私とアキトさんが、運命の出会いをしてもう1年

ついでに、木星から来た蜥蜴と戦争するようになって1年でもある

あんまり、連合軍が不甲斐無いから、とうとう民間のネルガル重工が、戦艦作ってデビューさせたってのが、これまでのお話

そのデビューは、同時にアキトさんのデビューでもあった




運命と絆、そして… 第2話 〜『緑の地球』は任しとけ! 




「ゆっくり降ろせ〜 こら、そこ傷つけるな!」

ここ、格納庫では、アキトの乗っていたエステバリスの整備が、ウリバタケ指揮で行われていた

そのエステを動かした張本人は、プロスとゴートに話しかけられていた

「で、俺はどうなるんすか?」

「ロボットを無断で動かした件を初めとして、問題行為は山積みだ」

「はぁ……」

「しかし、こちらとしては、あなたの操縦技術は、非常に魅力的でして、はい。

 そう言うわけでどうでしょう? パイロットが補充されるまで、パイロット兼コックとして働いてくれませんか?

 もちろん、パイロットの分のお給料はお支払いいたします。ピ、ポ、パっと、これぐらいでいかがでしょう?」

「こ、こんなに!」

「はい。私達の命を預けるわけですから、これくらいは当然です。よろしいですか?」

「えっと… パイロット兼コックじゃなくて、コック兼パイロットならいいっすよ」

「はい、もちろんです。テンカワさんは、コックとして、私が採用したんですからね。 では、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

アキトが深深と、礼をしていると、プロスが近寄ってきた

「ところで、テンカワさん」

「はい? 何ですか プロスさん」

「テンカワさんのIFS、他の人と形が違いますね。そのIFSは何処でつけたんですか?」

「そいつぁ、俺も聞きたいぜ」

整備を終えたのか、ウリバタケがメガホン片手に、話に加わってきた

「ウリバタケさん 整備はもういいんですか?」

「おうよ! あれくらい俺達の手にかかれば、朝飯前よ!」

「それは、頼もしい」

「そんな事より、お前ぇ テンカワって言ったな。俺は整備班班長のウリバタケ セイヤだ よろしくな」

「はい。テンカワ アキトです。こちらこそよろしく」

「アキトって呼ぶぜ。 お前が乗ったあの機体、IFSの伝達機能が限界寸前になってやがった

 機体の方は、出撃前にチェックしたし、IFSが正常に働いていたってのは、あるバカが証明してくれた。

 ってことは、機体が、お前に付いていけなかったって事になる。一応、ネルガルの、最新の機体なんだけどな」

つまり、アキトのIFSの伝達率は、ネルガル最新のエステの、上を行くと言う事である

その話を聞くと、プロス達も、今まで以上に興味を持った

「ああ、これですか」

アキトは、右手の手袋を外して、IFSを全員に見せた

アキトのIFSの形は、渦を巻いている龍の様に見える

「う〜〜〜む、やはりこんな形は見た事がありません。テンカワさん これはいったい?」

「分からないんですよ 俺にも。これが何なのか」

「へ? どう言うことだ アキト」

「このIFS、俺が物心ついた時には、もうあったんです。 親父達に訊いても、何にも教えてくれませんでしたからね」

アキトの話を、聞いたプロスは、何か考える仕草を見せた

そんな中、ゴートがアキトに近づいた

「テンカワよ」

「何っすか?」

「そのIFSは、お前が神から授かったのだ!」

「へ?」

「すなわち、お前は神に選ばれし者なのだ!」

「あ、あのぉ〜 ゴートさん?」

「安心しろ! テンカワよ! お前の失われし記憶は、この私が責任を持って、復活させてやる!」

「記憶なんて失ってませんって………」

「なに、痛くはない。最初の儀式さえ我慢すれば、後はお前も神の戦士と…グハァ

何処からともかく、スパナが飛んできて、ゴートの後頭部に直撃した

「すみませ〜〜〜ん 何故かスパナが、そっちに向かって、勝手に飛んでいきました」
飛んできた方から、整備班の声がした

「神よ…… これも試練なのですか?」

お前一人で喋ってると、話が進まないからしばらく黙ってろ

「か、神よ………… がくっ」

ゴートは、気絶した

「…………まぁ、ゴート君なら放っておいて、大丈夫でしょう」

「これは、痛いぜ。60cmのスパナだ。こんなの、普段は使わねぇのに」

「ああ〜 怖かった…」

3人の反応が、バラバラである。どれが誰か、言うまでもないだろう

その頃、後ろの方では、全く相手にされなかった上に、バカ扱いされた、ガイがいじけていた



「ふんふん、ふふふ〜〜ん、ふんふ〜ふふふふん♪」

ご機嫌な様子で、鼻歌を歌いながら、ユリカが廊下を歩いていた

ちなみに、鼻歌は、200年近く前に、はやったゲーム(某大戦)の主題歌だ

何故これを、歌っているのかというと、ただ単に、作者がこのゲームが、大好きだからである

それは、置いといて、とりあえず、話を元に戻そう

ユリカは、何処に向かっているかと言うと、

「アキト〜〜 ユリカが来たよ〜〜」

我らがテンカワ アキトの部屋であった

コンコン ピンポンピンポン ドンドン ピンポピンポピンポピンポ〜〜〜〜〜〜〜〜ン

非常に近所迷惑だ

「ぶぅ〜 何でアキト出て来ないのかな?」

ユリカが、扉の前で頬を膨らませていると、急に、その扉が開いた

「何ですか? 艦長」

「あれ? ルリちゃん。何でルリちゃんが、こんな所にいるの?」

出てきたのは、アキトではなく、ルリだった

「艦長こそ、どうしたんですか?」

「私はね、アキトに会いに来たの!」

「そうですか、アキトさんは今、表に出ることが出来ません。もう少し後に来てくれませんか?」

「え〜〜〜〜 何で〜〜」

「それは……」

「あれ、ルリちゃん。お客さん?」

ナイスで、バットな、タイミングで、アキトが、バスルームから出てきた

「ア、アキト… 何で… 何で…」

「何言ってるんだ?」

「アキトの不潔〜〜」


「……という訳で、私は、アキトさんに、何故ここに来たのか、詳しい事情を訊きに来たんです」

「な〜〜〜んだ。そうならそうと、早く言ってくれればよかったのに」

「話を聞こうとしなかっただろうが……」

ようやく、落ち着いたのか、お茶をすすりながら、3人は会話をしている

「ところで、アキト」

「何だよ?」

「私に訊きたい事って何?」

「ああ…… それのことか」

「私が知ってる事なら、何でも教えてあげるよ!」

「……親父達の事、知ってるだけ教えてくれ」

「え、おじ様達のこと? それなら、アキトの方がよく知ってるんじゃないの?」

「………よく言うよ」

「えっ?」

「ルリちゃん 俺は、食堂に挨拶に行って来るよ」

「あ、私も一緒に行きます。お昼まだですし」

「そっか、じゃあ、行こうか」

アキトとルリは、立って、食堂に向かって歩き始めた

「……あ、待ってよ〜〜〜 アキト〜〜〜」

置いてけぼりをくらったユリカは、急いで二人の後を追いかけた


「ねぇ〜 アキト」

「……………………」

「アキトってばぁ〜〜〜」

「……………………」

さっきから、ユリカが話しかけているが、アキトは見向きもしない

痺れを切らしたユリカは、近くにあったゴミ箱から、空き缶をとりだして

「ねぇ〜、アキトってば! このこのこの!」

アキトに、力一杯投げつけた

しかし、アキトは、後ろに目が付いているかのように、全てを避け、片手でキャッチした

「わっ! アキトさん 凄いですね!」

横にいたルリも、アキトの反射神経に、驚いている

「危ないだろ! ユリカ いきなり何するんだ!」

「だって〜 無視するんだもん」

「だ、だもんって…… いい年こいた大人が使うなよ……」

「そんなことより、教えて! アキトのおじ様達に、何があったの?」

「……お前、本当に何も知らないんだな…… 分かった、教えてやるよ」

「本当?!」

「ああ、 でもその前に!」

何時の間にか集まった、ギャラリーが、アキトの言葉に、一瞬緊張して

「空き缶は!」

「くず籠へね♪」

「これは、社会の常識です」

アキト達3人のボケに、盛大にずっこけた


「俺の親父達は、殺された。お前の見送りに行った日に、空港で」

「え、そうなの」

「俺は、真相次第では、お前だって殺す、殺すかもしれない」

「……そっか、アキトは、おじ様達を亡くしてから、ずっと一人で生きてきたのね」

「い、いや… ある人達に、引き取ってもらえたんだけど」

「ううん、無理しなくていいんだよ アキトの気持ちは、全部分かってるから」

「人の話を聞けよ……」

「これからはね、私がアキトの、寂しさを紛らわさせてあげる」

熱のこもった視線を、アキトに向けようとしたが、アキトはそこにいなかった

「テンカワ アキトです! よろしくお願いしま〜す」

わぁぁぁぁ  ぱちぱちぱち

何時の間にか、アキトは、ホウメイ達のところに行って、自己紹介をしている

その横には、ちゃっかりルリがいる

「アキトォ〜」

ユリカが、アキトの所へ行こうとすると、メグミから通信が入った

「艦長 ルリちゃん 至急ブリッジに集まってください。重大発表があるそうです」

「へ? 分かりました」

ユリカは、スグにブリッジに向かったが、ルリは、名残惜しそうに、アキトの方を見つめていた

「…………アキトさんのチキンライス」

「その用件が終わったら、食べさせてあげるよ」

「………はい、分かりました。約束ですよ」

それだけ言うと、ルリもブリッジの方に走って行った


「これまで、ナデシコが目的地を、秘密にしてきたのは、妨害者の目を欺くためです」

ブリッジクルーの集まった中、プロスが中央に立って、説明をしていた

「これよりナデシコは。スキャパレリプロジャクトの一環を担い、軍とは別行動をとります」

ちなみに、この映像と会話は、全クルーが見られる様にしてある

プロスの言葉の後を、フクベ提督が続けた

「我々の目的地は火星だ!」


「え〜〜〜!」

そのモニターを見ていたアキトは、ナデシコの目的地が、火星と知って、大声をあげた

「こら、サボってんじゃないよ!」

ガコォォン

ホウメイの投げた中華鍋が、アキトの頭に見事当たって、空中を舞った

「火星に、また行ける…… ぐはぁ」

感慨にふける間もなく、その中華鍋が頭に降ってきた


「そんな! 地球は見捨てると言うんですか!」

軍人であり、比較的常識人の、影の薄い、気の弱そうで、頼りなさそうな男−アオイ ジュンが反論した

「木星蜥蜴が侵攻を開始した頃、多くの地球人が、火星や月に移民していました。

 しかし、連合宇宙軍は、それらの人を見捨て、地球周辺にのみ、防衛ラインを引きました

 火星や月に、残された人はどうなったのでしょう?」

「どうなったんですか?」

「分かりません。しかし、確かめに、行く価値はあると……」

「ないわね。そんなもの」

プロスの言葉を遮り、キノコが兵士を連れて、ブリッジに乱入してきた

その兵士の殆どが、武装しており、その武器をクルーに向けていた

「ムネタケ!血迷ったか!!」

「悪いわね 提督。この船をいただくわ」

フクベ提督の言葉にも、キノコは耳を傾けない

「他の場所も、私の部下が制圧してるわ。おとなしくした方が、身の為よ」

「いやぁ〜 困りましたな。ナデシコは、ネルガルが私的に運用するという事で、軍とは話がついているんですが」

これだけの数を、相手にしているのに、プロスは少しも動揺していない

「そんな事、私は知らないわ」

しかし、キノコには、プロスの言葉の意味が分からなかった

「たったそれだけの、人数で何ができる」

「勘違いしないで、ほら、来たわよ」

そうキノコが言った瞬間、ナデシコの目の前に、大きな戦艦が浮上してきた

《ユゥゥゥゥゥリィィィィィィカァァァァァァァァァ》

きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん

その戦艦からの、謎の衝撃波により、ナデシコクルーは体が痙攣し、

「お父さま!」

  ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん

今度は、ナデシコ内部からの、超音波により完全にダウンした

ダブル超音波より立ち直ったクルーは、改めて目の前の人を見た

映っていたのは、ガイゼル髭のおじさん 一言で言うなら、サリーちゃんのパパである

《地球連合宇宙軍提督、トビウメ艦長のミスマルである。機動戦艦ナデシコよ 直ちに停船したまえ》

「どうしてです お父様?」

《残念だが、宇宙連合軍には、木星蜥蜴と互角に戦えるほどの、強力な戦艦を、みすみす手放すほどの余裕がない》

早い話が、ナデシコをこちらによこせ、というわけである

「いやぁ〜 さすがミスマル提督 実に分かりやすい。 では、これから交渉という訳でよろしいですかな」

プロスがぺシっと、デコを叩きながら言った

《よかろう ただし、艦長とマスターキーは我々が預かる》

「えっ!」

ユリカが、マスターキーの場所まで歩いた

「艦長 我々は軍人としてではなく、民間人として火星に行くのだ。抜く必要はない」

《フクベさん これ以上生き恥を晒すおつもりですか。ユゥリィカ〜 お父さんが間違った事言ったことあるか?》

「艦長 抜くな! これは敵の罠だ!」

「ユリカ! ミスマル提督が正しい!」

「え〜〜〜と」

プシュウ

「抜いちゃいました〜」

マスターキーを抜いたということは

「相転移エンジン活動停止……… これでナデシコは全くの無防備ね」

説明ご苦労様 ルリちゃん


「ここで、あなた達はおとなしくしてなさい」

キノコ達によって、クルーは、全員食堂に放りこまれた

「自由への夢は、一日にして途切れるか……」

「そんなことはなぁい! このダイゴウジ ガイ様がいるかぎり、奴らのスキにはさせん」

「骨折している奴が言うセリフかよ」

「そんなものは、既に治った! 正義のヒーローは、何事にも屈しないのだ!」

「それ、人間じゃねぇよ……」

ウリバタケとガイが、訳の分からない会話をしている

「ああ〜 残念… 戦艦に乗れば、カッコイイ人に出会えると思ったのに」

「まぁ、こんなのもありなんじゃない」

こちらは、メグミとミナトの会話。 緊張感というものが全くない

「アキトさん、チキンライスお代わり」

「ははは、よく食べるね、ルリちゃん」

「………お昼ご飯ですから。それに、アキトさんのチキンライスなら、何杯でも食べられます」

「ありがとう ルリちゃん」

…………一番緊張感がないのは、この二人だ

「なんだなんだ! みんな暗いぞ! よぉし ここは俺様が、元気の出るビデオを見せてやろう!」

本当に、足が治ったのか、飛び跳ねながら、大声を出しているガイ

「テンカワ ルリ坊 何か始まるみたいだよ」

ホウメイにより、二人の甘い時間(ルリ主観)は壊された

「何が始まるんですか?」

「さぁ、ビデオで上映会とか言ってるけどね」

テレビの方を、見てみると、ウリバタケが愚痴をこぼしながら、何か作業をしていた

「これすっげぇ旧式のビデオだからさぁ、今のテレビに繋ぐの大変なんだよな…… ほら、出来たぞ」

「サンキュウ 博士! では、スイッチ オン!」

ガイが張り切って、スイッチを入れると出てきたのは、

無駄に暑苦しい音楽、滅茶苦茶顔が濃いキャラ、そして、お約束のロボット

「な、何だ これは…」

「幻の名作【ゲキガンガー3】 全39話 燃え燃えだぜ!」

遠くの方から、それを見ていたアキト達は、呆れていた

「…………アキトさん あれは何ですか?」

「……ゲキガンガー3って言う昔のマンガだよ。確か俺が子供の時にやってた」

「アキトさんは、見てなかったんですか?」

「うん。一緒に住んでた奴がね、『こんな物見てたら、おかしくなっちゃう』って言って、見させてくれなかった」

「そうですか…… 気になってたんですけど、アキトさんは、どんな人達と暮らしてたんですか?」

「良い人達だったよ。事故で身寄りの無くなった俺を、何も言わずに、引き取ってくれたんだから

 ただ、一人一人の個性がかなり強いけどね。ちょうどこのナデシコみたいに」


トビウメ

「ユリカ、少しやつれたんじゃないのか」

「やですわ お父様。お別れしてまだ二日です」

「まぁ、取り合えず好物のケーキを沢山お食べ」

「それはともかく、お父様、テンカワ アキトって覚えてますか?」

「テンカワ? ……はて?」

「火星でお隣だった子ですわ」

「おお 思い出したぞ あのテンカワがどうかしたのか?」

「そのアキトが、ナデシコに乗っているんです」

「なに! そうなのか」

「はい、お父様。テンカワの家が、何故火星で殺されたか、ご存知ありませんか?」

「殺された? それは穏やかではないな…」

「お父様も知らなかったんですか?」

「……………うむ」

「そうですか……」

プシュウ!

扉が開いて、交渉が終わったのかプロスが出てきた

「お待たせしました」

「結論は出たかね?」

その問いに、プロスは眼鏡を直しながら、静かに言った

「はい。ナデシコはあくまでネルガルの所有物であり、一切の権限は受けないと」


再び ナデシコの食堂

「うぉぉぉぉぉぉぉ やっぱりゲキガンガーは最高だぜ!」

ガイが、涙を流しながら力説している

「しかし、本当に暑苦しいなこのマンガ」

「武器の名前をいちいち叫ぶのは、音声入力だからか?」

「ちっがぁ〜〜う! これが熱血なんだよ! 魂の叫びなんだよ!みんなこれを見て、何にも感じないのか?

 奪われた秘密基地!閉じ込められた人質達! 何とかしてあげようと思わないのか!」


「おい!うるさいぞ!何をしている!」

ガイが、あまりに熱血しているもんだから、見張りの兵士が、うるさがって止めに来た

「いいじゃないですか 別に少しぐらい騒いでも」

鬱憤をはらすかのように、メグミが、反論した

パシィ

「きゃあ!」

「メグちゃん! ちょっと殴ることないじゃない!」

「うるさい!お前も痛い目に遭いたいのか!」

そう言って、軍人は、ミナトにも、ビンタをしようと、右手を振りかぶった

「っぅ!!!」

ミナトは、目を閉じて、歯を食い縛ったが、ビンタはこなかった

不思議に思って、目を開けてみると、軍人の振りかぶった手を、アキトが止めていた

「いい加減にしろ! 女性に暴力をふるう軍人なんて最悪だぞ」

「う、うるさい!お前も逆らうつもりか! なら 容赦はしな…… うおぉ」

強がりを言っている軍人を、アキトは一本背負いで投げ飛ばした

ただし、普通の一本背負いではなかった

言うならば、逆一本背負いと言ったところか。相手の懐から投げたのではなく、背中から投げ飛ばした

これは、物凄く痛い。まともな受身ができない上に、顔面などを強打するのだから

逆一本背負いをかけられた軍人は、白目になって気絶した

「ったく、リュウジさんを見習え」

アキトは、服を直しながら、メグミに近寄っていった

「大丈夫?」

「……………」(ぽぉ〜〜)

「もしもし?」

「……………」(ぽぉ〜〜)

「お〜〜〜い」

「……はっ! だ、だ、だ、大丈夫です」

「そう、よかった。えっと 貴方はどうですか?」

今度は、ミナトに話しかけた

「わ、私も大丈夫よ! ありがとね 助けてくれて」

「いえ、大した事はしてませんよ。ああいう輩は、俺は大嫌いだから、ぶちのめした。ただそれだけの事です」

「そう。ああ、名前まだ言ってなかったわね。私は操舵士のハルカ ミナト。よろしくね」

「わ、私は通信士のメグミ レイナードです。よろしくお願いします」

「えっと、俺はコックのテンカワ アキトです」

「よろしくね アキト君」

「ア、アキトさん 頑張りましょうね」

何故かメグミは顔を真っ赤にしながら、アキトに握手を求めた

ミナトは、少し赤いが、まだ大丈夫だろう

(くっ!! もしかして 新たなるライバル誕生ですか!)

この時、ルリの周りにいた人は、ルリが瘴気を出していた、と語った

「こうして軍人を倒したからには、反撃を開始しようか!」

そんなルリが、見えていないのが幸運、アキトが大声で皆に同意を求めた
『おおぉぉぉぉ!!!』

こうして、ナデシコクルーの反撃が始まった


トビウメ

《こちら護衛艦パンジー! チューリップが活動を再開しました! 本艦!操縦不能です》

チューリップが、トビウメの護衛艦 パンジー、クロッカスを呑み込んだ

「チューリップ生きていたのか…… さぁ ユリカ、マスターキーを ユリカ?」

《ここですわ、お父様》

トビウメの甲板に置いてあるヘリからの通信だ

「ユリカ なんで、そんなとこにいるんだ!」

《お父様 本当の事を教えてください! アキトのおじ様達は殺されたんですか?》

「ユリカ…… 確かにそんな話を聞いたような気もするが」

《そうですか、分かりました。プロスさん 出してください》

《はい、分かりました。では、ミスマル提督 お達者で!》

「ユリカ!何処へ行く気だ!」

《ナデシコに戻ります。あそこは、私が私らしくいられる場所なんです》

「何をやっている! マスターキーを渡すんだ!」

《出来ません! お父様はどんな時でも艦を見捨てるなっと教えてくれたじゃありませんか!

 それに、あそこには、私の好きな人がいるんです》

「なにぃぃぃ!!!」


ナデシコ

《これから、戻ります。お迎えよろしく!》

《ク、クルーが脱走しました! か、格納庫占拠……わぁぁ》

《これから、そこに行ってやる。首を洗って待ってろ!》

ゴートが、銃を片手に通信に乱入してきた

「な、何でこうなるのよ! ぎゃぁ!」

ガコ〜〜ン

艦長席に座ってたキノコの頭に、中華鍋がクリーンヒット!

《ホウメイさん!》

「ははは ちょろいもんさね!」

「ブイ!!」

ブリッジにいた兵士を、たった二人で倒したホウメイとミナトが、笑っている


格納庫

「よいっしょっと!」

掛け声と共に、アキトは兵士二人を、回し蹴りで仕留めた

「神よ!お許し下さい!」

ゴートは、某格ゲーのキャラの必殺技のセリフを言いながら、兵士相手に、拳のラッシュを叩き込んでいる

「おらおらおら! 整備班の底力見せてやるぜ!」

ウリバタケ達は、スパナやら、溶接機で対応している

「………皆さん 凄く強いですね」

「ホント、軍人さん達なんて蹴散らしてる」

ルリとメグミは、格納庫のコンピュータールームに来て、エステバリス発進の準備をしていた

《よっしゃ!俺様の準備はOKだぜ!》

エステバリスに乗っていたガイから通信が入った

「じゃあ マニュアル発進 よ〜い」

「ドン」

《おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ》

勇ましい掛け声と共に、ガイの乗った空戦フレームのエステバリスが発進した

「よし、後はブリッジに戻るだけだ!」

格納庫を完璧に占拠したゴート達が集まってきた

「分かりました……アキトさん」

「ん? どうしたの ルリちゃん」

「私を担いで、ブリッジまで走ってください。その方が早く着きます」

「え?そ、それは」

「ああ〜〜 私もお願いします。アキトさん」

「メグミちゃんまで……」

「早くしろテンカワ! 艦長達がブリッジに到着するぞ!」

「わ、分かりましたよ!」

アキトは、ルリとメグミを肩に乗せ、全速力で、ブリッジに向かって走り出した


ブリッジ
「いぇい!お待たせしました」

ユリカ プロス到着

「超特急で到着!」

「……ブイ!」

「やっと、到着か…」

「ご苦労だったな、テンカワ」

メグミ ルリ アキト ゴート到着

「あら、ずいぶん大胆な登場ね メグちゃん、ルリルリ」

「えへへへへ……」

「……ミナトさん。ルリルリって何ですか?」

「あだ名よ、あ・だ・名♪」

「はぁ……」

こんなやり取りをしている内に、ユリカがマスターキーを入れた

「電圧正常 相転移エンジン再起動開始」

「システム回復 その他まとめてオールOKです」

【よく出来ました】やら【百点満点】等のウィンドウが浮かぶ

「ルリちゃん、グラビティ・ブラスト発射までどれぐらいかかる?」

「三分もあれば可能です」

「分かった。ナデシコは浮上後、エステバリスの援護、グラビティ・ブラストが準備出来次第、敵を殲滅します」

『了解』


「はぁ〜はっはっは〜 見たか!これがダイゴウジ ガイ様の実力よ」

ガイの操るエステバリスは、器用に、チューリップの触手を避けている

だが、何も武器を持っていないため、ただ、逃げ回っているだけである


「あれじゃあ、その内掴まるな。テンカワ お前もエステで出てくれ」

「はぁ 分かりました」

アキトは、再び格納庫に向かって走って行った


「ぬぉぉ!ガイ、スーパーピーンチ!!」

ゴートの予想通り、ガイは触手に掴まりかけていた

ドゴォォォォォォォォン

その触手を、武器を持って出てきたアキトが吹き飛ばした

「サンキュウ アキト!」

《気にするな それよりも、ほら お前のライフルだ》

「おお! これさえあれば百人力だぜ! 行くぞ アキト」

今度は、二人でチューリップを攻撃し始めた

さすがの、チューリップも余裕みたいなものが無くなった様である

「グラビティ・ブラスト 充填完了」

「アキトさん、ヤマダさん、チューリップから離れてください」

《了解》

《俺は、ダイゴウジ ガイだぁ〜〜》

二人の機体が、チューリップから離れると、ナデシコはチューリップの中に船首を突っ込んで

「グラビティ・ブラスト発射ぁ」

ドゴォォォォォォォォン

グラビティ・ブラストをぶっ放して、チューリップを破壊した


トビウメ

「ナデシコ 上昇を始めました。提督 追撃はどうしますか?」

「鈍足の本艦では、ナデシコには追いつけん。それよりも、アオイ君、ユリカが好きな男は誰なんだ?」

「ユリカ……」

ユリカに、トビウメに置き去りにされたジュンが、空に飛び去って行くナデシコを見て呟いた











後書き

テスト期間中なのに、堂々と小説を書いている執筆獣グランです

さて、今回のゲストですが、ユリカだけではなく、作者にも途中まで忘れられていたアオイ ジュン君です

ジュン「どうも。ナデシコの不幸役担当のアオイ ジュンです」

君がそのセリフを言うと、真実味があるね

ジュン「作者にも、忘れられてたぐらいですから」

まあまあ、可哀相だと思ったから、こうして後書きのゲストにしてあげてるんだよ

ジュン「にしても、僕のあの紹介は何ですか?」

気にしちゃ、いかんぜよ

ジュン「それに、あなたの名前の執筆獣ってなんですか?」

これは、僕が、鋼の城さんにつけてもらった名誉ある名だ!これをバカにするなら出番なくすぞ

ジュン「あわわわわ ごめんなさい」

素直でよろしい

ジュン「にしても、このアキトは強いですね」

うん。ある事を考えてるから、強くなきゃいけないんだ

ジュン「ある事? 何ですか それは」

それは、秘密です

ジュン「それに、2話目でメグミさんを落としてるし」

4話だと何かと都合が悪いからねぇ

ジュン「どう言う意味ですか?」

これも、秘密です

ジュン「秘密だらけですね」

ネタを簡単にばらす人なんていないぞ

ジュン「それも、そうですけど……」

おっと もうこんな時間 では、皆さん!3話でまたお会いしましょう!

ジュン「誤魔化さないで……」

 

 

代理人の感想

あ、あはははは(汗)。

アレは「最後の幻想無制限」のパクリだったんですけどね。

まぁ、お気に召していただけたようでナニよりです。

 

・・・しかし、10歳にして完璧に恋愛感情を自覚してるとは・・・マセガキめ(爆)