機動戦艦ナデシコ

兄弟で行こう!!

プロローグ「ちょっと違う過去への帰還!?」


火星の後継者の乱が終わってから早くも3ヶ月が経とうとしていた。

今、白い2隻の戦艦が宇宙を背景に本当に戦艦のスピードか?と思われる程のスピードで追いかけっこをしている真っ最中である。


「アキトさん!!
もう復讐は終わった筈でしょう!?
いい加減に帰ってきて下さい!!」



まぁ、言わずと知れた戦艦ユーチャリスとナデシコCを使った痴話げんかである。


「もう俺は君のところに帰るつもりなんてないんだよ、ルリちゃん。

俺の手はもう血で汚れすぎたんだ。

こんな俺が帰っても迷惑を掛ける事はあっても幸せにする事はできない。

…ラピスジャンプの準備が終わりしだい、ジャンプだ。

ジャンプでナデシコCを振り切る。」


「ウン…デモ、ホントに良いのアキト?」


「これで……いいんだよ」


「解ッタ。…ジャンプの準備完了したよ。」


「そんな事させません!!」


その言葉が終わるよりも早く


ドンガシャァーーー!!

と言う轟音と共にユーチャリスに激しい振動が襲った。


「何だ、ダッシュ何が起こった!!」


と黒い王子様にしては珍しく狼狽した声を出すアキト。

「ルリがナデシコCで突っ込んだ来たみたい。艦のダメージは中破、今の衝撃の所為でジャンプフィールドが不安定になちゃったよ。

正常にジャンプ出来る確率は5%以下」


「な!!ラピス、ジャンプフィールドを緊急解除!!」


「ダメ!!全然受ケツケテクレナイ!!」


「くそ!!ルリちゃん、聞こえてるんだろう!?早く船を離すんだ!!

このままだとランダムジャンプに巻き込まれてジャンパー処理をしてない人は死ぬぞ!!」


「ダメ!!アキト!!モウ、間ニ合ワナイヨ!!」


ラピスのほとんど絶叫に近い声を聞きながら、アキトは意識を手放した。


そして、二つの戦艦を包んだ虹色の光が無くなった後の場所には何も残っていなかった。


















う、明るいというより眩しい?


そして、目を開けたら俺はユーチャリスのブリッジではなく和式の部屋で布団に寝ていた。


……変だぞ、バイザーも付けていないのにどうして見る事が出来るんだ!?


という事は視覚が戻っている?


視覚だけじゃない!!


畳の匂いも感じられるし、体を触ると自分の体温もを感じられる!


さらに、朝から騒がしい小鳥の囀りまで聞こえる!!


…残るは味覚のみだが、俺は決意して歯で少し唇を切る。……そうするとちゃんと血の味がした。


ふう、何故かは知らんが五感がもどったらしいな。


本来ならもっと喜ぶべきなのだろうが、今は自分の周囲の確認が先だ。


…ここは何処なんだ?


そう思い立ち上がると違和感がある。



……目線が低いのだ。……いつもの目線よりも30cm程。


そして、自分の体を見ると………小さくなっていた。


余りの事に暫く呆然としていたら


「アキト!もう大丈夫なのか!?

お前、昨日、急に高熱を出していきなりぶっ倒れたんだぞ。

一時期はもう駄目かとも思ったんだが、一日で目を覚ますなんて大したもんだよ。

カイトが懸命に介護してくれた結果だな!!」


と言う声と同時に才蔵さんが姿を現した。


そう、才蔵さんの姿を見て思い出したのだが、ここは俺がナデシコに乗る前に世話になっていた雪谷食堂で俺が使っていた部屋である。


そして、続けて姿を現した人物の姿を見て俺の思考はフリーズしてしまった。



「そ、そんな事ないですよ。それにしても、ほんと、いきなり倒れましたからね。

ところで、もう本当に大丈夫なのか?兄ちゃん、心配したんだぞ。」


と言って俺の目を覗き込んできたのは、何と十八歳の時の俺のそっくりさん!!


「………あ、あんた、誰?」


「「・・・は?・・・」」


……俺の言葉で固まる才蔵さんと俺のそっくりさん。














・・・・・・んで、一時間後・・・・・・


何とか混乱した二人を落ち着かせて、状況の確認をするとどうやらこのそっくりさんは俺の『』の兄らしい。


俺の事は・・・・高熱に因る一時的な記憶の混乱という事で落ち着かせ、18の時の俺のそっくりさんの兄の事は一応、カイト兄さんと呼ぶ事で落ち着いた。


そして、一人で考えたい事があると言って、無理矢理二人には部屋から出て行ってもらった。


・・・それに俺の記憶だと開店の準備をしなければならない時間だしな。


さて、考えなければならない事は山程あるが、まず、第一に今の年月。


これは壁にあるカレンダーで確認できた。


2196年9月・・・・ナデシコAの出航の約一か前である。


どうやらランダムジャンプの所為で精神だけが過去に戻ってきたらしい。


しかしながら、過去において俺に兄など居なかった事などを考えると並行世界に飛ばされてしまったようだな。


第二にルリちゃんやラピス、そして、ナデシコCの乗組員についてだ。


多分であるが、ルリちゃん達もこっちの世界に来ているはずである。


といっても、こっちからルリちゃんやラピスに連絡を付ける事は出来ない。


何せ俺はルリちゃんの養父母の家の電話番号何て知らないしな。


ラピスについて言えば、今何処にいるかすら解って無い。


当たり前の事だが、この時代のこの時にラピスとリンクで?がっている訳が無いのでリンクで呼びかけても応答が無い。


さて、如何した物かと考えていると店の方に唯一ある電話が鳴り、才蔵さんが俺を呼ぶ声が聞こえた。


仕方なく俺が店の方に行くとニヤニヤという音が聞こえてきそうな笑みをしている才蔵さんが


「お前、ホシノさんていう女の子から電話だぞ!!

しかも、声から察するに・・・かなりの美少女だな?」


等と客の居る前で大声で言ってくれた〈怒〉。


その大声に対する客の反応はというと


「へー!!坊主、その年で恋人か!?」

とか

「最近の若い者は進んでますなー」等であった。


・・・いい加減にしてくれ・・・〈涙〉



・・・五分後・・・


雪谷食堂の奥の部屋にて


「ア、アキトさん・・・そ、その大丈夫ですか?」


「あ、ああ・・・・・・・何とかね」


才蔵さんや客の言及から逃げる為に俺の精神は真っ白に燃え尽きていた。


しかし、今はそれどころではない。


まず、第一にして最重要の質問しなければならないのだから。


「今更な気がするけど・・・・”あの”ルリちゃんだよね?」


「何が”あの”なのかは解りませんが・・・電子の妖精ですよ・・・・・闇の王子様♪

ちなみに私がこっちの世界で目覚めたのは昨日です。

自分の部屋で目を覚ましたら、11歳の時の体になっていました。

後、ラピスですが、彼女もこっちの世界に来ています。

昨日,私の所にウィルス付きのメールが来ましたから。

……なかなか、いい仕事をしてましたよ〈怒〉」


「そ、そう〈汗〉……後、ナデシコCの乗組員の事なんだけど」


「あ、その点は大丈夫です♪

あの時,ナデシコCに乗っていたのは私一人だけですから♪」


「は!?」


俺は余りにも驚いた為、声が裏返ってしまった。


『あれ、知りませんでしたっけ?

あのナデシコCはユーチャリスと同じでワンマンオペレーションで動かす事の出来る船なんですよ。』


「いや、そうじゃなくて!ルリちゃん一人だけしか乗っていなかった事に驚いたんだけど?」


『なんだ、そんな事ですか・・・軍の命令ではないからですよ。アキトさんを追いかけたのは私の独断です。

それなのに、部下を巻き込める訳ないじゃですか?』


「な、何でそんな事を!!そんな事をすればもう軍には居られなかったんだぞ!!」


『アキトさんを連れ戻せれば、私が軍に居る必要はありませんから。

私にとって少佐という立場よりも貴方の方が大切だった。……それだけの事なんですよ。』


「そ、それだけって…」


俺は余りにも驚いて、声が出ない状態だ。


そして、ルリちゃんに対して済まないという気持ちしかわかなかった。


「ふぅ、……結局、俺は自分の復讐に最も巻き込みたくなかった君を巻き込んで、今回も君から逃げていた為にこんな事に君たちを巻き込んでしまった。

・・・・・我ながら厄病神だな。」


『そんなことありません!!

私は貴方に出会えて良かったと思っています!!

貴方に・・・貴方達に出会えたからこそ、私は私らしくなれたんです!!

だから・・・だから、お願いですからそんな風に自分を卑下しないで下さい。』


そう言うと泣き出してしまうルリちゃん。


……全く、本当に俺って奴は……


「ルリちゃん……ごめん。まだ自分の事は許せない。

…けど、絶対に自殺とかはしない。

今はそれだけしか言えない。……本当にごめんね?」


『……今はそれで十分です。』


ルリちゃんが落ち着くのを待ってから、俺達は話を続ける。


『この世界と私達が居た世界との違いですが、私が調べる限り歴史は変わっていません。

しかし、個人の過去という点では少し変わっています。まず、私についてですが、前の世界と変わっていませんでした。

次に、アキトさんについてですが、2183年生まれになっている点とお兄さんがいる以外変わっていません」


「ねぇ、ルリちゃん?・・・それって少しなのかな?」


『さぁ?そんな事は別にいいじゃないですか♪

(ふ、ふ、ふ、これでアキトさんと付き合ってもアキトさんがロリコンという不名誉な烙印を押される心配はありませんね♪)』


といきなり、声を弾ませるルリちゃん。


「?どうしたのルリちゃん?

いきなり声を弾ませて?」


『いえ、別にたいした事じゃないんですよ♪。

……それとそのお兄さんについてですが調べた限り、私達が居た世界のアキトさんと経歴、その他が全く同じなんです。』


「…という事は前の世界での俺の役割がこっちの世界ではカイト兄さんになっているという事か?」


『……ええ、多分そういう事になっているのではないかと思います。

それで、これから先、どうしますか?

…まぁ、聞くまでもないかもしれませんが』


「…ナデシコに乗る。そして、あんな惨劇を起こさせない!!

…そして、助けるつもりだよ、ガイやさつきみどり2号の人達、火星の人達や白鳥さんもね。

自己満足や贖罪のつもりじゃないけど、それが未来を知っている俺の責任だと思うしね。」


・・・・・そう、必ず助けてみせるさ!!


俺は自分の手のひらに爪が食い込む程、拳を握り締めながら、そう決意した。


『……やっぱり変わってませんね、アキトさんは。私も出来る限り手助けさせてもらいます。

一人では出来ることが限られますけど、三人ならば、出来る事も増えるでしょう?』


「え!?…三人って?。」


『ラピスの事ですよ。彼女も協力してくれるそうです。どうせ、アキトさんの事ですから未来を変えようとするでしょうから。

昨日の内にラピスの了承を得ておいたんですよ。』


「……そ、そう。ルリチャンには何だかかなわないな。」


『まぁ、伊達に5年の付き合いではないですよ。それで、どうやってナデシコに乗ります?

ラピスに関しては、私が手を回すという方法をとってもいいですけど、前回みたいにナデシコ出航の日に佐世保ドッグに乗り込みますか?』


ルリちゃんの問いに俺は少し考えた。


確かに前回はそれでナデシコに乗れた。


多分、今回もそれで乗れるだろう。


しかし、飛び入りの所為で保険が下りずに凄まじい借金を背負ってしまった事を思い出してしまった。



………また、あの地獄2度も味わいたくないぞ、俺は。(汗)


「い、いや、アカツキに頼るよ

ボソンジャンプの秘密をちらつかせば話に乗ってくるだろうし、上手くやればネルガルの協力を得られる。

それに、有人ボソンジャンプの研究の被害者を減らせるだろうし。

……そして、何より作って欲しい物もあるしね。」


『……ブラックサレナですか?確かにあの力は絶大ですよ?でも、そこまでの力が必要なんですか?』


「……確かに俺達の居た世界の戦いではそこまでの力は必要なかった。

でも、ここではどうなるかは解らないんだ。力は持っている事に越した事はないしね。

それに、いざ、力が必要という事になって力が無くて後悔したくないしね。」


「・・・解りました。そこまで言うなら仕方ないですね。

・・・・・本当は無茶をして欲しくなかったんですけど。」


「え、御免!!何だって?

聞き取れなかったら、もう一回言ってくれる?」


『え!?い、いえ、大した事ではないんで気にしない下さい!

と、兎に角、他に何か要件はありますか?』


と珍しく慌てた声を出すルリちゃん。


・・・本当に何を言ったんだ?


「そ、それじゃあ、ラピスの話し相手になってくれないかな?

もう解っていると思うけどラピスはルリちゃんと同じ境遇の子なんだ。

ラピスが話してきた相手というのは俺を含めて全員大人ばかりだったからね。

年頃の同性の友達とかは居なかったから、だから良かったら友達になってくれないか?」


『そういう事ならいいですよ。

・・・・あ、あの・・・毎日、電話を掛けてもいいですか?』


「うん?

それは別にいいけど・・・・・どうしたの?」


『いえ、別に大した事じゃないんです。

・・・・それじゃ、また明日。』


「うん、またね」


しかし、この時、俺は気が付いていなかった。


・・・・この約束の所為で毎回才蔵さんにからかわれる事に。


・・・・ホント、勘弁してくれ〈涙〉








取り敢えず、ルリちゃんとの電話が終わると直ぐにアカツキのプライベートコールに電話を掛けた。


『もしもし、こちらは愛の伝導師、アカツキ・ナガレだ。』


「・・・・・・・はぁ。」


・・・こいつはほんとに変わらないな。


まぁ、何時までも呆れていても仕方がない。


「こちらはテンカワアキトだ。」


『テンカワ・・・・テンカワって、まさか、あの・・・・・』


「・・・ああ、両親の事は気にしなくていい。それよりも、取引したい事がある。」


『ふぅん、なんだい?』


「ボソンジャンプについて」


『なっ!!

そ、それをどうして!?』


「別にどうでもいい事だろう?」


『・・・・解った、取り敢えず話を聞こう』


「ああ、だったら指定する場所に一時間後、迎えに来て欲しい。」


そう言って、電話を切ると一時間後に才蔵さんとカイト兄さんに一言、言ってから出かけた。






指定した場所に行くと待っていたのはプロスペクターさんとゴートさんだった。


「貴方がテンカワ・アキトさんですな?

私はネルガルの社員でプロスペクターといいます。あ、長いのでプロスでいいです。

そして、こちらはゴート・ホーリ。」


そう、自己紹介されるとむっつりとした顔を崩さないまま、少しだけ頭を下げるゴートさん。


この世界の二人とは初対面になるから余り怪しまれない様にしないとな。


ま、無理だろうけど。


実際、移動中の車の中で何か変な動きをすれば、いきなり、撃てるようにしていたしな。


そして、ネルガルの本社ビルの会長室に場所を移す。







ドアを開けると居たのはアカツキとエリナだった。


「いやぁ、君がテンカワ・アキト君かな?僕がネルガル会長のアカツキ・ナガレだ。

で、こっちが僕の秘書のエリナ・キンジョウ・ウォン。・・・ボソンジャンプで取引をしたいそうだけど?」


「ああ、その前にCCを幾つか持ってきて欲しい。」


「な!?ちょっと待ってよ?なんで、あんたがCCの事を知っているのよ!?あれはトップシークレットなのよ!?」


「・・まあ、それについては後で話す。・・・で、持ってきてくれるのか?」


「うん?別にいいけど?」


と言って何処かに電話をする、アカツキ。


「悪いんだけど、暫く時間が掛かりそうなんだよね。」


「では、CCが来るまでにこっちの要求を言おう。

まず第一に、俺と俺の兄そして、あるマシンチャイルドの女の子をナデシコに乗せて欲しい。」


「へえ、君はどうしてナデシコを知っているんだい?

・・・・・・・・まぁ、それについてはお安い御用だ。で、仕事はどうするの?」


「俺と兄さんはコック兼パイロットで、女の子の方はサブオペレータで頼む。

俺の実力についてはシミュレーションで試してくれればいい。」


「へぇ、随分と自信満々だねぇ。それじゃ僕が相手を勤めるよ。」


「ああ、それで構わない。次に、ある機体を作って欲しい。

これは今の時代の技術で5年は先を行っている機体だ。」


「へぇ、5年もね。言っとくけど、5年も先の機体なんて作る事は出来ないよ?」


「安心しろ、設計図があるから。それを基に作ってくれればいい。

この機体自体は商品にならないが、使われている技術は使えるはずだ。

……そして、最後に木蓮との和平の協力」


「ふぅ、本当に驚いたな。木星蜥蜴の正体まで知っているなんて。

・・・・・悪いが最後のは無理だ。」


「・・・・・そう言うと思っていたよ。でも、これを聞けば、その考えも変わるはずだ。
……自由に自分の意思でジャンプ出来る人間のサンプルデータ。」


そう言うと全員の目の色が変わった。


まぁ、当たり前か。


今まで解らなかったボソンジャンプについて解るかもしれないんだから。


そして、その時、ちょうどCCが届けられた。


俺は届けられたCCを手の中で弄びながら言う。


「ネルガルがボソンジャンプのシェアを独占出来ればいいんだろう?


戦争終了後、火星の遺跡の管理が地球と木星の両者により管理されていて、ネルガルが技術的に他の会社よりも優位に立っていれば、遺跡を独占しなくても可能だろう?」


かなり悩んだのだろう。暫くしてからアカツキはこう言った。


「……解った。で、そのサンプルデータだけど」


俺は少し意地悪く笑うとCCを握り締めた。


「・・・今から見せる」


そう言うとアカツキの真後ろをイメージして跳んだ。


「「「「!」」」」


体が空間に現れると同時に身を屈めて隠れる。


「え、え、え、う、嘘!?」


嘘じゃないよ、エリナさん。


「ど、何処に消えたんだい!?アキト君!?」


お前の真後ろだよ、アカツキ。


「いやはや、驚きましたな。」


・・・・あまり、驚いているように見えませんよ?プロスさん〈汗〉


「・・・・・むぅ。」


むぅって・・・・あのね、ゴートさん〈汗〉


ま、あんまり苛めるのは可哀想なんで、そろそろ姿を見せるか。


「俺なら、此処だよ。」


とアカツキの耳元で、囁いてやると


「どわぁあああああ!?」


うむ、なかなかのサウンドウェポンぶりだな。


皆、耳を抑えて悶えてるぞ?アカツキ。


「い、今のがボソンジャンプかい?」


無理矢理落ち着いたのだろう、アカツキが、まだ驚きの余韻を残しつつそう言ってくる。


「ああ、その通りだ。サンプルデータは俺自身。無茶な研究じゃなければ手伝うし、原理もある程度なら解っている。

まず、ジャンプ出来る人間だが2種類いる。俺みたいに自分の意思で跳べる人間は、火星の出身者だけだ。

これはA級ジャンパーと呼ばれている。次に、チューリップ等を使って跳ぶ事が可能なB級ジャンパー。

こっちは遺伝子を弄れば誰でもなれる事が可能だ。だから、今のままでは有人ボソンジャンプは成功しないぞ。

葬儀代とかがかさむだけだから止めとくんだな。」



「ご忠告、ありがとう。」


「続けるぞ?

普通の人間はジャンプには耐えられないが、強力なディストーション・フィールドで包まれていれば耐える事が可能だ。

次にボソンジャンプについてだが、あれはワープとか瞬間移動の類ではない、どちらかと言うと時空間移動と言えるものだ。

だから、未来や過去にも跳ぶ事は可能だ。しかし、時間をイメージするのは困難だから、ほとんど不可能だな。」


「ふぅ、説明、有難う。それにしても長かったねぇ。」


と言いつつアカツキは伸びをする。


そんなに長かったか?


ちなみ、俺がイネスさんにこの説明をされた時は5時間も説明されて、ちょっとあっち側を覗いていたものだが〈汗〉


「これは純粋な疑問なんだけど、君はどうやってこの事を知ったんだい?

個人でボソンジャンプの事を研究していて、これ程の事が解ったとは思えない。

万が一、そうならばもっと世の中を騒がせているはずだしね。」


ほう、流石だなアカツキ。


・・しょうがない正体をばらすとするか。


「さっき説明したように、ボソンジャンプは過去に跳ぶ事が可能だ。

俺は5年後の未来からジャンプの事故で此処に来てしまった人間だ。」




そして、俺は俺の居た世界で起きた未来の事を教えた。




「そ、そんな事が起こったのかい?いや、これから起こるのかい?」


「それは解らない。俺の居た世界とこちらの世界は違うしな。だから、協力して欲しい。」


「解った、協力しよう。

上手くすれば、クリムゾングループを潰せるし、ボソンジャンプのシェアを独占出きるしね。」


「すまない、アカツキ」


「なに、ギブアンドテイクと言うやつだよ。・・・・それよりも君の実力を知りたいな。」


そう言えば最初の方でシミレーションで勝負するとか言ってたっけか?


まぁ、いいか、この体で何処まで出来るか知りたいしな。


「ああ、それじゃ、シュミレーターのあるところまで行こうか?」


「ふっ、その必要はないさ。」


そう言うと机の下に手を入れるアカツキ。


一体何をしてるんだかと思っていたら、何と本棚がひとりでに移動して、隠し部屋が現れた。


・・・・・・・アカツキ、お前もやっぱりナデシコクルーなんだな。






「う、嘘だ!!こんなのは認めない!!」


まぁ、試合が始まって僅か7秒で撃破されれば叫びたくもなるか。


その7秒で何が起こったかというと


まず、試合開始1秒

俺がラピット・ライフルを撃つ。


2秒

アカツキが回避する。しかし、それは予測済み。


3秒

俺がアカツキの回避予測移動場所に向けて、ラピット・ライフルを2発撃つ。


4秒

アカツキ機の足の関節部に命中。ダメージはさほど受けていないが一瞬動きが停まる。


5秒

停まった瞬間を逃さずにラピット・ライフルを一斉射。


6秒

アカツキ機がディストーション・フィールドを発生させる、最初の三発は弾かれる。が、全て同じ場所に当てていた為、フィールド消失。


7秒

残りの弾がアカツキ機のコックピットに命中。しかも、ピンポイントで。そして、爆発。





アカツキはさっきの試合に納得出来なく、試合を再び申し込んできた。


余りにも五月蝿いので、仕方なく付き合う事にする。


結局、その後、5戦程することになった。




・・・・1分後・・・・


「これで俺の実力は解りましたよね?」


観戦していた三人に話しかける。


三人とも呆然としている。まぁ、当たり前か


「・・・ええ、まぁ、それにしても凄い腕ですな。」


「・・・何て言うか、あそこまで見事なやられっぷりだと、笑うしかないわね。」


「・・・・凄まじいというレベルではないぞ、ここまでいくと。」


と上から、プロスさん、エリナさん、ゴートさんからコメントを頂いた。


一方、アカツキはというと・・・・・・・・部屋の隅でいじけていた。


……まぁ、5戦とも秒殺では仕方ないか。


大の大人が何時までもいじけられていると言うのは、見ていても面白くもないので、仕方なくフォローする事にする。


「……なぁ、アカツキ、俺が知っている限り、お前の操縦技術はかなりのレベルだよ。だから、あんまり気にするな。」


と言ったが、本人に届いてはいないようだ。


仕方がないので、今後の事はプロスさんと話し合う事にした。


「取り敢えず、明日にでも雪谷食堂という大衆食堂に来て下さい。そこで、契約を交わしましょう。」


「ええ、解りました。それでは、そう言う事で。」


余談であるが、ナデシコが出航するまでの間に毎日アカツキから試合を申し込まれる事になる。


・・・仕事はいいのか極楽トンボ?







・・・・そして、翌日・・・・


約束どうりに来たプロスさんと、俺とカイト兄さんは契約を交わした。


交わす際に、男女交際の項目については消しておく事は忘れなかった。


やっぱりと言うべきか、最初はかなり渋い顔をしていたカイト兄さんだったが、目的が火星の人達の救出という事と俺の


「何時までも過去に捕らわれている訳にはいかない。」


と言う言葉で乗る事に決めてくれたみたいだ。


・・ふっ、俺に言えた言葉じゃないな、過去の罪に縛られている、俺には。


でも、もう一度ナデシコに乗れると思った時、俺は心の底から歓喜した。


そう、一番大切な仲間達とまたやり直せるのだから。


前回は全てから逃げ出した。


仲間から、そして、俺の一番大切な者達から。


そして、その所為で大切な者の心を傷つけてしまった。


・・・・だから、もう逃げない。


それに、沈んだ顔でナデシコに乗るのは仲間達に失礼だと言うものだ。


いつも笑顔が溢れていた戦艦だしな。


ナデシコにはルリちゃんとラピスが俺を待っている。


ラピスには「ありがとう」、そして、ルリちゃんには「ただいま」と言おう。








   
・・・・そして、機動戦艦ナデシコの出航の日まで、時間は過ぎていった。












後書き
SSを初めて書いてみました。
一応、アキト×ルリです。
今までいろいろなSSを見てきましたが、逆行でアキト×ルリでルリが16歳のままというのは結構あります。
アキト×ルリでルリが11になって、アキトが18の逆行というのもありますが、このままではアキトはロリコンになってしまいます。
だったら、アキトを若返らせてみようと思って書いてみました。
かなり無謀ですが、皆様お願いします。
カイトですが、私はゲーム版の事を知らないのでオリキャラだと思ってください。
カイトにはTV版のアキトの役をしてもらいます。
それにしてもカイトとラピスの台詞少な!!

 

 

代理人の個人的な感想

ズズズッ、と何とはなしに茶を啜りたくなるような導入でしたが(爆)、

まぁそれなりに意表を突かれましたでしょうか。

いや、展開そのものより「ユリカをもう一人のアキトに押し付けて、メインのアキトはルリと存分にらぶらぶ」という

ある意味斬新な発想の転換にですね。(え、違う?)

 

時に2183年生まれと言うことはナデシコA出航時で十三歳、例の空港テロの時は三歳ですか。

すると、それからずっと兄に面倒をみてもらって生きてきたわけで、

本来ならかなりのお兄ちゃんっ子になっててもおかしくはない経歴ですね。

そこらへん、ちょっと見てみたいです。

 

ただ、十三歳のガキがいきなりパイロットやったり、

本人の承諾も得ずに兄をコック兼パイロットにしてしまうのはちと無茶が過ぎるかなと。

ある意味親友を傭兵部隊に売り渡した某神崎くん並の裏切ですよ?(爆)

ほかにもジャンパーの条件を「火星の人間」と明かしてしまって大丈夫なのかという危惧もありますし。

そこらへんの強引な展開はちょっとマイナスですね。

 

>一時はもうダメかとも思った

医者に連れて行きなさいよ(爆)。