機動戦艦ナデシコ〜時の流れに〜アナザー





裏『影の宰相』 〜〜まがつぼし〜〜

 

 


 

 

とある広壮だが古ぼけた道場。
その暗い闇の中央に二人の父娘がいた。

お互い正座で膝をつき合わせ何事かを話し合っている。
父親と思しき男は陣笠に顔が隠れて見えないが月明かりの為か娘の方はよく顔が見えた。
黒地に白線の入ったセーラー服から見え、膝まで届く黒いスパッツの右膝に描かれている白文字の『死』の文字が彼女の雰囲気に合っていた。
艶はあるが全く手入れのされていないボサボサの肩にかかるくらいの黒髪、
白く透き通るような肌、太く強い意志を感じさせるような眉、顔に馴染む切れ長の鼻。
そして何より印象的なのがそれらすべての調和を台無しにするような目つきの悪さ。
かなり目が大きく笑えばさぞかし愛らしいことだろうが彼女の発する独特な雰囲気からはそういう感じは見られない。
なんと言うか具体的にいうと他人を排斥するような危険さが感じられる。
そしてそれは彼女の父親へも向けられていた。
だがそれに動じもしない彼女に父親。この場合彼の事を流石と言うべきか。常人にはこの眼光はとても耐えられるようなものではない。

重苦しい家族同士とは思えないような雰囲気の中父親は横の刀の鞘を掴みそれを娘に突き出しておもむろに口を開く。


「1300年前の古より伝わる我が一族の宝刀『揺光』、星辰党幹部『北斗七星』叙任の祝いとしてお主に呉れてやろう・・・」


恐らく拵えから見て地球製の相当古い代物だという事がわかる。長さは凡そ三尺、だがみためにはかなりの重量を感じさせる。
その剣には一介の女子学生にはとても合いそうにない威厳と格が見えるに、彼女の父親には剣を見る目などないという事だろうか。



「その刃を以て髪を切り落とせ。お主に女としての幸福などいらぬ。草壁閣下に忠誠を尽くす事が我に対する孝でもある。
      剣を取りて我等に仇なす愚かな地球人に天誅を下せ・・・それこそが捨て子のお主が今まで生きてこられた理由でもあり使命でもある」


聞くが早いが彼女は鞘から刀を抜き片手で後ろに束ねた髪を切り落とす。
が、その後娘の口から発せられた言葉は全く彼の予想を覆すものだった。


「女の幸せなど最初からいりませぬ・・・・・・が、草壁閣下に従うのは断らせていただく・・・」


「?! 何を愚かな事を・・・っッ!!!」


怒厳ッッ!


瞬時に立ち上がったとみるや鞘で父親を叩きのめす娘。
脳震盪を起こしたのか暫く動けそうには見えない。
その父親目掛けて彼女は柄を両手で逆手に持ち全身で渾身の力を振り絞って、さらに刃を叩きつける。

 

鈍ッッ!
     鈍ッッ!
          鈍ッッ!

 

四肢の肉に骨もろとも刃を突立てられた彼女の父。
最早闘いにすらならないだろう。唯一生きている右腕で何とか這い上がって彼女を見る。


「何が目的でこのような愚挙に出る? 腹を切って父に詫びよ!」

彼女は冷めた目で父親を見る。
そして諦めたような悲しい顔つきになると慈しむように父に向かって口を開いた。

「・・・・・・父上、私は貴方に鬼子として育てられました・・・・・・私が歩む道は血塗られた闇。
               そのことに異存などありませぬ。この世は闇によって支えられているのですから。」

 

涼風のような涼やかな声。だが言葉の一つ一つが呪詛のように聞こえるのは気のせいだろうか。


「・・・・・・ならば何故父に剣を向ける! お主の敵は地球人ぞ!」


文字どうり必死に娘を諭す父親。だが彼女はそのような事聞きもしなかった。


「・・・・・・父上! 残念ですが貴方には失望しましたぞ・・・・・・」


親譲りの爬虫類的な目が見開く。


「そもそも修羅道というのは絶えず孤独と闘争を貫き、生死定まらぬ境地に達してこそ極めたといえるのです!
              元来父娘の絆云々が立ち入れる世界ではないはず!・・・・・・私はたった今、1人の修羅となりました!」

 

娘に威圧される父親。恐怖というものをまさか娘に感じなければならぬとは!
彼はどうやって生き延びるかを考えようとした。が、その思案もろくにまとまらぬ内に娘の口からは次から次へと自分への言葉が発せられる。


「・・・・・・とはいうものの貴方に本当に私と同じ血が流れているのか疑わしい! 修羅を称す以上この剣撃を耐え切っていただきたい。
          仮に死ねばただの人間だったと諦めます。生き残ればその躯を喰らい我が血肉となし、私の修羅道の糧となっていただきたい」



「霞月ィ! それが父に対する恩返しか!」


「その通り! 貴方が果たしえなかった道を娘が極める! 『タイタニック』を越える感動を抱いてもらいたいッ!」


「!!!!!!」



驚愕する父親。だが無情にも振り上げられた剣は止まらない。
月明かりに反射した白刃が煌いたのが見えたまま彼は次の光景が目に映るのを待った。
永遠にやってこないであろうことを解かりながらも。




―――――斬ッッッッ!!!

 

 

 

真っ二つに斬り開かれる彼の上半身。
教えた通りに子供が育ったのが彼の不幸だったのだろう。



ギュンギュンギュンギュン――――――

 


刀を回転させて空を切りながら血を払う。そして上に振り上げ刃先を下に向け滝の如く鞘に仕舞う。


ジャキ―ン――――――――



という金属音が広い道場に響く。


彼女は父のマントを引き裂き腰帯を作るとそこに刀をさす。

そして父だった男に深々と一礼すると外の闇の中へ溶けていくのだった。

 

 

 

 

 

 





コメント:女性は出す予定が無かったのだが、コイツが第三の主人公。(第二は白髪の坊ちゃん)
      明らかに『狙って』いる、と読者に思わせるキャラは既に死んだも同然らしい。
       ええ、『狙って』ますとも嫌われるのを。(北辰に限りなく近くて性格が北斗+しおりん・・・)

     あと、やはり戦闘シーンはシンプルが一番ですね。第三幕は醜い。
     

 

 

代理人の感想

 

確かに抱いたぞっ!

「タイタニック」を超える感動をっ(笑)!

 

 

・・・・いや、「タイタニック」よりは「ウェストサイドストーリー」の方がはるかに感動したけど(爆)。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・更に言うと「闘将ダイモス」の方がもっと感動した(核爆)。

 

それはともかく!

ひょっとしたらこの霞月(かづき?)、本編の北斗以上に純粋のような気もしますね、今回だけだと。

その描写に何とはなしに某クロエを思い出してしまった代理人でした。

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

飛燕さんから投稿です!!

いや、あの会話の流れで「タイタニック」だされても(汗)

ま、まあ覚悟の凄さは伝わりましたけどね。

・・・でもあの親父って北辰だよね?

なんか、登場する娘キャラ全員に負けてるような気が(苦笑)

実は弱かったんだろ、お前(爆)

 

それでは、飛燕さん投稿有難うございました!!

 

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