機動戦艦ナデシコ
ROSE BLOOD

第9話

著 火真還





 ナデシコは地球に帰ってきました。

 連合宇宙軍第13独立艦隊として、軍のお仕事をするために。


 軍属になった、といってもすぐ戦いの中に入るわけではありません。

 軍隊になるのが嫌な人たちを降ろさなければなりませんし、物資の搬入も必要です。

 そのため、ナデシコはまずサセボに戻り、2日間の停留。

 さいわい主要メンバーが降りる事は無く、ナデシコは再び発進しました。



「で、ナデシコのお仕事、何なんでしょう? 提督」


 艦長はナデシコの進路を、提督に問いますが―――。

 きょろきょろ。

 挙動不審者のように、落ち着かない視線を左右に飛ばすムネタケ提督。

 ……何と言うか、小動物? いえ、可愛いわけじゃないですが。


「フィリスさんはコックとして通常勤務中です。

 戦闘が無い限りは、ブリッジには顔を出しません」

「そ、そうなの。

 ―――オホン!

 では、ナデシコの任務を伝えるわ!」


 現金なもので、途端に元気になりました。


「北極海域で調査旅行を行っていた、某国の親善大使を救出するのが任務よ。

 簡単でしょ?」


「……北極海、ですか?」

「何しに行ったんだろうね……」


 メグミさんとミナトさんが困惑顔。


「大使は研究熱心なのよ。木星蜥蜴の襲撃で、避難勧告が出ていたのに気づかなかったそうよ?」


 なにやらムネタケ提督は取り繕ってますが……本気で言ってるのかな?

 大使って、アレですよね。


 はぁ―――軍の仕事って、何なんだろ?




 ***


 忙しい。

 ナデシコ食堂の厨房は普段に比べて五割増程度忙しかった。


「ラーメン大盛り! あがりっス!!」

「はーい!」


「フィリス、それが終わったら休憩しといで。

 2時から、また頼むよ」

「了解」


 朝から厨房で働き詰めだった。

 僅かな休憩時間だったが、身体を休ませる為に手近な席に陣取り、盛況な食堂内を見回してみる。

 ―――なんでまたこんなに客が多いんだ? ローテーション外の整備班のヤツも居るみたいだが……。


「ご苦労さん、フィリス君。

 食堂は大変そうだねぇ。隣、いいかい?」


 片手を上げて近づいてきたアカツキが、俺の隣に座った。


「座ってから聞くなよ。

 ……見ての通りだ。どうした事か、夜勤の筈のヤツもいるんだが……何か知ってるのか?」

「はっはっは、アレだよ。

 ウリバタケ君がね、エステバリス・カスタムの基本仕様をまとめちゃったもんだから、リョーコ君たちのエステをパワーアップさせるって張り切ってたからね」

「それで整備班が駆り出されてるのか。

 ……鬼だな、ウリバタケ」


「ちょっとテンカワ! 手が止まってるよ?」

「うっス!」



 ―――何やってんだ? アキトは。


「ご注文、承りましょうか〜?」


 ホウメイガールズのミカコが、アカツキの傍まで寄ってきた。俺とアカツキを交互に見て、ニヤリと笑っている。―――何故?


「んー、そうだねぇ。

 オススメは何かな? 初めてだからね、ここで食べるのは」

「……今日だと魚だな。

 刺身、煮つけ、フライ。鮮度も良いし、脂ものっている」

「寿司とか、あったっけ?」

「ああ、それもいいな。

 ……そういえば俺も昼飯はまだだった。

 ミカコ、俺の分も頼む」

「はぁい!」



「テンカワさん、炒めすぎじゃ……」

「わあ、やべっ!!」

「何やってるんだい、テンカワ!」



 ―――おいおい、厨房は大丈夫か?



「で、彼が君の弟子ってワケだ。

 コックとパイロットっていうのは、なかなか大変なんじゃないかな?」


 アキトのほうを見て、アカツキは意味ありげにつぶやいた。


「……そうだな。

 戦争が終われば、コック一筋でも生きていける。

 だが、今は強くなってもらうしかない。戦うためにな」


「……クールだねぇ。

 ブラックサレナのパイロットは、どうしても彼じゃなきゃダメなのかい?

 たとえば、僕やリョーコ君が乗るのは―――」


「乗る事は誰にだって出来る。……IFSさえあればな。

 その上で、アキトにしか乗せないのは、俺の我侭だ。

 感傷でしかないが、譲れない事でもある」


「なるほどね……。

 じゃ、としてはどうだい? 彼は」


「男……?

 まだまだこれからだ。可能な限り、鍛える。

 俺を超えるくらいまでは、なってもらわないとな」


「―――いや、

 そーゆー意味じゃないんだけど……まぁいいか


 ちょうど注文した料理が運ばれてきたので、雑談はそこで終わった。

 ―――さて、食ったらまた頑張らないとな。




 ***




 訓練室。

 集まったパイロットたちを見回して、


「さて、皆はもう知っているようだが、現在急ピッチでエステバリスのカスタム化が進められている。

 具体的にどうなるかというと―――」


『おおっと!!

 そこから先は俺に説明させてくれ、フィリスちゃん!』


 どこで聞いていたのか、ウリバタケの顔のモニターがどアップで開かれた。


見よ、この新装備! この肉厚のボディ!

 これがウリバタケ謹製、エステバリス・カスタムの全貌だ!!』


 ご丁寧に3Dリアルタイム映像まで用意して、BGMまで流している。

 ……どこにそんなモノ作る時間があったんだ? ウリバタケ。


「……燃える! 燃えるぜ博士!!

 すげぇイイ!!

「……イイか?」


 興奮気味に鼻息荒く、ガイは吼えた。

 その様子にあまり突っ込みたくないのか、アキトはなんだかなぁ、という表情。


「良いんだろ……いや、オレはわかんねぇけど」

「リョーコは興味ないもんねぇ、ああいうの」

「ついていけるのは、ヒカルとあのバカだけよ」

「えー、私は良いと思うケドなぁ?」


「本気で……やってるんだよね、君達」


 呆れているのだろう。アカツキは頬を引きつらせながら皆を見ている。


 大丈夫だ―――すぐ、慣れる。

 そんなコトを思いながら、


「ウリバタケ、そろそろ始めて貰えないか?」


「おおっと、そうだったな!

 まずはエステバリス・カスタムだ」


 ぴ!

 従来のものと、カスタム機が並べて表示される。芸が細かすぎるぞ……。


『注目すべきは、コンパクトになった重力波アンテナだ。

 ブラックサレナの技術を転用したが、我ながらなかなか良い出来だと思うぜ!

 なんと受信効率が2倍近く! おかげでディストーションフィールドも2倍! 機動性も2倍!

 バッテリーも改良されて、今までよりずっと長持ち!

 おおっと、機体の強度もアップしてるぜ? 何故かと言われれば―――』


 ぴ!

 続いて武器が表示される。

 
『武器のほうがパワーアップしたからだぁ!!

 強化されたバッタの野郎に対抗する為に、ラピッドライフルの威力を1.5倍に引き上げ!

 そしてコレ! ウリバタケ考案製作のフィールドランサー!

 聞いて驚け、ディストーションフィールドを一時的に中和する槍だ。

 コイツがありゃ、前みたいに五機フォーメーションを組まなくても、戦艦を沈められるようになるぜ。

 そして見よこの重厚感! ディストーションフィールドをも貫く、レールガンの搭載も可能!!

 サセボでサンプルを搬入したまま、まだ実戦テストもしていないんだけどな!」


「「「「「「おおー……」」」」」」


すっげぇ! 博士、すっげぇぜ!!

 俺のゲキ・ガンガーがパワーアップするんだな! おいアキト、お前にだけいいカッコはさせねぇぜ!」

「お、落ち着けよガイ」

「ヤマダの言い分じゃねぇが、確かにすげぇな。

 これならバッタでも戦艦でも、充分対抗できそうだぜ」

「フィールドランサーがあれば、最低三機で戦艦を落とせるんだねー……ビックリ」

「重機動砲戦フレームにしか乗せられないレールガンが標準装備? それだけでもお釣りがくるわ……」

「僕もレールガンは楽しみだな。

 労せず楽をしたいからね。突撃は趣味じゃないんだ」


わははははははは!

 完成をカツモクして待て!! じゃ、俺は忙しいからこのへんで


 ウリバタケはコミュニケを切ったらしい。

 BGMとともに消えていった。



「ま、まあ、そーいうわけだ。

 まだカスタム化は完全には済んでない。

 今回の任務―――北極海に着く頃には完成するだろうから、それまではシミュレーターで充分に慣らしておくこと。

 以上だ」


 シミュレーターに入っていくパイロットたち。

 だが、アキトはその場を動かなかった。―――そして、


「あ、あの、フィリスさん。

 ちょっと聞きたい事があって―――その」

「聞きたいこと?」


 この場で話したい事ではないらしい。……人に聞かれたくない話か?


「―――着いて来い」

「はい」







 ブリーフィングルームは作戦時以外は使用されていない。

 誰も居ないことを確認して、アキトを促して部屋に入り、扉を閉める。



「で、何だ? 聞きたい事というのは」

「俺、考えたんスけど。

 アカツキに……ちょっと言われちゃって。

 俺だけが優遇されてるって言うか、コックと兼業で続けられるのか、とか。

 ブラックサレナのことも、腕がいいパイロットに譲った方がいいんじゃないか、とか。

 フクベ提督も、あんな事になっちゃって……。

 色々考えちゃって、どうしたらいいのか、分からなくて。

 それで……」



 ―――アカツキと衝突か。可能性は十分にあると思っていたが……。


 アカツキは、アキトが思うほど本気で言っているワケではない。

 会長という敵が多い地位は、凡人に勤まるものではない。だからこそ、他人に気持ちを―――悟られないよう、そうした術(すべ)を身につけている。だから、一歩上から見下ろしたような言動、挑発的な態度は、自然と出てしまうのだろう。

 もちろん、アキトはそんなアカツキの事情など知らない。

 スレてないアキトは、アカツキの言葉を鵜呑みにしてしまうのだ。……受け流す事が出来ないから。


 ―――こんな事を思っている俺だって、今までの経験があるからそう言えるだけで、偉そうに言える立場ではないのだが……。



「アカツキは……ああいうヤツだからな。

 言ってる事は一見正しいが、やっかみ半分だ。本気で言ってるわけじゃない。

 ……気にするな」

「はぁ……」


 納得いかないのか、覇気のない返事を返す。


「馴れ合いとか、熱血とかはカッコ悪いと思っているんだ。

 性格が捻くれているからな。

 リョーコたちは今までにいろんなヤツといっしょに戦っただろうから、アカツキとの付き合い方も分かってる。

 ガイは一見、アカツキとは意見が合いそうにないが、それはそれ。考え方が違うことを知ってるんだろうな。

 あまりいっしょに居るところを見ないだろう?」

「うん」

「自分の土俵というか、そういった立場でモノを言うタイプだからな、二人とも。

 お前みたいに流されやすいヤツはすぐ影響を受ける」

「うぐ……」


 ―――なんか、客観的に見るとアレだな、俺(アキト)って。

 なさけないって言うか……いかん、俺のほうが気が滅入りそうだ。


「まあ、そう悲観する事はない。

 アカツキはお前の腹の内を探ってるだけだ。どーゆーヤツなんだろうってな。

 だから、いっしょに訓練して、腕を競い合って、そうして知って行けばいい。お前のペースでな。

 ……分かったか?」


 アキトは、少し躊躇った後、頷いた。





「明日からは、格闘訓練も行う。

 ブラックサレナに乗るためには、体を鍛えるしかないからな。

 これからもビシビシいくから、そのつもりでな」

「はい!」





 ***





 北極海域への進入ルート。



「目的地点までの直線ルート、迂回ルートを表示します」


 ぴ。

 二股の矢印が上方向に伸びて行きます。


「各ルートの敵勢力は?」

「直線ルートは、大規模な敵勢力の存在が確認されています。

 迂回ルートは未知数。ただ、現在のところ敵影は確認されていません」


 ゴートさんの質問に簡潔に答えます。


「危険は避けたほうがいいと思う。

 迂回ルートの方を進むべきだ」

「う〜〜ん」


 副長の進言に、考え込む艦長。


「フィリスはどっちだと思うの?」


 黙って話を聞いていたミナトさんがフィリスさんにそう言いました。


「どっちでもいい。

 作戦を立てるのはユリカだからな。

 艦長の選ぶほうに賛成するさ」

「え〜、面白くな〜い」

「……俺を何だと思ってるんだ? ミナト」


 フィリスさんが呆れてます。

 でも、確かにフィリスさんの決定なら、皆が黙って従ってしまうような気がしますけど。


「提督は何かありませんか?」


 副操舵士―――ミナトさんが操船しているので特に役割があるわけではありませんが、ブリッジに居たエリナさんは提督に意見を求めました。


「う、迂回ルートね。

 理由は副長と同じ。まともに敵主力と戦うのは愚の骨頂でしょう?」


 いちいちフィリスさんの顔色を窺わないでください、提督。


「……いいですよね?」


 艦長まで……。


「俺に聞くなよ……。

 まあ、いいんじゃないか?

 別に、時間的な制約があるわけではないんだろう? 親善大使が居る施設が襲われているとか。

 ―――そのへんはどうなんだ、ムネタケ」


「ええ、期限についての詳細な制約は無かったと思うわ」


 提督は任務を思い出しながら、そう断言しました。


「では、決まり!!

 迂回ルートを進んでください!」


「はいは〜い」


 というわけで、索敵行動を取りながら、ナデシコは迂回ルートを北上します。




 ***




 ザッ


「違う、こうだ」


 フィリスさんが構えを見せています。


「……こう、かな?」


 アキトさんは見様見真似で構えますが、あまり決まらない様子。


 使用者が一人も居なかったという、不人気度ナンバー1の瞑想ルームを改装して、トレーニングルームに仕立ててもらってから、毎日2時間ほどフィリスさんとアキトさんは入り浸るようになりました。


 ナデシコは索敵行動を取りつつ北上中ですが、敵に遭遇するまではヒマですから、私ことホシノルリは見学中。

 オペレーター勤務時間外ですので、あしからず。




「片足に重心をかけるな。両足に、均一にな。

 ひざを軽く曲げて、何時でも動けるように、緊張を解くな」


 ―――木連式武術。

 フィリスさんの振るう技の名前。月臣元一郎に習った、木連の流派。

 刀、無手、組み技、蹴り、全てを盛り込んだ総合的な格闘術。もっと細かく分類すれば、剣術に特化した暗殺術、柔術などの護身術へと幅広く取り入れられる優れた武術ですが、フィリスさんの習ったそれは暗殺術でした。

 ……もっとも過酷な、厳しい特訓となります。


「はぁ、はぁ」


 すでに何度も打ち倒されて、アキトさんは満身創痍。

 それでも、フィリスさんは容赦しませんでした。ちょっとでも気が緩んだら、アキトさんを殴り倒します。反撃は許されていますが、アキトさんには酷な話でしょう。


「よし、休憩。

 3分後、軽くランニングをして終了とする」

「はいぃ……」


 フィリスさんは、力尽きて倒れたアキトさんをしばらく眺め、こちらに近づいてきました。

 私はクーラーボックスから冷えたスポーツドリンクを取り出し、フィリスさんに手渡します。


「ああ、ありがとう、ルリ。

 ……ふー、まだまだこれからだな。

 根本的に体力が足りない。体力作りをさせるのが先か……」

「楽しそうですね、フィリスさん」

「……そうか?」


 ちょっと意外な顔をして、しかしすぐに苦笑を洩らしました。


「まあ、それなりにな。

 ……素質はあったのかも知れんな。確か、月臣にもそう言われたような覚えがある。

 使い方さえ誤らなければな、と何度も嘆かれた」

「そうですか……じゃあ、今度は間違えるわけにはいきませんね?」

「ああ。

 ……そうだな」



 ズズーーーーーン!



「「…………」」


 なんとなくフィリスさんと顔を見合わせ、


「……ユリカか?」

「ですね、多分」

「前は……アキトがメグミと居たからだろう? 今回は何が原因なんだ?」

「……さあ」


 ―――案外、この特訓のせいだったりして。

 そんなことを思いましたが、流石に口には出せません。


「アキト、格納庫に行け。

 出撃命令が出るかもしれん」

「は、はい」


 ともかく、私とフィリスさんはブリッジに急ぐ事にしました。



 ***



 ブリッジの扉が開くと、


「どういうつもり艦長! 自分から敵をおびき寄せるなんて!」

「ご、ごめんなさ〜いぃ」


 エリナさんが艦長を叱っていました。

 私達が入ってきたので、流石に声を荒げる事は止めたみたいですが……。


「一応聞いておくが、何があった?」


 苛立たしげな様子でエリナさんは、


「それが……なんて言って良いか。

 いきなり、

 『ダメ〜〜〜! アキト〜〜〜〜!!』

 とか言い出して艦長席のコンソール(操作盤)を叩いたの。……思いっきりね。

 で、グラビティブラストが発射されちゃって……」


 急いでオペレーター席に座り、索敵状況を確認します。


「やっぱり、木星蜥蜴に気づかれたようです。

 戦艦3、機動兵器推定600。

 十五分後に接触予定」


 ―――!!


「総員、一次戦闘配備!

 整備班、全てのエステバリス・カスタム、起動準備を急げ!

 パイロットは格納庫に集合! 主要メンバーはブリッジに上がって来い、今すぐだ!!」



 フィリスさんが艦内放送。そして、涙目の艦長を振り返って。


「ユリカ、呆けている暇はないぞ!

 艦長としての責務を果たせ!」


「う、うん!

 ―――エリナさん、お叱りはあとで聞きます。

 後方にある崖の裏に後退してください! エンゲージ時間の延長、および敵の拡散を防ぎます!」


「分かったわ」


 操舵席に座ったエリナさんはナデシコをゆっくりと後退させます。



「一体、何があったの!?」


 提督が真っ先にブリッジに入ってきました。


「敵襲だ。

 ……そこでどっしり構えていろ。それがお前の役目だ」


「わ、分かったわ」


 ―――素直に応じるムネタケ提督。……似合いません。


「遅くなりました!」

「ごめんなさぁい!」

「何があった!?」

「すみません、寝てたので……」

「一体、どうしましたか!?」


 休憩していた皆さんが次々にブリッジに飛び込んできます。



「替わるわ、エリナ」

「ふぅー、流石に戦闘モードの操舵は私にはきついわ。

 あ、その影に入って」


 ミナトさんがエリナさんと交代。


「エステバリス隊、出撃準備できたそうです!」


 メグミさんがフィリスさんに伝えます。


「ナデシコは敵機動兵器をココで迎え撃つ。

 エステバリス隊はフィールドランサー、レールガン装備機をペアとして先行、戦艦を叩くぞ。

 重力波ビームが届かない範囲だが、ランサーがあるからそれほど消耗はしないはずだ。

 問題は無いな?」


『『『『『『了解!!』』』』』』


「基本的な攻撃方法は変わらん。

 フィールドランサーによるディストーションフィールドの減衰、

 イミディエットナイフによる装甲破壊、

 レールガンによる撃沈、以上だ」


『へっへっへ、腕が鳴るぜ!』

『リョーコがソレ持つってことは、あたしがナイフだね』

『ふふ、レールガンの威力、見せてあげるわ』

『俺が切り込み隊長だぁ!! フィールドランサー、貰ったぜ!』

『僕はレールガンを使うよ。こっちのほうが自信があるからね』

『じゃあ、俺がナイフか』


 ―――楽しそうですね、皆さん。


 会話を聞いていたプロスさんが、感心したようにうんうんと頷きます。

 
「これは、頼もしいですな」

「士気が高いわねぇ」

 
 ミナトさんも相槌。




「エステバリス隊、発進!!」

『行くぜ!!』

『頑張るよ〜!』

『死なない程度にね』

『おおっと、俺が先だぜ! ゲキ・ガンガー、発進!!』

『行きまぁす!』

『やれやれ、賑やかだね、ココは』



 フィリスさんの指示で、エステバリス隊は次々に出撃していきます。




 ***




『だーっはっはっは! コイツはすげぇ!

 ゲキ・ガンガー3じゃなくて、ゲキ・ガンガーVに乗った気分だぜ!』

『あはは、言えてるよねぇ〜』


『『『…………』』』


 先行するガイはご満喫な歓声を上げて敵機動兵器を無視していく。

 流石に、カスタムの機動性は上がっているらしい。


 ―――俺のテンカワSplは、ウリバタケさんのカスタムじゃないんだよなぁ……。


 実は、テンカワSplの出力にはまだ余裕があった。

 シミュレーターで訓練やってたとき、カスタムに乗ってたから気づいたんだけど。

 前にそのことをフィリスさんに訊ねたら、鼻で笑われた。

 ブラックサレナ装着時の最高速は、バッテリーとの併用で今の2倍ほど出力が上がるらしい。

 ……無茶苦茶だ。



『そろそろナデシコの重力波ビームが届かなくなるぜ……ってヤマダァ!!

 バッタと遊んでんじゃねぇ!!』


ガイだっつってるだろうが!

 敵が目の前に来たから、相手してやっただけだぁ!』
 

『んな暇はねぇ!!』



 戦艦が目の前にまで迫っていた。



『行くぞ!!

 オレたちは正面、男子は右のヤツだ、いいな!』

『『『『『了解!!』』』』』



 激しい対空砲火の中を、ガイはフィールドランサーをかざして突っ込んでいく。


『ついて来ぉい、アキト、アカツキ!!』

『おお!』

『はいはい。

 熱いねぇ、君達は』



 ランサーは、戦艦のディストーションフィールドを瞬く間に中和していく。

 ―――どんな防御手段でも、破られる事はあるんだなぁ。

 そんな事を思いながら、ナイフで戦艦の装甲を切り裂き、


『アカツキ!』


『言われなくてもね。

 立ち止まるなよ、テンカワ君』



 俺が傷をつけた痕を、レールガンは凄い精度で撃ち抜いていく。

 ―――自慢するだけのことはあるよな。


 ドゴゴゴゴゴゴーーン!!


 誘爆を起こす戦艦から離脱。


 見れば、リョーコちゃんたちも、目的の戦艦を沈めたところらしい。



『残るはひとぉつ!!』


 叫ぶガイに、リョーコちゃんが通信。


『ヤマダッ、フィールドランサーはどうなった!?』


『へ?

 うおお、起動しないぞぉ!?』


『こっちもだ。

 使い捨てじゃないのか? コレって』


『『『『『…………』』』』』



 ―――誰も否定できないらしい。



『ま、まあ、何とかなるか!

 よぉし、全員で突っ込むぞ!!』



『『『『『おおー……!』』』』』


 ちょっとだけ覇気を失ったけど、まあ、なんとか3つ目も撃沈することが出来た。




 ***



「グラビティブラスト、発射!!」


 ドゴオオオオーーン!!!



「推定440機殲滅。

 まだ100機単位で健在です」


「どーするの? 艦長」


「チャージは70くらいで。

 次射、お願いします!」


「はいは〜い」



 その様子を見ていたフィリスさんは、


「……ユリカ、俺はちょっと出てくる。

 エステバリス隊は損耗が激しいだろうから、替わりに親善大使をやらを迎えに―――」


「あ、僕が行きます。

 フィリスさんは休んでいてください。

 何かと、忙しいでしょうから」


 アオイさんの提言にフィリスさんは少し迷ってから、


「……と言う事なんだが、ユリカ」

「ジュン君、お願いします」

「うん、行ってきます」


 ……ポイントアップのつもりかな? でも、誰に対して?





 そんなわけで、アオイさんは予備、ノーマルエステで救出に向かい、十数分後、帰還しました。

 ―――エステバリスの手に、親善大使を乗せて。


『これが、親善大使……ですよね?』



「あれが親善大使〜?」

「白熊……」


 胴体に『親善大使』と書かれた白熊は、自分の立場もわからないようで、キョロキョロ見回しています。

 ミナトさんとメグミさんは、珍しいものでも見るかのように提督をマジマジと。


「視線を逸らせた……知ってたわね、あの顔は」

「これって、本当に任務なのかなぁ」


 いやほんと、どうなんでしょう?


この話、TVの時もよく分からなかったんですが、どーなんでしょう?

マジで白熊が救助対象だったんでしょうか? 軍に担がれてんじゃないのか?

……まともに考えたほうが負けですか、そうですか。

えーと、本編の説明をば。

フィリス先生による個人授業(爆

それだけの内容のような気がします。

あと、木連式なんちゃらって、正式な資料は無いんだろうか……。

 

 

 

代理人の感想

SSなどではボソンジャンプ実験熊だったり軍の陽動作戦だったりするようですが、

さて本当の所はどうだったんでしょうね。

 

木連式に関しては・・・・私も知りません(笑)。