機動戦艦ナデシコ

白銀と紫炎の双天使

 

第4話 火星

 

 

 

 

ナデシコの医務室…

 

「どう?結果は。」

 

ガーネットがそう問った。

結果と言うのは精密検査の結果である。

ディオはちゃんとした精密検査がしたいと言うアレクの願いを断り続けているので、

仕方なく気を失っている今の状況を利用することにしたのだ。

 

「問題無し………とは言いがたいね……」

 

アレクが少し暗い顔をする。

 

「……どう言う事?」

 

「これ見れば解る。」

 

カルテを受け取るガーネット、全部読んで驚いた。

 

「これって!」

 

「身体がもう限界に近い。

普通の人間が持つ自己修復能力にすら劣る……良くこれで動いてるもんだ。」

 

アレクはそう言う。

 

「さっき頭打ったのには何ら異常は無い、すぐ目覚めるだろうけど……さすがにこれはね……」

 

「自己修復能力を高めるナノマシン使用する事は?」

 

「今の状況だと………無理だ。」

 

「ナノマシン同士が戦争起こして修復どころじゃなくなる……か……」

 

ガーネットは呟く。

 

「血液の循環もうまく行っていない……このままだと、どこか壊死を起こしたりする。」

 

「なんとかしないと……」

 

「解ってる……ディーネ。」

 

「何?」

 

ディーネがすぐ姿を現わす。

 

「治療用ナノマシンのデータ、ありったけ出せ。」

 

「わかった。」

 

「射ち込む気?」

 

「やるだけの事をやるしかないだろ?

他のナノマシンとケンカせずに自分の仕事が出来るナノマシンを探す。

ディアボロスのデータベースになら一種くらいあるはずだ。」

 

アレクはそう言う。

 

「持ってきたよ。」

 

ディーネが戻って来てそう言うと、アレクの近くにウインドウが開く。

 

「さて……………」

 

アレクはウインドウを見て一つ一つナノマシンデータを見る。

 

「これでもない………これでもない…………」

 

「ぐ……ぐぅあ……あぐ……………がぁ………」

 

「!?……うそ!?血圧上昇!皮膚下血管破裂!」

 

「なんだと?!」

 

ディオが突然苦しみ出した。

 

「スタンピード(暴走)!?バカな!速すぎる!」

 

「心音低下!このままじゃやばいよ!」

 

「ガーネ!ディオに何か噛ませろ、痙攣で舌噛む。」

 

アレクが言う。

 

「やったよ!」

 

「鎮静剤は?!」

 

「今射ち込む!」

 

ガーネットが無針の注射器で鎮静剤を射ち込む。

 

「がぁあああああ!」

 

だが状況が治まる気配が無い。

 

「ダメ!効かない!」

 

「クソ!このままじゃ……」

 

アレクは迷っていた。

一つだけ、暴走も止めて、

自己修復能力を回復させる強力なナノマシンを、

自分のナノマシンから精製して射ち込むか、射ち込まないで別の方法を探すかを。

 

 

 

その時、ディオは夢を見ていた……

悪夢と言う夢を………過去の記憶を……

 

 

 

 

 

『ほらほら、どうしたのさ?まだ寝ちゃダメだよ?』

 

『結構人間て脆いんだね……』

 

『凄い!凄いよ!最高のサンプルだよ君は、テンカワ君♪』

 

『何そんなに怒ってるんだい?生かしてもらってるだけでもありがたいと思ってくれないと……』

 

『もう、ダメだね……これ以上取れそうなデータは無いや……北辰さん、好きにしちゃって良いよ。』

 

……ヤマサキ……

 

『いやぁ〜〜〜!アキト!アキト助けて!アキトォ〜〜〜!!』

 

『あははははは、どうだい?目の前で妻がああ言う事される気分は?』

 

………憎い………憎い………

 

『遅かりし復讐人よ。』

 

『滅。』

 

『家畜の分際で、良くそんな事が言えたものだな…』

 

『どうだ?妻が目の前で犯されるのを見た気分は?』

 

………北辰………

 

『どんなに強き鎧を纏おうと、心の弱さは隠す事はできん!』

 

『さぁ、次はどこを刻もうか?』

 

『くははははは!良いぞ!もっと叫べ!』

 

……殺す……殺す……憎い……殺す………

 

『アキトォ〜〜!!イヤァァ〜〜〜〜〜!』

 

………許さない………絶対に………絶対に……………殺シテヤル…………

 

 

 

 

ディオの……アキトの過去……

復讐に全てを賭けた者……黒き皇子………

 

「コロシテ…………殺してやる………ほくし………や……さき………」

 

「「!!」」

 

アレクとガーネットは驚く。

ヒスイから聞いた話しでは既に北辰もヤマサキも殺し復讐は終えていたはずである。

なのに、今……憎悪と殺気を込めて声を発したのだ。

 

「(……そう言うことかよ……)……仕方ない……」

 

アレクは自分のナノマシンから治療用のナノマシンを作り出す。

 

「まだ………捕われてるんだ………復讐に………」

 

ガーネットは悲しそうに言う。

 

「優しい性格であるゆえにか………いったん憎悪に身を任せると抜け出せないんだな。」

 

創り終えた治療用ナノマシンを無針注射器につめながらアレクは言う。

 

「………誰も望んでないよ………復讐なんて…………アキト……」

 

プシュ…

 

「グガァ……が………あ……………」

 

一度大きく痙攣して、ディオは静かになった。

 

「心音と血圧は?」

 

「落ち付いてきた……良好よ。

それに、自己修復能力も回復したみたい、って言うか回復し過ぎね。

この修復の速さは普通じゃないわよ………何を射ったの?」

 

ガーネットが問う。

 

「XGO−5………迷ったけど使った。」

 

「XGO−5?!アンタねぇ!後遺症があったらどうすんのよ!」

 

XGO−5とはアレクとガーネットが居た時代の土星で、

一次的に使われていた治療用ナノマシンである。

ただ、その効力はあまりにも強力で、半身不随になったりと神経系の後遺症が数多くあった為、

使用禁止になったナノマシンである。

 

「……後遺症が残ったら残ったで、それは俺が責任持って治療するさ。

いくら俺でも死人は生き返せないからな………それに後遺症が在った方が無茶しなくて良い。」

 

アレクは言う。

 

「まったく………」

 

ガーネットは呆れる。

 

「さて、こっちは落ち付いたし………外はどうなってるかな……」

 

アレクはそう呟き、外の戦闘の映像を開いた。

 

『これでトドメだぁ!ガァーイッ!スゥーパァーー!!ナッパァーーーー!!!

 

丁度ヤマダが敵戦艦を落とすところだった。

 

「どうりで静かだと思ったよ……」

 

アレクは呟き、煩いのが居たはずのベットを見る。

 

「治ったの?」

 

「治ったんじゃないの?ゲキガンガー魂で。」

 

「んな非常識な……」

 

ガーネットは呆れるしかない。

 

ゲキガン!シュゥーーー!!

 

アキトが特攻して敵戦艦を沈める。

 

「…………良く死ななかったな………」

 

「知らない事って……時に罪よね……」

 

アレクとガーネットは言う。

 

「あれで最後みたいだな…」

 

「ルシフ、損害は?」

 

「ナデシコは無傷、タカスギ機が被弾1、マキ機、カザマ機が被弾3、アマノ機小破、

スバル機、ヤマダ機、テンカワ機が中破。」

 

ルシフがそう答えてすぐ消える。

 

「へぇ………」

 

「結構良い成績じゃない?この時代のレベルだったら。」

 

「そうだな。」

 

アレクは頷く。

 

『アレクさん、ガーネットさん。』

 

「「何?」」

 

ヒスイのウィンドウが開く。

 

『戦闘の採点を。』

 

「ん〜……そうだな……」

 

「70点♪」

 

『なにぃ〜〜!?どう考えても100点満点だろうが!』

 

ヤマダのウィンドウが割りこんできた。

 

「アキトはともかく、しっかりと訓練を受けてるはずのヤマダとスバルが中破してるのがマイナス点。」

 

アレクは言う。

 

『『うっ……』』

 

リョーコとヤマダは何も言えない。

 

『すぐに突っ込むからだよぅ。』

 

『普通はライフルやなんかで敵を近付かせないのが基本よ。』

 

『おお、珍しくシリアスイズミ。』

 

ヒカルとイズミが言う。

 

『う、うるせぇ!』

 

リョーコはそれしか言えそうな言葉が見付からなかった。

 

「ま、なんとかなりそうだし、安心したよ。」

 

アレクが言う。

 

「そう言えばヤマダ君。」

 

『ダイゴウジ=ガイだ!』

 

「そんな事はどうでも良いの!……なんでそこにいるわけ?」

 

ガーネットは問う。

 

『俺様がパイロットだからだ!』

 

ヤマダはそう返す。

 

「骨折してたのに?」

 

『そんな物は熱血で治った!』

 

((((((((……絶対無理……))))))))

 

ヤマダの答えを聞いた者は皆そう思った。

 

『……バカ?』

 

『うん、バカだ。』

 

ルリとラピスがそう言う。

 

「……君の身体………調べさせてもらって良い?」

 

嫌だぁ〜〜〜!改造は嫌だぁ〜〜〜!!

 

誰も改造なんて言ってねぇ!!!

 

まぁこんな感じでナデシコは平和であった。

 

 

 

火星降下の最、ユリカが重力制御を忘れた所為で重傷者が2名ほど出る事になったのだが、

これはまた、別の話し……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<軍神の後書き>

 

ごも、御無沙汰です。

やっと書けた……

もう少しでディオ死なせちゃうとこだったし。(汗)

 

どうしてこうなのかな……俺って……

 

では、またの機会に……

 

 

 

代理人の感想

>ユリカが重力制御を忘れた

・・・・・よく聞くけど、これって艦長というよりその下の人間の責任じゃないかな?

艦長は艦の動きそのものを決めるのが仕事。

艦長の言うとおりに動き、また艦長に判断材料を与えるのが各部署の仕事です。

艦長がいちいち艦の重力制御まで自分の手でやってられるわけがありません。

そこらへんを制御して、必要があれば問題を指摘するのが部下の勤めでしょう。

 

つまり「重力制御ができない可能性があります」と誰かが報告してて、

それでも強行したならはっきりユリカの責任ですが

そうでないのであればそういった報告をしなかった、あるいはできなかった人間の責任ではと思います。

 

まぁ、重力制御がなくなった瞬間にアキトが「ユリカ〜」と叫んでしまったので

ユリカに責任があるように思えてしまった、というあたりが原因でしょうか?