ある日、厨房で

 

 

 

 

 

ちょうどお客さんも一段落して、食堂も暇になった頃合だった。

サユリ達五人は会合だか何だかで空けているから、

今食堂にいるのは新聞を読んでるアタシと遅いお昼を食べているテンカワだけだ。

 

ふと思いついてテンカワに訊いてみる。

 

「ねえテンカワ。いい夫婦の条件ってなんだと思うかい?」

 

  ぶっ。

 

掻き込んでいた賄い食を盛大に吹き出すテンカワ。

・・・・汚いねえ。ちゃんと掃除しておきなよ?

 

「ゴホッ!ゲホッ!い、いきなり何を言うんですかホウメイさん!」

 

・・・顔が赤いよ。

 

「そうだね、別に夫婦でなくてもいいさ。いいパートナーシップの一番大切な条件ってなんだと思う?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

かなり長いこと考えこむテンカワ。

こと人間関係に関しては、この子は不器用な上に朴念仁だからね。

おまけに相手の気持ちを推し量るのが大の苦手と来ている。

 

・・・・相手が男であれ女であれね。

 

パイロットとしての腕にしろ、正確で卓越した判断力や深く広い人脈、底の知れない知識にしろ、

色んな面で凡人の遠く及ばない力を持っているのに・・・・・

いや、だからこそかも知れない。

この子は、人間としてまだ未熟というか、欠落した物がある。

・・・・・・・・・・本人も周りの人間も、気が付いて無いようだけどね。

 

いや、ウリバタケさんやオオサキ副提督辺りはひょっとしたら気が付いているかも知れないね。

そんな事を考えているとようやく返事が返ってきた。

 

「・・・・・相手を尊重する事ですか?」

 

「近いけど、違うね。それに、尊重って言うのはただ相手を大事にする事じゃあないんだよ?」

 

心当たりがあるのか、しばらく黙り込むテンカワ。

 

「じゃあ相手を信頼する事、ですか?」

 

「言葉で信頼している、尊重しているって言うのは簡単さね。どうやってそれを証明するんだい?」

 

「・・・分かりません。」

 

「相手に迷惑を掛けりゃいいのさ。」

 

その瞬間のテンカワの顔は見物だったね。

額に入れて飾って置きたいくらいの代物だった。

・・・・・・・・・ルリちゃんやラピスちゃんならもう記録して編集まで済ませているかもしれないね。

 

「相手を尊重しているのに迷惑を掛けるんですか!?」

 

「尊重しているからこそ、さ。例えば艦長が何かで深く悩んでいるとする。

 それを何とかしてやりたいと思うだろ?」

 

「な、なんでそこでユリカが出てくるんですか!?」

 

「例えば、の話だよ。黙って聞きな。

 傍から見ても苦しんでいるのが分かるのに、誰にも何も相談しない。

 何とかしてやりたいのに何も言ってはくれない。

 そんな時、俺に話してくれればいいのに、って思わないかい?」

 

「・・・はい。」

 

「でも、悩んでいる本人にしてみれば、自分の事で他人に迷惑を掛けたくない、

 なぁんて思っているわけさ。馬鹿な話だけどね。

 周りに頼りになるかはともかくとして、

 心配してくれている人がいるのに気がつかないのさ。

 心配する方からしてみれば、相談に乗って力になってやりたいと思いこそすれ、

 迷惑だなんて思いもしないのにね。」

 

「迷惑をかけることがパートナーの条件だって言うんですか?」

 

「正確に言えば迷惑を掛け合う事が、だね。

 いいかい?迷惑をかける事が出来るってのはね、

 それだけ信頼しているって事なんだよ?

 信頼して頼りにしているからこそ、『御迷惑をおかけしますが』

 ってな事も言えるってもんさ。そこらへん分かるかい、テンカワ?」

 

「・・・余りよく分りません。」

 

「ま、今は分からなくてもゆっくりと分ればいいさ。

 でも、アンタの事を心配してる人間が沢山いるって事は覚えておきな。

 誰かに頼られる、ってのは嬉しいもんさ。好意を抱いている人間からなら特にね。

 それだけは忘れちゃいけないよ?」

 

「・・・・・はい。」

 

全く。いつも誰にでもそんなに素直なら良いんだけどね。

ん?サユリ達が戻ってきたみたいだね。

 

「ほらほら、いつまでトロトロ食べているんだい?さっさと昼飯掻っ込んじまいな!

 もうそろそろ夜の仕込みを始めないと間に合わないだろ!

 ここは厨房!ナデシコ乗組員みんなの食事を預かる台所だよ!

 皆の舌と胃袋を満足させて、働く元気を養ってもらう大切な仕事なんだからね!」

 

ま、物事なんてなるようになるもんだけどさ。

それでも・・・テンカワや、あの子達には幸せになって欲しいからね。

ちょっとしたお節介だったけど・・・これで少しは良い方に向かえばいいんだけど・・・ね。

全く手のかかる子だよ!      

 

 

 

 

あとがき

今回は短いですね・・・・。

最初はショートショートくらいにするつもりだったのですが、

やはり伸びました(笑)。

「時の流れに」では誰かを頼りにする事が余りに少ないアキト(ルリ・ラピス他除く)。

秘密主義だし、自分の本心は明かさないし。

どうも人間として精神的に「子供」であるように思えます。

んで。そんな「子供」が「大人」に叱られるのがこの話。

面白いと思っていただけましたら幸いです。  

 

追伸 

今回からワードパッドで書いているのですが・・・使いやすいなぁ。

これで文章も上手くなれば言う事なしなんだけど(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

鋼の城さんからの四回目の投稿です!!

いや〜、ショートな作品もいいですね〜

Benも書かこうかな〜、本編をこの形式で(爆)

一話にどれだけの時間を掛けるつもりだ、おい(苦笑)

でも、的確にアキトの弱点を突いてますね・・・

まあ、書いてる作者がガキみたいな奴だから(苦笑)

う〜ん、Benも精進しないと駄目ですね、これは・・・

 

では、鋼の城さん!! 投稿有難うございました!!

 

感想のメールを出す時には、この 鋼の城さん の名前をクリックして下さいね!!

後、もしメールが事情により出せ無い方は、掲示板にでも感想をお願いします!!

出来れば、この掲示板に感想を書き込んで下さいね!!

 

 

ナデシコのページに戻る