「で、ナデシコに潜入したお土産って何ですか?」

「おう、いっちゃん!エステの極秘情報を持ってきたぜ!これだ!」

「おお〜って・・・・『マルス』赤、『鯖』青色、『ガンガー』・・名前と色が書いてあるだけなんですが・・・」

「なんだよ〜今まで名前も解んなかったんだから・・・進歩じゃん。」

「いやもっと重要な・・・機関の仕組みとか、武器とか。」

「市川、こいつにそんなこと期待しても・・・そんな難しいこと覚えらんねえし。」

「そのとお〜り!!」

「(涙)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


三軍神参上!


第四話


「おはようございます・・・・ってなぜ皆さんこんな所に固まってるんですか?」

ナデシコ通信士リサ=ファーデットがブリッジに着くと、ブリッジ要員のほとんどが入り口に近いスペースに固まっていた。

「あ、おはよう・・・下を見れば解るよ。」

艦長に言われリサが下に眼をやると、オペレーター席でルリとラピスが凄まじい形相でにらみ合っていた。


ルリが口を開く、

「あなたがアニメおたくだからあんなこと言われるんです。」

ラピスが言い返す、

「アニメは文化の一つだよ。それより、ルリの精神構造が老けてるのが・・・・」

「・・・・精神年齢が高いといってもらえますか?」

その後再び睨み合いに入る・・・・




「なんですか?あれは・・・・」

「・・・・・こないだ潜入した『ドラゴンガンガー』の人が去り際に『ガキどもの教育をどうにかしろ!』って言って逃げたのを覚えてる?」

「ええ。」

「・・・・・・そのガキどもって言うのが誰かっていうので・・・・あんな事に・・・」

確かに、敵方がわざわざ言い残すぐらいだから、よほど将来に恐ろしい物を感じたのだろう。

「・・・・・・なんとも言えませんが・・・・そういえば、こういうときに犠牲になりやすいハーリー君はどうしたんですか?」

その言葉を聞いたとたん、皆が一斉にブリッジの端を見る、そこには・・・・・

白く燃え尽きたマキビ=ハリ少年が転がっていた。

話を聞くと、ラピスとルリにまず一番初めにターゲットにされ口撃&攻撃で栄えある

『教育が必要な子供其の一』

に認定され、その勢いで燃え尽きたらしい。

「でも『ガキども』って複数単位だから・・あと一人は誰かって話でああなって・・・」

「で、皆さん避難しているって訳ですか・・」

その戦いを目のあたりにした人間の心は一つだった、


「確かに子供の教育は大事だ」


この戦いがとりあえず落ち着くまでの小一時間、ブリッジの機能は50%落ちとなった。





「というわけで、この島の辺りに彼らは隠れてると思われます。」

落ち着きを取り戻したルリがナデシコ乗組員たちに説明する。ちなみにラピスVSルリの一戦は仲介者(某戦神)の手により一応の決着がつき、

「とりあえず、発言者を捕まえて聞き出そう。」

という結論になり、ルリが凄まじいスピードで前々から提案されていた捕縛作戦のために『ゲキガン三人衆』(仮名)の潜伏先の予測位置を割り出した。

「?・・・ここは・・・」

シュン提督が何かに気付いたようにつぶやき、

「隊長、何か心当たりが?」

脇に立つカズシが合いの手を入れた。

「確かココは戦争初期の激戦区だ。近海には多くの兵器の残骸が眠っている・・・いわば兵器の墓場。しかしその印象のためかココに、ひと気はほとんど無い・・・思いっきり戦える場所だな。」

「その分罠も仕掛けやすい・・・・危険ですね。」

ユリカのつぶやきに皆が頷く。

「その点も踏まえて作戦を立てたほうがいいな。」

シュン提督が結論付けた。







「・・・・・・!ナデシコの機動兵器が五体先行して、こちらに向かってきています!」

市川が緊迫した面持ちで報告する。

「来たか・・・・・行くぞ富士!」

「おう!」

大島と富士が気合を入れてブリッジから出ようとすると、

「待ってください・・・」

市川がそれを止めた。立ち止まり、怪訝そうな顔をして二人が振り向く、

「せっかくカッコ良く行こうと思ってたのに・・」

「いいトコで止めんのはよくねえと思うが。」

市川が申し訳なさそうに口を開く、

「確かに、いいところで止めたのは悪かったですけれども・・・一つだけ言わせてください。確かに機体に乗り込むに当たっての制服はうちにはありません・・・・この間の戦闘の時も普段着でした。」

コクコク

二人が頷く。

「でも・・・大島さん、何で下にはいてるの水着なんですか?」

大島の服装は上が半袖のTシャツ、下がトランクス型の水着、まさにバカンス真っ只中の格好だった。

「いや〜だって南国じゃん。」

大島が当たり前のように答える。

「でも流石にちょっと・・・」

「まあまあ。大丈夫だって、戦闘はまじめにやるからよ。」

富士がとりなすが・・・・・富士の格好もアロハと半ズボンという同系統の格好だった。市川が何かに気付いたかのように呟く、

「・・・・・・・もしかして、ココを戦場に選んだのって罠とかそういう考えは無しに・・・後で遊ぶためですか?」

「「・・・・・・・・」」

二人は無言になり顔を見合わせると、

「いくぞ!富士!」

「おう!」

何事も無かったかのようにブリッジから駆け出していった。

「・・・・・・・・・・諏訪さんが製作を頼んできた『あれ』も結局レジャー用だったのだろうか・・・」

市川の呟きに答える者は誰もいなかった。




静かな空の中、宙を舞う5つの大きな影があった。

「・・・・・・いねえな・・・ホントにここら辺にいるのかよ?」

「だー!うるせえ!ヤマダ!ごちゃごちゃぬかしてねえでさっさと探せ!」

「だから俺はヤマダじゃなくてダイゴウジ=ガ・・・・」

『2人ともちゃんと探して!もし見逃しでもしたら次回のシュミレーターで地獄を見るよ!』

捜索そっちのけで口論を始めるガイとリョーコを凄まじい剣幕で怒鳴りつける『ブローディア』AIの『ディア』、

「「はい・・・」」

強気の2人も、「ディア』の殺気の前におとなしくなる。

(・・・・・・おい、アキト。なんで『ディア』のヤツあんなに機嫌悪いんだ?)

ガイがこっそりアキトに通信を入れる。

(前回の戦いでジャリガキ呼ばわりされたのが相当気になってるみたいで・・・それに加えて『ドラゴンガンガー』のパイロットに潜入されて、みすみす逃げられたのが怒りに拍車を・・・)

『アキト兄・・・なにサボってんのよ〜』

「すまん・・・」

普通に『ディア』に怒られるアキト(笑)

「・・・・レーダーに反応!二機こちらに向かっています!」

イツキが目標を発見し、

「相手は?」

『検索できたよ!アキト兄!大きさとスピードから『ドラゴンガンガー』と『リクガンタイプ』だ!』

『ブロス』がアキトに報告する。

「『野獣』がいないのが気になるな・・・」

「大丈夫よ、アキト君・・・ナデシコのほうには『ルナ』『ジャッジ』『煌』の三機がいるんだから・・マンガ本の即売会の奇襲があってもだいじょうぶよ・・・」

「なんだそりゃ?」

イズミのコメントに例のごとくリョーコが突っ込む。

「マンガ市・・・万が一の奇襲・・・くっくっく・・・・」

「あっ、そう・・・」

南国に近いはずなのに体感気温が寒くなる。

「・・・『ブロス』海中のほうは大丈夫か?」

『レーダー、センサー共に反応ゼロ・・海中には残骸しかないよ。』

「残骸の中にまぎれてる可能性は?」

『熱反応も通信電波も何も感じないから・・・0にちかいね。』

「なら、あの二体を迎え撃つのが最上か・・ジョーカーを出す前に潰す。」

『アキト兄!あいつら目視距離まできたよ!』

『ディア』の報告直後に二機の姿が見えてきた。

「きやがったな!『ゲキガン三人衆』−1!」

ガイが広域通信で呼びかけたとたん、二体の動きが止まる。沈黙の時が少し流れた後、

「なんだ?そのそこはかとなく怪しい呼び名は!」

「−1って?俺等三人セットか!?」

眼前の二機から突っ込みが入る。

「いやだって・・お前等三人の名前とかしらねえし。」

しばしの沈黙の後・・・

「確かに・・・名乗った記憶が無い・・」

「一応極秘任務なんだから名乗んなくていいんだよ!」

「いやでもなぁ、おまえさアノ呼び名で毎回呼ばれるの想像してみ、やだろ?」

「ん〜む、確かに。じゃあ機体名だけでも名乗るか?」

「そうそう、別にそれぐらい知られたからって影響は無いって。」

・・・・・・・・・・・・

『アキト兄、今のうちに撃っちゃダメ?』

「『ディア』気持ちはわかるが・・・ちょっとぐらい待ってやれ。」

「そうだ!人の名乗りを邪魔するヤツは神が許してもこのダイゴウジ=ガ・・・・・」

チャキッ・・・

『何?ヤマダジロウさん?誰が許さないって?』

『ブローディア』が『ガンガー』にグラビティランチャーを向ける。

「すいませんでした。」

『解ればいいのよって・・・』

「『早く名乗れよ!!』」

件の二体は名乗りもせずに1人+1AIのコントを眺めていた。

「シメまで完璧・・・ナデシコ恐るべし!」

「しかもこちらを利用してのオチ・・・・相当の技量だぞ。」

よくわからないところで感心する二体、

「なかなか凝ったコメント出すわね・・・・」

それに感心するイズミ。

「いい加減、名乗ってもらえませんかね・・・」

あんまり冗談が聞かない人間(ナデシコ内で)のイツキが少し怒った声で告げた。

「あー悪い悪い・・・それじゃ、わが機体は『リュウジン』!」

言い放つのと同時に双鞭の鎖を両手に作り出す『リュウジン』。

「同じく『バクジン』!」

名乗った直後に両手のビームランチャーを広げる『バクジン』。

「「いざ尋常に勝負!」」

見事にハモる二人。

「やっとか・・・・」

「じゃあ行きますか・・・」

「ふふふ・・・」

「おお!カッコいい名乗りじゃねえか!」

「2人とも準備はいいか?」

『ふふふ・・・お笑い芸人扱いした借りは返すわよ・・・』

『ディア・・・落ち着いて・・・』

七者七様のコメントを出し、戦闘が始まった。



「よっしゃあ!先制攻撃ゲットォ!」

『リュウジン』が先頭の『ブローディア』に向かい双鞭の鎖を振りかざすが、

ヒュン・・・・
                            ヒュン・・・
               ブン・・・・


『ブローデイア』は鎖の双檄を全て避けた、双鞭を引き戻す『リュウジン』。アキトが叫ぶ、

「何度も見れば眼も慣れてくる!」

「ふ〜ん」

しかし、『リュウジン』から返ってきたのは気の無い返事だった、

「そんならコレも避けてみろ!」

次の瞬間、『リュウジン』の両手の五指一本一本から鎖が襲いかかる。

「何!」

十本の鎖が一斉に『ブローディア』に向かって襲いかかった。

「くっ・・・」

戸惑いながらもかわしてゆくアキト。

「アキト!援護に・・・」

他のエステが『ブローディア』の援護に向かおうとするが、

バシュバシュバシュバシュバシュ

五本のレーザーキャノンが四機のエステに降り注ぐ。

「一山いくらの連中は俺が相手になってやる。」

『バクジン』のパイロットから四機に向い挑戦的な通信が入った。

「へっ、言ってくれるじゃねえか。」

「一機で四機を止められますか?」

リョーコとイツキが挑発に乗る、次の瞬間『バクジン』は、両手のビームランチャーと胸部のグラビティブラストを一斉に発射した。

「うお!あの野郎!この前よりも気合入ってんぞ!」

「ヤマ・・・ガイさん落ち着いてください。いくらパワーのある機体でも、あんな火力は長時間維持できないはず・・・・ココは回避に徹したほうがよさそうですね。」

「おっしlゃ!ここは回避重視の射撃戦だ!あの『リュウジン』とか言うのはアキトにまかせた!」

「リョーコにリョーカイ・・・・くくくく・・・・」

ダダダダダダダダダダ

無数の弾丸が『バクジン』に降り注ぐが、ほとんどの弾丸はフィールドに止められた。

「こんな豆鉄砲、屁でもねえ・・・」

再び『バクジン』から通信が入る。

「話には聞いてましたけど・・・ここまで・・・まさに化け物・・・」

イツキが誰とも無しに呟いた。


「正直感動モンだね〜、ココまで躱し続けるとは・・・」

最初に少し掠っただけで、『ブローディア』は十本の鎖の攻撃をかわし続けていた。

『アキト兄を馬鹿にすると痛い目にあうよ!』

『ディア』が『リュウジン』に向かい叫ぶ。

「御忠告どうもありがとさん。・・・・・でもな、今のお前の動きは・・・俺の手の中だ!」

『リュウジン』が両手を組む、次の瞬間『ブローディア』の背後で十本の鎖が結合し、ブローディアは鎖の投網に捕らえられた。

「器用なことをする!」

『アキト兄!早くどうにかしないと・・・』

「安心しな・・・すぐに海の藻屑になるからよ!」

『リュウジン』は急降下して、捕らえた『ブローディア』をその勢いのまま海に叩きつけようとするが、

ズバッ・・・

『ブローディア』は海面寸前でDFSで網を切り裂き脱出した。

『ヘッへ〜ん、残念でした。』

『ディア』が勝ち誇るが、

「・・・・・・にやっ」

攻撃が失敗したにもかかわらず、『リュウジン』の中で大島は笑みを浮かべていた。



「よっしゃあ!賭けに勝ったか!」

『ブローディア』と『リュウジン』の戦いが、海面近くなったのを確認すると『バクジン』は腕を一本海面に向けビームランチャーを発射した。

ジュワァァァァァァァァァァ・・・

海面近くで凄まじい水蒸気爆発が起こる。

「何がしたいんでしょう?あれ?」

「さあな?とりあえず今わかるのはアイツの攻撃に隙ができたことだ、いくぜヤマダ!」

「オウ!って俺は・・・」

「あ〜うるせえ!後でいくらでも名乗らせてやるから、ついてこいよ!」

「ホントだな!死んでも忘れんぞ!」

『ガンガー』『マルス』が『バクジン』に向って突っ込み、

「イズミさん、私たちはあの二機のバックアップに!」

「わかったわ・・・」

『鯖』『白百合』が援護射撃をしかける。戦いはナデシコ側が優位に見えた。




(・・・・・・長い・・・出番は・・・・いつだ・・・・)

この海中の墓場で待ち続けてから、かなりの時が流れた。市川に頼んで作って貰ったアクアラングの酸素も切れようとしている、

(賭けに・・・・・負けたか・・・・・)

ジュワァァァァァァァァ・・・・・

その時、海面の方で合図の音がした。

(ギリギリか・・・・・)

次の瞬間、海中の兵器の墓場に野獣の目が光った。





『ん?コレは・・・・』

『ブロス』が何かに気付く、

『!アキト兄!海中に反応!凄いスピードでこっちに向ってる!』

「なんだと!」

刹那、『野獣』が海中から『ブローディア』に襲いかかり、そのまま組み付く。

『そんな!海中に反応なんて無かったのに!』

「甘いな、ボウヤ・・・」

あわてる『ブロス』に『リュウジン』から通信が入る、

「センサーだけを信じるな・・・そんなモン機体のスイッチ全部切っちまえば反応なんかしない、幸いこの海には鉄屑が多いし。」

『スイッチ!?まさか生命維持装置まで!?』

「ああ、そこまで覚悟決めないと、お前等引っ掛けることなんて・・・というわけで・・トリを勤めますは『ジュウジン』!戦神一名海中へご招待〜」

「なにが・・・というわけだか・・・知らんが・・・付き合ってもらうぞ・・・・戦神。」

組み付いたまま海面へと突っ込む二機、

「マジン系の機体の伝統!水中適性の高さ・・ココで使わずいつ使う!」

『バクジン』からも通信が入る。

バシャァァァァァン・・・

凄まじい水音と共に、海中へと消える二体。

これを機に戦局は混乱の渦へと、突入した。




〜続く〜




後書き?



「・・・・・主人公交代説が流れて凹んでいる解説スパットです・・・今日は俺らの戦艦『陰月』の説明をします・・・


  強襲上陸艇『陰月』

ナデシコの性能に感化され木星戦艦開発部が作り上げた試作中型艦。本来は、敵陣に潜入しバッタやジョロ等を放出し敵陣撹乱後撤退、という目的のため作られた艦。隠密性に優れ、スピードはナデシコを軽く凌駕する。また、少しの改修とバッタの手助けを借りればひとりでも艦が動かせる。弱点は装甲の薄さと武装が無いこと。しかし、これまた試作品の撹乱霧を散布できるため、逃げることにかけては随一の性能を誇る。直接、戦闘には関係ないが生活空間の狭さも弱点である、特にトイレは一つしかないため、毎朝船では死闘がくり広げられる。 


・・・ふ〜ん、どうでもいいや。次回は『リュウジン』の紹介だそうです・・・・・次回は目立ちたいなぁ・・・・・」

 

 

 

代理人の感想

ゴムゴムのぉ〜〜〜〜網っ!(うそ)

 

それはさておき、マジンって海中適性高かったんだ、知らなかった(爆)。

さすが木連技術陣、妙なところに凝ってる(笑)。

 

 

・・・あ、コントとか醜い争いはスルーの方向で。