでギブ取れるね・・・・何言ってるんだ俺は?





さて機体も十分見たし・・・ん?・・・便意が・・・トイレ、トイレ・・・・・あった。え〜と大だから個室だな・・・

ガチャ

個室を開けたら、中から何かが出てきた!

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

バキッ

とりあえず殴り飛ばすと、

ドガッ

ピクピク・・・

壁にふっ飛び、何かは痙攣し始めた・・・!血塗れのガキ!やべえ、幼児虐待!俺の輝かしい経歴(自称)にでっけえ傷が!

「あうあうあうあう・・・・」

ガキは何か言いたげにしている・・・・どうも出血の原因は俺が殴り飛ばした傷じゃないみたいだ。何で血塗れでこんな所に?かくれんぼか?う〜ん、この状況で俺がすべきことは・・・

「遊びもいいが・・・・無理にも限界がある、お兄さんが医務室につれてってやろう!」

ブンブンブンブン・・・

ガキがそのセリフを聞いたとたん、首を激しく横に振る・・・・首の骨もやったか?こりゃやばいかも・・・・

「いや、俺も殺人犯になりたくないから・・・・よっと。」

ガキを抱え、医務室へ向かう。・・・便所に行き損ねた・・・・






あ〜すっきりした。やっぱ我慢は良くない・・・・さっきのガキはどうなったのだろうか?なんか医務室に行ったとたん、金髪の少しトウが立った医者のおねーさんにどっか連れてかれたし・・・なんか遠くで、

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁん』だの『ハーリー君・・・君が逃げ延びるのがせめてもの希望だったのに・・』とか『もぉ、せっかくハーリーのために注文したヤツ来たんだから・・おとなしくして!』や『それ処刑道具じゃないか!流石に・・・・』

  ガコン
          グサ!

等の聞かないほうがいい音が聞こえたような気がする。・・・もしかして俺が連れてかなきゃ逃げ延びられたのか?・・・まあいいか、気にしたら負けだ、冥福ぐらいは祈るが。

あっ、いい臭いが・・・出すもん出したから腹が減ったな。過去の些細な過ちは忘れて、飯でも食うか・・・





ガツガツガツ・・・

      ゴクゴク・・・・

                     カタン。

「あ〜美味かった!」

この飯の美味さ、反則だろ。こんな美味いもん食ってりゃなぁ・・・ナデシコ強いに決まってるよな。

「そこのあんた。」

シェフっぽい服を着たおばさんが俺に声をかけてくる。

「良い食いっぷりだねぇ。ひょっとしてろくなもん今まで食ってなかったのかい?」

「ええ・・男四人の貧しい食生活を送ってまして・・グスッ。」

「おいおい、男が泣くんじゃないよ・・・しょうがないね・・なんか一品おごってやるよ。」

「ほんとうですか!?」

「ああ、あんたいい食いっぷりするしね。気にしなくていいよ。」

うわ〜すげえイイ人だ!これを見たら『悪の地球人』なんて消し飛ぶね。俺は、はなっから信じてないけど。

「じゃあ・・・ラーメンお願いします。」

「あいよ!テンカワ!ラーメン一丁!」

「はい!」

・・・・ん、テンカワ?どっかで聞いたような・・・まあいいや、飯の前に無粋な記憶は抜きだ。

「おまち!」

ラーメンが来たな・・・・おお〜うまそう・・・かおりからしてもう・・・

「あの・・・そんなに食べたいなら早く食べたほうがいいですよ。」

ラ−メンを持ってきた兄ちゃんが俺に声をかけてくる。

「いや・・・ヨダレたらたらですし。」

!?ジュル

いけね、ヨダレが駄々漏れだったか!いや〜しくったわ、さっさと食うべ。


ズルズルズル・・・・

                                      ゴクン。

「美味い!」

「ありがとうございます。」

ふと見ると、俺の声を聞いた兄ちゃんが嬉しそうな顔をしている、いい笑顔するな。

「礼を言うのはこっちのほう、いや〜タダだという事をさっぴいても絶品だ!」

「いや、お客さんが料理を食べていい笑顔をしてもらえば嬉しいですから。」

くう〜、いいこと言うなぁ。料理人の鑑だ。

「ゆっくり食べて下さいね。」

そう言い残し、兄ちゃんは厨房へ行った。いいあんちゃんだなぁ。

さてと、ゆっくり味わうとしよう。







飯を食べ終え、俺は今、ひとけの無い通路にいる・・・もういいかな?

「子供とヤクザが一緒に生活してんのは、教育上良くないと思うんだけど。」

それを聞き、通路の陰から黒ずくめのヤクザがでてくる。・・・ホントにバラエティに富んだ船だな。

「俺はヤクザじゃねえ!まあいいか・・・いつから気付いてたんだ?」

「ん〜ガキを医務室に運んでたときぐらいからかな。俺はいつばれたんだ?特に怪しい行動はとってないつもりだけど?」

「「ディア』と『ブロス』が通報してきた、格納庫に怪しい奴がいるってな。」

「?格納庫に人の気配は無かったぜ、血だまりはあったけど。」

「・・・・血だまりの方は気にするな。まぁ・・いたんだよ、『仲間』がな。それに、あんた食堂で『男四人の生活』とか言ってただろ?どう考えても戦艦の中であの表現はおかしいぜ。」

「なるほど、次回から気をつけます。」

そう言い残し、この場を去ろうとすると、

「周りは囲んである、そっちは展望室で行き止まりだ。たいした事はしてねえが不法侵入の罪でおとなしく来てもらおうか。」

う〜ん、このヤーさんなかなか用意周到だ。でも・・・

「俺は諦めが悪い!」

そう言い放ち、俺は展望室へ駆け出した。

「・・・にがさねえよ。」

ヤクザが追ってくる、怖い・・・まるで借金の取立てのようだ!

俺は恐怖を覚え、スピードを上げた。



シュン

自働ドアが開くと外が見える・・展望室か。それを確認すると、ポケットから自前の鋲を出しガラスに投げつけた。

ピシピシピシ

ガラスにひびが入る。よし、思ったより固くない。いける!

ジャラ・・・・

俺は鋲で鎖を作り出し、天井に打ち込んだ、そしてジャンプしてターザンロープの要領で飛びつく。

「なに!?」

追いついたヤクザが驚いてる、この異常だらけの戦艦にいて驚いてもらえるなんて・・・・光栄だな。

ガシャン!

タ−ザンキックでガラスを蹴り破り外に飛び出し、その勢いで俺は宙に舞う・・・あれ?地面が見えない?しまった!もう出航してたか!寝過ごしたせいで時間配分ミスった!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・」

重力に従い落下する俺、海面が見える・・・・この高さなら楽に逝けそうだな・・・・あっ上でヤクザが驚いてる・・・だろうな、かっこいい投身自殺だもんなコレ。

ブン・・・・

?空間跳躍音?おお!下に諏訪の『ジュウジン』が、俺を助けに来てくれたのか・・・『ジュウジン』が俺を受け止める・・・

スカッ・・・

・・・・・・・・・・・・・見事に外しやがった!ヤベエ!落ちる!あ、ヤクザが腹抱えて笑ってやがる!死をかけたギャグでウケ取っても嬉しくない!

「死ねるかぁ!」

ブン・・・・・・・・・・・・ガシッ!

鎖を『ジュウジン』の指に巻き落下を止め、勢いを利用しそのまま手のひらに飛び上がる、長めの鎖を作っておいて良かった・・・・

スタッ・・・・・

ふっ、決まった・・・・・

「・・・・無事か・・・・」

諏訪が通信を入れる。

「無事じゃねー!後一歩で死ぬトコだったぞ!ちゃんと助けろ!」

「いきなり・・・・・『ナデシコに行ってきます、お土産を楽しみにしてください』・・・なんて置手紙一つで・・出てった奴を・・助けに来てやった時点で・・・感謝しろ。」

くっ、痛いところを・・・・

「お前がいたんじゃ・・・戦えん・・・逃げるぞ・・・・」

「いや、ちょっと待て、通信、広域でできるか。」

「・・・・・・・ちょっとまて・・・・・OKだ。」

「オッケー!あーあーマイクのテスト中、マイクのテスト中。ナデシコの皆さん、こんにちわ、聞こえますか〜・・・いいたいことがありまーす。ラーメンありがとうございました、またいつかおごって下さい。あと、子供の教育はちゃんとして下さい、やんちゃ過ぎます、末恐ろしいです。そんだけです、ではさよ〜なら〜。」

「・・・・いいか・・・」

「おう!とばしてくれ。」

「・・・・行くぞ。」

通信を終え、さっさと逃げる。機体がいくつか追って来るが、『ジュウジン』には追いつけなかった。




「・・・・・・どうだった?」

落ち着いたところで諏訪が、ナデシコの様子を聞いてくる。言いたいことは多いがとりあえず・・・・・・・

「めっちゃくちゃおもしろいとこだ!」

この一言に尽きた。





〜続く〜






たまには普通のあとがき




初挑戦の一人称、どうでしたでしょうか。少しお見苦しいトコもありますが気にしないでください(オイオイ)。さてタイトルについてですが・・・・開き直ってこのまま行きます、そのうち書く気の外伝ではタイトルを変えますが・・・・外伝の内容ですか?・・・・・・・北ちゃんいいなぁ(核爆)。



(・・・・・・・・代理人様への挑戦になるのか?)


 

 

代理人の感想

展望室のガラスって、プロジェクターだと思ってたんですが〜〜〜ってのは無粋な突っ込みかなぁ(苦笑)。

いくらナデシコがアレな艦でも戦闘艦がガラス張りで外が直接見える部屋なんか作るかなぁ、と(爆)。

 

それと、取りあえず諏訪君には人生芸人の素質ありと言うことが判明。

壮絶な生き様を期待しましょう(爆)。