揺れ動く未来と変わりゆく過去
第七話 「ナデシコ」にパパが来た。
























イツキはもう一人のパイロットがそろそろ到着することに気付き格納庫へ向かった。

いくら軍の高官が来ているからといっても、元軍人の自分に関係はない。

第一、希望徴収で軍人になった彼女は火星制圧までの一年間を戦っただけだった。

だが、激戦の火星を生き抜いたということは実力の高さを証明することでもある。

軍に失望し憎んだイツキが辞めようとしたときも人事部の軍人は熱心に説得してきたのだ。

生存が確認されたことで、二階級特進は二階級昇進になった。

だが、極東軍も何処の軍も前線で戦う兵士が足りない。

育成が必要ないというのはかなりおいしいのだ。

ただ出頭した時期が悪かったために、フクベのように英雄報道はされなかった。

アイという幼い少女を守れなかったイツキには、不幸中の幸いだ。

それはトラウマを抱えた少女を保身のために喰い殺すだけなのだから。

イツキは昇進した分だけ多くなった退職金を受け取り、軍を辞めた。

そしてプロスペクターにスカウトされネルガルのテスト・パイロットになった。

軍を辞め、アルバイトを探す前に訪ねてきたことから彼が前々からイツキに目を付けていたことが解る。

呆れた情報網だ。

イツキはエステバリスの調整に携わりナデシコに乗ることになった。

これはナデシコの目的地が火星と知ったからだ。

火星でアイが生きていると信じて。

それだけが彼女の拠り所なのかもしれない。

「イツキちゃん!!」

「ウリバタケさん、どうしたのですか?」

「ああ、イツキちゃんの陸戦フレームの修理が終わったから言っておこうと思ってな。」

「すいません・・・」

先の戦闘で損傷させてしまったエステのことを考えると、気が重かった。

「気にするなよ、壊れたら俺たちが直すし、テンカワがいるじゃねぇか。」

「そうですね・・・」

「あいつは何者なんだろうな・・・あれは逃げ回ってただけだけだが素人じゃないぜ。」

ウリバタケはアキトが乗っていたピンクのエステバリスを眺めた。

「テンカワさんは・・・ピンクは嫌だそうですよ。」

「あのピンクは悪趣味だよな!!

 あいつに聞いて塗装し直す!!何色が良いんだろうな〜?」

「失礼、君はイツキ・カザマくんかね?」

イツキとウリバタケの背後にユリカを従えたミスマル・コウイチロウがいた。

やや離れた所にジュンが立っているのが、何故か自然に見える。

「はい・・・ミスマル提督、何故私の名前を御存知なのですか?」

このとき、整備員が手招きしていたのでウリバタケは場を去った。

コウイチロウとイツキの関係が気になったが、仕事では仕方がない。

「話題になっていたからね。

 火星の大地で戦い、戻ってきたのは珍しいのだ。

 その中で軍を辞した者も少数。

 君もその一人だ。」

「提督・・・言いたいことがあるなら手短に・・・」

ジュンがコウイチロウをせかした。

この後には交渉が控えている。

そうでなくても、ジュンはミスマル親子と行動を共にしたくなかった。

「・・・ふがいない軍ですまなかった・・・」

「いえ・・・」

コウイチロウはそれだけ言い残すとプロスに案内されて格納庫を出て行った。

その後には護衛二人とユリカが従う。

「ジュンくん、来ないの?」

列から離れるジュンにユリカが訝しげに尋ねた。

「僕が行く必要はないだろう。

 そろそろ新パイロットが来る頃だし、そっちは僕がやる。」

「わかった、ありがとね!!」

笑顔で分かれるユリカに仏頂面で見向きもしないジュン。

何故、今まで一緒にやってきたのかが疑問である。

列から離れたジュンはイツキの横に立った。

「副長、どうしたのですか?」

「・・・あの親子と一緒にいるだけ時間の無駄さ。」

何処までも辛辣である。

「その言い方は酷いと思います。」

「そんなことないさ、提督がナデシコに来たのは自己満足のためだ。

 交渉なんて言っているが、プロスさんにはナデシコの全権は任されていない。

 ユリカは雇われの艦長、初めから蚊帳の外だ。

 ネルガルに全所有権がある以上、本社と交渉しなければならない。」

「それでは、この会見は・・・」

イツキは確認のために相槌を打ったが、その事実を余り認めたくなかった。

「この交渉が失敗することくらい提督はわかっている。

 ナデシコに乗ったのも、全て打算の上だ。

 第一に、社会人一年生になった娘の職場見学。

 第二に、木星蜥蜴を容易に打破できる戦艦の視察。

 第二の目的が大きく見えるから、公私混同が責められることはないな。」

「・・・第二ですか?」

「予定時間にはまだあるね・・・控え室で話さないか?」

ジュンは格納庫の隅にあるガラス張りの控え室を指差した。

新パイロットが来るまで手持ちぶさたにならざるをえないイツキは了承する。

到着すればすぐにわかることも理由の一つだった。

もう一つは艦長のユリカを毛嫌いしている彼が何故ナデシコに乗っていたか気になっていたからだ。

「煙草吸ってもいいかい?」

「いいですけど・・・体に悪いですよ。」

「健康よりも精神衛生の方を気にかけてるんだ。」

非喫煙者のイツキを気遣ったのか、分煙機の前に陣取りやや距離を取った。

「それに指揮官の健康状態で戦艦の運命が左右されるのでは、初めから結果は見えてる。」

「・・・副長は何故、ナデシコに乗ったんですか?

 スカウトに乗らなければ、艦長と離れられたのでしょう?」

「契約金が高かったから。」

「嘘です。」

イツキはジュンの目当てが高い給金でないことは確信していた。

「僕がネルガルにスカウトされていることを知った二人の軍人に頼まれたんだ。

 一人は言うまでもなく、ミスマル提督。

 彼は、僕以外にユリカの補佐が可能な人物を知らなかった。

 それは事実で今の時点であれを補佐するのは僕以外には無理だ。

 父親として娘が社会の規格から外れているのをよく理解している。」

「その話し方だとまだ理由がありそうですけど・・・」

「僕がユリカに手を出さないからだ。

 子離れできてないんだよ。」

聞いたことを後悔しながらイツキは眉間を抑えた。

「そして、もう一人はムネタケ・ヨシサダ。

 僕が尊敬する軍人だ。」

「副提督の御父様ですね。」

「ああ、副提督があんなふうになったのは軍人になってからでね。

 自分の所為で息子が変わったことを気に病んでいた。

 息子が歪んだのは偉大な父親と比較されてから。

 軍の腐敗に失望したこともあるらしい。

 新人の頃は理想に燃える熱血軍人だったそうだよ。」

「想像つきませんね。」

イツキの素直な感想にジュンは苦笑いを浮かべた。

本人もそう思っているだけに尚更だ。

「僕としては、色々自分を試したい。

 IFSも持っているし、パイロットもやってみたい。

 それが現実に可能かはわからないけど、軍では無理だしね。」

「大変ですね・・・お察しします。」

「副長の仕事はそれほど多くないんだけどね。

 ユリカの補佐として乗ったからにはそうもいかない。

 戦略・戦術的発想は群を抜いているが、それ以外は教科書通りだ。

 デスクワークは集中力が保たなくて続かない。」

ジュンは話に集中して棒状の灰となってしまった煙草を捨て、新しい煙草に火を付けた。

「大丈夫なんですか?・・・プロスさん達がいるから大丈夫でしょうけど・・・」

「何とかしないと危ないね。

 ユリカが艦長になったのはいくつか理由がある。

 ミスマルのネーム・バリュー。

 抜きん出てはいるが欠点も同様に多いユリカの処遇に軍が困ったこともある。

 あいつはミスマル提督の存在もあって無下に扱えない。

 ナデシコ搭乗の話は渡りに船だったんだ。

 命については心配ない・・・戦闘は大丈夫だから日常生活がやばいかもね。」

「そんなこと、私に話しちゃって良いんですか?」

イツキは不安そうに尋ねた。

「イツキさんが話すとも思えないしね。

 例え、聞かれていても僕は気にしない。」

話せば、立場が悪くなることくらい誰にでもわかるだろう。

プロスの"困りましたなぁ"の一言ですむかもしれないが。

イツキは煙草を吸うジュンを呆れて見ていた。

彼の姿は何故か楽しそうだ。

「そうですね・・・そのときは副長に酷い事されたって言います♪」

「ゲホッ!!」

煙草に咽せたジュンが涙目になる。

「な、なにを言って「副長の話の所為で疎まれたらどうするんですか?

 それと、パイロットの方到着されたみたいですよ。」

イツキは冗談めかしてジュンをからかうと、控え室を出て行く。

ジュンは涙をぬぐうと煙草の火を消して後を追った。

運送機から運び出されるコンテナとタラップを降りる精悍な男。

スポーツバッグを肩に担ぎ、一流の風格を漂わせていた。

「おい!!俺のゲキガンガー早く組み立ててくれよ!!」

降りてすぐにこれだった。

黙っていれば、頼もしく思えただろう。

「なんだ、あいつは・・・」

「ゲキガンガーって何ですか?」

「さぁ?」

頼もしく思えた第一印象は地に落ち、二人は途方に暮れた。

「お、そこにいるのはパイロットだな?」

イツキの赤い制服を見つけたガイが嬉しそうに声を上げる。

「は、はい!イツキ・カザマです!!」

「俺はダイゴウジ・ガイ!!よろしくな!!」

慌てた為に上擦った声で返事するイツキ。

「ダイゴウジ?君はヤマダ・ジロウじゃないのか?」

「ダイゴウジ・ガイだ!!魂の名だ!!」

堂々巡りになると素早い判断を下したジュンはコミュニケでルリを呼び出した。

『副長、御用ですか?』

「着任したパイロットの個人情報を見せて貰えるかな。

 本人かどうか、照合もよろしく。」

『わかりました。』

ジュンのそばにウィンドウが現れデータが表示される。

「本人に間違いないか・・・」

『照合できました、着任予定のパイロットのデータと一致します。』

「御苦労様。」

ウィンドウは消え、ジュンはヤマダ・ジロウに向き直った。

「ナデシコにようこそ。

 副長のアオイ・ジュンだ。

 よろしく、ヤマダくん。」

「ダイゴウジ・ガイだ!!」

ヤマダは不機嫌そうに叫ぶ。

「さっきからおかしいと思っていたが、それはどういう事なんだ?」

ジュンが訝しげに尋ねる。

イツキも謎の主張に戸惑っていたので似たような視線を山田に向けていた。

「ヤマダ・ジロウとは仮の名、ダイゴウジ・ガイが本名・・・イヤ!!魂の名だ!!」

「それなら改名でも申請すればいいだろう・・・」

本名が嫌いで駄々をこねているだけと察したジュンはうんざりして突っ込んだ。

「そんなこと出来るんですか?」

「家庭裁判所とか、色々面倒だけどね。

 彼の理由だとまず却下されるだろう。」

二人でこそこそと話していた。

「エステバリスのパイロット登録は済ませておいてくれ。

 それとこれは君のコミュニケだ。

 立ち上げれば、ニュートラルモードが起動する。

 指示通りに扱えば問題はない、御苦労様。」

ヤマダにコミュニケを渡すとジュンとイツキはさっさと離れていった。

「おう!!ありがとうな!!」

なかなか人は良いようである。

「副長、シミュレーションしませんか?」

「面白そうだね、是非。」

そのころの食堂では・・・

「おじさん、待ってましたよ。」

「アキトくん、ラピスくん、久しぶりだ。

 二人とも立派になったね。」

「お元気そうでなによりです。

 食べて行かれますよね?」

「もちろんだよ。」

ラピスがテーブルに案内し、アキトが料理を運ぶ。

「準備が良いね。」

「いつもは弁当の差し入れくらいしかできませんでしたから。

 この機会を狙ってたんですよ。」

「そろそろ来ると思って、頑張ったの。」

ラピスがコウイチロウのために椅子を引いた。

「ありがとう、ラピスくん。

 弁当も美味しかったが、君たちの出来たての料理は初めてだ。

 楽しみだな。」

「えぇ〜!!御父様、それどういう事?!」

コウイチロウの案内をしていたユリカが騒ぐ。

その大声に護衛の軍人は卒倒しかけていた。

「騒ぐんじゃない、ユリカ・・・はしたない。」

「ご、ごめんなさい・・・」

ユリカが誤る相手を間違っているのはいつものことだった。

「御父様、どういう事ですか!!」

「アキトくんとラピスくんが通っていた料理学校はヨーロッパにあってな。

 私が出張に行く度に弁当を差し入れしてくれてたんだよ。」

「御世話になってますから・・・冷めないうちにどうぞ。」

「ありがとう、早速頂こう。」

コウイチロウはアキトとラピスが作った中華をメインにした食事を食べ始める。

「ど、どうして御父様とアキトとラピスちゃんが?」

「うむ、美味い!!

 二人とも、店を出すときは言っておくれ。

 助力は惜しまないつもりだ。」

「ありがとうございます。」

幸せそうに食べ続けるコウイチロウ。

「御父様!!」

「そう言えば、テンカワさんとラピスさんの保証人は提督でしたな。」

ユリカの疑問に答えたのはプロスだった。

「えぇ〜!!どうしてそのこと、教えてくれなかったの?!」

「ユリカ、さっきはしたないと言ったばかりではないか。」

「ごめんなさい・・・でも、どうして?」

「色々あったのだよ・・・」

黙々と食べ続けるコウイチロウ。

「だって、アキトのご両親はどうしたの?」

「ユリカ!!」

コウイチロウの大声に驚き、ユリカは首をすくませた。

「良いんですよ、おじさん。

 ユリカ、俺の両親はテロで死んだよ。」

「それも私たちが火星を立った日だ。」

重々しくコウイチロウが告げた。

「そんな・・・」

「ユリカ、もっと思いやりを持ちなさい。

 御両親が健在なら私が保証人になることはない。

 私たち軍人が戦い、その結果民間人に死者が出たとき、どうするのだ?

 お前は仕方なかったで済ませるのか?」

「・・・・・・」

ユリカが黙り、食堂には静寂が満ちていた。

「アキトくん、ラピスくん、美味しかったよ。」

「お粗末様です。」

『艦長、前方にチューリップ発見。』

「わかりました、すぐにブリッジに向かいます!!」

ユリカはあっという間に食堂を出て行った。

「私はスサノオにもどれるかね?」

『現状では難しいと思います。』

ルリの冷静な声がコウイチロウの表情を渋くする。

「ブリッジにお邪魔させて頂こう。」

「どうぞ、こちらとしてもそのつもりでしたから。」

プロスが丁寧に答える。

「ラピス、片付け頼む・・・俺は格納庫に行く。」

「行ってらっしゃい。」

「彼も戦っておるのか・・・」

コウイチロウは悲痛に呟くとプロスの後に続いてブリッジに向かった。

コウイチロウはアキトのことを守るべき家族と思っているのだ。

最前線に向かう少年を見送るのは辛かった。













「イツキちゃん!!」

「アキトさん、空戦フレームに換装済みです!!」

「オイ!!博士、俺のゲキガンガーは?!!」

アキトが振り返ると、そこには懐かしい男がいた。

自称ダイゴウジ・ガイ。

「お前の分は、まだ組み終わってねぇ!!

 予備はお前の積んできた分だけだから、今回は黙って見てろ!!」

「なにぃ!!」

こちらではジュンの性格が変わっていたが、ガイの性格がそのままな事に安心する。

「現状は?」

「軍と連携して包囲陣形を取っています。

 私たちが囮として出撃し、グラヴィティ・ブラストで殲滅するそうです。」

「すぐに出撃か・・・ところでイツキちゃん。」

「なんですか?」

エステバリスを起動させながらウィンドウ越しに話を続ける。

「なんだかすっきりしたみたいだね。」

「そうですか?」

『エステバリス、カザマ機・テンカワ機出撃してください!』

「了解。」

メグミの連絡を受けて、イツキとアキトのエステは射出口に向かって歩き出した。

アキトは射出口に付くと低空で飛行し、イツキはホイールで疾走しナデシコを飛び出す。

「ナデシコと軍の連携がいかに大切かわかる戦闘だね。」

「そうですね、ナデシコは主砲しか持っていませんから。」

クロッカスとスサノオは旋回しながらチューリップを砲撃している。

ナデシコは機会を伺い、ポジションを定めている所だった。

「俺たちはナデシコの護衛だけで十分だな。」

「そうですね。」

今まで確認されていたチューリップと違い、触手で標的をおとすタイプだった。

アキトにしてみれば知っているですむが、戦艦は触手の届かない距離から砲撃している。

その所為で効果が薄いのだが、チューリップの気をそらすことには成功している。

ナデシコは護衛だけで十分と言ったというのに、アキトは触手に接近し射撃を開始した。

「アキトさん?!」

「大丈夫・・・ちょっとした訓練になるね、これは。」

アキトは味方の援護射撃の中で触手を避け攻撃するというのは、将来を見据えるなら必要だと考えていた。

しかし、アキトの操縦技術は単独戦闘に特化している。

過去のナデシコで得たフォーメーション技術を捨て、孤独な戦闘技術を刻み込んだからだ。

今囮になっているのは、捨て去った戦闘技術を思い出すためでもあった。

「アキトさんって身勝手な所ありますよね。

 冷静な人かと思えば子供っぽいし!!」

「それを言うなら、イツキちゃんもお淑やかに見えてお転婆だよね。」

二機のエステバリスはいつの間にか並んでチューリップを蹂躙していた。

『アキト、イツキちゃん、グラヴィティ・ブラスト発射します!!』

「『了解!!』」

コクピット内のウィンドウに射線が表示され、退避方向が指示されている。

そしてエステバリス両機は移動。

『グラヴィティ・ブラスト、ってぇ〜!!』

ユリカのかけ声と共にナデシコから放たれた黒い重力波はチューリップを消滅させた。

「エステバリス両機帰還してください。」

ブリッジではメグミがエステバリスに通信し、ルリは艦内のチェックをしている。

「すさまじい威力だな・・・」

コウイチロウは消滅したチューリップを見つめ、呟いた。

「提督、ナデシコはいかがですかな?」

プロスの質問は営業マンとしてだった。

ネルガルとしては、ナデシコ級を軍に高く売りたいことはわかっている。

だからこそ、コウイチロウは辛辣に答えた。

「高い戦力として期待できる・・・だが・・・」

「なにか?」

「このままでは使い物にならん。

 主砲一門だけではな。

 商品としては落第点だ。

 この欠点を克服して貰わなければ採用はありえん。」

軍人ならば誰でも指摘することだが、歴戦の提督が言うと重みが違う。

「単艦で行動するのならば、尚更だ。

 エステバリスだけで克服できる欠点ではない。

 考えて貰おう。」

コウイチロウは踵を返した。

「ユリカ、私はスサノオに帰る。

 お勤め頑張るのだぞ。」

「はい、御父様!!」

「フクベさん・・・子供達を頼みます。」

フクベは静かに頷いた。

「・・・アオイくん、アキトくんとラピスくんのこと、よろしく頼む。」

「はい。」

ジュンはユリカの名前が入ってないことを訝しく思うが、二人のことをユリカに頼むわけはないと無理矢理納得した。

護衛を従えコウイチロウはブリッジを出て行く。

「艦長、指示を。」

「ナデシコは太平洋を横断し赤道にでます。

 ルリちゃん、航路の確認と予定の修正をお願いします。」

「艦長、軍の交渉の影響で予定が変更になるかもしれません。」

レーダーに映る遠ざかっていく軍艦を見つめながら、プロスが可能性を告げる。

「今はこのままで良いんですよね?」

「はい、本社からの連絡がなければ予定通りで結構です。」

中途半端な立場にある戦艦が為政者達に与える機体は大きな物だった。

敗戦続きの軍と違い木星蜥蜴に対して決定打を与えられる。

その事実がナデシコを地球に縛り付ける鎖となる。

しかし、ネルガルが確保したいイネス・フレサンジュは火星。

今後のためにナデシコが火星へ向かうのは間違いなかった。

そして、不安要素は増えている。

アキトの知る未来とは既に道を違えた。

クロッカスもパンジーもチューリップに呑まれなかった。

今後はどうなっていくのだろうか・・・















アオイ・ジュン、喫煙者化。

捻くれ者の象徴的アイテム煙草・・・コックに煙草は吸わせられませんし。

煙草を吸うコックに一流はいないですしね。

煙草が捻くれ者の象徴アイテムって言うのは偏見ですけど。

ああ、僕が書く話ジュン目立つなぁ・・・

それというのも、TV版の印象が皆無だからなんですけど。

 

 

代理人の個人的な感想

TV版のジュン・・・・・・・・ユリカに振りまわされている所を除けば

「温めの『冷たい方程式』」でアキト達を迎えに来る時に見せた

清清しい諦めの表情が印象に残ってるくらいですかねぇ(爆)。

 

 

・・・・・・しかし、本当に何故この親子に付合っているんだろう、このジュンは。

やっぱりひねくれてるからなのかな(笑)。