機動戦艦ナデシコ

The prince of darkness episode AKITO












ネルガルとクリムゾン、そして火星の後継者。



公には明かされない闇の戦場で、その戦いは激しさを増していく。








その中でアキトは、北辰との邂逅を重ねていた。










「また・・・・・・負けたのかい?テンカワ君は。
そう簡単にはいかないもんだね」

「相手が相手ですからね。
ですが、SS(ウチ)としては十分な働きをしてもらっていますよ」

プロスは以前、"闇の部隊を抑える人材がいれば何とかなる"と言った。

アキトは北辰に対して敗北を重ねているが、その目を惹き付けることには成功している。
そしてそれはネルガルのSSが行動をしやすい環境を作ることに繋がっていた。

ゆえに、ネルガルが得る情報は以前より豊富になっているのだ。

「その言い方だと、それなりの成果が得られたようだね。聞かせてもらえるかい?」

「はい。確定情報ではありませんが、火星付近に火星の後継者の根拠地があるらしいのです」

「それはナイスな情報だね。だけど・・・・・・火星・・・ね」


















「火星付近の資源衛星の一つが火星の後継者たちの基地であるという情報が入っていきているんだ。
でも火星付近は兵器の残骸なんかが特に酷くて、とてもじゃないけど長距離からは判別できないんだよね」

アキトに火星宙域が示されたディスプレイを提示しながら説明するアカツキ。

「で、俺にその調査をしろ・・・・・・と」

「地球からじゃ距離がありすぎるからね。君の能力がないとなかなか」

「ボソンジャンプ・・・・・・か」

アキトはボソンジャンプによって引き起こされた悲劇を反芻する。
そしてA級ジャンパーであることが現在の自分にとって最大の強みであることを皮肉に思うのだ。

「気持ちはわかるけど、使える能力は遊ばせておけないよ」

「わかっている」

「ボソンジャンプを利用したチューリップの存在がなければ、蜥蜴戦争だって起きなかったさ。
現に地球側からは仕掛けることは不可能だった。
木星側の兵器の性能も知らず侮っていたときでもね」

「通信、補給、指揮。
どれも宇宙という広大な空間では足枷となる・・・・・・か。
距離が長くなれば、その距離に比例して加速度的に侵攻は困難になるからな」

「それをクリアしたのがチューリップという兵器さ。
それを通して戦力の投入、回収を繰り返せば補給線の長さは気にしなくて済むし、戦略的遊兵も作らずに済む。
たいした戦略兵器だよ。
はじめは無人兵器しか通れなくて、戦術レベルでの柔軟さに欠けていたから助かっていたけど」

それでもチューリップを破壊できるようになるまでは木連側にいいようにやられていたが。

「それに比べれば短距離ジャンプしかできないジンタイプなんて、ただの戦術的兵器に過ぎなかったというわけか」

「対艦戦においては十分脅威ではあったけどね。
まあ、A級ジャンパーを誘拐して実験してるってことは、ボソンジャンプの戦略的な活用を意図したものだろう」

「長距離ジャンプによる重要拠点、施設へのピンポイント強襲・・・・・・。
それがネルガルの戦略研究室が出した答えだったな?」

アカツキは頷く。

「チューリップという出口を必要としないA級ジャンパーのナビゲートする長距離ボソンジャンプは、未然に察知されることはない。
ボース粒子が観測されてから対応しても遅すぎる。
軍事施設以外への強襲の成功確立はかなり高いと思うね」

「お前ならどこを狙う?」

「さすがに軍事拠点に襲撃をかければ対応される可能性もある。
となると軍に命令を出してる人たちがいるところかな」

「政治家の集まる場所、地球連合議会か」

「そう。ヤツラもそう考えるかもしれないと検討している。
でも、木連の考え方じゃあ軍施設を狙うことも有り得るし・・・・・・。
決め付けるのは危険だ。もっと情報を集めないとね」

「どちらにせよ、そうなる前にカタをつけたいものだが・・・・・・」

「君の頑張り次第じゃないかな?
僕は僕なりに最悪の事態を想定してやるけどね」

「ふん・・・・・・」

アキトは振り向きドアへと向かっていく。
「とにかく指定した座標付近の探索、頼むからね」

「ああ」

















しばらくするとアキトが出て行ったドアから一人の男が入ってくる。

着ている服装は油で汚れたツナギ。
不機嫌そうな表情を顔に貼り付けて、アカツキの座っているデスクのほうへ歩いてくる。

「やあ、久しぶりだね」

「ああ・・・・・・そうだな」

アカツキに返事を返した男の名はウリバタケ・セイヤ。
かつてナデシコで整備班の班長を務めていた男である。


「で、わざわざ呼び出して何の用なんでぃ元大関スケコマシ?
それとも落ち目の会長さんって呼んだほうがいいのか?」

「ハッハッハッ、相変わらず毒舌だね」

「用件があんなら手短にしてくれ」

ウリバタケは不機嫌そうに言い捨てる。

「お前さんを見てると、ナデシコのことを思い出してしょうがねぇ」





ナデシコ。

それは彼にとっては黄金時代というべき時だった。


けしていいことばかりではなかった。
それこそ苦労のほうが多かったと言っていいだろう。
しかしそれでもナデシコで築いた絆や思い出は、かけがえのないものとして彼の心に根付いていた。

だがそれも一年ほど前までの話だ。

アキトとユリカが事故で死んで以来、その思い出は一気に色褪せてしまった。


この後、ナデシコの中心であったアキトやユリカが幸せを掴んでこそ、ナデシコでの苦労に意味があり、綺麗にハッピーエンドで終われるはずだったのだ。

それが突然、理不尽な終わり方を強いられた。

それは彼にとって受け入れがたいことであった。


以来、彼にとってナデシコのことは現実の厳しさ、理不尽さを象徴する苦々しい思い出に変わっていたのだ。


だからウリバタケはナデシコを思い出させるものには触れたくなかった。

そしてそれはナデシコクルー全員に共通した心理なのかもしれない。

皆、それ以降は互いに疎遠になっていったのだから。







「テンカワ君を・・・・・・頼みたいんだ」

「ああ!?何言ってるんでぃ!?」

アカツキの言葉に怒りすら覚えるウリバタケ。
たとえ冗談であっても触れてはいけない部分だと思っているからだ。

「もう一度言うよ。テンカワ君を頼みたいんだ」

「だからアイツは・・・・・・」

ウリバタケは言葉を止める。
目の前にいるアカツキの目が、冗談を言っているようには思えなかったからだ。

「・・・・・・どういうことでぇ?」

睨んでくるウリバタケの目をかわし、アカツキは視線を横へ向ける。
ウリバタケもそれに倣って視線をそちらへ向けるとスクリーンがあった。

そしてアカツキが手元のスイッチを入れると・・・・・・。


「あれは!?」

ピンクのエステバリスと、その機体へ乗り込もうとする黒い特殊なパイロットスーツを着た男が映し出されていた。



「アキト・・・・・・か?」


アカツキは静かに頷く。








アカツキの真剣な顔。
機動兵器に乗り込むアキトの姿。



それらは、これから聞かされるだろう話が尋常ではないことをウリバタケに想像させた。








しかし、それでも今









「まだ・・・・・・終わってなかったんだな」









ウリバタケ・セイヤは歓喜を抱いていた。


















薄暗い指揮所のスクリーンにアラートを示す赤い文字が灯る。


「火星宙域にボース粒子観測。
未確認機動兵器のジャンプアウトを確認しました。
索敵範囲内にはチューリップは確認されておりません。
おそらく単独での長距離ジャンプだと推測されます」

「座標データを出せ」

草壁と北辰がいる前のスクリーンに座標が表示される。

「単独での長距離ジャンプ・・・・・・・。A級ジャンパーということか」

草壁は隣にいる北辰を見る。

「だとすればパイロットはヤツであろう。我らが出よう」

「こちらの拠点を探られる前に撃墜してくれ」

「承知」






真紅の機動兵器に搭乗する北辰。

「機動兵器でヤツと戦うのは初めてということになる。
どれ程楽しませてくれるか」

北辰は愉しそうに舌なめずりをする。

「隊長、先行して3機のステルンクーゲルが迎撃に出ましたが・・・・・・」

ウインドウが開き、六人衆の一人、水煙が報告を入れる。

「フン、その程度で抑えられるようなヤツではあるまい」

「・・・・・・」











虚空を漂うピンク色のエステバリス。
だが通常のエステバリスとは少々異なっている。
もっとも大きな違いはCCを一次フレームに組み込んでボソンジャンプを可能にしている点。
このシステムとA級ジャンパーの組み合わせにより、先ほどの長距離ジャンプを可能にしたのだ。
次に新型の大容量バッテリー。
これのおかげでエステバリスよりも長い時間、重力波の届かない場所で行動することを可能としている。

ただ基本性能としては通常のエステバリスと、それほど大きく変わらない。
ボソンジャンプにしてもジンタイプのようなジャンプフィールドではなく、組み込んだCCを消費してのものであるのでそうそう使えない。
行きに消費した上で、帰りの分も残しておかなければならないからだ。


アキトのエステバリスの武装はラピッドライフル。

ステルンクーゲルは散開してエステバリスを囲むように移動する。
包囲して殲滅、当然の戦法だろう。

3機のステルンクーゲルに囲まれてレールガンの狙撃を受けるアキトのエステバリス。

「ちぃ!」

機体に直撃は受けなかったが、ディストーションフィールドがあっさりと打ち抜かれる。

「火力が違うか・・・・・・。一撃でも致命傷になるな」

ピンクのエステバリスは1機のステルンクーゲルに急速接近していく。

ステルンクーゲルが接近戦を嫌ってサイドに移動するのを見て、アキトはそのままスラスターを全開にして包囲を抜ける。
闇雲に追っては他の二機から狙撃を受けるからだ。

包囲の外にでると、迂回して先程のステルンクーゲルに向かう。
後方のステルンクーゲルに対してそのステルンクーゲルの影に入るように・・・・・・だ。

この位置関係では味方を撃つ可能性があるので、後方に位置するステルンクーゲルからの射撃が一時的に緩くなる。

アキトは一気に距離を詰めていく。


「情報通り近距離の対応は鈍いな」

あっさり取り付いて左手でコクピットを貫く。
ワイヤード・フィストを排除した代わりに前腕部フィールド・ジェネレーターを強化してあるので、ステルンクーゲルのディストーションフィールドも一撃で貫くことができた。


その後、動かなくなった機体を一機のステルンクーゲルのほうに流しつつ、そのブラインドを使ってもう一機に接近していく。
広大な宇宙空間ではブラインドの効果などたいしたことはないが、一瞬戸惑わせれば機体を加速させるのには十分である。

ラピッドライフルを放ちながら一気に間合いを詰めるエステバリス。
ライフルはあくまで牽制して相手の軌道を制限するためのものと割り切っている。
どうせ一撃で倒せないのなら・・・・・・と。


接近されて振り切ろうとするステルンクーゲル。
しかしアキトはステルンクーゲルの軌道上にライフルを放ち、最高速を出させない。
そうなればIFSを採用し、運動性の高いエステバリスが圧倒的に有利。
ベテランパイロットがエステバリスのほうを好む所以である。

2機目も接近戦で破壊。
そして最後の一機と向き合う。

エステバリスとステルンクーゲルの一対一。
既に勝敗は見えていた。
















3機のステルンクーゲルを破壊したアキト。
現座標を調べながら状況を整理する。

「こちらのジャンプに対して即座の迎撃。
やはりこのあたりに拠点が存在しているんだな」

(迎撃が来た方向から考えるとあっちか?)






【敵機確認】
【注意】
【警戒】





センサーが敵機を捉えウインドウを開く。
近づいてくる7つのプリッツ。

「7機?この武装じゃキツイか。
いったん退いて・・・・・・」

拠点は確認できなかったが火星の後継者がいることは確実だ。
もともとエステバリス一機でどうにかなるとは思っていない。
今はこれで十分なのだが・・・・・・。






シャリーン






接近してくる機体が目に入る。

先頭の機体は返り血でも浴びたかのような真紅に染められている。
あの男の義眼のように・・・・・・。


「ホク・・・・・・シン」


はじめて見る機体だが、アキトはそれを北辰であると確信していた。

ガチガチと音を立てそうになる歯をギッと噛み締めるが、顔中に広がるナノマシンパターンの奔流までは消せはしない。

ピピッ

敵機からの通信を受信したアキトは調整して回線を開く。

ウインドウに甲冑のようなパイロットスーツを身に付けている北辰が映し出される。

『やはり汝か』

「・・・・・・」

アキトは黙って北辰を睨みつける。





アキトは考える。

生身の戦いでは今のところ勝ち目はないが、機動兵器でならどうなのか・・・・・・と。

さっさと撤退するという選択肢はアキトの頭から抜け落ちていた。



『言葉は不用か?
まあ良い。
汝の力・・・・・・見せてもらおう』





滅!





北辰の夜天光の後方に追従してきていた六連全機が、一気に襲い掛かってくる。

六連に包囲されまいと後退させるが、機体の性能差はいかんともし難い。

あっという間に囲まれるアキトのエステバリス。
スピードが違いすぎるのだ。


左方に位置した2機の六連からミサイルが放たれる。

「チィ!」

ミサイルをかわそうとエステバリスを加速させるアキト。


しかしその瞬間、反対側の六連から放たれた錫杖が前方を掠める。


「くっ!?」

思わず減速するアキト。


ドガァ!

ミサイルの爆風を後方に受けてしまうエステバリス。


「うあっ!」

激しく揺れるコクピット。


何とか体勢を立て直そうと目を開いた瞬間、飛び込んできたのは真紅の機動兵器が至近で錫杖を振り上げている映像だった。



『斬!』


北辰の気合の言葉と共に振り下ろされる錫杖。

「うあああああ!」

アキトは必死に右へ回避する。


ガシュ!


その一撃はエステバリスのディストーションフィールドを薄紙のように切り裂き、エステバリスの左腕を叩き落した。


『ヌルいぞ。奇襲できなければその程度か?』

嘲笑を浴びせる北辰。

「ちくしょう!」

夜天光から離れようと加速するエステバリスの前に、1機の六連が立ち塞がる。


「邪魔だ!」

ラピッドライフルで狙撃するアキト。


しかしその六連は奇妙な軌道を描いてかわす。

普通なら高速で回避すれば大きく移動するところなのだが、肩の付近を支点にして螺旋を描く特殊な軌道によって、高速で回避したにもかかわらず横にズレただけの場所に留まっている。

「なにぃ!?」

アキトは驚く。
月臣がそうであるように、木連軍人は総じて回避運動を不得手としているのをアキトは知っている。
それなのに目の前の機動兵器は非常識な回避運動を見せたのだ。


これは傀儡舞と呼ばれる回避運動であった。



傀儡舞は本来、回避運動を苦手としている元木連兵士のために考案されたもので、システムとして複雑な回避を行えるようにするものだ。

時にはランダム性の強い回避運動をオートで行えたり、前面にしかディストーションフィールドを展開できない夜天光や六連も、正面を向いたまま高速での移動、回避が行えるなど、様々な利点がある。

欠点としては、その回避運動の複雑さから、自らの射撃武器の照準までも困難にさせることにある。
だから射撃武器は、基本的に発射後に自動で軌道を修正し追尾したりする、いわゆるホーミングの機能を有した武器、ミサイルしか携帯していない。






ダン!ダン!

続けて射撃するが、またもやその傀儡舞の軌道にまったく当てることができない。

「クソッ!」

相手を射撃によってどかせ、そこを抜けることによって包囲から逃れようとしていたアキト。
思わぬ展開に毒づいてしまう。


動揺したアキトのエステバリスに、その六連は距離を詰め錫杖を横薙ぎに振るう。

「くおっ!」

何とか上方に軌道をずらそうとするアキト。

ガシャ!

その一撃はエステバリスの右足をもぎ取った。

『貴様ごときが隊長の相手をしようなど10年早いのだ。身の程を知れ!』

その通信はアキトのエステバリスを攻撃した水煙からのものであった。


機体を即座に反転させエステバリスを追う水煙。

アキトはラピッドライフルを放つがやはり当たらない。
接近してくる水煙が駆る六連。
横薙ぎに振るってくる錫杖を下方に潜る形で何とかかわすアキト。


ドガァ!

そこに夜天光から放たれたミサイルが着弾する。

「ぐぅぅぅぅ!」

激しい衝撃にさらされるエステバリス。

そして次の瞬間に夜天光を含むすべての敵に囲まれていた。






「あ・・・・・・」



息を呑むアキト。





一斉に放たれるミサイルと錫杖。





「うわぁぁぁぁぁぁ!」

アキトは絶叫を上げながらジャンプをする。



『未熟なりテンカワ・アキト』

最後に聞いた通信がそれであった。











帰還したアキトは荒れていた。

北辰を倒すどころか、力量をはかることすらできなかったのだ。
ただただ翻弄されてみっともなく逃げ回っただけ・・・・・・。
あまりの悔しさに感情が制御できず顔のナノマシンパターンがしばらく消えることはなかった。





大破し横たわったエステバリスを見るアキト。
その機体には、最後の攻撃で食らっていた3本の錫杖が突き刺さったまま、無残な姿を晒している。
コクピットへの直撃を避けていたことすら奇跡だったのかもしれない。

(くそっ!)

アキトは拳を強く握り締める。


「アキト・・・・・・」

「!」

気が立っているアキトは声のしたほうをにらみつけてしまう。

そこには処女雪のような肌と薄桃色の髪、そして金色の瞳を持つ少女がいた。

「す、すまないラピス!」

にらまれて泣きそうになったラピスに慌てて謝るアキト。
ひざまずいてラピスを抱きしめる。

「ゴメンな、ラピス。そんなつもりは・・・・・・」

ラピスの温かさに触れて、少しずつ冷静さを取り戻していくアキト。
「なんだ、なんだ!しょうがねぇなぁ!
俺がいないと何もできねぇんだからよ!」

突然、響く声。

「!?」

声のしたほうに視線を向けると、そこにはナデシコの時の制服を着たウリバタケがいた。

「セイヤ・・・・・・さん?」

スパナで肩を叩きながら近づいてくるウリバタケ。


「セイヤさん・・・・・・どうして?」

「お前さんが、みんなの未来のために戦ってるって聞いてな」

「・・・・・・違う。目的は復讐だ」

アキトは冷たく言い放つが、ラピスを抱きしめているその姿に説得力を感じない。

「ほう。そうだったのか。そいつは知らなかったなあ」

ニィっとからかう様な笑みを浮かべると、アキトに抱かれているラピスを見る。

「こっ、これは!」

慌ててラピスを引き剥がそうとするが・・・・・・

「アキト・・・・・・」

「うっ・・・・・・」

泣きそうなラピスの顔に手が動かなくなる。

「ほ〜。これが復讐鬼の姿なんだな?」

「だからっ・・・・・・俺わっ」

「へっ・・・・・・。ま、そういうことにしといてやるよ」

コンッと軽くアキトの頭をスパナで叩く。

「お前のエステってあれか?」

ウリバタケは大破したピンクのエステバリスのほうへ歩き出す。


軽かろうがスパナの一撃はやはり痛い。
右手で頭を擦りながらウリバタケの後を追うアキト。
ちなみに左手はラピスの右手と繋がっている。


「それにしても・・・・・・えらく派手に壊したもんだな」

「直せますか?」

「誰に言ってんだ? ついでに改造もしてやるよ」

「頼みます」

「しかしな、旧式のエステバリスじゃ限界があるぞ。
しばらくは新型機動兵器を視野に入れたデータ収集を兼ねる改造になる」

「新型機動兵器?」

「ああ、そうだ。まっ、俺に任せとけ」

頼もしい仲間の言葉にアキトは頷いた。
















ピンクのエステバリスに近づくと、その手を特殊硬化セラミックの装甲に触れさせるウリバタケ。









まるで愛撫するかのようにエステバリスの肌を触っていく。




















「お前もまだ・・・・・・終わってねぇよな?」
















アキトはあっさりやられました。全然活躍してませんね。

アキトのパイロットとしての技量は、以前書いたとおりリョーコに及ばない程度です。
それで北辰を含めた7機を相手に、どうこうなるとは思えないのでこうなりました。


戦って負ける。
ウリバタケの登場。

要するにブラックサレナへの下準備ということでした。

 

 

代理人の感想

一つ一つ、着実に話が積み重なってますね。

今回はサレナへの布石及び、アキト自身のパワーアップへの布石という話。

つーか、シビれるぜウリバタケ。

物凄く、いい味出してます。