影の宰相


第五幕:影の宰相












欲情するだけでセク―スしない人間は、心に疾病を生じるーーーういりあむ=ぶれーく君
















16の時流が交わる歪んだ空間、時空間移動の要衝に奠都された神都アマツカミ。
そのシンプルだが機能的なはずだった石造りの建造物は多くが打ち壊され、
多くの先主たちが愛した静かな街の佇まいは絢爛豪華な貴金属で出来た数多くの邸宅に駆逐されていった。
煌びやかながらもどこか落ち着きに欠き、主の性格を象徴するような複雑怪奇で回りくどい迷路のような構造のこの都市は
君主が貴族のスポーツ”ナオン狩り”で留守の間は輔翼の臣下たちによって統治されていた。
街の中央に作られた広壮な成金趣味の宮殿『摂楽殿』に当代の天替は居住する予定であった。
あくまで予定だが。
現天替は即位後すぐに神都から下界に行幸と称して避難しなければならなかった。
多くの君主を支えた后妃を輩出した愛の使徒のなかで新興ながらも最悪と言われる勢力『00ナンバーズ』の大半が離反・隠遁した為である。
そのうえアマツカミは天替代々の守護霊『怒鬼奢』様の権力が及ばぬ空間である。
下界以上に空間の変化が激しく神力の絶対的な差が即勝敗の帰趨を決める土地柄ゆえ、天地の形勢に沿いそれを利して斗う現天替の本来の戦術は通じ難かった。
さらにそれに輪をかけて即位してから日の浅い現天替には王権さえも満足に使えず四六侍中や王目付けなどの高官に監視され妻妾と日中に戯れることさえ許されない。
長居するだけ百害あって一利なしと判断した現天替は礼楽王『神子』の職務放棄による王権絶対化の故事に倣うことにしたのだ。
そして更に本来の后妃を謀殺して筆頭后妃となった『001』が夫の行幸に随従する為に降臨したので(浮気防止に行ったとも言う)政治的混乱は深まるばかりだった。
主要三大使徒の代表らの協議によりようやく臨時内閣が形成されたが天替の叙任を受けているわけでもなく、きわめて脆弱な砂上の楼閣であり、詐略派の愛の使徒や武断派の正義の使徒の衝突を抑止するだけの力は無かった。
摂楽殿の東方三十余里進んだところに先代以前の官衙が存在する。
古び果てた明らかに現天替の趣味に合わない旧政庁太陽殿は正義の使徒の尽力により何とか破壊を免れたが、
四方に伸びていた大路は既に無く街の中心部に位置するにも拘らず街道から切り離されたある意味孤立した土地となっていた。
天替輔賛委員会会議室。
そこには内閣の干渉を一切受け付けない特例組織であり代々の天替武勇伝の舞台袖の演出係とでも言おうか、まあなんか本当に必要なのか疑わしい限りの組織が存在した。
影でコソコソしとらんで表に出て協力しろ、などと言った勝手な声も上下を問わず存在したが礼儀の問題で主役級の実力者が多すぎて誰が主人公でもどうでもいい、などという不足の事態が起こることを予防する為らしい。
現に過去そのような問題により政変が起こり主人公交代とかヒロインシフトなどといったことが多発した事がその論を妙に説得力のあるモノにしていた。
現天替の出生地でも記録官があまりの妻妾の多さに目を回し十把一からげにあつかって伝を立てたりして誣告され処刑されるなどと言った事は日常茶飯事だ。
ともかくあんまり治世とは言えない世の管理と、あんまり名君とは言えない王の輔弼を身を削って行う者がいたからかろうじて下界は軽度の恐慌で済んでいるといっていい。
その胃が荒れまくっているであろう集団のなかでも一番胃が荒れてそうな者が存在する。
『紅茶の君』『灰色伯爵』の異名を取る三代に渡って天替の懐刀を務めた正義使徒第参階級持託弧鞭輔賛大臣『R=グレイ』が。
身の丈180センチの巨人、気性は猪の如く荒く、槍を取っては天下第一と謳われた豪勇の士。
太陽に紅を引いたような金髪、宝玉の如き青眼、白磁の柔肌などと彼女の容姿を表現する美辞麗句はいくらでもあるが容貌に問題が無いわけではなかった。
隻眼なのである。邯鄲の璧に傷を付けた愚者が誰であるかは解からない。
俗説によると彼女に全権を委ねるとき託弧鞭―――本来は君主が遺児の後見を臣下に託すときその子に非有らば此れを以て打ち据え教導してもよいという『形式上』の物―――を授けた、礼楽王の后妃の座を幻のナンバーズ『0』と巡って争った時に九つの翼たちと闘い滅多打ちにされた為とか、第二次黒鉄大戦時に『一撃射ては万騎を落とし、両撃放てば軍旅を陥し、三撃閃けば国家を滅す』とまでいわれた『神弓』の使い手に千里の遠方より射抜かれただとか他愛の無い噂話が飛び交った事もある。ただし其れの真偽はただしようが無い。彼女の返答が常に拳骨だったからだ。それにより多くの人間が無知と無遠慮が原因で病院送りになったらしい。
だがその犠牲により多くの者は彼女の琴線のありかを知った。・・・が、しかしである。内輪のあいだで有名になっても、外部の人間が其れを知り得ることがありえようか? 往々にして『異世界に普通の少年少女が迷い込んで云々』系の話しの場合、彼等にはそんなもの一切関係なく見事なまでの直球で他人の脛のキズを直撃し大激怒した者を部下や同僚が『ハイ、説明的台詞ゴクローサン』なシュチエーションになることは世の常識である。
ご多分にももれず現天替と彼女の関係もそうだった。即位間も無く彼女の事を口説き落とそうとした天替様が何をいったか知らないが、聞く所によると宮殿中に彼女の怒号と罵詈雑言が響き渡り、その時二十四あった支柱のうち実に半分にひびが入ったそうだ。
彼女が託弧鞭で彼を打つ事一日一夜・・・別に天替様が『受』とか『M男クン』になったとかそう言うわけでは断じてない。 
ともかく宮殿の地響きが夜の帳が幕を上げ小鳥達が朝の歌をさえずるころには消え、廃墟と化したそこには半死半生になって『時間の差し替え(自己革命)を真剣に考えた』という天替様と、史上初の託弧鞭を使用した(超不名誉)大臣となった伯爵以外一人としていなかったらしい。
それ以来二人はより疎遠になり、犬も食わぬような矢玉の飛び交う対立が続いているという。
だが現天替はそれなりに頭の回る人間だった。彼女を完全に敵に回すよりは職責を与え与党につないで置く事に利を見出したのだ。

「・・・ハイ皆さん今日も地上でとっかえひっかえ女ァ侍らして私たちに一体どんな肉体的疲労と精神的苦痛を与えてくれるんであろう、ソゥメェな天替陛下の為に頑張りましょうねーー」

明らかにやる気のない音声が堂内にこだまする。金糸銀糸に彩られた赤いマントに鷹の羽が数多くついた帽子を頭に載せたロバにでも乗ってそうな女、彼女が灰色伯爵である。
前置きという私怨の塊が建前の意味を完全に打ち消していた。トップの士気の低さは部下にも伝染する・・・が彼等の場合も例外ではなかった。
彼女の副官らしき少女が点呼を取る。

「あちゃー、また例によって十分の九近くが無断欠勤ですねー」
「勤務日数が足りないとお給料ももらえないし昇進できないのに・・・お金持ちの高官っていいですねー」

委員会のメンバーには『天替を幸せにする』という最重要目的の為、大半が第参・四階級の精鋭を揃えてあったが、精鋭であったのがかえって仇になった。
一度上がった階級を下げる事は王といえども絶対に出来ない。
つまりどれほどサボろうが神格を削ぎ落とす事は出来ずサボり軍団はそのまま脅威として残るという事である。
スタッフの入れ替えをしようにもできなかった。彼等の咎が免職規程のレベルには達していなかったからである。
現天替を苦渋を舐めさせようと腐心する彼等の巧妙さは『適度には働く』という事にあらわれている。
普段全く役に立たない彼等は天替が絶体絶命のピンチになると豹変したようにバリバリ働く。
『幸』の本来の意味は『危うく』とか『やっとの事で』とかいう非常に危険な状態を九死に一生を得て逃れる、というものなので一般的な『幸福』とかそう言う意味になるのは随分と言葉にオブラートが被せられたといえる。そのため彼等の行動も拡大解釈すればあながち間違いではないことがわかる。というよりそう言って逃れてきた。
功ある者を退け諫臣を遠ざけるは不吉の始まり、とアマツカミでは言われる。そして怒鬼奢様は不吉が大嫌いだった。天替様としても彼等の行状にはいたく立腹するところがあるもののその功績を憚って迂闊に手出しする事が出来なかった。水面下の関係がどうであろうとかれの守護霊の怒鬼奢様は表層しか見ないからだ。例え其れが理にかなっていたとしても情にはかなわないのである。怒鬼奢様の感情ほどこの世に尊いものは無い。怒鬼奢様の勘気に触れた者は死あるのみなのだ! そしてサボリッター達も怒鬼奢様を恐れる。本来どれほどの絶対的な力量差があろうと彼等は、恐れない。彼等が恐れているのはどの方向に力が流れるのかが理解し難いという事だ。伯爵も当然あまり関りたくない。だが責任者は常に責任ある行動をしなければならないという信念だけが彼女をこの場に立たせていた。やる気ないけど。
実際問題この堂内は侍従武官や記録官、光方・影方・音方・風方ら四方演出御用人たちの詰め所に過ぎない。主務の彼女がやる事といえば大したことはなく、記録官からの報告を受け取ってそれをこき下ろして訓告処分を受けるとか、『激変する急展開にも対応できる効率のよい人員配置』と称して戦力を分散させて軍事オンチと言われたりとか、偽情報を流して敵味方を問わずに混乱させ『あの女がいると勝てる戦いも勝てなくなる』と君側の奸扱いされたり、予算を余分に取り、それをガメて懐に納め、天替が交際機密費として勝手に引き出したなどと言い訳する、そんなものであった。そう言う激務をしているので誰よりも胃の壁が荒れているらしい。無能ではないにしろ、有害な人間であることは間違いない。
そのような悪人が影の宰相をやっていいてよく天替は死なないな、とは素人の考え。
どんな事があろうとも原則として天替は死なない。代りに彼が生贄を用すだけである。
祭りには犠牲がつきものだ。その犠牲あるが故に奇跡が起こせる。その例を下に上げておこう。



・成長しない人間は狂言回しにしかなれない。
・ストーリーの展開上内部分裂は付きものさ。
・そのときを衝けば必勝なのに何故か強固に団結したヒーローと戦いたがる悪人達。
・のうみそくさってるんじゃないだろーか。
・死んで当然の時に絶対に死なない。
・復活を重ねる度に何故か強くなって今まで勝てなかった敵を倒す。
・ゾンビのように生返る。
・その主人公達をゲームに投入『ザ・ハウス・オブ・ザ・ヒーロー』とでも題して商品化すればきっと売れるぞ。
・あたりそうにない弾があたる。
・あたるはずの弾を避ける。
・目からビームが撃てる。
・電波を発している。
・電波モドキではなく正真正銘の電波だったりする。
・その上ポエムまで詠えるからスゴイ。
・その後は『ベッドへッッ、ベッドヘッッ、ベッドヘッッ、ベッドヘッッ、GO!GO!GO!』
・君は行為に値するよ、好きって事さ。
・五年そこそこの修行で一つの流派を極められる。
・喋りながら闘える。
・闘っているときは時間の流れが何故かゆっくり。
・『かならずころすわざ』と書いて必殺技、『悪を、罪を必ず殺す技であって断じて命を無闇に奪う技では断じてないッッ!』とか言って怪人をボコスカ虐殺してる貴方は偽善者。
・必殺技は破られた時点で次の必殺技を編み出す事が決定。
・でもそれも破られる運命にあるので永遠に特訓を繰り返さねばならない。
・必殺技使わないで勝てる状況にする方法を考えた方がよくない?
・大物と関係するとその部下が『そんな、○○を信じない殿が・・・』とか言って感化されたらしく何故か器量の大きい人間に誤解される。
・愛と勇気だけが友達でも大丈夫らしい。
・中には哀と幽鬼だけが友達の男がいるらしい。
・『灰○哀とか雪○巴とか七○優とか大○居つ○めとかホ○ノ○リとかッッ! あの『礼節』と『著作権法』を知らぬパクリナオンどもを無差別粛清の覚悟ありッッ!!!(A野監督)』
・エ○ァ○ゲ○オ○自体パクリの固まりじゃんという説はこの際おく。
・『パロディという神聖な作業とパクリなどと言う卑俗な低能どもがやるような事を一緒にしてもらっては困るなッ』
・『未完成のものを補完しあい究極のオリジナルに単体として新生させることが私の使命なのだよッッーーー!!』
・『そのためのガ○ナッ○スです』
・『・・・確かに私が思っているほどガ○ナは甘くないみたいね・・・』
・『クオリティも構成もほとんど同じ、だが数日の差でオリジナルとパクリの差が生まれる・・・人間の持って生まれた運命は変えようが無いのだよ』
・『才能か、私には一生わからないかもしれないな・・・私にはパロディだけが人生だから』
・ものはいいよう(ニヤソ
・世界の女は美人だけしか生存を許されない。ブスは罪人なので死刑。小早川○○子とか(笑)
・美少女は貴族である。人殺しても美少女だから許す! 物盗んでも美少女だから許す!  
・北辰が美少女だとしたらアキトを苦しめ不幸にするのは『歪んだ愛情表現なんだ』と自己中心的拡大解釈をするので許す!
・だがキモい毒虫トカゲッチョォなので死刑宣告1、2の斬だァッッーーー!!!!
・同盟と北辰の違いって何? 愛って凄いねー、憎しみって凄いねー。・・・って全部テンカワ=アキトの主観じゃん。
・そんな奴が世界を覆す力を持つ事自体がダークなのに、ダーク嫌いの怒鬼奢様はわかんないみたい(藁
・笑うだけで女がオチル。
・スカートが風でめくれる。
・女を押し倒すと一瞬『キョトン』というのが必ず入る。
・ファーストキスの味は必ずレモン味になるらしい。
・少年漫画のナオンは毒虫を振り回す。少女漫画のナオンは毒虫に振り回される。
・でも対象年齢層が上になると逆になる。
・アシスタントを雇う際に『自給マイナス千円、原稿全部書いてくれる人大歓迎!!』と書くと応募が殺到する。
・でも印税はいただく。
・プロの技術を盗んじゃえ☆
・『盗みようが無いものを盗むのがプロだッッ!』 
・『先生ッ、アシスタントはアマチュアですッッ!』
・三時間で原稿21ページ仕上げられる。
・三日でネーム21ページ仕上げてそれを掲載させる。
・でもコミックスでは書き直す。
・ジャ○プはネーム公開の場に。
・ネタだけ出して後で書き直しますとか言うアホが大量発生するだろう。
・プロの技術を盗んじゃえ☆(既出)
・人生御都合主義でオッケー、オッケー、オッケーよ!!!
・時間逆行という留年まがいの事をしても全然反省しないお馬鹿さんに仕立て上げる。
・結局何度も時間逆行する羽目になる。勉強しないとメーなのよ。
・所詮主人公なんてモンは詐苦謝様のイトにつながれそれで動くコッペリア―ンさ(自虐)。
・時を越えてナオン狩りを繰り返すうちに、元の世界を忘れて自分が勝手に作り出した妄想世界の神話が『理想郷』であると悟っちゃう風になる。
・その壮絶なる神話の内容をあえて言わないが詐苦謝が草葉の陰から大爆笑、怒り狂った怒鬼奢様に「あなたは人として最低です!」と罵倒され放逐される日は近い。

統一性皆無。
だが以上の長すぎる事例は彼等の気まぐれにもとづく紛れも無い奇跡の大バーゲンである。コレホントウダヨー。・・・本編の内容を既に忘れた人間はいないだろうか?
これまでの要約:都合のいい人生を送る、都合のいい人間には、都合のいい組織が後ろ盾に、都合よくなっていた、以下都合よく、略。

ドゥユゥアンダァスタン?


話しは戻って広い広い白い会議室。

「さあてしっかり精勤した事ですし、とっととご帰宅あそばしてビールでもガブリまくりましょうかね」

長い手を上に突き上げて伸びをすると机に載せていた足を下ろして、さっさと帰宅しようとする大臣。ここのおとなってこんな人間ばっかなのだろうか?

「えっ、ちょっと大臣! まだ何もしてませんよ!」

机に拳を叩きつけて自分勝手な都合付けをしようと激白する伯爵。

「どーせ前のことなんざ誰も覚えちゃいないッ」
「こっから先だって『もうどうでもいいや』とかいって神行太保並みのスピードで読み飛ばし、一番楽しみにしている『代理人の感想』に行くのが関の山よッ!!!」
「だから委員会は永久休業! 私はもう帰るッッ!」

「そんなッッ! 自分がそうだからって他人がそうとは限りませんよッ! あまり不遜な慎まぬ発言は怒鬼奢様の天罰が下りますよ! 」
「だいたいさりげなく、できもしない嘘を言わないで下さい!」

副官は彼女が不忠の罪に問われのを慮って必死に止めようとしている。

「フッ、赤く憤怒しても・・・白く哀悼しても・・・所詮、怒鬼奢は怒鬼奢、私の敵には代りは無いさ」

そのような遁辞に煙に巻かれるような副官では彼女はなかった。
この不忠な人間が思わず怒りがこみ上げてくる。
そう感じた瞬間足が勝手に動いていた。

「このヤマンバッッ! 貴方には国家の柱石としてのとしての謹厳さが無くってよ!」

ババーン!!

「ぐハッツ!!!」

ズゴー―――ン!!!
ガラガラガラ・・・


三尺の秋水、もとい三尺の鉄扇が彼女に脳天直撃セ○サターン。

隣室の『墨信』用インク倉庫に石壁を突き破って頭から飛んでいく伯爵。ガラス瓶が割れる音がしてあたりが墨の海になる。

「「「「『お転婆』ですッッ! 副官!」」」」

同僚の突っ込みがスリーテンポ近く遅れてやってくるあたり彼女の動きがいかに速かったかがわかる。
だが彼女はそんな突っ込みは聞いちゃいなかった。しまった、義憤のあまりつい少々厳しいツッコミをしてしまった、と彼女は思った。
心の動揺が身の硬直を作りそこに『死』の付け入る隙が出来る。
ましてや目の前にいるのは自分の主君さえも『斬れる』感情的な人間だ。怒鬼奢様が嫌いなのも同類嫌悪という奴に違いない。



木の実が弾けるような鍔鳴りとガラスを引っかくような鞘走りの音がした。彼女はいくらか安堵した。
(・・・抜刀術は無い、それなら・・・捌ける!)
だが生存への確信にも似た思いが彼女を油断させた。
布の引きちぎれるような音。地面に刃を叩きつけるような音。
警戒は怠らなかったがこの時点で逃げなかった事を彼女は後悔した、とのちに語る。
そして空を裂く轟音。
耳で反応してから目がそれを認識するまでの時間は短かったが、それをどう対処するかの思考が追いつかない。
それのプレッシャーを避ける事が出来ずにただ、押しつぶされた。

「ぎゃワ――――!」

インク棚が飛んできた。
硝子の砕け散る音とともに滲むように黒い血溜りが広がっていく・・・そう彼女は天に召されたのです。

「し、死ぬかと思ったじゃないですか!」

どうやら生きていたようだ。
インクで髪は真っ黒、服も真っ黒、顔も真っ黒。
漫画家が描くのがとてもラクチンそうだ。

「私は貧しいから、この服しかないんですよ! こんなに汚していったいどうしてくれるんです!」

赫怒する副官。

「・・・・・私のコートも汚れたのだよ! しかも黄色! 信も無いのに中央にいたがる目立ちたがり屋の馬鹿野郎のイメージカラーよ!」

激怒し返す大臣。

「天替のイメージカラーは黒です!」

「えッッ??〜〜て〜と・・・徳もないのに他人を非難できる勝手な傲慢野郎?」

「黒色は『智』でしょうに・・・」

「・・・・・・・やかましい!(立場が悪くなると罵声で何もかも収拾をつけようとする無能な管理職的台詞)」

「さっさとこのインクの海を清掃ののち、倉庫のものも処分しろ! これからは
赤を使うことに今決めた!」
「なぜかというと私が赤が大好きだからだッッーーー!」 

「む、無謀すぎる・・・いくら天替様を困らせたいからって他の人間とも通信できなくなりますよ」

「これからの時代は通信も電波だッッ! 時代の波に乗り遅れる奴は死ねッッ!!!」

「「「「「天替様は時代の最先端ですよ!!!!」」」」」

口を揃えて訴える人々。
好き勝手放題言う伯爵も流石に疲れた。コレだから胃が他人の追随を許さないほどに荒れ果てるのだ。・・・全く自慢にならねぇ。
議論に無意味さ三割・不快さ七割を覚えた伯爵はゴミ箱にとてつもなく僅かに汚れたコートを捨てるとリモコンを押して消去した。
もう一度スイッチを押すと今度は天井の一角が開き365着あるうちのスペアの一つが流れ落ちてくる。
完全に太陽殿を私物化しているようだ。
それを纏うとさっさと退出する伯爵。
何か言い忘れた事があるのか気付いたように止まると彼女に言う。

「あといいか、006! 屋敷の今日の私の肖像画に主線が黒のものを掛けたときは殺す!」

「どうしてそんな事で・・・てえッ、なんで居候だからってそんな召使みたいなことしなければならないのです!」

「ボゥイだからさ」

「私はガールッッ、『G』『A』『R』『L』ですっッ!」


「「「「『G』『I』『R』『L』じゃないのか?」」」」


「第一ッッ・・・今まで黒でも良かったじゃないですか!」


「私の気が変わったからだ」



当然のことながら部下の突っ込みは聞き流された。
どうでもいいがこの『周囲を置いていく』主客を自分の命に関る重要なポストにつけるあたり天替の人物眼は皆無であろう事がわかる。余計な知恵が回ってもだ。
結局伯爵の命令に随うより他なかった。天替に忠誠を抱いても彼の恩寵に預かるのは后妃妻妾だけ。しかも自分たちは『伯爵の子分』と認識されているのだ。そしてそれはいつまでもついてまわる。彼女はそう思うと目の前がインクが垂れ入るようにして真っ暗になってきた。彼女の気まぐれにはついていけない。どうせ変換が面倒くさくなって黒に戻るさ、とこぼした愚痴は拳骨になって帰ってきた。



























デスクに山積みされた書類を蹴飛ばして踏ん反り返って包丁を振り回す目の前のバカ。
本来なら危機的状況なのだろうが正常な判断力を持つアカツキは別に慌ててはいなかった。
何故なら給仕に来る人間は常に決まっておりプロスペクターが怪んでこのバカの身元を確認しない方がどうかしているのだ。
『耄碌した』とか『実は無能だった?』とかそういう考察が脳裏によぎらないでもなかったがアカツキはプロスの不可解な行動の真意を理解しようとした。
まさか口論でヘソをまげたとかそういうことか? アカツキはまさかそんな馬鹿な事で自分が死ぬとは思いたくなかった。大体あの口論の原因は・・・
不意に一つのキーワードが閃きそれを元に思考を発展させる。『DC(デス・クリムゾン)』、規模・人員構成・行動能力の一切が不明のタヌキジジイの子分ども。
自分の会長就任直後に起こったある事件。クリムゾンの諜報員を捕らえたとき、救出に動いた『真紅の牙』を裏で巧妙に援護していた連中。奇跡とも思えるあの救出劇は何らかの作為の手が入っているとしか思えなかった。何とか探し出す事が出来た『消された証拠』の中から予測できるモノから考えておそらくクリムゾン諜報部は二段構成なっている、アカツキはそう思考した。―――表では無能な奴が神がかった威勢を奮い裏ではそれの辻褄あわせに尽力する本当に怖い奴等がいる―――
無能を有能、虚を実とする編成か、あのジジイの好きそうな事だ。アカツキはそう感じた。ここまで回りくどい事をする必要が本当にあるのだろうか? 正面からぶつかり合っても勝てるのではないか? ただ単に弄ばれているとは思えなかった。ゲストメンバーの戦力を警戒しているという事だろうか。

――――兄の『遺産』に護られている――――
アカツキは直観でわかった。
異母兄弟ゆえかあまり交流は無くアカツキ自身は彼の者を快く思ってはいなかった。
だが彼岸の者の愛を胸のうちに感ずるモノがあり不意に涙が出てきた。しかし自分の脳裏に思いついたプロスの真意に苦笑がこぼれる。
(僕の命をDCの秘密と秤にかけやがった)
『今まで影のように捉えようの無かったもの』が自ら網にかかろうとしている。『自分』という餌を前にして!! プロスはそれを捕らえる漁師のようなものか・・・
それが主君への信頼のあかしか、『この程度の囮も果たせない奴なら死ね』という課せられた試練なのかは解からない。
だがアカツキは今まで何百万回も心のうちで練習した言葉を目の前の暗殺者(仮)に言った。




「君は・・・何者だ?」




「呼ばれて、飛び出て、じゃじゃじゃのジャー――ン”!!!」
「俺の名前はヴェン=ラデーン!!!」
「史上最高にカッコいい、こよなくダークを愛する最強なテロリストさ」
「必殺技はお○師直伝の『外人魔境大血泉』、俺の半径3キロ以内を外黒人を招姦し、あたり一面チミドロドロドロドッロドッローーー!!!
 脱出するときは俺だって命がけさあッ!・・・・・・さあ、飢えた雄ども死ね―――――!!!(祝祭的興奮)」

中東ゲリラテイストな出で立ちで機関銃を撃ちまくる天替。


「ははは、どうせこんな事だろうと思ったよッッ!(泣)」

多分プロスの手配も自分の思慮も何一つ無駄に終わったのだろう。まだ確定したわけではないが過去形な気分にアカツキはなった。
バカはバカだった。こんなバカがクリムゾナー? 絶対嘘だ! しかもコスチュームがかわっていいる!?

「うむ、AUは忙しいのである!」
「常にコスを変えて絢爛豪華キンキラランな煌びやかさに雅やかさを押し包み、ナオンどもを『まあ、あれが天替様!! 臨機応変・変幻自在その無形は例えるなら水のよう!!!』
 とか惚れ直されちゃって・・・グヘへへ!!!(只今妄想中)」

「そして『天替の愛は風の如く』とか言って自由な恋愛と称して浮気しまくるんだろう」


「失敬な! 博愛主義と言いたまえ!」

「浮気の多い男はみんなそう言うのだよね」
「で、君は何をしにきたんだい?」

もうどうでも良くなった。早く消えて欲しいと思ったが、机に足を投げ出し椅子に仰け反りながらてきとーに知りたくもないことを聞いた。仰ぎ見た天井は薄暗くてよく見えなかった。

「うむ、予は天替モテモテ帝國の元首代行なのじゃよ〜〜、ミーハエラインデスゼ、えっへん!!!」
「で、その元首のテンカワ=アキト様は更に偉くて強い賢いお方なのでぇーーす、フフンッ、フフン」

一人称の統一が全然なってない、なんてのはこの際どうでもいい!!
さっさと消えうせろ! アカツキはそう叫びたかった。だがその気力すら起きそうに無い。繰り返し同じ事を聞いた。今度は怒りが篭っていた。

「で、君は何をしにきたんだい?」

アカツキはどうせろくでもないことだと思っていた、だが彼は次の瞬間驚愕のあまり頭から転げ落ちるとことになる。
天地が逆転するかのような凄まじい感覚。自分には縁の無い物とは思っていたが・・・









「今なんと言ったッッ!?」

這い上がって今にも飛び掛りそうな勢いで問いただすアカツキ。
それを軽くいなす天替。


「つくづく低能だな君達はッッ!!!(キラーン)」

ばば〜〜ん!!!
目元に光の輝きを随え、直視できないほどのさわやかなオーラがほとばしっている。この神々しいまでのアホっぽさこそ神の姿だ!!

「神の言葉を聞き取る事も出来ないとは・・・まあ、温情溢れる『素晴らし天替』はとってもベリィカインドーな男子なのでもう一度聞かせてやる!!!」


「そこの席は俺の席だ! そもそもこの世の毒虫どもに精液なんて物あるからイカンのだ・・・」
「この俺様の精液無き構造改革に協力する気が無いなら俺がネルガル会長になってやる!!!」
「っていうか協力しなくていいから・・・消・え・う・せ・ろーーー!!!(びしっつ)」


突き出された指をつかんで力任せに叩き折りたい衝動にアカツキは襲われた。

「そして俺はハーレムを築きウハウハな人生を送るのさ!」
「最初の時間軸のユリカの訳のわからん怨念が怖いような気がしないでもないがルリちゃんが『入籍はしてないからオッケェですぅ』といってたから多分大丈夫!!!」
「それでもなんとなく怖いがそんな負の、悪の感情に俺は負けん!!!」
「・・・ていうかそれが夕涼みにはちょうどいい塩梅でしてね・・・」
「成程、見事な人生だ・・・」

アカツキを指差し自分の政治信念(?)を熱く炎のように語りだし自画自賛するころほいには浴衣モードで団扇を扇ぎ明鏡止水の境地に逝っちゃってる天替。
淡い光がこの偉大なる王者をいとおしむように優しげに天替を包み込んでいるのが見えた。コレホントダヨー。
既にアカツキは冷静ではなかった。そうっ、彼の暗く沈んだ心は天替様によって輝きと激しさを取り戻したのだ! 
天地神明も彼の聖明を! 聖君子の誕生をご照覧あれーーー!!!(馬鹿)

「面白いッッ!!! 僕にとって代わるだとぉぉぉ!!!」

「そうさ、フン何時だったか『モテル会長、モテナイ会長』の話しをしたな・・・」

ゆっくりと天替は語りだす。目をピカらしダメ人間オーラを漂わしながら。

あるところにもてないかいちょうがいました。
とうぜんしゃかいにはかっきがありません。
いんぼうさりゃくがうずまきひとびとのこころはすさみきっていました。
ところがとつぜんもてるかいちょうがくれないのこぐまとしろがねのたぬきをひきつれてしゃかいにこうりんなさったのです。
くれないのこぐまはもてるかいちょうのためにあくむしをころしまくりしろがねのたぬきはもてるかいちょうのためにおかねをたくさんあつめました。
そしてみんなにふこうをあたえるわるいもてないかいちょうをやっつけたのです。
もてるかいちょうがかいちょうになってからみんなはしあわせになりましたとさ。
めでたしめでたし。


「めでたくない!」

短気で思慮の無いアカツキは激怒。
もはや机には何一つ残っていなかった。

「殺された人間はどうなる!」

落ち着きの無いアカツキは自分で考えもせずにただ答えを求めた。
呆れ果てる天替様。


「バカじゃんお前。目があってもそれでみたものが心にとどかなければ蒙昧、耳があってもそれできいたものが魂にひびかなければ暗愚だ」
「所詮おまえのような『なんちゃって会長』を世は求めていないということだ」
「よーく聞け、民意は天意であり天の代行者たるこの俺の行動は即ち天意」
「ハーレム専制国家に於いては天替ただ一人が絶対の自由人」
「俺が自由で幸せな人生を送れない原因の毒虫どもは死んで当然だろうが」
「九割悪虫が死のうが、生き残った1割の善人が幸福なら世の中は万万歳。構造改革大成功なんだよ(祝祭的歓喜)」
「さあっッ、痛みを恐れずに去勢しましょう毒虫諸君、どうせ俺が世界のナオン全てを所有するんだから」
「レッツ! 薨ッッ! 憎ッッ! 怪ッッ! 赫ッッーーーー!!!!」


天替はオウムのようにそれを繰り返す。それだけしかいえない様はまさに低能、という感じがしないでもなかったが。
呆れたようにそれの不可能性を語りだすアカツキ。

「馬鹿かね君は? 人を等しく束縛する組織や規律というそもそもが自他の共栄と幸福の為!」
「人は誰しも『群れ』に属さねばならない・・・己の私情と好悪だけしか規矩の無い人間は排斥され、やがては死ぬしかないのだよ!」
「強権的な枠組みに縛られるのは嫌なのに不安定で傲慢で自分勝手なモノに縛られるのは好きなのかい?」
「フン、そんなもん孤立した空間に自分を盲信する奴隷と何もかも黙らす圧倒的な武力と技術、公的権力の一切を遮断するアジ―ルを持たぬ限り不・可・能、だよ」

天替はアッサリ返答した。それにアカツキは底知れぬ恐怖を感じた。

「俺にはできる、やれる」
「今まではお前の言う孤立した空間の中にしか幸福を与えられなかったが、」
「バージョンアップした素晴らしい俺はこの世界の天涯地角まで幸福にしてやるぜ!(女性限定)」




「ぐっ、笑えん冗談だ・・・だが無視する事は出来ない!!!」

アカツキは天替に哀れみを覚えていた。
どんなふざけた理想だろうと面と向かって否定する事の難しさをアカツキは知っていた。下手に否定するだけ事態の悪化は酷くなる。大切なのは否定を押し付ける事ではなく、彼自身に選択させる事。彼が自分の信念を『間違っている事』と思い込ませることだ。紳士を自認するアカツキは最近の地球の詰め込み教育に息を切らし発狂してしまったに違いないであろうに違いない(断定)この荒んだ管理社会の犠牲者を正道にただそうとした。
それをするにはまずそれが悪意善意に拘らず歩むのに困難な志道である事を自覚させる事である。そうそれは―――――






「第一回知己知己知能テストォォォッッ!!!」

ピンクのシルクハットとタキシードというセンス皆無の格好をしたアカツキと何時の間にか『ウラ○マスタイル』になって眼鏡をかけているアキト。

「な、ば、ばかな!!! この一瞬で着替えさせた上に舞台までセッティングしただと〜〜〜!!!」

天替が驚くのも無理は無いこの机、この椅子何から何まで東大受験のときと同じなのだ!!
(何たる因果、あの時俺は東大に合格し過去の栄光を収めた、つまりこれこそ・・・俺に天下を取れという天意に他ならん!)

「問題は唐代の入試試験のものだ。はっきり言ってしまえばこれくらいの問題が解けないようなら僕としてもネルガルを任せる事は出来ないね」

「フッ、善いだろう俺には試験なんて何の意味も無いがな」

カッコよく決める天替。しかし内なる天替はもっとカッコよかった。

(しゃーんなろー!! まさかこうも御都合主義に俺の知力を世の中のナオンたちにお披露目できる機会が来るとは・・・うむ日ごろ役に立たない奴等にも恩賞をくれてヤラネバナ)
(コレで俺のファンが1000万人は増えるに違いない!)
(たった一日で礼楽王とタメを張るなんて・・・俺ってもしかしなくても天才?)

天替は他人よりちょっぴりポジティブなだけなのだ、現状が認識できないお馬鹿さんだとかそう言うわけじゃない。

アカツキは天替の、問題を見て言ってるんだろうか疑わしい返答を聞いて呼吸整える。声量を大きくして試験開始の合図を言った。

「・・・始めッッ!!!」

二人の人間しかいないと言うにはあまりにも広すぎる空間に燃える熱い炎。
眼光炯炯とし意気揚揚として気合を込める天替。
ペン先が空を刻み、紙をえぐる。芯が叩き折れるのも構わず天替は無造作に、しかしペン先から火花が散るほどシャーペンを打ち付けた。自分でも見えないほどに。
横でアカツキの監視の視線を受けているのがわかる。だがそんなことは彼には関係がなかった。そう、彼には必殺技があったのだ!

「・・・ふふ〜〜ん、ネルガル会長といえど・・・この俺のテクニックの前には林木と化す!!!!」

バババッバ〜ン!!!

(一通り上から下まで無数の点を紙に撃つと筋肉痛のあまり思わず伸びをしたくなったような気分に自分は襲われたのだろう・・・とアカツキに思わせぇぇぇッッ!!!
腕を曲げ肘を突き上げゴールデントライアングルの状態にし、ストレッチをするように頭に寄せる。そして愛に患う胸をッ、ハートをッ・・・激情と共に突き上げるのだーーー!!!

「解かりません!!!」とッッ!!!

この一見硬直した無意味にも見える体勢には大きな秘密が隠されている。そうっ、一瞬だけ見えるのである。神の領域が、無限に広がる得点源がっ!!!
そう、これこそが古今東西勉強しなくても満点を取れる最強の解答法、カンニング!!!
この俺の0、01光年先の美女・美少女を探索する圧倒的な視力。『出来る奴』にあたりをつける洞察力。そして一連の機敏な動作を実行するアジリテー&ストレングス!!!
これらすべての『ナオン千人ギリ』の超人的身力の融合によって生みだされたこの奥義。俺以外の奴がやれば卑劣極まりない犯罪! 
だが俺がやる場合はゲージツだッッ!!!
さーて、となりの勝利の女神から成功の甘い汁を頂くと・・・・・・・・)




急に青ざめた顔になり冷や汗がだらだら出る天替。
いきなり立ち上がって脳天を押さえ絶叫した。

「な、成瀬川は今何処ぉぉぉッッ???」



―――カンニングとは友人を必要とするものだ。そう、自分の成功の為の糧となってくれる友人を――――



「ぐをををををッッ・・・成せば成る、成さねば成らぬ、だが成瀬川がおらねば何も成らぬわッッ!!!(悔し涙)」
そんなこといっても解からない物がわかるようになる訳が無い。



必死に何とか解こうとするテンカワ=アキト。だがあまりの問題の難しさに愕然とするだけだった。

(畜生ッッ・・・火星と地球の学力格差は・・・)
(こんなにもあるのかよ!?)

アキトは問題すら読めなかった。刻々と時間が過ぎていく。
思考の仕様が無かった彼には時間が止まって欲しいと思う反面・・・
今ここにいることにさえ苦痛を覚えるようになってくる――――





非情の試験官アカツキの嘲笑は止まらない。

無情にも制限時間は減っていく。

絶望だけが・・・彼の脳裏を、蝕んでいった――――









終劇。








コメント:前回は質の悪いものを投稿してしまい大変申し訳ございませんでした。

 

 

 

代理人の感想

野暮は申しません。

あなたが見たもの、それが真実です。

 

 

・・・・・・ただ、途中の神行太保云々の部分は忘れていただけるととってもありがたいです(爆)。