機動戦艦ナデシコ

兄弟で行こう!!


第5話「ルリちゃん航海日誌」・・・というかアキト君監視日記!?









皆さん、こんにちは。

ホシノ・ルリです(ペコリ)

今回はお葬式もなく、ユリカさんの仕事はあまり大変ではないのに、

何故か私が航海日誌をつける事になりました。

・・・・職務放棄ですよ、ユリカさん。

・・・・ま、いいんですけどね。

火星に着くまでの間にクルーが色々な出来事を起こしました。

もう、これでもかって位に。

むしろ、何も問題を起こさなかった日のほうが少ないですね。

そんなの一々挙げてたらきりがないので、

アキトさんとブリッジクルーが起こした出来事だけを取り上げますね。

















□月△日    


一部の人間以外は自分の持ち場を離れることなく仕事をし、今日一日はブリッジは概ね平和に終わる。

しかし、格納庫の一部で某班長とコック兼パイロットが今後のために暗躍する。








・・・・暇です。暇すぎです。

サツキミドリの戦闘から2日が経ちました。

サツキミドリから避難してきた人を月に送り、今ナデシコは火星に向けて航海中。

月と火星までの間には重要な施設とかは何も無いですから、敵も戦力を配置してません。

ですから、敵さんも出てこないので、はっきし言ってブリッジのクルーはダラケきっていますね。

ミナトさんは相変わらずのお寝坊さん。・・・体調管理はしっかりした方がいいですよ?

メグミさんは雑誌を読んでます。・・・一応、勤務時間なんですが

ラピスはゲームに夢中。ちなみに私が遊んでいたアイの落としゲームです。

ユリカさんはカイトさんを追いかけてます。・・・・ご自分の仕事をしてください。

アオイさんはユリカさんに押し付けられた雑務を自室でこなしてます・・・ご愁傷様です。

プロスさん、ゴートさんは将棋を指してます。

フクベ提督は自室でお茶を飲みながら俳句を作っています。


・・・・はぁ、こんなんで大丈夫なんでしょうか?


ま、有事の際には、こんなんでも腕は一流の為大丈夫だと思いますが・・・ちょっと心配ですね。

ちなみにアキトさんは格納庫でウリバタケさんとエステバリスの武装の強化等について話しています。



・・・・ちょっと覗いてみましょうか。



『ウリバタケさん、エステの強化や武装等でちょっと相談したい事が』



『おう!!なんだ、なんだ!!』



『エステの反応速度が俺のほうに追いついてきてないみたいなんですよ。

 なんとか機体の反応速度を上げられませんか?』



確かに今のアキトさんの実力を100%引き出すにはノーマルエステではきついでしょうね。



『エステのIFSのシステムを書き換えるとしても限界があるぞ?

 ……いいとこ今の2割増しってとこだな。』



『だったら、スラスターかバーニアを増設するとかして、スピードを上げてくれませんか?」



「おう、解ったぜ!!改造屋の腕の見せ所だな!!

 ばっちしお前のエステを改造してやるからな!!

 期待して待ってろ!!

 ・・・でもお前の身体の方がGについてこれないんじゃないのか?」



『それに関しては俺に秘策が有りますから大丈夫です。

 後、面白い物いくつか設計してみたんですけど作れますか?』



『このウリバタケさまに作れないものはない!!

 ・・・それで、どんなんだ?』



『こんなんです』



そう言って取り出したものはフィールドランサーの設計図でした。

ま、アレさえあれば、リョーコさん達でも簡単に戦艦を落とせるようになるでしょう。

アキトさんの戦闘での負担も減ってちょうどいいですね。



『ほぅ、・・・ディストンショーン・フィールドを中和する槍か、面白い事を考えたな』



『で、・・・火星に着くまでに出来そうですか?』



『ああ、エステの整備と言っても、火星に着くまで出番が無けりゃ点検だけだからな。

 整備班一同で掛かれば、お前のエステの改造も含めて何とかできると思うぞ』



『じゃ、よろしくお願いします。

 ・・・・それとプロスさんに聞いたんですけど、前に自販機と体重測定器を合体ロボにしたそうですね?』



『う!!』



・・・ああ!!そう言えばそんな事もありましたね。

確か無人兵器が艦内に侵入した時を想定した場合の、迎撃ロボでしたっけ?

あれには驚かされました。

だっていきなり目の前で合体するんですから。

しかも、お約束で自爆までしようとするんですものね。

……お願いですからウリバタケさん、あまり艦の備品を勝手に改造しないでください。

………プロスさんの胃薬がなくなっても、もうこれから先では補給出来ないんですから。

一応プロスさん専用に、強力な胃薬をダース単位で補給しといんたんですが、足りるでしょうか?

やっぱり、グロス単位にしとくべきだったでしょうか?


『ま、ウリバタケさんの目の付け所は良かったと思いますよ?

 実際、敵が艦の中に入ってきたら生身で闘わなきゃならないんですから。

 だから、こんなの作って欲しいんですけど。』



『・・・こいつはディストンショーン・フィールド発生装置か?

 こんなに小さくする事が可能なのか!?』



『ええ、これさえあれば生身の戦闘はかなり楽になると思いますよ?』



『・・・なぁ、アキト、お前は一体何者だ?

 はっきし言ってこれらを13歳の子供が考えられるとは思えない。

 ・・・戦闘技術に関してもだ。

 13歳の域を越えてるぞ。』



嘘は許さない、そんな目ですね。

・・・さて、どう答えるつもりですかアキトさん?



『・・・それに関しては、いつかお話します。

 俺が酒を飲めるようになったら、酒の抓みにでもね。

 ・・・信じられないような夢みたいな話ですけど。

 ………済みません、今はこれぐらいしか言えまえせん。』



『・・・・ふん!!お前の事は信じてやるよ。」



『・・・有難うございます。

 開発に関してはプロスさんの許可をもう貰ってますんで』



『あ、後この事は・・・」



『・・・皆には内緒でしょ?

 いざと言う時に『こんな事もあろうかと!!』と言って出すんでしょう?』



『お前、男のロマンが解ってるじゃないか!!』



『ははは、まぁ、それなりには。』



・・・・私には解らない世界ですね。

私、少女ですから。















□月●日


二人のコック兼パイロットが、料理長のテストを見事合格する。

厨房にて某五人組が壮大な計画を立てている事が判明。

今後は監視を強める必要が有り。








今日は暇ではありません!!今日は物凄く大切な日です!!

はっきし言って通常業務どころではありません!!

本当なら現場に行きたいんですが、邪魔になると困るのでブリッジで待機です。

そしてアキトさんの一挙一動を観察します……プライバシーの侵害ではありませんよ?

艦内の出来事を航海日誌に書く為です。

これも私の立派な仕事です!!・・・ラピスも横で見てますが。

それにしても今厨房は、昼ごはんの仕込みで忙しそうですね。

アキトさんはカイトさんと一緒に、ジャガイモの皮を剥いています。

なんでもナデシコ食堂の下積みは、これからやらされるのが基本だそうです。

アキトさんもカイトさんも、今までは未だにホウメイさんから一品も任されていませんでした。

しかし、今日のホウメイさんのテストの結果によっては任されます。

その為二人ともかなり緊張してますね。

普段なら、もう直ぐカイトさんは艦長との追いかけっこが始まりますが、今日はその心配はありません。

なぜなら、アキトさんの頼みでユリカさんをブリッジに監禁…ではなく、仕事をしてもらっています。

いい加減、仕事をアオイさんばかりに任せる訳にはいきませんからね。

その為ユリカさんはむくれて、書類仕事を黙々とこなしています。

後ろからの視線が痛いですが、気にする必要はありません。自業自得です。

いつもと違い仕事がはかどっていいですね。

これから先はずっとこの方法を使いましょうか?

アキトさん、カイトさん、これで邪魔は入りませんからお二人とも頑張ってください。



アキトさんは味覚を失ってから料理をしていなかったので、昔の感覚を取り戻す為、

私かラピスに味見役を頼んでいました。

勿論、私もラピスも二つ返事でOKでしたが。



アキトさん、今まで頑張ってきたんですから大丈夫ですよ・・・自信を持ってください。

もうラーメンに関しては、一緒に住んでいたあの時と同じなんですから。



カイトさんもイツキさんに頼んで、味見役をしてもらっていた様です。

イツキさんもかなり味覚が良く的確な指摘をするそうです。

その事を知ったユリカさんが、カイトさんを何故自分じゃないのかと問い詰めたそうですが、

ユリカさん「美味しい」と「美味い」だけじゃ味見役にはなれませんよ?




そして、ついにテストの時が来ました。




アキトさんはテンカワラーメンで、カイトさんはサイゾウさんのとこで習った味噌ラーメンで勝負です。

お二人とも戦闘時よりも顔が引き締まってます。

アキトさんに関しては多分今までで一番真剣ですね。



暫くすると二人とも料理が出来上がりました。



ホウメイさんは二人の料理を一口食べて考えているようです。

ついでにホウメイガールズも一緒に食べてます。

そしてお二人は緊張した面持ちで、ホウメイさんの結果を待っています。



「まだまだ甘いところが二人ともあるが、そこいらの料理人よりよっぽど腕は上だね。

 うん、二人とも合格だ。明日から任せるから頑張るんだよ。」



「「ありがとうございます!!」」



お二人ともホントに嬉しそうです。



良かったですねアキトさん。



ところでさっきからホウメイガールズが、厨房の一角に集まってなにやら小声で話してますが、

何を話してるんでしょうね?

かなり気になります。………少し聞いてみましょう。



「アキト君は料理も上手いのね・・・・どうやら皆、あの計画を発動させる必要がありそうね」



「ええ、逆光源氏化計画ね」



な、なんですかそれは!?



「ねぇ、サユリ、光源氏って何?」



「日本の昔の物語に登場する変態ロリコンのことよ!!

 可愛い女の子を何処からか拾ってきて、養女にして自分好みの女の子に教育したのよ。

 しかも、最終的にはその子を手篭めにしたっていう奴よ。」



「変態ね!!」



「まさしくその通りよ。でも見習うべきところもあるわ。

 ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、可愛い男の子を自分好みの男の子に育てる!!

 これこそ女の子の夢ね!!

 協力者として、イツキさん、ミナトさんもこの計画に参加するわ。

 皆、絶対に成功させるのよ!!」



「「「「おー!!!」」」」



なんていう計画ですか!?

それにしても、ミナトさんいくら暇だからといっても…。

一応、これからアキトさんの監視を強化しましょう。

安心してくださいアキトさん!!絶対魔の手から守って見せますからね!!




















□月○日   


今日はエステバリスの隊長が決まる。

決まった隊長本人は嫌がっている。・・・なら、わざと負ければいいものを。

さらに、隊長の昔の秘密が白日の下にさらされようとしていた。

私、個人としてはとても興味を引く。








今日はエステバリス隊の隊長を決めるみたいですね。



アキトさんの正体(精神年齢23歳 前歴:元A級戦犯のテロリストにして元最強のエステバリスライダー)

を知っているゴートさんとプロスさんは、アキトさんにして貰いたかったみたいですが。

それに反発する人が約2名。



………ヤマダさんとリョーコさん。



13歳の子供に指示されるのが嫌なのでしょうか?

それとも自分達の実力が劣っていないと思ったからでしょうか?

・・・張り合うだけ無駄だと思いますが。

ま、納得できないというなら、アキトさんの実力を見てもらいましょう。

パイロットの世界では実力がものを言いますからね。



・・・で、結局決める方法は全員でのバトルロワイヤルです。

確かに周りの状況を冷静に分析できるかを見るのには、一番適してますね。



・・・試合開始早々5秒でヤマダさんは皆さんからの集中砲火により撃破されました。



『何故だ〜!!!』



・・・どうやら皆さん、ヤマダさんが隊長というのは絶対に嫌だったみたいですね。



『イズミ!!死んで!!』



『ヒカル!!くたばりなさい!!』



ヒカルさんとイズミさんは適当なところでわざと相打ちになりました。

たぶん、お二人とも隊長という肩書きに興味がなかったんでしょうね。

残るはアキトさん、カイトさん、イツキさん、リョーコさん。


『貰うぜ、テンカワ兄!!』



『そう簡単に!!』



リョーコさんがカイトさんを倒そうとしますが、そこはアキトさんの一番弟子。

何とかリョーコさんのライフルを避けて、近づけさせないようにライフルで応戦しています。

しかし、2人共ヤマダさん程ではないものの熱い性格の為、目の前の敵に集中しすぎでした。

その為に、目の前以外の敵がいる事を忘れていたのが敗因ですね。



『『貰った!!』』



『うわ〜!!』



『後ろからなんて!!』



アキトさんはリョーコさんを後ろから、イツキさんはカイトさんをライフルで横から撃破します。

最終的に残ったのはアキトさんとイツキさん。

互いに対峙してます。



『はぁ〜、やっぱり最後に残ったのはアキト君か』



『最後の相手はイツキお姉ちゃんか。』



『アキト君の射撃の腕は、きっと私よりも上だから張り合うだけ無駄ね。

 ・・・・と言うことは接近戦しかないんだけど、近づけさせてくれるとは思えないのよね〜。』



『だったら、諦めません?』



『・・・一応、年上の意地を見せないとね。

 ・・・・・それに秘策があるし。』



『・・・どんなんです?』



『例えば、………アキト君が最後にお漏らししたのが・・・』



『ちょっと…!!』



『貰い!!』



アキトさんが焦っている間にライフルを捨て、一気に近づくイツキさん。

アキトさんも一瞬後にはライフルを捨てて迎撃体制に入ります。

素晴らしい加速を付けたイツキさんの一撃がアキトさんに決まると誰もが思ったでしょうね。

しかし、普通なら避けられる筈のない一撃を、少し上体を逸らすだけという最小限の動きで避けるアキトさん。

そして、がらあきになったイツキさんのコックピットに、カウンターでディストショーン・フィールドを纏った

拳を入れて倒します。

見事なまでの後の先です。



『ウソ〜!!』



リョーコさんたちならきっと避けられなかったでしょうが、アキトさんは別です。



これでアキトさんがリーダーに決まりました。

・・・アキトさん本人は嫌そうですが。

アキトさんは出来る限り、私達の知っている歴史どうりに進めたいんでしょうけどね。

今更少しくらい変わったところで、たいした差はありませよ?

私達の介入で相当歴史は変わったんですから。



『・・・いい策だと思ったんだけどな。』



『どこがです!?』



『あら、相手の弱点を突くのは基本でしょ?』



『・・・・ま、確かに』



・・・それにしてもさっきの話は気になりますね。

後で食堂でイツキさんから聞き出しましょう。



『な、なんだ!!急に悪寒が!!』



・・・・アキトさん、最近は感が良くなりましたね。

















□月◆日


艦長が操舵士と通信士の口撃により勤務時間に持ち場をを離れる。

それ以外は特に事件らしき物は無し。

これから先もこうあって欲しいものである。









「ねぇ、ルリちゃん、ラピスちゃん………艦長さんって何だろうね?」


と艦長席のコンソールに突っ伏しながらユリカさんが私とラピスに言ってきます。



「んな物わかるわけない。

 だって私はサブオペレーターであって、艦長じゃないんだから。」



「うう〜〜〜〜!!

 そうなんだけどさぁ、相談相手ぐらいになってくれても〜〜〜(涙)」



「六歳児に普通はしないと思うよ?」



・・ラピス、言い方が少しきついですよ?

それにしても、確かにそうです。

見かけは11歳の子供と6歳の子供になんて質問をするんでしょうねユリカさんは?

そういう事は大人のミナトさんとかにして下さい。

ま、言いたい事は解りますけどね。

ユリカさんが今やっている事は、艦内の苦情処理や、各部署の定期視察や、艦内の士気を保つ為の

各種イベントの司会などです。

……しかし、このナデシコで士気を保つ必要があるんでしょうか?

いつもテンションが異様に高いんですから、いまさらする必要は無いと思うんですが。

ま、はっきし言って戦艦の艦長らしき仕事ではありません。

ナデシコに乗る前は、ユリカさんもユリカさんなりに艦長の仕事というものに夢を抱いていたのでしょうけど、

ま、現実はこんなものです。

さらに最近では、アキトさんがユリカさんをカイトさんに近づけさせませんからね。

なんでも、ユリカさんはパイロットの訓練の時や料理の勉強の時の邪魔をするとか。

それでも、ユリカさんはアキトさんの隙を狙っては、カイトさんを追いかけてますけど。

………もう少し、周りの人間の迷惑を考えた方がいいですよ?



「さぁ?答えは解りませんけど資料ならお見せすることなら出来ますけど?」



「うん、じゃ、よろしく」



…………………



……………



………



……



…



「「つまり、これって誰でもいいって事?」」



「う、うわぁぁぁぁぁぁぁん」



ミナトさんとメグミさんの口撃によりユリカさんブリッジから撤退です。

ユリカさん一応、まだ勤務時間ですよ?・・・・誰も気にしてませんけど。

それにしても凄いスピードですね。世界を狙えますよ?



「「……二人とも、意地悪ですね(だね)」」



「「そうかなぁ?」」



「そうですよ(だよ)」



「「そうかなぁ?」」



「「そうですよ(だよ)」



「「そうかなぁ?」」



「そうですよ(だよ)」



「「そうかなぁ?」」



「「そうですよ(だよ)」



「「うーん、思った事をそのまんまんま言っただけなんだけどなぁ。」」



「「・・・・それが意地悪なんです(だよ)」」



「「あ、あはははは」」






□月◇日


艦長は今日もブリッジに現れませんでしたが業務に支障なし。

お昼に心優しき某コック兼パイロットの差し入れを食べながら、艦長に必要なものとは?

という話題で盛り上がる。

現在の艦長に対する一部のクルーの信頼度がわかる。








あれから数日が経ちましたが、ユリカさんはブリッジに姿を見せてませんね。

ま、このナデシコにいる限り、何処にいても私達には直ぐにわかるんですけどね。



「やっほ〜!!頑張ってるルリちゃん、ラピスに差し入れだよ」



今日はアキトさんが、ブリッジにお昼の三時の時間に差し入れを持ってきてくれました。

・・・・どうやらアキトさんも相当暇だったみたいですね。



「え、何?何?」



「アップルパイ。暇つぶしに作ってみたんだけど食べる?」



「「食べる(ます)!!」」



「あ、じゃ、他の皆さんもどうぞ。」



「あら、いいの?」



「ありがと、アキト君!!」



「・・・あれ?

そういえば艦長は何処にいったんですか?

この時間は勤務時間のはずですけど?」


とアキトさんが切り分けたパイを皆さんに渡しながら訊きます。



「あ、艦長ならここにいます。」



ピッ



「・・・・・瞑想ルーム?

・・・・何してんの一体、家の艦長は?」



「どうやら最初は艦長としての理想と、現実のギャップの差で悩んでたみたいなんですけど。

 何時の間にか、真剣に悟りを開こうとしてるみたいですね。」



「それはまた無駄な事をやってんな〜。

 ところで、んな事やって解るのかね?

 ………それにしてる事は瞑想と言うより、妄想の方がちかいんじゃ(汗)」



・・・アキトさん、さらりときつい事を言いますね・・・・事実ですけど。

・・・・何せ顔がニヤついてるんですから(汗)。

あ、今、涎も出始めましたね。

はっきし言って傍から見てるとかなり危ない人ですね。



「ねぇ、アキト君は艦長として必要な物は何だと思う?」

 
とミナトさんが自分の席でパイを食べながら聞きます。



・・・・行儀が悪いですよミナトさん。



「なんでそんな事聞くんですか?」



「う〜んと、前に艦長とは何かっていう話題の時に、ルリルリが出した資料を見たときに、

 誰でもいいって思ったからかな?」



「逆に尋ねますけど、ミナトさんはなんだと思いますか?」



「う〜ん、・・・作戦立案とか戦術及び戦略を上手く立てる事とかかな?」



「ま、確かにそういう能力が高いことが理想的なんでしょうけどね。

 俺、個人としては・・・多分艦長にとって一番必要なのは決断力だと思いますよ。

 艦長が自分の出した指示に自信がなかったら部下は不安になるでしょう?

 そんな人を部下が認めるとは思えませんから。」



「でもそれだと他の能力は必要ないって聞こえるけど?」



「ええ、それ以外の能力は二の次でいいんですよ。

 本人が出来なくても、作戦の立案とかは周りの優秀な人が補佐すればいいんですから。

 でも決断を下すというのはかなり難しいんですよ。

 なんせ自分の命令一つで、部下を死地に送り出すんですから。

 ・・・それと後は艦長にとって必要な事は、部下から信頼される事です。

 ・・・・とはいえ、これが一番大変だと思うんですけど。」



「じゃ、アキト君は家の艦長を信頼してるの?」



「・・・・様子見ですね。

 ……残念ながら今のところは全然してません。

 …………大体、自分の仕事をしないで、一日中兄さんを追いかけてる艦長をどう信用しろと?

 ・・・ちゃんと自分の仕事をしてるならまだしも。

 さらに言えばシュミレーターと実戦は別ですからね。

 艦長はシュミレーターで無敗とはいえ実戦ではどうなることか。

 今のところ艦長には実戦経験が皆無にちかいです。

 もっとも、それはクルーの大半に言える事なんですけど。

 いくら、有能だからって何考えてるんだか、ネルガルは?

 それともしも、ナデシコが絶望的な状況になったら、艦長は咄嗟に指示が出せなくなる可能性が高いですね。

 こればかりは経験がものを言いますから。

 以上が俺が艦長を信用していない理由です。

 ま、今の所はこれからの艦長としてのレベルアップに期待……という事にしておきます。」



「ふ〜ん、そうなんだ。」



「そう言うミナトさんはどうなんです?」



「私も今のところは様子見ね。

 ・・・でも一応信用はしてるわ。」



「あ、そうなんですか?」



「それにしてもアキト君って不思議よね。

 とてもじゃないけど、13歳の考え方じゃないわね。」



「あ、あはははは」



アキトさん、笑って誤魔化してるつもりなんでしょうけど、怪しさ大爆発ですよ?
















□月◎日


某班長のもと多くのクルーが契約に対し反乱を起こす。

その反乱も某コック兼パイロットの一言により終了。

・・・少し考えれば解りそうなものなのに。




「「「「「我々は断固ネルガルに抗議する〜!!」」」」」



火星到着一日前にナデシコクルーの殆どが反乱を起こしました。

ちなみにユリカさんとアオイさんも反乱に加わっています。

中立は私とラピス、ミナトさんにまだここに来ていないアキトさん、カイトさん、イツキさんくらいでしょうか。

・・・・それにしてもいいんでしょうかね?

艦長、副長としてはこの反乱を止めるべきだと思うんですが?



反乱の内容は前回と同様で社内恋愛についてでした。



・・・ウリバタケさん、奥さんや子供さんはどうするんですか?



「・・・はぁ、ウリバタケさん達はやっぱり予想通り反乱を起こしていたか。

 いい大人が何やってんだか。

 ……いやこれがナデシコらしいと言えば、ナデシコらしいか」


騒ぎを聞きつけたアキトさんがブリッジに現れ、小声で言います。

ただし、物凄く疲れきったというかすでに諦観の境地の表情です。



・・・・私やラピスもですけど。



「これは一体何の騒ぎなんだ!?」



「な、なんか凄い事になってるわね。」



続いてカイトさんとイツキさんも登場です。



「カイトにイツキちゃん、これを読んで見てくれ!!」



そう言ってネルガルの契約書を二人に突きつけるウリバタケさん



「ああ、契約書ですね。

 俺も契約する時にサインしましたけど、これがどうかしたんですか?」



「たしか、叛乱を起こす理由になりそうなものは無かったと思うんだけど?」



ええ、まぁ、普通ならそうなんですけどね。

イツキさん、このナデシコでは違うんですよ。

なにせ、あらゆる意味で普通ではありませんからね。



「契約書の一番下だ!!」



「え〜と、『社員間の交際は禁止いたしませんが風紀維持のためお互いの接触は手をつなぐまでとします。』

 これがどうかしたんですか?」



「どうかしたのか?じゃねぇだろ!!!

 お手てつないでって、ここはナデシコ保育園か!?」



そう言ってリョーコさんとヒカルさんの手を握るウリバタケさん



「「調子に乗るな!!」」



「ぐほぉっ!」



二人の強烈な肘打ちを鳩尾に受けて床に沈みましたね。

大丈夫でしょうか?

一応怪我でもされると困るんですが。

なにせアキトさんのエステバリスを整備できる人が居なくなっちゃいます。



「ウリバタケさんも年なんだから、いい加減にしたらいいのに。」



と何時の間にかアキトさんは、私達の隣に避難していました。

あまり、関わりたくないんでしょうね。



「アキト、それは本人の前じゃ禁句だよ?」



確かにそうですね。

・・・ウリバタケさんご自身は若いつもりなんでしょうが。



「それよりもディストーション・フィールドを最大にしといてね。」



「大丈夫です。もうすでにしてありますから。」



「あ、そうなんだ」


と会話しつつブリッジの一部をを見ると、ウリバタケさんの演技(?)が始まってました。

いい大人が身体をクネクネさせないで下さい!!

あまり見たくないです!!



「それが困るんですよ!!

 男女関係とはエスカレートするもの。

 そして、そのエスカレートが困るんです!!」



と言いつつプロスさんとゴートさん、ライトアップしながらの登場です。



「エスカレートしていけば結婚、出産、どっちにしろお金がかかりますよね?

 それに、ナデシコは保育園ではありませんので…」



まぁ、確かに赤ちゃんを戦艦に乗せる訳にはいきません。

でも、11歳の子供である私を乗せるのはいいんですか?

それにラピスの事を考えると、すでに保育園化しているんじゃ。



「………ええい!!この際、そんなのは関係ない!!

 これが目に入らぬか〜〜!!」



とウリバタケさんが懐から取り出したのはブラスターですね。多分あれは改造済みです。



「この契約書を見てください!!

 契約した貴方たちが悪いのです!!」



そう言って拳銃を向ける叛乱軍と契約書を突きつけるプロスさん。

かなり変です。

やはりプロスさんは、このナデシコでも一番謎な人ですね。

本名もオモイカネであちこち調べましたが解りませんでした。



「だいたい今時こんな細かい項目まで誰が目を通すってんだ!?」



確かに、契約書の最後にちょこんと小さな字で乗っていますからね。

余程、気をつけなければ普通は気付きません。

かなり、あくどいやり方です。流石はネルガル!!

反省を促す為にも、今度アカツキさんのプライベートファイルでもネットに流しましょうか?

それにしても、ウリバタケさんはどうやってあの項目に気付いたんでしょうか?

かなり謎です。



「ちなみにテンカワさん兄弟、ルリさん、ラピスさんにイツキさんは契約の際にその項目を削除していますよ。

 皆さんもご不満があるのでしたら契約の際に変更されれば良かったのです!!

 ふっ、これでウリバタケさんたちの論拠は崩れましたね。

 解かりましたか!?契約書の偉大さが!!」



「「「「「何っ!!」」」」」



「くっー!!!テンカワ兄弟!!

 それはホントなのか?」


まるで血の涙を流しそうな程、悔しがっているウリバタケさん。



「ええ、まぁ。ちゃんと読みましたからね。」


アキトさん読んだではなく、知っていたの間違いでしょう?


「俺はアキトが直しといた方がいいって、薦められたからなんですけどね。」


まぁ、直しといたほうがいいでしょうね、きっと。

多分、カイトさんも状況に流されやすいでしょうから。


「「「この裏切り者が〜!!」」」



う、裏切り者って元々アキトさんもカイトさんも叛乱に加わっていませんよ?

そんな正論を言っても無駄だと思うんでいいませんけど。



「あ〜、ウリバタケさん一応言っときますけど、あんまり意味のない反乱を起こさないで下さいね?」



「くっ、それはどう言う意味だ!!アキト!!」



アキトさんの言葉に怒り心頭のウリバタケさん達。



「契約を守らなかったとしても、それを強制させる部署ってナデシコ内には存在しないんですよね。

 それにそんなに恋愛をしたいんだったら、隠れてすればいいだけの事じゃないですか?

 それとも人前で手を繋ぐ以上の事をした方が燃えるような趣味を持ってるんですか、ウリバタケさん達は?

 個人の趣味に口を出すつもりはありませんから、別にあってもいいんですけど。

 もし、持ってるんだったらラピスの目の届かない所でやってくださいね?

 もしも、ラピスに変な物を見せたり、吹き込んだりしたら……解ってますよね?」



とアキトさんが指の骨をポキポキと鳴らしながら、笑顔で言います。

アキトさんの実力を知っている皆さんは顔を青くして、冷静になりましたね。

それにもしもここで騒いだら、自分にその・・・そういう特殊な性癖があるといっているものですから。

ちなみにラピスは何が何やら解らないという顔をしてますね。



「だったら、何でお前は削除したんだ?」



「簡単な事です。

 万が一、展望室でキスでもしている所を他人に見つかって減棒になったりしたら嫌ですからね。」



と言うアキトさんの言葉であっけなく叛乱は終了です。



そして、皆さんが通常業務に戻ろうとした時にナデシコに振動が襲いました。




 ズズゥゥゥゥゥゥンンン!!!




どうやら火星に着いたみたいですね。



「艦長!!今まで攻撃とは違い迎撃が必要です!!」


という私の言葉に迅速にユリカさんは答えます。



「パイロットの皆さんは出撃の準備を!!

ルリちゃん、ディストーション・フィールド全開!!」


というユリカさんの言葉でパイロットの皆さんと、ウリバタケさんたちはは慌てて移動して行きます。

アキトさんはユリカさんの言葉が終わる前には、もうすでに移動していました。





さぁ、ここからが本格的なナデシコの戦闘の始まりです。






後書き
今回は部下が艦長を認めるのに必要なものは?ということで書いてみました。
そして答えは決断力という答えになりました。
これに関してはTV版のユリカに合格点どころか満点をあげられるでしょう。
………いつも根拠のない自信に満ちてたし。皆様はどう思いますか?
さらに自分の仕事をしないで、特定の人物を追い掛け回している艦長に対する評価という物も書いてみました。
色々なSSを見たけど、ユリカがジュンに仕事を押し付けていないSSは少ないですね。
というか皆無に近いんじゃ。
・・・・ちゃんと仕事しような、ユリカ。
さらにアキト君、セリフで解るように今のところ、こっちのユリカの事を全然信用してません。
このままユリカは要らない艦長になってしまうのか?
最近思った事、我ながらギャグが書けん!!誰か教えて下さい。
次回は珍しくシリアスでいきます・・・・多分。というかこの作品でシリアスできるかな?
んで毎回のキャラ紹介

キャラ紹介

イツキ・カザマ

カイト・アキトが施設に居た時の幼馴染。アキトの世話をよくしていた。
アキトの恥ずかしい体験の事を一番良く知っている人物。その為アキトは頭が上がらない。
アキトに対する感情は姉として7割、母親役として3割と言うところ。
ちなみに軍務経験有り。理由としては火星に居ると思われたカイトとアキトを救う為。
・・・・本人の前では口が裂けても言わないが。
強情なところがあり。その為、カイトに対して今一歩素直になれないでいる。

 

 

管理人の感想

ギャッチさんからの投稿です。

ま、この部分のお話は、どうしてもナデシコ内部の事になりますよね(苦笑)

そして葬式が無い以上、ユリカは暇を持て余すわけですな。

・・・持て余して、暴走してるみたいですがねぇ

 

それにしても、やはり出たか「逆光源氏計画」(笑)