明日への扉
第零話 始動







  エレド・エングリン。

世界最大の大陸、ヴァリノール大陸の北東部にある

標高三千メートルほどの山々が連なる山脈。

其の中でも最大の標高を誇るエレボール山の中腹に位置する

炭坑都市ナルシェに今混乱の渦が押し寄せようとしていた・・・・・・









  ザッザッザッ

雪の降り積もった山道を三つのシルエットが進んでいく。

それは、馬より少し大きいほどで、二本の力強い足、がっしりとした胴体、そして二対の翼をしていた。

一見すると所謂ドラゴンのような姿をしているが、決して本物のそれではない。

明らかに人工物と思われる各部や鈍い輝きを放つ装甲。

ここ数十年で急激にその勢力を伸ばしてきて、今や世界中に侵攻している軍事国家クリムゾン帝国。

その軍の中核を担っている魔導アーマー、コードネームを《エステバリス》という兵器であった。



  全てを焼き尽くした千年前の幻獣と人間の魔導師の戦い《魔大戦》。

その後千年の間失われていた魔法の力。

しかし、帝国はこれを魔導の力として再び蘇らせた。

その結果のひとつとして生まれたのがこの魔導アーマーである。

そして、この魔導アーマーこそが帝国が急激に力をつけた原動力でもあった。





  先頭を駆けるエステバリスに乗っているのは、

所謂おかっぱ頭やキノコカットと言われる髪型をした男。

その肩や胸には多くの勲章がついており、なかなかの地位だということを窺い知る事が出来る。

その次に続くのはとりたてて特徴のない普通の男。

そして最後に続くのは少女。

娘は華奢な体つきをしており、雪のように透き通った白い肌、瞳は黄金に輝き、

青味がかった白銀色に輝く髪は一つに束ねて背中に垂らしていた。

およそ兵士というよりはどこかのお城でダンスでも踊っているお姫様、

といった方がお似合いのまだ幼いといってもいい美しい少女であった。

しかし、その瞳は虚ろで意思の力は感じられず、

その顔からもいっさいの感情は読み取ることができかった・・・・・・





  そして三人を乗せたエステバリスはどんどん山道を進んで行き、

辺りを見渡せる開けた場所で一旦動きを止めた。

遠くの方には微かに黒い町影がぼんやりと浮かんでいた。


「あれが例の町ね?」


そうキノコが呟いた。

その呟きに兵士A(仮)が応える。


「はっ、情報によりますと魔大戦で氷付けになった1000年前の幻獣が見つかったそうであります。

・・・・・・もっとも真実かは分かりませんが・・・・・・」


その言葉遣いと服装からするとキノコがこの隊の隊長のようだ。


「さあね。でもあれの使用許可がでるくらいよ。かなり確かなんじゃないの?」


そういって少女を指差すキノコ。


「生まれながらに魔導の力を持つ少女。エステバリスに乗った兵士50人を

僅か三分足らずで倒したと言いますが・・・・・・

・・・・・・恐ろしい・・・・・・」


そう言って身震いをする兵士A。


「ふん。どうせこの操りの環で思考は止まってるのよ。

あんなのただの命令されなければ何もできない人形よ。」


そう、少女の額には
古代中国伝説に出てくる某猿が

身に付けていたような金環
が輝いていたのだ。


「・・・・・・」


自分の事について言われているというのに少女は全く関心を示さなかった。

否、関心が無いのではなく、キノコの言葉どうり思考が働いていないのだ。

言葉は聞こえているがそれについて考えようとする心が無い。

入力されなければ何もできない機械のように、この少女は命令だけをこなす機械兵士とかしていた。

恐怖も躊躇いも禁忌も感じない、ある意味最高の兵士である。


「まあいいわ。そんなことより、この作戦を成功すれば二階級特進よ。

とっとと目標を手に入れてこんな寒いところからおさらばしましょ。」


「は。了解であります。」


むろん兵士Aにしてもこんな場所に長居するつもりはない。

雪も年に数えるほどしか降らない場所で育った自分達には、少々この気温は身に応える。

できるのならとっとと暖かい帝都に帰りたいものなのだ。


「それじゃあ東から回り込むわよ。」


「了解。」


キノコの言葉で、兵士Aと少女が動き出した。









  そして三人の乗ったエステバリスは道の向こうに姿を消した・・・・・・













「魔大戦」

全てを焼き尽くしたその戦いが終わった時、

世界から「魔法」という力が消え去った


そして1000年・・・・・・・・・・・・鉄、火薬、蒸気機関、

人々は機械の力を使い世界を蘇らせた


今ここに伝説となった「魔法」の力を復活させ

その強大な力によって世界を支配しようとする者がいる


人はまたその過ちを繰り返そうとしているのか・・・・・・


















後書き

皆さん始めまして。ギーヴと申します。

名前の由来は某作品に出てくる旅の楽師やら宮廷楽師やら正義の使者やら

多くの称号を持っているあのお方です。

と言うわけで、FINAL F○NTASY Y風ナデシコです。

記念すべき第一声はキノコさん!

ついでに主役もキノコ!(嘘です)

まあ、へぼへぼですがよしなによろしくお願いします(ぺこり)。

ではでは〜

 

 

 

 

代理人の感想

ほほぅ、主役がキノコですか!

話がFFで主役がキノコ!

血と肉と鉄と骨で世界を制覇する

一大叙事詩になる事疑いありませんね!

・・・・って、違うの? 

ちっ。(爆)