ゴポッゴポッゴポッゴボボボッ…………気泡が弾ける。

  暗い地下室を思わせる室内に何本も設置された水槽。

  それら全てに瞼を閉じ微動だにしない人影が、淡い緑色の室内灯によって浮かぶ。

  彼らの生まれたままの身体には水槽の天井から釣り下がった複数のケーブルがつな

 がり、口を覆うマスクから伸びたパイプがガラスを隔てた機械と接続されている。

  味気ない計器の表示が睡眠状態である事を示していた。

  その内の一本に近づく影…………引き締まった体を覆うライダースーツ、まとまり

 の無い髪型、暗い室内でも外さない大き目のサングラス。

  そのゲージには少年が入れられていた。

 「…………もうすぐ……幕があがる………あと少し…………」

  何かを切に願い焦がれる思いが込められた呟き。

  弾ける気泡と生命維持装置のもらす微かな音。

 「本当に後悔しないか?」

  誰に対しての問いかけだろう。

  物言わぬ少年?

  いや、自分に対してかもしれない。

  口元の微笑みは己自身に対する嘲笑か、少年に対しての期待か。

  サングラスに隠された瞳はどちらを映しただろう。

 「…………なあ、テンカワ・アキト」

  コポッゴポゴポゴポッ     ピッピッ

  誰も答えない。

『取り戻したもの、失ったもの』

一.


  弾ける銃弾、男は無造作に…………狙いもつけずにただ銃口を向けた。

  あれ程感じていた恐怖を忘れ、ひたすら前に、前に駆け出す。

  奴の顔に貼り付いた厭味な笑みが俺の心をかき乱す、俺は知っている。

  アイツはあいつは…………?

  銃口が定まる寸前に逆に体を傾け、かわす。

  背後に跳ねる弾。硝煙の香り。

 

『目で追うな!肌で……全身で感じとれ!』


  懐かしい声………ただ取り戻す為に……奴に復讐するが為に苦しみを力に、憎しみ

 を糧(かて)に掴み取った『力』

  『奴』とは?…………取り戻す、何を? 

  以前の自分には無かった『力』が使えるようになってから何度も浮かぶ疑問。

  単なる妄想ではない現実感のある記憶。思い出すのを拒む自身の心。


『いいじゃないか!昔の事なんて。忘れろ、忘れろ!思い出しても碌(ろく)なこ

   とが無い……自分は良く知っている………昔は昔。今は今。どうでもいい事さ』

  気を抜いていたのが仇になる!……どれくらい意識を手放した……

  眉間を貫く弾道を描く銃口が俺を捕らえ放さない…………回避は間に合わない!

  その思いに至った時、意識せずに振り払われた左手の甲が、銃弾を逸らした。

 「ほう、腑抜(ふぬ)けでは無いか」

  打ち尽くした銃を懐にしまい、踏み出す男。距離が詰まる!

  二人の距離が限りなくゼロになり、瞬間重なる。

  駆け出した勢いをのせた拳に力を溜め突き出す。

  しかし、目標を捉える事無く素通りしていた。

  アキトの一撃を横に体をずらす事でかわし、背後に回りこむ。

  いつのまにか位置が入れ替わっている、速い!

  振り向いたアキトの眼前に蹴り。咄嗟(とっさ)に腕をクロスさせ受け止めたが、

 堪えきれず体が背後に飛ばされた。

  大人と子供の体重さゆえ押し負け体勢が崩れ尻餅をついてしまう。

  男は蹴りを放った後、こちらが構えるまで動かなかった。遊んでいる?

  力量差は最初から分かっていた…………が、逃げられない。

  今背中を向ければ命の灯火(ともしび)は即座に終わりを告げる。

 「どうした?……もう終わりか」

  嘲る口調。絶対なる自信。

  このままで終わるわけにはいかない。父さんと母さん、ラピスがいる日常を取り戻

 す為には、この男を倒さねばならなかった。

 「ま、まだ!…俺は……俺は……お前を倒す!

  無謀ともいえる駆け出し、全身から搾り取った気をただ右手に込め奴の懐へ。

  常人には霞(かす)んで見えるアキトの攻撃も男には通用せず、無駄に体力を消耗

 して終わる。

  腐肉に群がるハイエナのごとく、男に挑みかかるアキト。

  目前の姿を見失い、戸惑う事1秒。突然、背後に生まれる気配。

  放った後ろ回し蹴りは、またも奴の体を捉えられない。

  あいかわらず嘲笑の仮面を被る男。

  体勢を整え、男の体に右に、左に、とラッシュを浴びせるが、一向に相手の体に当

 たらない。

  なぜだ!なぜ、当たらない? 焦るアキトをあざ笑うようにまるで舞踏会で踊るよ

 うに立ち位置を変える。

  アキト自身は気付かなかったが、二人はアキトの両親が倒れている傍まで移動して

 いた。
  いつの間にか男から嘲りの笑みが消え、代わりに浮かぶは、哀れみ。

 「……失望したぞ、テンカワ・アキト」

  ため息混じりに吐き出された言葉。

 「いつまで下らぬ夢を見る」

  戸惑うアキト。俺を知っているのか?

 「まだ思い出せぬか?」

  男は左右に体を傾げながら拳撃をしのぐ、まるで柳の葉を叩くように手応えが感じ

 ない。

 「幾(いく)年月(としつき)を過ごし、待ち続けたろう……」

  天を仰ぎ言葉を紡ぐ。

  どういう事だ?……この出会いが偶然ではなく必然とでもいうのか?

 「あの者との約定(やくじょう)ゆえ殺さずにおいたものを………貴様は知らぬ

       ……………貴様は生かされていた、あ奴の願いと………我によって」

  誰との約束だ?

  気を散らして隙を生む策か、

 「知らずば教えて…!?」

  近づいてきた男の体勢が崩れる、

  好機!と感じた俺は一足飛びに間合いを詰め、

  残りわずかな気を全て右拳に集約させ、奴を正面に捉え解き放つ!

 「粉砕!」

  確かな手ごたえと飛び散る血潮…………

  会心の笑みを浮かべ見上げた先には…………平然とした奴の顔があった。

 「…………ツクヅク半端者よ。己自身の力量がまるで見えておらぬ」

  幼子に諭すような語り、左手に受け止めた拳をそっと押し戻す。

 「!?」

  全身がガタガタと震え、間接が軋む。

  膝が体重を支えられずに前のめりに倒れ伏す。

 「自らの器を越え『気』を使った代償だ」

  体中が俺のいうことをきかない、力が入らない。

 「コレに見覚えがあろう?」

  マントに隠れた右手に掴んだモノを差し出す。赤黒い塊。

 「貴様が招いた結果をその愚かな瞳に焼き付けるがいい!」

  手ごたえは確かにあった、なのに奴は無傷のまま立ち尽くす。

  ならこのこびり付いた血は何だ?

  アキトは呆然と男の言葉を聞き流し、顔に降りかかった血を拭(ぬぐ)う。

  紅い、どす黒い血。生暖かい血。

 「気を極め昂気を纏い、人を越える……」

  自分を見下ろし静かに語る。

  何度も聞かされた言葉。誰に聞いた?

 「奥義に至る道に秘技有り………」

  『昂気』…………全身を巡る流れを従えし者が至る先にあるもの。

 「その一つ『気脈流し』………」

  男の右手に掴まれたモノ………それはグチャグチャになった何かの肉の塊。

  『気脈流し』は俺の『気』を自らの体内を素通りさせて対象物に流す技、とでもい

 うのだろう。

  俺は自らの手で…………俺は、俺は、

 「しかし、礼を言わねばならぬ」

  俺は何をした、

 「目的は達した」

  塊から漏れ出す淡蒼の輝き。

  かって『父親だったモノ』を投げ捨て、その鉱石から血を拭い取る。

 「地球ではチューリップクリスタルとも呼ぶ」

  C.C.…………ボゾンジャンプの触媒になるもの。両親の形見。

 「今の我には無用のものなれど、いずれ意味を成す」

  バサッ

  はねのけたマントの下に装着された奇妙な形状のプロテクター。

  その中央の窪(くぼ)みに鉱石をはめ込む。

 「だが、貴様は逃(のが)さぬ………褒美(ほうび)を受け取れ」

  身動きの取れないアキトに男は腕が伸ばし、額に右手をかざす。

  瞬間、凄まじい痛みと共に意識がとんだ。


二.

 「ユリカさんがいなくなったら寂しくなるね?」

 「う〜〜〜んん、どうかなあ〜〜静かになるし私とお兄ちゃんにとっては好都合」

 「あははははっ、そうだねぇ……ラピスちゃんはお兄ちゃんが好きだったけ」

  二人の少女が笑顔で語り合う何でもない日常。話題は自分の知っている事、知りた

 い事、家族の事、好きな人の事。それこそ何でもないこと。

  どこでもある風景、どこにでもいる二人。何も変わらないイツモ。

 「…………でね、アキトったら赤くなっちゃって……?」

  いつの間にか隣を歩いていた少女がいなくなっていた。

  後ろを振り向くと空を見上げ立ち尽くしていた。

 「どうしたの?ラピスちゃん!?」

  ラピスの表情は虚ろで別の何かを見ているような儚(はかな)さを感じた。

 「…頭……頭が痛い……割れる……痛い……アキト!…………アキト?」

  微かな呟きの後バランスを崩す。

 「ラピスちゃん!ラピスちゃん!返事をして…………ねぇ!」

 「あ、あれは…………北辰!?」

  小刻みに震えるラピスの体を抱きとめ、呼びかけるルビアの声も届かず、意識は水底に沈むように

 深く、深く…………


  最初に感じたのは暖かい温もりと圧力。自分の体が石になったような重さ。

  覆いかぶさるアキトの笑顔もどこかぎこちない。

  いつだろう?…………どこだろう?

 「ごめん…………ごめんな、ラピスにも普通の暮らしを……して………」

  ううん、そんなことない!私はアキトの目、アキトの耳、アキトの手、アキトの為

 にいる、アキトのもの。

  ラピスの心の叫びも体も思い通りにはならない。

  これは…………最期の記憶。木星の大気に引きずり込まれた時の記憶。

  I.F.Sメタルから手が離れてしまい、AIからの情報も途絶えたまま………

  霞む視界にブラックアウトした複数のスーパーウィンドゥ。

  非常灯で赤く照らされたブリッジ。

  断続的に続く振動が異常事態であることを感じさせる。

  一体、気を失っている間に何が起こったのか?

  たとえ、それが数十秒であったとしても彼らにとっては命取りになる可能性もある。

 「俺の…我がままに……お前を巻き込んだ、最期まで………」

 ゴッフ

  咳き込んだアキトが大量の血を吐き出す。

 「はっ、ははは、…………終わりらし…い」

  アキトの瞳から急激に生命の息吹が失われていく。

  嫌だよ、嫌だ!アキト…………死なないで!

  苛(さいな)む痛みと混濁する意識。時間が無情に過ぎていく。

  声無き声が聞こえたのか、ラピスを安心させるように微笑むアキト。

 「あの頃は…楽しかった……仲間が居た…ケンカもした……一番充実……」

  別の何か、幻覚も見え始めたのか苦しそうだったアキトが柔らかな表情になる。

 「ガイ…………元気か?もうすぐ俺もそこへ」

  アキトは次第に現実から遠のいていく、今の彼に私は見えていない…………

  何故か悲しかった。疎外感がつのる。

 「ナデシコ……懐かしい。帰りたい………」

  誰に話しかけているの?圧力だけでなく暑さも感じ始め不快感が増す。

  誰も答えるはずの無い願い、ブリッジに私以外には人はいないはずだった。

 「…………」

  確かに声が聞こえた。アキトに答える……声。

  自分の背後から聞こえた声は、しかし、口開かぬ目前のアキトの声。

  極限状態における幻聴のたぐいかな?

 「皮肉に………しては…最高……だ……頼む……死に…………神…」

  アキトの心音が途絶え、視界が闇に閉じ、ラピスの意識も溶け出す。


三.


  俺は夢を見ているのか?

 だが、夢にしては現実感がありすぎる。これは、忘れていた記憶。奴との最期の闘い。

 『決着をつけよう』

  奴は言った。何度もあいまみえ、その度に煮え湯を飲まされてきた。

  ユリカを取り戻す為に掴んだ力も奴に一歩届かず、執念と狂気を糧に闘う。

  いつの間にか目的が手段に取り代わり、奴と闘う為に力を欲した。

  ユリカを望み、奴の血を肉を壊す喜びに心が支配されかかったのも一度ではない。

  それがようやく終わる。こいつを倒せば全て終わる。ユリカの微笑みをこの手に…

 手にしてどうする?
 
  俺は本当にそれを望んでいたのか?

 『抜き打ちか?……笑止!』

  奴の機体と俺の機体がぶつかり合う、装甲を打ち抜かれるサレナ。

  だが…………まだだ!

  ハンドカノンを手放し、振りぬかれたナックルがコクピットごしに奴を打ち据える、

 確かな手ごたえと共に負荷に耐えかねたサレナの装甲が剥がれ、姿を現すエステバリ

 ス。メインカメラの辺りからは搭乗者思いを代弁するかのようにオイルが涙のごとく

 流れる。荒い息遣い満ちるコックピットに、

 『見事だ……』

  奴の最期の言葉。

  終わった……安堵感を得たのに穴の開いたような空虚感はなんだろう。

  これからどうする?

  決まっている、ユリカと暮らして…………

  冗談はやめろ。まだ殺し足りない、そうだろ?
  いや、違う!………俺は、ユリカを取り戻せば、それで…………

  本当か?本当にそう思っているのか?…………正直になれ、アキト。

  殺戮と破壊、硝煙と

  違う!………強く否定する心と認めようとする心。


  違うな。お前は認めている。お前が今まで犯した罪を。

  ユリカの笑顔に向き合える勇気が今のお前にあるのか?


  ユニットから切り離されたユリカ。

  生き別れた頃と変わらぬ眩しい笑顔。

  望みは全て叶えられたはずだった…………なのに何故あいつをより遠く感じる

  ああ、そうか。遠くなったのは、変わり果てた自分の方だ。

   「は、ははははっ、俺はいつの間にか…………」

  今の俺はユリカの近くにいて良い存在ではない。

  そばにいればユリカが疎(うと)ましくなる。笑顔が俺の心を穿(うが)つ。

 『アキト?どうしたの』

  ラピスが気遣う声が聞こえた。

  俺の心の乱れを感じ取ったのだろう。

 「いいや、何でもない。一度ドックに帰還する」

  この後はどうする?残党刈りでもするか……

 「ラピス…………もう少しだけ俺に付き合ってくれ」

 『了解………』

  この哀れな少女に普通の生活をさせたい、そんな矛盾した思い。

  復讐が終わった今、彼女は解放されるべきなのに手放せない。情けない自分。

  俺はいつか…………ユリカの笑顔に向き合えるだろうか?

  いや、今は考えない事だ。自分自身の闇に向き合える時がくれば考えよう。

  何が二人にとって最善かを。

  だが、今はまだユリカの元に戻りたくなかった。


四.

  記憶は遡り、次に見えたのは嫌な記憶。私がアキトに会う前の記憶。

  でも、忘れられない記憶。初めて人間として見てもらったのはこの時だった。

  私は生まれた時からそこにいた。

  生まれたのでなく製造された。

  何の為か分からない。いつもいつも白衣の人が私達が漂う円筒を行き来する。

  何度も何度も何年も…………変化が現れたのいつだったろう?

  白衣が赤く染まり、ガラスは砕け、自分達は初めての外気に晒(さら)された。

  生まれたままの姿でふるえるばかりで動けなかった私に影が射す。

  見上げたそこに爬虫類を思わせる冷たい目と紅い義眼、厭らしく舌なめずりする顔。

  自分はこれから……………………

 『北辰』と呼ばれる男が引き連れた一団に連れ去られた『ラボ』での扱いは以前と余

 り変わらなかった。

  ううん、変わったのかもしれない。より絶望に近く。

  私より年かさの女性が連れ出され帰ってきた時には廃人同然になっていた。

  役立たずは捨てられる。

  様々な知識が刷り込まれていく、彼らの目的の為に……知りたくない事まで。

 『勘弁してくださいよ。使い物にならなくなったらデータが取れないんですから』

 『まあいいではないか。代わりはいくらでも居る』

  白衣の一人と北辰の部下の一人との会話。

 『上の奴らは固くてな。女遊びもままならん』

 『だからって……実験体に手を出さなくとも』

 『ふん、貴様達も同類だ。分かるだろ?何も知らぬ娘を蹂躙し汚す喜びを!』

 『よしてください。僕達のは純粋に好奇心と探究心で…………』

 『やっていることは同じでも?』

 『まあ、そうですね。………で次はどれにします?』

 『ほう!話が分かる奴だ。色々と便宜をはかってやるぞ』

 『有難う御座います。で……』

  男達の視線が自分を捉えたのを感じる、舐めるような嫌な眼。

  自分には希望も未来も見出せず壊され廃棄されるまでの人生しか残されていない。

  少女の表情が次第に虚ろに瞳は何も写さなくなろうとも彼らの声は死刑宣告のよう

 に流れた。

 『ふむ、アレにしよう』

 『いや、アレは北辰殿が予約済みで…………』

 『!?何、隊長が?……ふっ、隊長ごのみの人形よのう』

  私はあの蜥蜴目の男の餌食になるの?

  あ、ああああ、もう、何も考えない。どうせ…………

  希望は見出せず闇が心を蝕(むしば)む。

 『隊長のことだ、数時間と持つまいよ』

 『それは困りますなぁ〜』

 『なあに居なくなればまたさらえばいい』

 『と、いうと?』

 『次に狙うは白き妖……』

  心が完全に消滅する寸前、彼の声が聞こえた。

 『それはできぬ相談だ』

  男が背後に振り向く間を与えずに第三者の腕が、首を絞め本来曲がりえぬ角度に捻

 った。

  室内に何かが砕ける音が聞こえ、糸が切れた人形のように倒れこむ男。

 『お、お前は?』

 『聞いてどうする』

  頭から股間にかけて刀で切り分け倒れる男を見下ろす。

 『死すべき定(さだ)めにある者が』

  二人が殺されると途端に周囲の音が聞こえてくる。爆発音とアラーム、退避勧告。

 『奴はいない……か』

  周囲を警戒し見回していた彼の視線が止まる。

  今まで感じた事の無い視線。

 『まさか……I.F.S.強化体?…あの娘(こ)と同じ金色の瞳』

  驚きと戸惑いがない交ぜになった声。私を通して誰かを見ている、そんな気がした。

 『詮索は後だ』

  篭手(こて)から引き出されたコードを端末につなぎ数秒、永く囚われたカゴから

 開放されていく人々。

 「立てるか?」

  絶望の淵から救い出された私達はただ呆然とするだけだった。

  ある者は立ちつくし、または蹲(うずくま)ったまま。

  わけも分からず見上げているだけだった私に、彼は優しく声をかけ身に着けたマント

 を外し被(かぶ)せてくれた。

  彼を間近に見て気付いたが、サングラスは頭部後ろの機械と連結され、マントが取

 り払われた体には時々ナノマシーンの紋章が浮かび上がるプロテクターに覆われていた。

 「…あ…あり……がとう……ありがとう」

  最初に彼とかわした言葉。異様な彼の姿に驚きを隠せず、声に表れてしまった。

  立ち上がっても彼との身長差はかなりあった。

  彼が現れた入り口に紅い光が灯る。

 「う、後ろ!」

  私の叫びに振り向いた彼に襲い掛かる北辰!

 「久しいなテンカワ・アキト!」

  袈裟斬りに振り下ろされた剣戟をわずかに体をずらす事でかわし、抜刀。

  にらみ合う二人、息詰まる空間。

  彼は『テンカワ・アキト』という名前らしい。

  跳ね上げた剣戟(けんげき)が北辰の刀とぶつかる!

  暗い室内に飛び散る火花、数合かわされた後折れるアキトの刀。

 「まがい物の体で我に敵うとでも思うたか?」

  半ばから折れた刀を投げ捨て構えを取るアキトに大上段に刀を振り上げ嘲笑を浴び

 せかける北辰。

  振り下ろされる刀を挟み込むようにアキトの腕が伸ばされ交差する、斬られた!?

 キンッ

  澄んだ音色と共に刀片がとび北辰の腕に突き刺さる。

 「そうでもない。お前を倒す為に身に着けた技がある」

 「フンッ」

  鼻で笑い刀片を腕から引き抜く北辰、後ろから大勢が踏みしめる足音。

  ざっざっざっざっざざああぁ    ジャキジャキジャキジャキ

  室内になだれ込んできた男達が北辰に銃口を向けた。

 「投降しろ、北辰!」
 
  間合いをつめるアキトに刀片を投げつけ跳び離れ、大きな開閉口の上に立つ。

 「また逢おう………テンカワ・アキト」

  蓋が開き落下して姿を消す。

  アキトがたどり着いたと同時に爆炎が吹き上がった。

  短い命を枯らした実験体が捨てられていた穴。

  名前も知らない人々の亡骸(なきがら)は火葬された。

 「テンカワ、大丈夫か?」

  話しかけてきた背の高い男に無事を伝え私を抱き上げる。

  絵本のお姫様が王子様にしてもらうアレだ。

  私は初めての安堵感を得た。黒い私だけの王子様。



  『ラボ』から救出された私達はネルガルの施設に収容されたけど以前と同じ扱いは

 受けなかった。

  人間らしい…………人間として見てくれた。嬉しかった。でも…………

  私は物足りなさを感じていた。あれ以来、アキトとは会っていない。

  彼の事が知りたくて堪らなかったが私が聞くと皆暗い表情を浮かべる。

  どうしてだろう?

  数日後、その理由が分かった。

 「……いいわ、付いてきて」

  アキトの担当医だというイネスさんは私を連れ、地下道を歩く。

  ここがどこか分からないが、あの施設から200メートルは離れていると思う。

  長い一本道の突き当たりにあるエレベータに乗り込むと上昇をし始めた。

  B-15と表示されたパネルが次々と数を減らし、0から数が増え止まる。

 「……ここは?」

 「アキト君専用の病室であり彼の住まいよ」

  二人が降り立ったそこは広いロビーで少し離れた所に扉が一つあった。

 「実を言うと……彼は自分の意思で体も動かせない状態」

 「えっ!?」

  イネスの説明は唐突すぎて信じられなかった。

  だって、私を助けてくれた時はちゃんと歩いていたし…………

 「その顔だと……信じていないわね。まぁ普通はそう思うわね」

  イネスの説明によるとアキトも奴らの実験の被害者の一人でその後遺症の為、五感

 のほとんどを失い、立つ事もままならない状態だったらしい。

 「それなのに、ユリカさんを助ける為に無理をして……月臣君が教えた『柔』という

  もので何とか立ち上がるとこまでいって……後は機械のアシストで動けていた、と

  いうわけ、今まではね。でも…………」

  扉を開いた奥には様々な機械の群れの中にベッドが置かれ、周りの機械から伸びた

 チューブを体のアチコチに取り付けられたアキトが眠っていた。

  シュ、ゴーーーシュ、シュ、ゴーーーシュ

  人口臓器や呼吸器がたてる音が静かな室内に響く。

 「とうとう、限界が来た……ということ。体内の臓器も自分で動かせなくなって、

    ずっとこのまま。辛うじて生きているけど植物人間……いいえ、もっと深刻」

  ベットの傍の椅子に腰掛けたイネスは愛しむようにアキトを見つめ、彼の頭を撫ぜる。

  担当医というだけでない思いがあるように思えて胸が苦しくなった。

 「私はアキト君の力になりたい……でも、彼にはこれ以上無理をして欲しくない。今

  のままなら私の傍にいてくれる、私だけの…あっ、今のは聞かなかった事にしてね」

  やっぱり、それ以上の感情を持っていたらしい。イネスさんが私の知らないアキト

 を知っているのが何故かやるせなかった。

  どうして、そう思うのだろう?

 「……無関係の私に何故そこまで教えてくれるのですか?」

  自らの胸の内に湧いたモヤモヤを隠し、疑問を口に出す。

 「そうね。このままではアキト君は遠からず命を失う事になる、現代医学の限界。医

  者の私がサジを投げるしかない、なんて堪らないの。でも…助ける方法はあるの」

  あるなら実行すればいいと思う。なのに何故『私』を見るのだろう?

 「ねぇ、アキト君を助けたいと思う?」

  確認するような問い。

 「それは………思います。私ができる事なんですか?」

  そういうことなんだろう。自分をここまで連れてきてわざわざ説明したのは、最初

 から私に何かをさせる為だったのだろう。

  でも、彼の為に私に出来る事があるのならやりたい……それで彼が助かるのなら。

  だって、アキトは私に希望を与えてくれた人だから。

 「そう、適任者はもう一人いるけど……彼女には知られたくないでしょうしね、アキ

  ト君は。だから貴方が選ばれた、というわけでもないの。手術は簡単にいかないわ

  、なら成功率のより高い素材…いいえ、人材であたりたいの。救出したI.F.S

 シンクロ強化体の中で能力がずば抜けて優れていたのも選考基準に合致していたわ。

 ………それと、これが一番重要なことだけど……貴方、アキト君に好意を持っている」

 「なっ、何を……い、言うんですか?」

  両頬が熱くなり動悸が激しくなる。

 「これでも……長く生きていると分かる様になるものなの」

  言われてみるとそうかも知れない。これが『好き』という気持ち。悪くない。

 「それに貴方が傍にいればアキト君は変わると思う。私やエリナでは彼を戻せない、

   悔しい事にね。でも貴方は嫌でも思い出させる、彼女を……彼の義妹の事をね」

 「私はその人の代わりですか?」

  他人がしゃべるような淡々とした物言いになった。

  期待がしぼみ、落胆が増す。

 「言い方が悪かったわ。貴方に彼の家族になってもらいたいの」

  『家族』知識としては知っていても自分には無いもの。

  だけど、何だかあたたかく包み込むような感じがしていい。

 「…………分かりました。私でできる事なら何でもします」

 「ありがとう」

  私の返事を聞いたイネスさんはホッと胸を撫で下ろし微笑んだ。


  手術後、イネスさんは私を連れてアキトの部屋に来た。

  私とアキトは全身にそれぞれ送受信可能なナノマシーンを埋め込まれ、調整を受け

 ていた。

  要はI.F.S(イメージ・フィードバック・システム)の応用だ。

  アキトが注入されたナノマシーンが彼の脳から全身の器官への指令を阻害している

 のなら、それらを制御してやればいい。

  アキトの持つナノマシーンを統制御するのがラピスの役目。

  アキト自身のオペレーター。

  理論上は可能なはずだが、果して…………

  送受信を増幅する装置に設置された椅子に座ったラピス。心なしか表情が乏しい。

  処置の弊害か、常時彼女の脳にアキトの意思が流れ込み、その中から彼が最も必要

 とするものを彼の全身に送り返さなければならないためかもしれない。

 「アキト君、どう?」

  ベッドに腰掛けたアキトは静かに視覚補正の為のサングラスを外し、瞳を開ける。

 「……見える、コレが無くとも見える」

  視覚は大丈夫そうだった。

 「アイちゃんの声も聞こえるし、何だかいい匂いもする」

  聴覚と嗅覚も回復したようだ。

 「……ラーメン。私が作ったんだけど………」

  イネスさんが差し出したドンブリを受け取り、ハシでラーメンを啜(すす)る。

  さっきまで喜んでいた彼の表情が曇る。

 「分からない。塩辛いのか甘いのかよく分からない」

  味覚は戻らなかった。

 「ラピス、君のせいじゃない。ありがとう、味覚以外は何とかなるみたいだ」

  力不足を悔やんでいたのが表情に表れたのか、アキトは私の頭を撫でて励ましてく

 れた。

 「ラピスの髪は柔らかい………触感はあるらしい」

  立ち上がったアキトが私達が見守る前で体を動かし始めた。

  私はアキトの思い通りにしようとしたが、次第についていけなくなる。

 「?!アキト君、待って。まだ慣らしの段階だし、増幅器も

   試作だから調整が必要、それに…………ラピスの方が駄目みたいだし」

 「私は大丈夫。続けて……」

  あ、頭がぼうーとしてきて…………

  送受信限界を超え負荷がかかった為にラピスに無理が出たらしい。

  その後、増幅器の改良とアキトとのリハビリによって、『木連式柔』の『型』を一

 通りこなせるまでになった。

  今、私の目の前で繰り広げられている光景、月臣さんとの組み手は実戦さながらで

 アキトの昂ぶる感情が手に取るように分かる。

  でも、味覚だけはどうにもならなかった。もしかしたら私自身が味覚に対しての認

 識不足が反映されているのかもしれない。

  見る、聞く、嗅ぐ、触るは自分でもともと身につけていた感覚で慣れていたものの、

 私自身の人生で最も長く過ごした研究所では全て機材から伸ばされた管から注入され

 る栄養素が食事代わりだった。だからではないか?、と思う。

 「どうした?」

  いつの間にか傍にいたアキトが話しかけてきた。

  今では意識するまでなく私はアキトの補助をこなしていた。

 「何でもない」

  いつか私が必要とされない日がくるかもしれない、でもそれまで私はアキトの傍に

 いる。

  私はアキトの目、アキトの耳、アキトの手、アキトの足、アキトの……アキトの…

  いつも心の中で繰り返す言葉を思い浮かべるラピスは今幸せを感じていた。


五.

  今度は一番幸せを感じていた時間。蜥蜴戦争も終わり、長屋生活も慣れた頃。

  俺は決意した!…………と言っても遅すぎかな?

 「けっ、結婚するぞ!」

  俺がそう言った時のあいつの笑顔が今でも思い浮かぶ。

  本当に嬉しそうで幸せそうで…………

  ラーメン屋台を引っ張り夢は店を持つ事で今の生活に不安を感じないでもないけど

 けじめというか節目というか、やらなければならない使命感に駆られていた。

  カッコつけすぎた……ユリカが益々綺麗になっていくのを見るうちに不安になった。

  今手に入れなければ誰かにさらわれそうで、料理以外にとりえの無い俺をあいつが

 好きでいてくれるのは奇跡だと思えた。

  少し天然が入ってるけど美人で優秀で……あいつの笑顔は何よりも好きだ。

 「娘さんをください!」

  必死の思いを込めて放った言葉に親バカのおじさんの雷を予想していたけども……

 「ふむ、いいだろう」

  以外にも了解の言葉だった。安堵し胸を撫で下ろした俺に、

 「しか〜し!君の料理の腕が知りたい」

 「へ!?」

 「期限は三日。ラーメン一杯を私が食べる。それで判断しよう」

 「本当?お父様。それだけでいいの?」

 「ああ、そうだよユリカ。満足のいく味なら可愛いお前を託す事ができる。しか〜し、

   ワシごときも満足させられない味ならば、大事な娘をやることはまかりならん!」

 「お父様!ソレ横暴です。私の気持ちはどうなるんです!」

 「しかしなあ、ユリカや。一家を養わねばならぬのに中途半端な者に……」

  おじさんの言うのももっともだ。料理で身を立てる覚悟をした俺を認めてもらう為

 に俺は受けてたった。

  長屋の帰り際、ユリカがいざとなったらお父様と縁を切る!と、叫ぶのを宥(なだ)

 める俺の頭の中はラーメンの事でいっぱいだった。

  何はともあれおじさんに認められた俺たちは盛大な結婚式(ちなみに費用はアカツ

 キのポケットマネーから出た。祝儀代わりらしい)をあげ、皆に祝福と見送りの後

 出発ロビーにいた。

  そういえば、ルリちゃんの流した涙は少し悲しそうだったのはなぜだろう?

  二人の新婚旅行は復興され始めたユートピアコロニーから思いである地域を回る事

 にしていた。数奇な運命に翻弄され再会した俺たちは第二の人生に踏み出したのだ。

  アナウンスが流れ、荷物を持ち搭乗口に向かう。

  連絡通路を抜けると何故か人が居なかった。

 「かっし〜なあ。どこで間違ったんだろう?」

  ユリカに話しかけようとしたアキトは急激な眠気に誘われた。

 「うっ、何だか眠たく……」

 「何も怖がる事はない。汝(なんじ)は栄光ある我がラボに招待された」

  見知らぬ男の声を最後に俺は…………


  気がつくと白い広大な室内のベッドに拘束されていた。

 「お目覚めのようですよ」

 「ようこそ!我らがラボへ、我々は君を歓迎する」

  白衣を着込んだ男達の声。

  どこの時代劇から抜け出してきたのだろう?と思わせる、編み笠に僧衣とマントを

 組み合わせたような衣装を着込んだ男達が数人。

 「ラボ?」

 「そう、我が結社の栄えある秘密ラボに貴公を招待したのだ、テンカワ・アキト」

  編み笠男の一人の声、聞きなれぬ単語。

  結社?……ラボ?

 「君の名声は聞き及んでいるよ、蜥蜴戦争を終戦に導いた勇者………そして生身で跳

   躍をなした事も。すごいよねえ、生身だよ、生身。機械の補助無しに跳んだんだ」

  白衣を着た研究員らしき男が説明する。

  説明を聞くと、イネスを思い出だした。

  でも、より無邪気で好奇心が有り余っているのが感じられ不安度が増す。こいつら

 、俺をどうしようというのだ。

 「貴様は閣下の理想の為………新たなる秩序の礎になるのだ」

 「ふざけるな!何が新たなる秩序だ。俺をどうするつもりだ?」

 「貴様が知る必要は無い」

 「ユリカは、ユリカをどうした?」

  余り動かない首を左右に振りながらユリカを探す。

 「女は別の場所だ。まあ、生きていればの話だが」

 「くっ、ユリカにもしもの事があったら俺は…………」

 「どうするというのだ?無力な貴様に何ができる」

 「お前を殺す!」

  俺の叫びを聞いた途端、二人は腹を抱えて笑い出した。

 「くくくくくくっ、久しぶりに笑わせて貰った。良かろうやれるものならやって

  みるがいい。我が名は北辰。命永らえ、再び逢い見(まみ)える日を楽しみにしてるぞ」

  北辰は捨て台詞を残して立ち去った。

  俺達の幸せを壊した張本人、倒すべき敵。奴の顔を忘れない、忘れるものか。

  必ずここからユリカを救い、奴を倒す!



  度重なる実験。意識が無くなる事数十回。神経が麻痺し、自分の体がいうことをき

 かない。牢獄とラボの往復の日々、いつしか正気が保てなくなった。

  いや、まだそんな事を意識できるなら正常なんだろう。でも、それがいつまで持つ。

  救いの無い毎日。虚しく月日は流れ、頭を弄繰(いじく)り回され五感を失った廃

 人でしかない俺は廃棄された…………


  錯綜する失われていた記憶。パズルを仕上げるように満たされる。

  俺の記憶…………私の記憶。アキトとラピス、二人の記憶が交互に集まり形を成す。

  二人の記憶の中の闇。共通する仇(かたき)。

  幸せを奪い踏みにじられ…………心に絶望を植えつけた。

  重なる記憶。思い出した…………全てを……いや、思い出すべきではなかったか。

  全て無かった事にできればどれ程良かったか。

  あいつは…………奴は…………


「「北辰」」


  アキトの見ているものがラピスにも見える。アキトの感じているものをラピスは感

 じる。以前よりも心を近く感じながら二人の距離いまだ遠い。

 《アキト、アキト、アキト、アキト》

  ラピスの呼びかけがアキトの覚醒を促す。

 

六.


  最悪の目覚めだった。無くした記憶を取り戻したのに俺には時間が残されていなかった。

  今の俺に何ができるだろう?

  奴の言うとおり、無駄に体力を使い根こそぎ気力を使い切ってしまった。

  回復には半日を要するだろう…………無事であれば。

 「何故、お前がここにいる、北辰」

  アキトの変化に驚かなかったのは予想された事なのか、

 「ようやく、覚醒したな」

  奴の口調は相変わらず尊大だった。

 「質問に答えろ北辰。何故お前がこの時代のこの場所にいる?」

  記憶に残る北辰よりやや年かさを増し皺(しわ)が深くなったように感じる。

 「ここで待っておれば貴様が来ると思っていた…………歴史を変えるために」

 「なぜ知っている?……俺の両親が暗殺されたことを?」

 「久しぶりの再会。話すのも吝(やぶさか)かではない、とはいえ。まず確認しよう」

  相変わらずの時代錯誤な風体に反吐(へど)が出る。

  二度と会うはずの無い、思い出したくない過去の象徴。

  奴を倒したことでできた空虚感は相対したとて埋まるはずは無く。

  ソレは別の何かによって満たされたのに気付く。

  その内の何割かは目の前の床に転がり失ってしまったが…………

  忘れ去りたかった己の罪。

  過去の平穏な暮らしにいつまでも浸っていたかった、終わらぬ夢を見続けたかった。

  自分と向き合えなかった愚かな結果。

  今回も救えなかった…………ある意味史実どおり事件は終わった。

  その時になって冷静に周りを見回す。

  所々に散乱している人間のものらしきパーツは十数人分はある。

  彼らがクーデターに見せかけた親父達の暗殺の実行部隊なのだろう。

  装備の差こそあれ、完全武装の兵隊の成れの果ての切断面の鋭さから、北辰の腕が

 鈍(なま)るどころか以前より増している事をうかがわせた。

  対する俺と言えば子供といえ鍛え上げた肉体と『気』が多少使える程度。

  勝負はやるまえから決していた、というわけか。

 「今のお前ならコレが何かわかるな?」

  北辰が身に着けたもの…………確か、ジャンプスーツ。そしてC.C。

 「近場でいい……跳躍をイメージするがいい」

  確かに一つだけ手は残されていた、あれを使えば脱出は可能だ。しかし、何を……

 「この場は見逃してやろうというのだ………長き年月が我を慈悲深くしたのだ」

  何を白々しい事を今更!

  いきり立つアキトを楽しむように見下す北辰。

  悔しい事に他に手立てを見出せなかったアキトは記憶の奥から、警察署を思い浮か

 べた…………しかし何も起こらず石も反応しない。

 「その顔は無駄であったな。貴様のイメージの伝達を一時的に遮断した」

  何を思い浮かべても反応しない。全身のナノマシーンも右手のI.F.S.コネク

 ターの紋章も……?奴の攻撃を受けるまでは無かったものが俺の手の甲に浮かぶ。

  こちらに還ってからいまだにナノマシーンの注入は行っていなかったはずなのに。

 「こういう使い方もあるという事だ」

  月臣から教わら無かった技。

  奴の話を要約するとこうだった。

  俺との決着の後、朦朧とする意識の中奴は願った『テンカワ・アキトとの再戦』を。

  ジャンパーシステムに残されたC.C.が反応して今から二十年前の火星に跳ばした。

  確かにもう一度闘えるかも知れないが、まだ生まれていなかった俺を待つ為に時を

 すごし、今に至る。ということだ。

  俺の事は同じように跳躍を果たした人物から聞き、その者の助けで瀕死から回復。

  その時に俺が以前の俺である事を確認するまでは命を狙わない事を約束したらしい。

  誰だ?俺の過去は調べれば分かるかもしれないが、ジャンプ可能な人物で俺を守ろ

 うとするのは?思い浮かばない………イネス?ルリちゃん?見知らぬジャンパーか?

 「しかし、貴様にも見せたかったものだな?……あの屈辱に耐える健気な表情を。

  あの娘は極上であった。しかし、惜しい。あ奴を翻訳装置とすれば我の帰還が早ま

  る事を失念しておったわ。我に隠れて無駄な足掻きなどせねば長く愛(め)でたも

  のを。まあ、代わりはラピスでこと足りる。あの娘も美しく育ち収穫が楽しみだ」

  聞き捨てなら無い単語も含まれていた。

  翻訳装置、ラピス、収穫。

 「貴様の思い通りには…………させない!」

 「ほぅ、まだ動けるか。ならば……」

  コキッ、メキッ……ゴキッ

 「ぐ、ぐぐぅぅぅぅおおおおおおお」

  手足の関節を外され鈍い痛みが全身を襲う。

    「それが今の貴様と我との差だ。今よりも技を磨け、それまで生かしてやる」

 「くっ、何?」

  手足の自由を奪われ歯噛みするアキトに、

 「そう、その顔だ。その顔を見る為に我はここにいる」

  嘲りいたぶる北辰。

 「火星から逃げようなど思わぬ事だ。次の犠牲者はラピス…いや、お前の

   近くにいるルビアとかいう娘もよき声を聞かせてくれそうだな?」

 「?!き、貴様!どこまで………」

 「くくくっ、どこまで守れるか………せいぜい我を楽しませる程度には力を

   つける事だ。此度は貴様の父母とこいつ等を斬り刻めた事でよしとしてやる」

 「ぐっ、うぉぉぉぉぉおう!」

  最悪だ、前回よりも最悪な結果となってしまった。

 「そうそう、歴史は貴様の思い通りにはならん。むしろ、

  我が祖国の為に活用させてもらう。草壁閣下の理想が顕現する」

  得意げに胸をそらし見下す北辰を見上げるしかなかったが、通路の方から飛来した

 銀光が奴の左目に吸い込まれるのが見えた。
 
 「がっ?」

  うめき声が聞こえた後、後ろへさがり苦しむ北辰。

 「何奴?」

  駆け寄ってきた何者かはアキトを抱きかかえ北辰から距離をとる。

 「最悪の手前で間に合った……ようですが、テンカワさんは手遅れみたいですね」

  アキトを抱きかかえた人物は両親の成れの果てを目にして落胆の声をあげた。

  知っている声だった。

 「……プロスさん?」

  朦朧としだした意識で無意識で呟いてしまったが、果して彼は…………
 


七.


  とりあえずアキト君の身柄は確保しましたが、思いもかけない場面でした。

  その辺に転がっているのが実行部隊だとして、彼は何者でしょう?

  アキトの命を救う為、懐に忍ばせた超硬セラミックのハシを投げつけ、片目を潰し

 たが状況がいまいち掴めない。

 「……プロスさん?」

  自分を見上げ問いかけたアキトにどう答えるか迷った挙句、父親の知人の『ヤマモ

 ト』と伝えた。しかし、なぜ彼は私の事をプロスと呼んだのでしょう?

  安心し、気を失ったアキトを背後に庇いながら後退する。

  戦場で培われた彼の本能が危険を告げる、ここから一刻も離れなければならない。

「くくくくくっ、見事」

  ハシごと左目をえぐりだした男の声。

  油断すれば…………

 「この手並みは…………お初にお目にかかる、ハーミット・ブレーカー殿」

  連合軍時代の通り名で呼ばれた事に驚く。

 「元ですがね。よくお知りだ……ところで貴方は誰ですか?

  貴方ほどの手並み、一度見れば忘れるはずは無いんですが…………」

  左目からは血が一滴も流れず黒い穴が開いている。

  投げ返されてきたハシを受け取り見ると義眼と思しき物が刺さっていた。

  男は悠然と微笑み、一礼する。

 「これは失礼した。我が名は北辰。故あって所属は申せぬがいずれ知る事となる」

 「アキト君を何故殺そうとするのですか」

 「貴殿には無用な事ゆえ話せぬ」

  私は眼中に無い、というわけですか。

 「生きていればまた会うこともあろう」

  いかにもなスイッチを取り出すと押す。

  彼を中心として爆発が生じ、炎が立ち上がる。肉を焼く嫌な煙が充満し始める中、

 アキトを背負い出口に駆け出す『ヤマモト』。

  爆炎に奴の姿が隠れる瞬間、姿が揺らぎ別の人物が見えたような気がした。

  しかし、悠長にモノを考えている暇(いとま)を与えず追い立てる炎に焦がされ、

 命からがらに脱出する。

  ようやく正門までたどり着き後ろを振り返ると、施設は火の海に包まれていた。

  安堵し一息ついたところで大爆発を起こり、飛び散った破片からアキトを守るため

 に覆いかぶさる。

  しばらくした後、恐る恐る顔をあげた。

  視線の先で燃え残った残骸が自重に耐えかねたように中心部からすり鉢上に陥没していく。

  事件の解明をより困難にするように…………その時になって思い出した。

  アキトの救出に向かう前に見つけた生存者の存在を、あれでは確かめるまでも無く

 彼女が亡くなった事は確実だ。

  自分が逡巡していた時間が彼女の命を奪ったともいえる、しかし、果してもしも、

 あの男と相対していたとしてアキトを救う余裕があったかといえば、自信が持てなか

 った。

  とはいえ、ここに留まるのは得策とはいえない。

  あれだけの爆発だ、すぐに警察と軍が駆けつけるだろう。

  実行犯達の装備は軍採用の最新型だった事を考え合わせると、会長は軍を抱きこん

 でまでテンカワ夫妻の抹殺を図ったと考えられる。

  ならば、唯一の生存者で関係者であるアキトの身にまで危険が及ぶ事が考えられ、

 その場を後にしなければならなかった。

  しかし、その後は?………自分は火星を離れる身。かといって傍にいれば安全か?
 
  懊悩(おうのう)する彼に近づく影があった。

 パチパチパチパチ

  彼の心をあざ笑うかのように浴びせられる拍手。

 「いやぁ〜期待通りですよ。さすがは連合軍に名を轟かした、『ハーミット』」

  現れたのは空港で話しかけてきた男に間違いなかった。

  名前は…………?

 「おっと、まだ名乗っていませんでしたね。私は『ペイ・チェン』と言います」

 「ペイチャ……」

  発音が少しし難い名前だった。

 「地球のアジア地区の中華系の名前でして。呼びにくければ、ぺイと呼んで下さい」

  当然のように現れ待ち構えていたペイの言葉にいささか憮然としながら、

 「それでペイさん。何か御用ですか?私は急いでいるのですが」

  その後、交わされた会話は彼を驚かせる内容だった。


八.

  彼女が目覚めたそこは見知らぬ部屋だった。

  装飾過多の無闇にキラビヤカな安っぽい内装と怪しげなピンクに照らす照明。

  研究所と家との往復が常の彼女でも知識として知っている。

  ここはある特定の目的の為に主に用いられる施設で自分が寝かされているベッドは

 枕もとのボタンを押せば………ほら、回転しだした。

  自分の知識の確かさを証明したとして事態の打開には結びつかない。

  まず現状の確認からだ。自分はベッドに寝かされていた、ならば運んだ人物が存在

 するはず。しかもシーツの下の体には何も身に着けていなかった。知らない間に事は

 終わっていた…………違う、違う。飛躍しすぎだ、今は何時?

  身に着けていた全てを外され正確な時間は分からない。枕もとの時計では火星時間

 の朝八時ぐらいを指しているが信用できない。狂わされている可能性が捨てきれない。

  あれからどれくらい経ったのだろう?悪夢のような現実。あれが夢ならばたとえ、

 見知らぬ男に汚されていたとしても冷静に受け止められる。

  それだけ悲惨な場所だった。テンカワ主任は多分生きていないだろう、なぜ自分が

 助かったのか不思議だ。あの殺人鬼は何故見逃したのか?

  分からない事だらけで気が狂いそうだったが、彼女の内に燻(くすぶ)る探究心が

 原因の解明に考えを切り替えさせる。

  とりあえずの問題解決の近道を知っていそうな人物がバスルームから現れた。

  彼には先ほどから気付いていたものの意識から必死に締め出していた。

  何か考えていなければ目が離せなくなるから。

  このような施設特有のなぜか透明な壁から彼の姿は見えていた。

  目覚めるとすぐに聞こえてきたシャワーを浴びる音源に目を向けて気付いた。

  湯気で曇る室内を自動で補正しながら浮かび上がる均整の取れた引き締まった肉体、

 顔はよく見えなかったが、自分より少し上に見えた。

  あの人が私の初めての人…………違う!私は覚えが無いんだからカウントされない

 の!それに私の気持ちは…………

 と、いった考えがループするのを抑えるために無理に理論的な思索にふけようとして

 結局失敗していた。

  腰にタオルを巻いた男はベッド脇の冷蔵庫からチューハイを二本取り出し、一本を

 私に差し出しながら自分の分に口をつけた。

   「目覚めのキスを貰おうと思ったのに残念だな。気分はどうだい?」

  整えられていない黒髪に金色の瞳?いえ違う、黒い瞳に時々煌(きらめく)く線が

 流れ、金色の瞳に見えたのだ。

  ナノマシーン注入過多の症例に似ていた。

 「最悪でもないけど、最高でもない。ねえ、教えて貴方は誰?」

  よく冷えたチューハイが喉の渇きを癒した。

  今の自分の気持ちは複雑だ。腕力では敵いそうにもないし、防音がなされた室内で

 悲鳴をあげても誰にも聞こえない。主導権は彼が握っている。

  でも、ここで怯えを表す事は自分が負けを認めるような気がして、平静を装った。

  再び彼の毒牙にかかってしまうのも悪くない気もした。

  今は彼に関する情報が欲しかった。

  男は彼女の傍に腰かけ、

 「俺はアマガ・アキヒト。二十三歳独身。恋人募集中。でいいかなアイちゃん」

  発せられた内容に驚いた。

 「な、な、なぜ私のその呼び方を知っているの?」

  つい焦ってしまった。義母の他には数人しか知らない、幼い頃の口癖。

  7歳の頃に記憶を無くし保護された時に自分でしゃべっていた自分の愛称。

  今では誰も知らないはずなのに。

 「職業柄かな。つい調べてしまうんだ魅力的な女の子を見ると」

  オドケタ口調。職業柄って何の?

  冗談ぽく教えてくれたけど、初めて言われた言葉だった。

  早くから義母の補佐をこなせていたからなのか、周りの同年代が私に向ける目は嫉

 妬と羨望、恐れ等で近寄る者は皆無だった。飛び級を重ねて十二歳で博士号を取った

 時には友人と呼べる者はおらず、誰もが自分の競争相手だった。

 「嘘でも嬉しい…………」

  何故かこの人なら私の過去を聞かせてもいいような気がした。微笑みが魅力的だっ

 たから?それだけでない何かを感じながら不思議と安らいだ気持ちで今まで胸の内に

 抱えたまま押さえ込んでいたものを全てさらけだした。

  アキヒトは時々合いの手を入れながら最後まで聞いてくれた。こんなに長い間人と

 話したのは何年ぶりだろう?

  話し終えるとずいぶん気持ちが軽くなった気がする。話すことでストレスを発散で

 きるっていうけど本当だね。

 「……確かに記憶が無いのは悲しい。でもこれからいくらでも詰め込めばいい。

   空白を埋める為に多くを学び体験していけば……いつか満たされると思うよ」

  7歳以前の記憶が無い事を話した時、言ってくれた言葉。

  どこか遠くを見ている視線が悲しそうなのが印象に残った。

 「ねぇ、あなたの事教えて?」

  何だか初めて会った気がしない。

  昔、遠い昔。思い出せない7歳以前に彼に会ったような気がする。

  変だね。だって、それだともっと年上のはずなのに記憶そのままの姿のような気が

 する。

 「俺は………ん?ああ、乾いたみたいだ」

  イネスから離れ、バスルームに行った後すぐに帰ってきた。

 「着衣一式、洗濯しておいた。便利だよな、ココ。汗も流せて洗濯もできる」

  渡された衣服は乾燥させてすぐなのか温かくて、いい匂いがした。

 「コレ…?」

 「悪いと思ったけど気を失っている間に洗濯しておいた。いつまでも血なまぐさ

  いと、誤解されるだろ?それと、あの事は忘れた方がいい。君まで命の危険が及ぶ

  それだけヤバイネタなんだ。兄貴達を助けられなかったのは残念だった。けど、無

  関係の君まで巻き込まれる事は無い」

  柔らかい微笑を浮べていたアキヒトの表情が曇り、真剣な目がアイを見つめる。

 「あれは…現実だったのね……それで兄貴、って?」

  アキヒトの口から改めて聞かされると、妙に納得できた。やはり現実だったと。

 「…俺は、俺の本当の姓はテンカワ」

  枕もとのメモに『天河』と書く。なるほど、読み方を変えて『アマガ』としたのね。

 「生まれて間もない頃、親戚に養子に出されて最近、生き別れの兄貴がいる事を知っ

  た。フリーでジャーナリストをしているからか必死で兄貴の事を調べたよ………」

  生き別れの兄弟。確かに主任の顔と似ている。

 「その内、とんでもない事を知った。詳しく言えば君を巻き込むからこれ以上は言

  えない。結局その事を知らせに行った時には手遅れで、二人共殺された後だった」

  やっぱり主任は殺害された。確認できても何も変わらない。

 「俺は怖くて震えているしかなかった。何とか足音を

      忍ばせて逃げ出そうとしたところで君を見つけた。」

  彼は一通り話し終えると俯き泣き出した。

  助けようとしてできなかった自分の無力と、不甲斐なさに苦しみながら、声を殺し

 て泣いてた。

 「もういい…………もういいよ。アキヒトはやれる事をやったんだから」

  なぜか彼が小さく見えた。

  誰が彼を責められるだろう?…………何もかもが理不尽すぎただけだ。

 「そうかな?」

  気弱にあげた彼の視線を受け止め、

 「そうだよ………アキヒトのおかげで私は助かった。

       だから悲しまないで。私が傍にいるから」

  守ってあげたい、彼の繊細な心を。

  二人の距離が縮まり、どちらからともなくお互いの体を抱き寄せ影が重なる。

  イネスの首筋にキスをした後、口元に笑みを浮べるアキヒト。

  その笑みは先ほどまでの気弱な青年のモノでは無く、

 「修正するのも大変だ………」

  彼のこぼした呟きが彼女に聞こえなかった事は幸いだった。


つづく




あとがき


  こんにちは、ハゲ大臣です。

  前回の更新から3ヶ月近く経ちました。

  あの後の戦闘シーンが中々書けなくて考えてました。

  今回の冒頭、最初は木連にいる三郎太の話で始まり、タイトルを挿んで病室のアキ

 トのシーンにつなげ、それ以外の人達の心中や動きについて語り、『少年の章』を終

 わって次回からアキト『青年の章』に入る予定でした。

  でも、アキトと北辰の闘いや会話を飛ばしてしまうのはどうかな?と、考えて、話

 的に盛り下げない為に入れる事にしました。

  他の作品でよくアキトが過去を回想する時、抽象的な単語の羅列や古い記憶からの

 表記が多く感じたので、反対に一番近い記憶から順にラピスとアキトの記憶が交互に

 浮かぶ、という風にしました。

  『感想以外』のBBSでアキトとラピスに関して、『リンク』と『五感の補助』に

 ついて物議をかわしていましたが、今一ピンと来なく考えていました。

  I.F.Sシンクロ強化体の3人は艦のオペレーターをしていました。

  アキトの五感消失の原因が『火星の後継者』のラボで受けた実験でナノマシーンを

 多量に注入されたり、それらの制御の為に脳をいじられた為、機能不全なんかを起こ

 したのではないかと思います。(医学知識が乏しいので詳しくわかりませんが……)

  アキトの中で正常に働かなくなり、五感を阻害しているならアキトの代わりにそれ

 を制御して体の各器官に正しい情報を伝える事ができればいいのではないか?と、思

 いました。

  いわばアキトの為のオペレーター。アキトの体内のナノマシーンの制御をするラピ

 スというわけです。

  戦艦の制御を一人でできるなら人間一人の体内機能の補助も可能ではないでしょう

 か?

  ラピスが表情に乏しいのは絶えずアキトの機能制御に集中している為で、あのセリ

 フ『私はアキトの………』もその意味に捉えると何とか納得できるんじゃないかな、

 と思います。

  五感の内の味覚はラピス自身がどういう状況にあったのか、資料が無く想像ですが

 栄養摂取は口からではなく、点滴等によるものと考えると食事を取る我々と違い、舌

 を使わない為にどれが塩辛いのか、甘いのか、うまいのか感覚として伝えにくかった

 ので、アキトの味覚も回復しなかったのでは……としました。

  しかし、あのセリフの『目』『耳』は索テキ能力、『手』は攻撃力。『足』は移動

 能力、と。ユーチャリスのオペレーターとしての自分の役目についてなのかな?

 

次回の予告


  忘れていたかった事、助けられなかった人。何かが崩れ歴史は繰り返さない。

  振り払えない過去がアキトを苛む。俺は奴とけりをつけなければならない。

  去り行く人、もたらされた真実。それぞれの因縁が交差する。


     早いとこ投稿しないとまた封印したくなるので、五話はなるべく早く投稿しようと

 思います。文中のブロスをプロスに修正しました。

 

 

代理人の感想

・・・・ごちゃごちゃしてて訳がわからん。