機動武闘伝
ナデシコ

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・さて、皆様。前回はさぞや驚かれた事でしょう。

まあ、無理もありません。なにせ、あのナデシコファイト優勝者にしてアキトの師匠、

先代のキング・オブ・ハート東方不敗マスターホウメイがデビルホクシンの手先だったのですから。

テンカワアキトでなくとも、信じられない事でした。

ですが運命とは残酷なもの・・突如飛来したシャッフル同盟の面々と共に、

アキトは裏切りのマスターホウメイにナデシコファイトを挑まなければならなくなるのです。

そう、真相をつかむためにも。

それでは!

ナデシコファイト・・・

レディィィ!ゴォォォゥ!」

 

 

 

 

 

 

 

第十五話

「戦士の称号!

さらばシャッフル同盟!」

 

 

 

 

 

 

「師匠を抹殺するだと!?・・ぐっ・・・!」

傷によろけるアキトの肩を慌ててガイが支えた。

シャッフル同盟の面々が口を開く。

「さよう、もはやこれは決定事項。」

「マスターホウメイは、我々シャッフル同盟の使命を忘れ!」

「デビルホクシンにその見をゆだねた反逆者!」

「それゆえ、抹殺せねばならないのだ。」

無言で右の拳を握るアキト。

ホウメイに砕かれかけたその拳の包帯に赤い血がにじんだ。

その手を押さえたガイがどこか怒った様に口を開く。

「・・・そもそも、あんたらは一体何もんだ?」

「「「「我らシャッフル同盟は、遥かに過ぎ去った昔から戦いの秩序を受継ぎ護る者。」」」」

「人類の歴史は、悲しいかな戦いの歴史。」

"ジャック・イン・ダイヤ"秋山源八郎が呟く様に語る。

「全ての戦士にとって最強たるシャッフルの紋章を持った戦士たちは

これまで歴史上のありとあらゆる戦いを監視し続け、幾度と無く人類の滅亡を阻止してきた。」

「その甲斐あって人類は自らその大虐殺の歴史を反省し、

もっとも進化した戦いの形、ナデシコファイトを生み出した・・・・・!」

「その意味の大きさは、マスターホウメイ自身が我らを代表し、

前大会で優勝した事で確信したはず。」

「ところが彼女は何を血迷ったのかファイトを無視し、戦いの秩序を乱すだけでなく、

再びこの世を戦乱の嵐に巻き込もうとしているのだ。

それを阻止する為に!

君も我らシャッフル同盟の一員としてマスターホウメイと戦わねばならないのだ!」

 

 

 

 

 

 

アキトは一人走っていた。

師の真意を知るためマスターホウメイからの一対一での呼び出しに応じたのだ。

無論誰もが止めた。だが、逆上した今のアキトには何も聞こえないかの様だった。

「馬鹿者めが・・・」

「どうする、ジョーカー」

「放っておくしかないじゃろう。それに、あの者がキングオブハートの紋章に

 相応しい者か確かめなくてはなるまいて・・・」

 

 

 

アキトを歓迎するかのように、ムヅラアーミーが列をなして、

目的地である東京タワーまでの道を固めていた。

そして、ムヅラアーミーどもから逐一送られてくるその映像を注視する者達がいた。

デビルホクシンのしもべと化した、ナオ達である。

「アキトめ・・・本当に一人で来やがったぜ!」

「じゃあ、早いとこアキちゃんを片付けちゃいましょう?」

「待てい!」

マスターナデシコの掌の上から、ホウメイが制止する。

リョーコがいぶかしげな顔をした。

「なんで止めるんだよ、ホウメイさん。」

「テンカワの戦いのセンス、野に捨て置くには余りに惜しい。

邪魔者のシャッフル同盟が動かぬ内に、テンカワを捕えてくれるよ。

フフ・・・ハハハハハ・・ハアッハッハッハッハッハッハッハッハ!」

マスターナデシコの周囲には、将に仕える士の如く四体のナデシコが控えている。

ホウメイの高笑いが響き、ナオ達四人が口元を歪めた。

 

 

走りながら、アキトの心はいまだに迷い、葛藤している。

「師匠・・俺には信じられません・・厳しい修行を通じて

俺に武闘家の魂を与えてくれたのは師匠ではありませんか・・・・!」

 

瞬間、アキトの心はかつて師と共に修行を積んだ地、ギアナ高地へ飛んでいた・・・

 

「いいかい、テンカワ。料理がただ腹を満たすだけの物でないのと同じように、

我ら武闘家の拳とは、ただ相手を倒すだけの物にあらず。

では一体何の為のものか・・・」

そう言って焚き火の火の中に無造作に手を突っ込むホウメイ。

「あ!師匠!」

「いいかい、テンカワ。繰り出す拳の一つ一つを研ぎ澄ますんだ。

 そうすれば、この手は己の魂を伝える道具となる・・!」

炎に焼かれる事も無く、ホウメイの手は火の中から串に刺した鳥を掴みとる。

「己の・・魂?」

無言で頷くホウメイ。

「俺の・・この手が・・・・・・うぁちっ!」

真似をして炎の中にまだ成長しきっていない手を伸ばす。

だが勿論、師の様には行かずすぐに手を引っ込めた。

「あはははははははは!はぁっはははははは!」

アキトが手をふうふう吹きながら笑うホウメイを一寸拗ねた目で見る。

「さあ食いな!そして一人前の武闘家に、料理人になるんだよ!

 そう、己の歩んできた道をその拳と料理で表現できるような、ね!」

「・・・はいっ!」

「よし!・・ならば問う!東方不敗は!」

「王者の風よ!」

「全新系裂!」

「天破驚乱!」

「「見よ!東方は赤く燃えている!」」

その夜、ギアナ高地には楽しげな笑い声が響いていた・・・・・・

 

 

 

 

 

かつて東京タワーと呼ばれた電波塔の鉄骨にホウメイは立ち、

アキトはそれを見上げる形で師と対峙していた。

 

(師匠・・・あの素晴らしい師匠が何故こんな事を・・・!

 俺は信じない・・・きっと何かがあるはずだ!)

「違いますか!師匠ぉぉぉ!!」

その瞬間アキトの四方の道路をぶち抜き、四人のファイター達が姿を表す。

「うぉぉぉぉぉっ!」

「待ってたわよ、アキトくん!」

「よく来たなぁ!」

「ボンジュール、アキト!」

 

「お、お前達!」

驚愕するアキトに追い討ちをかけるかのようにホウメイの声がかけられる。

「さあ、テンカワ、ここへ来な!ただし、そいつらを倒せればね!」

鉄骨を飛び移って上を目指すアキト。

それを追う四人。戦いが、始まった。

 

「アイヤァァァァ!!」

舞歌の一撃で鉄骨が飴細工の様にひしゃげる。

「やめろ、舞歌!」

「Hey!どこを見ている!こっちだこっち!」

影の様に間合いを詰めたナオが、無数にも思える左右のコンビネーションを放つ。

一撃一撃が余りに速過ぎて、アキトですら反撃する暇が無い。

辛うじて距離を取り、上をめがけて跳びつつ、叫ぶ。

「ナオ!目を覚ませ!」

「ううん、それはアキトのほうだよ・・!」

「ユリカ!」

アキトと同じく、ユリカも跳んでいた。空中で対峙する二人。

周囲を無数の薔薇が漂う。既にここはユリカの絶対支配圏の中。

「ユリカ!俺達の目的は常に強さを目指す事じゃなかったのか!?」

「だからこそ・・アキトは私達の仲間になるべきだよ!・・・えぇいっ!」

弾丸の速さで飛来する薔薇がアキトを襲う!

いずれも辛うじてかわし、鉄骨を背にして対峙するアキト。

「・・ぐわぁぁぁっ!?」

アキトを鉄骨ごと後ろから羽交い締めにしてるのはリョーコ。

あまりの怪力に鉄骨が軋み、歪んでいる。

アキトが脱出を試みている間に、他の三人がアキトの目の前に揃う。

 

 

「さあ、素直にマスターホウメイのお誘いを受けろや。

 そうすれば、後には強さと言う幸せが待っているんだ・・」

「黙れ!」

「うおぉっ!?」

リョーコの腕を振り解き、一瞬にして10m程を垂直に跳ぶアキト。

「いいか!お前達の今の強さは所詮上辺だけの物!

 本当の力は自分自身を表現する為の物だ!

 もし今上にいるマスターが本当のマスターなら、そう教えたはずだ!」

「じゃあ本物か偽者かは・・・」

「上へ行って本人に聞けぇっ!」

言いざま鉄骨を一本引き抜き、アキトに投げつけるリョーコ。

鉄骨は空を裂いて飛び、トウキョウタワーの第一展望台を床下から天井まで貫いた。

鉄骨を跳びあがり、展望台の上に姿を現すアキト。

「ふっふっふっふっふ・・・・」

姿は見えないが、こちらを見ているのだろう、くぐもった含み笑い。

「出て来い!偽者め!お前は本物の師匠じゃないっ!」

「何を言うかと思えば・・そんなたわけた寝言は、

 あたしに指の一つでも触れてからにするんだねっ!」

言葉と共に、ホウメイの放ったスカーフが数十メートルも伸び、

一振りの剣となって展望台の鉄とコンクリートを引き裂きながらアキトに迫る。

音速を超えたスピードで迫るマスタークロスを辛うじてかわすものの、

衝撃波に弾かれ転がるアキト。

「ぐうぅっ・・!」

その目の前で床が弾け、ナオ達が姿を現す!

「Hey,アキト!」

「もう逃げられないよ・・・」

「ふふふふふふふふ・・」

「アキト君、私達の仲間になりなさいな!」

「アキト、そうしろよ!」

じりじり間合いを狭めてくる四人。

アキトは展望台の端に追い詰められていく。

「ふふふふふふ・・あはははははははは!」

高らかに笑いつつ、マスターが軽やかに降り立つ。

「さっきまでの勢いはどうした・・!」

「師匠・・・」

「さあ!デビルホクシン様に忠誠を誓うのだ!そうすればお前の妹御も喜ぶ!」

「気」でアキトを圧倒するホウメイ。

歯を食いしばり、無言の圧力に耐えるアキト。

後ろはもう無い。踏み外せば地上まで200mを真っ逆さまだ。

「ふふっ・・なあテンカワ・・」

「さあアキト、来いよぉ!」

「一緒にデビルホクシン様に忠誠を誓おうよ、アキト・・」

「ねえ、アキト君・・・!」

何時の間にか、リョーコ、ナオ、ユリカ、舞歌の袖口や顔の周囲の皮膚に

銀色のウロコのような物が浮き出ている。まさしく、デビルホクシン細胞だった。

ガイが見れば、もはや脳までDH細胞に侵蝕されていると分かっただろう。

「テンカワァッ!アタシはね、お前を殺したくないんだよォっ!」

ホウメイの放ったスカーフの先端が槍のように鋭く尖る。

動けずにいた自分の眉間をその鋭い先端が貫く様を、アキトは確かに「観た」。

「これまでか!」

思わず観念して目を瞑ったアキトの時が止まる。

その脳裏に、雷鳴のような声が響いた。

(情けない奴だ!)

「(何っ!?)」

"クラブエース"グラシス・ファー・ハーテッドの厳しい声。

シャッフル同盟の声が次々とアキトの脳裏に響く。

(戦わずして諦めるなど、武闘家の風上にも置けぬ!)

(貴様のような腰抜けがキング・オブ・ハートの名を騙るなど、片腹痛い!)

ムネタケ・サダアキの突き放したような声。

「(何だと!)」

(武闘家とは所詮、お互いの心を拳を交える事によってしか語り合う事のできぬ

不器用な人間の事だっ!!)

信念に満ちた秋山源八郎の思念。

(ならば、己の信じる道の全てを、その拳に託してみてはどうかね・・?)

穏やかで威厳のあるフクベの声。

「(そうか・・俺が今まで会得した技の全てを・・

 この俺の魂全てをこの拳に込めてぶつければ・・

 きっと・・師匠も分かってくれる!)」

 

そのアキトの決意を示すかのように、右手の紋章が浮かび上がり、輝きを放った。

時が再び動き出した。空気の壁を切り裂いて飛ぶ、ホウメイの「マスタークロス」。

だが今のアキトはそれを易々とかわす事が出来る。

間合いを見切り、後方へ跳んだ!

「何をする、テンカワ!?」

思い切り良く手を伸ばして、地上へ200mのダイブをするアキト。

(この俺の・・キング・オブ・ハートの名にかけて・・!)

「出ぇろォォォォォッッッ!

シャァァァァァイニング!

ナデシコォォォォォォッッッ!!!」

 

宙に舞いながら腕を天高く掲げ、指を鳴らす。

それに応え、シャイニングナデシコが天空の彼方より飛来した。

モビル・トレース・システム、セットアップ。

シャイニングナデシコ・・・・起動!

「ぬおおおぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」

アキトの搭乗したシャイニングナデシコから、

先ほどホウメイが放った物に勝るとも劣らぬ闘気が噴出する。

今のアキトは、直前までの迷い悩んでいた負け犬ではない。

決意と闘志に満ちた真の戦士だ。

 

「師匠!俺は貴方と一対一で決着をつけたい!

 勝負の方法は・・・・ナデシコファイト!」

「ふはははは・・・面白い!受けて立とうじゃないか!」

弟子と同様に黒き鎧、マスターナデシコを纏うホウメイ。

「そうこなくっちゃなぁ!」

「私達もナデシコで!」

「待ちなさい・・・!」

ナオや舞歌が自らのナデシコを呼ぼうとしたとき、

老いて尚、凛とした声がそれを押しとどめた。

「キング・オブ・ハートは一対一での勝負を望んでおる。

 余計な手出しは・・・無用!」

「シャッフル同盟!」

「邪魔だてすんなぁっ!」

飛び掛かる四人。

しかし"ジャック・イン・ダイヤ"秋山源八郎が跳び、

空中ですれ違う一瞬で四人を地に這わせる。

しかしその瞬間、秋山の顔に驚愕が走った。

四人を打った自らの手を見つめ、呆然とする。

(こ、これは・・・・そんな馬鹿な・・奴らまさか!)

「どうしたのかね?」

フクベのその問いに源八郎が答えを返す暇も無く、

舞歌の乗ったドラゴンナデシコが展望台ごとシャッフル同盟を叩き潰した。

「やった!」

だが舞歌が勝利を確信した直後、まばゆい光が彼女の機体を跳ね飛ばす。

光の中から現れたのは・・・シャッフル同盟のモビルファイター!

それに戦いを挑む悪魔に操られたナオ達四人のナデシコ。

だが勝負は一瞬のうちについた。

シャッフルの戦士達が放つ「気」の鎖に、意志を持つ火炎に、

光の刃に、不可視の拳にそのボディを捉えられ、

シャッフル同盟の気合一閃、彼らは爆炎の中に消えた・・・

 

 

 

 

 

「でぇやぁぁっ!」

「とぉりゃぁあっ!」

アキトとホウメイの対決は激しい拳と拳の応酬から始まった。

ホウメイの貫手をアキトが捌き、

アキトの拳をホウメイがごくわずかに身を反らせて外す。

やはり技量ではホウメイの方が上。

鋭い一撃を受けかねて態勢を崩したところに、強烈無比の蹴りが来た。

背後にあったビルごと、仰向けに吹き跳ばされるアキト。

「ぐううっ・・・」

「はあっはっはっはっはっはっは!どうした!

 大口を叩いたわりには、アンタの拳は一度もアタシのボディを捉えてはいないじゃないか!

 アンタの力はその程度のものかいっ!?」

言いざま繰り出されたマスタークロスの一撃を、アキトは辛うじてかわす。

余波だけでいくつかのビルが斬り倒された。

「はあっははははははは!いくよォッ!」

戦いは、まだ始まったばかりだった。

 

 

 

 

「無益な殺生は望まんが、ホウメイに取り込まれた者を

 そのままにしておく訳にはいかんでな・・・何っ!?」

シャッフル同盟の技によって出来た巨大なクレーターの底に、

四体のナデシコが無傷のまま立っていた。

驚愕を隠せないシャッフルの戦士達。

「我々の技が・・・・・」

「あの者たちには通用しなかったと言うのか!」

「・・・その通りです。あれを御覧なさい!」

 

 

 

「・・・・なんて強い奴らだ・・・!」

「こんな戦い、初めてだよ!」

「嬉しくなってくるわね・・・・・・!」

「全くだぜ!」

四体のナデシコを包む「気」の輝き。

それは、先ほどシャッフルの戦士たちが放ったのと全く同種の物だった。

何より、その気が形作るのは・・・

 

 

 

「あれは・・・!」

「シャッフル同盟の紋章!」

「そうです。私はあの時、あの者達の体に我等と同じ命の力を感じたのです。

 彼らこそ・・・シャッフル同盟の後継者達なのです!」

「そうだったのか・・・」

どこか呆けた様に呟くフクベ。

「何てことだ!信じられん!」

衝撃を隠し切れないグラシス。

「だが、現実なのだ。どうする?」

あくまで冷静なムネタケ。

「フクベ殿。」

決断を促す様に源八郎がフクベに語りかける。

それに応えて考えこんでいたフクベが口を開いた。

「やはり彼らを救うしかあるまい。」

「やるのか!あれを!」

「それしか、ありますまい!」

不敵に笑いながら源八郎。

「儂等に残された道はただ一つ!」

「「「応!」」」

フクベの言葉に間髪を入れず応え、空に舞うシャッフルの戦士達。

「我々の、この命の炎を、極限まで、燃やすのだ!」

目も眩むような光に包まれ、ナオ達に向けて落下していく四人。

その体を覆う光こそ、極限まで燃やされた命の炎の輝き。

そのまばゆい輝きは、アキトとホウメイの死闘すら中断させた。

「何!?」

「あ、あれは・・・・!」

「アンタらぁっ!己の命と引き換えに、そいつらを元に戻すつもりかいっ!

 そんな事をして何になる!アタシを倒すのを諦めたとでも言うつもりかいっ!?」

「もはや覚悟は出来ておるよ・・我々は死すとも、

 その志は若き獅子達に受け継がれるじゃろうて・・・」

「「「「テンカワ・アキトよ!」」」」

声を揃えたシャッフル同盟の呼びかけに我に返るアキト。

「我等シャッフル同盟の命運は!」

「「キングオブハートとしてのこれからの君に全てを任せる!」」

「頼んだぞ・・・・・!」

「シャッフルの方々・・・・!」

「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」

輝きが、到底目を開けていられないばかりにまで膨らむ。

「や、やめろぉーっ!!!やめないかぁっ!!」

悲鳴にも思えるホウメイの絶叫。

「皆の命が・・・・」

何も見えぬ程の輝きの中で、だがアキトはナオ達四人の肉体に憑いていた

邪悪な意志が消えて行くのが何故か、はっきりと分かった。

唐突に輝きが消えた。

ナオ達のナデシコは地面に倒れ、シャッフル同盟の四人は仁王立ちしたまま動かない。

だが・・・シャッフルの戦士達にあの強く熱い「気」は既に感じられない。

「こ・・・これは・・・」

ぴしり。

高く、澄んだ音がした。

ぴしり。ぴしり。

シャッフル同盟の、地上最強の戦士達の肉体にはもう命の息吹は無い。

その肉体にひびが入る。

熱き魂に満ちていた肉体が、風化した岩の様に、無残に崩壊していく。

後に残ったのはただの、命を持たぬ無機質の塊。

ころん。

ホウメイの足元に、フクベの乗っていたブラック・ジョーカーの、首だった物が転がってくる。

膝をつき、それを拾い上げるホウメイ。

肩を落とし、首を垂れ、身じろぎもしない。

心なしか、その肩が震えている様にも見えた。

「師匠・・・・・・・・」

アキトが声をかけてもホウメイは微動だにしない。

いや・・・その背中が震えた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふっ・・ふっははははは・・はあっはははははははは!」

「師匠ぉ!!?」

笑いつづけるホウメイ。

背を向けているため、アキトからはその表情は読めない。

その震える背中が語る言葉を、アキトは読み取る事ができなかった。

そしてホウメイが振り返った時、その顔を彩っていた物は・・・邪悪な哄笑だった。

「愚かな奴らだよ!こんな小僧達を助ける為に、自分達の命を投げ出すなんてね・・・うぅりゃぁっ!」

ホウメイの手の中の、ブラック・ジョーカーの首が砕け散る。

マスターナデシコの瞳が、赤く輝いていた。

「あ・・・あぁっ!」

呆然とするアキト。

「ふっふっふ・・・・・む?」

異様な「気」の高まりを感じて再びアキトの方を振り返るホウメイ。

「う・・・ああああああああっっっっ!!!」

アキトの全身が、怒りの「気」に包まれている。

シャイニングナデシコが、その怒りの高まりに反応して、その秘めたる力を噴出させる。

マスクが開き、体中のリミッターが開放される!

「あれは・・・シャイニングナデシコ、スーパーモード!」

怒りに赤くその身を染め、猛然と突進するアキト。

衝撃波が、周囲の建造物を薙ぎ倒す。

「まやかしがぁ!」

宙へ飛び、マスタークロスを放つホウメイ。

「でぇやぁあああああああああああああああっ!」

それを真正面から、アキトがシャイニングフィンガーで迎撃した。

一瞬、シャイニングフィンガーを貫こうとするかのようにたわみ、抵抗するマスタークロス。

だが次の瞬間甲高い音を立てて、マスタークロスは根元まで砕け散った。

ホウメイの右手にも鋭い痛みが走る。

「ぐわぁっっ!」

アキトがその拳でホウメイの頭部を捉えた。

そのまま、全身全霊を込めた必殺の一撃を放つ。

「シャァイニング!

フィンガァァァァァァァッッッッ!!」

手を振り払い、紙一重の差で直撃をかわすホウメイ。

「テンカワァァァッ!」

「師ぃぃぃぃ匠ぉぉぉぉぉぉっ!」

しかし、その余波ですらマスターナデシコを小破させるのに十分だった。

大地に叩きつけられたマスターナデシコの上をエネルギーの奔流が流れて過ぎる。

直撃を受けた東京タワーが消滅し、

膨大なエネルギーの奔流と爆発が深さ数百m幅一キロ、長さ十数キロに及ぶ溝を大地に穿った。

その爆発の中から、マスターナデシコが姿を現す。

「ちぃっ!やるじゃないかテンカワ!ここはひとまず引くとするかね・・・・!」

そのまま、マスターナデシコはいずこかへ消えた。

 

 

 

 

ナオ達四人が頭を振りながら身を起こした。

「・・・・あら?私達は一体・・」

「確かマスター・・・・ホウメイさんの挑戦を受けたんだよね・・」

「あつつつつ・・・一体何が・・・んんっ!?」

自分の右手の甲を驚いた顔で見つめるナオ、そして他の三人。

「これは・・私の手にアキトと同じ紋章が・・・」

「私にも・・・・」

「俺の手にも!?」

「シャッフルの・・・」

「紋章・・・!」

 

 

 

スーパーモードを解除したアキトが拳を大地に叩きつける。

全身がおこりのように震えていた。

(師匠には・・・師匠にはもう・・俺の魂の拳は届かないのか!?)

その問いに答えるものはいない。

アキト自身、ひょっとすると答えを望んでいないのかもしれなかった。

 

 

 

次回予告

 

皆さん、お待ちかねぇ!

大地を揺るがし遂に復活した悪魔の巨大マシーン!

迎え撃つのは新たにネオドイツの戦士を加えたナデシコチーム!

果たしてアキトは、妹アイを倒す事が出来るのでしょうか!?

これは必見です!

機動武闘伝Gナデシコ、

「最強最悪!デビルホクシン現る」に

レディィィ、Go!

 

あとがき

 

すいません、フクベとか、じじ馬鹿とか、

キノコの父とか八っつぁんの出番はこれでお終いです。

再登場希望の人は、作者にメールを出そう!

作者も喜ぶし一石二鳥だ(笑)!

もちろんメールをくれた人には漏れなく返事が行くぞ!

さあ、君も作者のアドレスにLet's!ゲキガイン!・・・違うって。

そして次回!遂にマスターと並ぶ名バイプレイヤーの、あの方が登場します!

忍法!軍服!日本刀!ボンボン!三色タイツ!

乞う、ご期待!

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

鋼の城さんから連載第十五弾の投稿です!!

この頃からだったよな、師匠の名前をひたすら叫びつづけるのは(苦笑)

まあ、アキトも同じ様な行動をしてるけど(爆)

しかし・・・ホウメイさんは作中では何歳なんだ?

凄く気になるよな(笑)

まあ見た目はTV版のままだと思うけど。

・・・劇場版のホウメイさんも、あまり外見が変わってなかったような気が(汗)

 

では、鋼の城さん!! 投稿有難うございました!!

 

感想のメールを出す時には、この 鋼の城さん の名前をクリックして下さいね!!

後、もしメールが事情により出せ無い方は、掲示板にでも感想をお願いします!!

出来れば、この掲示板に感想を書き込んで下さいね!!

 

 

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