機動戦艦ナデシコ

白銀と紫炎の双天使

 

第5話 チューリップでGo!

 

 

 

 

 

「……う………」

 

「眼が覚めたか?少し待て、アレクを呼んでくる。」

 

ディオが目を覚まし、ディーネがアレクを呼びに行く。

 

「……ここは……医務室か……?」

 

ぼやける視界の中、ディオは自分がいる場所を把握する。

 

「……何故俺は寝ていたんだ?」

 

「覚えてない?階段に落ちそうになった風間さんを助けて自分が頭打ったんだよ?」

 

「…………アレク………?…」

 

微かに聞えた声に顔を上げるディオ。

 

「はい、バイザー。」

 

アレクからバイザーを受け取り掛けるディオ。

 

「俺は…どうして……」

 

「もう一度言うよ?

階段に落ちそうになった風間さんを助けて自分が頭打ったんだよ。」

 

「そうか……」

 

今度はしっかりと聞き取れた、ディオは頷く。

 

「今火星でね、オリュポンス山に向ってる。

歴史通り、アキトとメグミがユートピア・コロニーに向ったよ。」

 

ガーネットが言う。

 

「艦長には釘を刺しといたけど……どうなるんだろうね?」

 

「さあな……」

 

ディオは言う。

 

「あ、あの、ディオさんの目が覚めたって……」

 

イツキが医務室にいた。

 

「何か用か?」

 

「あ、あの、助けていただいて……」

 

「…気にするな……」

 

ディオは言う。

 

「で、でも。」

 

「気絶したのは気を抜いていた俺の所為だし、

あの状況では君に非も無い、俺から言わせれば、君に怪我が無くて良かった、と言う事だ。」

 

ディオの笑顔の言葉でイツキの顔が真赤になった。

 

「………あれって、口説いてる?」

 

「さぁ?………天然なんじゃない?」

 

コソコソと話すアレクとガーネット。

 

「ディオ!」

 

トトトトトトっと走って医務室に入って来たのはラピス。

そのままディオに抱きついた。

 

「よかった。」

 

「心配掛けたな……ラピス。」

 

ラピスの頭を撫でるディオ。

 

「ねぇ、もうオリュポンス山に着いたの?」

 

「とっくについてますよ、

リョーコさん、ヒカルさん、マキさん、プロスさん、ゴートさんの5人で、

研究所の調査に行っちゃいました。」

 

イツキは答える。

 

「あ………そう……」

 

「一言言ってくれれば良いのに…」

 

アレクとガーネットは言う。

 

「さて………動ける?」

 

「ああ、軽いくらいだ。」

 

ディオは起き上がってベットから降りる。

 

「あ、あの…寝てなくても…」

 

「すでに全快してる、問題無いよ………さて、格納庫行きますか?(…副作用は無しか…)」

 

アレクはそう言う。

 

「どうしてですか?」

 

「今ここにいるバイロットはカザマさん、ヤマダ、ディオ、俺にガーネ……

カザマさんとヤマダだけで何か有った時護り切れる?」

 

「そう言えばそうですね……」

 

イツキは頷く。

 

「でも………無理しないで下さい。」

 

「別に無理はしてないさ……大丈夫だ。」

 

ディオはそう言った。

 

 

 

 

 

 

「お〜い、アキト〜♪来ちゃった〜♪」

 

「「「「はぁ〜…」」」」

 

ナデシコブリッジでアレク、ガーネット、ディオ、ヒスイの溜息が重なった。

ナデシコはユートピア・コロニーに来てしまっていた。

ユリカが艦長権限を全開に使い、挙句の果てにマスター・キーを抜くと言って脅した為だ。

 

「別に抜かれても良いんだけど、ナデシコの防御力をゼロにするわけにもいかんしな……」

 

アレクは呟く。

 

「……バカ……」

 

ルリが呟く。

 

「……さて………俺達は地球に行くから、8ヶ月後……」

 

アレクがヒスイにそっと言う。

 

「なぜです?………あ……」

 

「そ、ディオを治療する機材がパーツ不足で作れないのよ。」

 

ガーネットが言う。

 

「別に今すぐ行く訳じゃない、ナデシコがチューリップに入ったらだ。」

 

「そうですか。」

 

ヒスイは頷く。

 

「この後囲まれるんだよね?」

 

「ええ……」

 

「じゃ、行きますか♪」

 

「ああ。」

 

アレク、ガーネット、ディオがブリッジを出ていく。

それに気がついているのは、ヒスイとラピス、オモイカネとルリだけであった。

 

 

 

 

 

 

「ナデシコでは火星を脱出できない!」

 

朗々とアキトが連れて来た

火星の生き残りの代表…イネス=フレサンジュの声がブリッジに響く。

それはあたかも巫女の託宣の如く絶対の響きをもっていた。

 

「お言葉だが…

我々は実際こうして木星蜥蜴を撃破して火星にやってきたのだ」

 

「そうですよ!」

 

ゴートとそれに続く言葉を鼻で笑いイネスは言葉を続ける。

 

「それがなんだというの?一体貴方達が何を知っていると言うの?」

 

睨みつけるようにブリッジ上部にいる面々を見るイネス。

 

「木星蜥蜴はどこから来ているのか!なぜ火星を占拠したのか!目的は?!」

 

一切の遅滞も無くイネスは捲くし立てた。

 

「アンタの方こそ何も知らないじゃないか!

俺たちは今まで木星蜥蜴を実際倒してきたんだ!」

 

イネスの言葉に反応したアキト。

イネスはその言葉に冷笑をもって返した。

 

「君が今考えている事説明してあげましょうか?」

 

「もしかして…説明好きなんですか?」

 

メグミが言う。

 

「可愛い彼女とデートとして、

バッタやジョロを倒して俺は何でも出来るんだ…………違う?

とんだ勘違いよねぇ………」

 

メグミを無視してアキトにそう言うイネス。

 

「ち、違う!」

 

「違わないわ……」

 

[敵影確認!]

 

突如の警報とオモイカネの警告。

 

「ルリちゃん!グラビティ・ブラスト!」

 

「いつでも撃てます。」

 

「グラビティ・ブラスト!発射ッ!」

 

ユリカの号令で撃ち出されるグラビティ・ブラスト。

敵戦艦を映していたウインドゥが光で白く染まる。

 

「「「「やったぁっ!」」」」

 

勝利を確信したクルーの声。

 

『何呆けてる!さっさと浮上してディストーション・フィールド張れ!』

 

一喝したのはアレク。

 

「え?でも……」

 

『終ってない!って言うか効いてない!』

 

「え?」

 

呆然とするユリカ。

ウインドゥの光が晴れ、そこに映っていたのは…

 

「うそっ!?」

 

「そんなっ?!」

 

「耐えた?」

 

「敵もバカじゃないわ……

いつまでも同じだと思ってるからこうなるのよ。」

 

イネスが言う。

 

「ミナトさん、エンジンの方はOKです、浮上を!」

 

「え?ええ!」

 

ミナトが舵を持ち、ナデシコが浮上する。

 

『<紫炎の破壊神>ディアボロス!出るぞっ!』

 

『<白銀の戦女神>ルシフェル!行きます!』

 

『ブラック・サレナ、出る!』

 

紫、白、黒の機動兵器がナデシコから発信する。

 

「たった三機で何が出来ると言うの?!英雄願望は勘弁してもらいたいわね?」

 

『安心しな、あの程度の旧式骨董品の攻撃は当らないから。』

 

「こ……骨董品?」

 

イネスが問う。

 

「信じられないかもしれませんが、

紫と白の機体は2263年から、黒の機体は2202年から…

それぞれ未来からボソン・ジャンプ事故でこの時代に来た機体なのです。」

 

「ぼ、ボソン・ジャンプの?!未来から来た?!何をバカな……」

 

信じようとしないイネスだが、目の前の光景を見て呆然となった。

 

『遅いッ!』

 

どう考えてもパイロットが乗っていては、

できないような動きをしている黒い機体、ブラック・サレナ。

 

『それで攻撃してるつもり?』

 

ナデシコに向けて放たれる敵艦のグラビティ・ブラストを、

全て上にディストーション・フィールドで弾いている白い機体、ルシフェル。

 

『おらおらおらおらぁっ!どおしたどうしたぁっ?!』

 

ナデシコのグラビティ・ブラストでも貫けなかった、

敵艦のディストーション・フィールドを破り、いとも簡単に敵艦を落とす紫の機体、ディアボロス。

 

「……なんてこと……」

 

イネスが持っていた常識、知識が全て覆されていた。

 

『火星の生き残りをさっさと収容して!』

 

『それが終わったら退くぞ!』

 

ガーネットとアレクの声。

 

「は、はい!ヒスイさんヒナギクの降下を……」

 

「私もそれについて行くわ…」

 

「え?」

 

イネスの発言にポカンとなるユリカ。

 

「貴方達、説得下手そうだもの……私が説得するわ。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

御礼を言う、ユリカ。

 

「イツキさん、マキさん、アキトさんはイネスさんと一緒にヒナギクへ。」

 

「「「了解。」」」

 

すぐに動く3人、イネスを連れてブリッジを去った。

 

『あちゃ!一発漏らした!相殺して!』

 

ガーネットの声。

 

「でもエネルギーが……」

 

『10%ぐらいあれば方向を変えることぐらい出来るわ!

相殺は出来なくても上に弾いて!』

 

「解かりました!ルリちゃん、エネルギーの調整お願い!

ヒスイさんは射撃ポイントの誘導を!ラピスちゃんはナデシコの状況維持お願い!」

 

すぐに的確に指示するユリカ。

 

「今です!」

 

「発射ッ!」

 

ナデシコのグラビティ・ブラストが、敵艦のグラビティ・ブラストに当り、

敵艦のグラビティ・ブラストの方向を上に曲げた。

 

「やったっ!」

 

喜ぶブリッジ。

 

『私も万能じゃないから、何発か漏らすと思う、その時は同じようにお願い!』

 

ガーネットはそう言って一時通信を切った。

 

「ルリちゃん、エネルギー配分に気を配って。

ヒスイさんはグラビティ・ブラストに注意を、

ラピスちゃんはさっき言ったように、ナデシコの現状維持。」

 

「「「了解。」」」

 

言われた通りの事をする3人のオペレーター

オペレーターと言えば、もう一人居た。

 

「あ、あの……」

 

そう、ハーリーだ。

 

「?……どうしたのハーリー君。」

 

「僕はどうすれば……」

 

「何もしなくて良いです、やる事が無いならじっとしてて下さい。」

 

「う……うわあああああああああんっ!」

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……ゴンッ!

 

伝家の宝刀、ハーリーダッシュ健在……

ヒスイに冷たく言われたハーリーは泣きながらブリッジを去った。

何やらぶつかったような音も響いていたが。

 

「あ……そう言えば、ハーリー君もオペレーター……」

 

「でも、座る場所とやるべき事がありません。」

 

ヒスイが言う。

 

「それに……ハーリー影薄いし…」

 

ラピスのトドメの一言。

本人が聞いていないだけでも幸いである。

まぁ、こんな感じで火星の生き残り達を収容したナデシコは、即後退した。

 

 

 

 

 

 

「ええっ?!チューリップを使うっ?!」

 

ブリッジに集まり会議…ユリカが声を上げた。

 

「ああ、ナデシコの今のエンジン出力では火星の大気圏から出る前に落とされる。」

 

「で、でも……その……」

 

「俺達に期待しようってんなら無駄。」

 

アレクが言う。

 

「俺達だって人間だ、疲れって言うもんがある。」

 

「大気圏を抜けるためには一寸したミスでも致命傷だから……」

 

ガーネットが言う。

 

「そう言う事だ……で、最終手段が…」

 

「チューリップを通る……なのね?」

 

イネスの言葉にディオが頷く。

 

「チューリップに入るまでは俺とガーネットで護ってやるから、回りは気にするな。」

 

「で、でも、そんな事したら二人がここに取り残されちゃう。」

 

ユリカが言う。

 

「ふむ……了承できかねる作戦だな……」

 

フクベが言う。

 

「死に場所を求めてるアンタの作戦よりはマシだ。」

 

アレクの言葉にフクベがピクリと震えた。

 

「それに、俺達は単独でならボソンジャンプが出来る、それで十分逃げられるさ。」

 

「そうだよ、だから安心して。」

 

ガーネットが言う。

 

「じゃ……じゃあ………」

 

ユリカが周りを見る。

面々が渋い顔をしているが、頷いていた。

 

「じゃあ、決りだな……」

 

ブリッジを出ていこうとするアレクとガーネット。

 

「気を付けて……」

 

「また……」

 

「死なないで下さいね。」

 

ラピス、ルリ、ヒスイの順でそう言って来た。

 

「わかってる……またな♪」

 

「またね♪」

 

二人はブリッジから出て行った。

 

 

 

 

そして作戦は決行され…

ナデシコはチューリップへと飛びこんだ。

 

「これでよし……」

 

ナデシコが飛びこんだチューリップを破壊したディアボロス。

 

「周りが鬱陶しいわね…」

 

ガーネットが言う。

 

「気にする必要は無いだろ………行くぞ。」

 

「ええ。」

 

[[ジャンプ・システム起動…]]

 

ディアボロスとルシフェルがジャンプ・フィールドに包まれた。

 

「「ジャンプ。」」

 

ボソン・ジャンプをして消える二機……

そこには虹色の光だけが余韻として残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく…

 

<後書き〜♪>

 

ども、軍神です。

随分と間が空いてしまいましたが第5話でした♪

 

え〜っと…

今回は…え〜……ハーリーが可哀想だった…と言う事で…(汗)

 

では〜♪

 

 

 

 

 

代理人の感想

考えてみると、五年ならまだしも200年も先の兵器をよく稼動状態において置けますね〜。

・・・自己修復機能でも持ってましたっけ?