「覚悟完了!」
作詞:山口貴由/里乃塚玲央
作曲:工藤隆
唄:影山ヒロノブ

 

 

 


 

 

 その戦いはすでに2桁を数えていた。

 火星の広大なる大地の一角、かつてはユートピアコロニーと呼ばれた場所。

 そこに、2人の戦人(いくさびと)がいた


「北辰、いいかげん、貴様との戦いは終わりにしてやる」

「愚かなり、テンカワアキト」 

 

−瓦礫の町に響く 世迷どもの靴音−

 

 再建が進んでいたこの場所も、今はすでに人のいない廃墟となっている。

 その廃墟の中にたたずむ二つの影。

 人よりはるかに大きいその巨人は、この場所にあって不思議なほど似合っていた。

 片や、ブラックサレナ。

 片や、夜天光。

 

−その心支配するのは 蠢く悪鬼 狂鬼 天魔外道−

 

 ブラックサレナを駆るはテンカワアキト。

 己の愛する者と、己自身を陵辱され、その心を殺した復讐鬼。

 対峙するは夜天光を駆る北辰。

 人呼んで外道、生きる心など無いように、ありとあらゆる悪に手を染めた男。


「北辰・・・・・・貴様は殺しても殺したりない・・・・・・その魂を持って、己を償え」

「笑止。我が魂、腐ることはあっても償うためになど存在せん」


 テンカワアキトにとって、北辰は愛する者と己を殺した張本人である。

 アキトのブラックサレナがゆっくりと戦闘体勢に入った。


「やはり貴様は、あの時火星で殺しておくべきだった」

「くくく・・・・・・我を逃がすという失態を犯した貴様にこそ罪があろうな?」


 夜天光も戦闘体勢に入る。

 北辰がかつて従えた六連の姿はない。

 奴らは、今北辰の目の前にいる男に殺されたからだ。


「さっきの言葉、貴様に返そう。これがぬしの最後だ」

「殺(シャ)ーーーーーーーッ!」

 

−正義の意味を語る 言葉など今要らぬ−

 

 両雄、同時に動いた!

 スラスターダッシュをかけるブラックサレナとそれを迎え撃つ夜天光、同時に拳を


ガコッ!


 だが、ブラックサレナは一瞬でスラスターを上方向へ吹かして退避、同時に夜天光の頭を蹴る!


「くおっ!」


 ぞのまま前方一回転、カカト落とし。

 だがその瞬間にはすでに夜天光の姿はその場所にはない。

 どこだ。

 上だ!


「しゃああっ!」

「甘いわッ!」


 サレナのハンドナイフを錫杖で受ける夜天光、だがサレナの追い討ちは止まらない!

 そのまま2段、3段、4段、攻撃を続ける。


「くはは、いいぞ、いいぞ! やはり貴様との戦闘は心が踊るッ!」

 

−輩よ見えるかここに ささげし一死 一生 そして祈り−

 

「なあ貴様もそうだろう! 我との戦いを心より望んでいるのだろう!」

「ふざけるなッ! 誰が貴様との戦いなど望むか!」


 徐々に白熱して行く2機の修羅。

 上空を舞っていた夜天光の姿が一瞬だけぶれる。


「右っ!」


 だがアキトの予想は覆され、錫杖による攻撃が左から襲ってきた!

 左手で防ぐが装甲が一枚もっていかれた。


「くく、やはりその鎧は脆弱よな! 黒き衣に身を包んで、我に勝てると思うたか!」

 

−神武の超鋼よ 我を立たせたまえ−

 

「ああ、勝てるな! この鎧ある限り、俺は倒れない!」

「笑止!」


 夜天光、北辰の錫杖による攻撃は一切その手を緩めない。

 空中で姿勢転換、そのまま打ち下ろしッ!


「貴様が戦って、何をもたらすか! 意味も無く我を狙うなど、戦いを楽しんでおるようにしか見えぬぞ!」

「貴様には永劫わかるまい!」

 

−牙無き人の明日のために−

 

「ユリカのために! 貴様を倒せばそれだけであいつの未来が約束される!」


 だがブラックサレナも負けてはいない、超至近からのハンドカノン!

 だがまた夜天光の姿がぶれてかわされる。

 追い討ちをッ!


「女のためか、助かりもしない女のために我と戦うか!」

「まだ助かる! イネスさんが、アカツキが! 遺跡の分解作業をしている!」

 

−無限の英霊よ 我を砕きたまえ−

 

「それだけじゃない! ルリちゃん、ラピス、ミナトさん、ジュン、ユキナちゃん、ウリバタケさんにホウメイさんにエリナまで!」


 追い討ちを、だがその先すら夜天光に阻まれる!

 一瞬の隙をついたレールカノンがサレナの足を直撃した。

 足のエラー値は無視、飛べればいい、追え!


「貴様に殺されたナデシコのみんな! 俺を苦しめるためだけに貴様に殺されたみんなの分まで!」


 サレナのスラスターが限界値を示す警告音を出す。

 限界? そんなものは無視だ!

 追え、追え、追え! 撃て!


「お前を殺すッ!」


 落とせぇッ!

 だが夜天光への攻撃は当たらない、サレナへのダメージだけが増えていく。

 劣勢か。

 北辰の動きに切れが出てきた。

 錫杖による連撃っ。


【機体へのダメージ、臨界突破】

「外部装甲パージッ!」

【強制排出】


 夜天光と距離をとるサレナ、その黒い鎧が一つ一つ外れていく。

 空中に対峙する外道と復讐鬼。

 その復讐鬼が、姿をあらわにした。

 ピンク色をしたエステバリス。

 だが、その背面には見慣れぬモジュールが付属されている。


「ほう・・・鎧を脱いで何をするかと思えば・・・結局は悪あがきか」

「悪あがきかどうかは、全てが終わってから判断しろ」


 アキトは言った。

 そのはるか後方、平原の中にたたずむ一隻の戦艦『ユーチャリス』が動いた。

 アキトのエステバリスは背中のモジュールを展開、大きなウィングが4枚開かれる。

 ここから先は音声入力。


「コードX、展開」

【コードX展開命令受諾。エネルギーウェーブを受信します。コマンドワードを】

「100387」

【コマンドワード受諾。最終確認、展開しますか?】

「Yes」

【最終確認受諾。解除文章を入力してください】

「Darkness!」

【ご武運を。カウントスタート】


 ぴぴっ 5:00 4:59 4:58 4:57

 ユーチャリスから強大なエネルギーウェーブが照射される。

 それは全てバックパックのジェネレータに蓄積され、圧縮されていく。


「・・・・・・終わりだ、北辰」


 攻めるッ!

 だが、スラスターを外したアキトのエステバリスは、夜天光のスピードについていけない。

 どんどん、どんどん、どんどん、攻められる。


「愚かなり! 何を企んだのかは知らんが、結局はただの悪あがきに過ぎんようだな!」


 腕が、足が、頭が、錫杖の執拗な攻撃によって徐々に破壊されていく。

 まだだ、まだだ、まだだまだだまだだ!


「下らぬ、これで終わりにしてやろう!」


 夜天光が腕を腰に構えた。

 火星極冠遺跡での戦闘で見せた貫手。

 さあ、来い。

 夜天光が動いた、アキトのエステはその場所から動かない、受けて立つッ!


「シャアアッ!」

「捕らえたッ!」


 夜天光の貫手がアキトのアサルトピットを貫く、その瞬間、アキトのエステは夜天光のコックピットを殴り返していた!

 デジャ・ブ。


「苦ぉおっ・・・貴様、また」

「ホールドッ!」


 だがそこではまだ終わらない!

 アキトのエステから幾つものロープとベルトが飛び出し、夜天光の体を縛り付けた。

 エステバリスと夜天光はともに身動きすら出来ない。


「なにっ・・・・・・テンカワアキト、貴様、何のつもりだ!」

「北辰・・・最初からこれを狙っていたんだよ」


 アキトは、笑っていた。

−それが永遠への礎なら−

 

「貴様には何をやっても死ななかったな。だが、これで貴様は確実に死ぬ」

「きさまっ・・・!」

「大戦中の試作機にエクスバリスというのがある。ジェネレーターとエネルギーウェーブの併用、

 高い重力派圧縮でエステバリスでグラビティブラストを撃てる事を可能にした機体だ」


 1:32 1:31 1:30


「だが、そのエネルギーに機体がついて来れず、チャージとともに機体が爆発する欠陥機だ」


 1:24 1:23 1:22


「貴様」

「このエステバリスは、それだ」

「くくく・・・我とともに、死ぬつもりか!」

「ああ、そうさ。貴様を殺すためならなんだってやってやる」


 アキトは笑っていた。

 北辰も笑っていた。

 だが北辰の顔は、ナノマシンの発光現象を起こしていた。

 つまり、逃げると。


「つくづく甘い男よな。死にたければ貴様1人で死ね。跳躍!」


 だが、甘いのは北辰も同じだった。

 ナノマシンは発光する、ジャンプフィールドは展開された。

 だが、いつまでたってもジャンプは始まらない。


「・・・な」

「北辰、言い忘れたが、この一帯のジャンプは全てキャンセルされている。逃げられんぞ」

「・・・・・・貴様、何をした」


 アキトは、笑っていた。

 アキトは、泣いていた。


「ユリカが・・・・・・俺の頼みを断る訳が無いだろう」

 

 

 

 

 

 火星極冠遺跡、この場所でイネスとアカツキは遺跡からミスマルユリカを外す作業をしている。


「終わりそうかい?」

「・・・あと半分ってところかしら」

「・・・・・・そうかい」


 アカツキは松葉杖をつきながらイネスのもとへと歩いていく。

 その左足は、すでにない。


「今ごろ、テンカワくんは最後の戦いをしている頃だ」

「そうね。勝てはしないけど、負けもしないわ。アレを使ってるんならね」


 イネスはアキトと同じようなバイザーをしていた。

 その視力はすでに裸眼で光を捉えられないほどに落ちていた。


「・・・彼は、一体何を望んだんだろうね」

 

−木の葉か風か生命−

 

「それは・・・彼と、この人にしかわからないわ」


 イネスは遺跡に取り込まれた1人の女性に見入る。

 バイザーをつけての視力は1.0ほど。

 これだけで精一杯なのだ。


「艦長、今、彼は何をしているのかしらね」

「・・・・・・勝っても、帰っては来ないだろうね」

「でしょうね」


 イネスはまた視線を落としてコンソールに向かう。

 これは、自分が彼に託された最後の仕事だ。

 だから、自分はそれを全うする。

 アカツキはその姿をみて、改めて遺跡の中のミスマルユリカを見上げた。


「・・・イネスくん!」

「どうかしたの?」

「艦長が・・・・・・」

 

−けれども だから余計・・・−

 

 ユリカは、泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「クククククク、我とともに死を選ぶか!」

「ああ! 俺は、ユリカのためならなんだってやる!」

 

−君の涙が枯れ 声さえ尽きたとき−

 

「貴様とともに死ぬ事も! 自ら命を絶つ事も!」


 0:59 0:58 0:57


「ユリカが望めば、あいつの目の前でだって死んでやる!」

 

−ともに泣く頬と喉をやろう−

 

「愚かよな、復讐人。我と共に死のうとも、かの女に何が残るというか」

「残らなくていい。貴様さえ消えればな」

  

−もしも血の一滴 残っていないなら−

 

「履き違えるな! 貴様が望むのはかの女の事ではなかろう! 我が死ねばそれでいいのだろう!」

「ああそうだ! 貴様が死ねばいい! そして俺が死ねばいい! 後悔する暇すら与えずに死ねばいい!」


 0:45 0:44 0:43 0:42


「くくく、やはり貴様は、我が認めた宿敵だ! 愉快だ、愉快だぞ! 我が最後の敵が貴様であることがな!」

「なんとでも思うがいい。死ねば全てが同じだ!」

 

−この胸を裂き全部やろう−

 

「面白いぞ! 我とともに死のうと考えた人間は貴様が初めてではないが、いざ死ぬとなるとこんなにも面白いか!」


 0:29 0:28 0:27 0:26


「貴様が望む死とはこれか! 貴様に我と心中する度胸があったのか!」

「度胸? 違うな」


 0:21 0:20 0:19


「貴様に襲われ、体中を弄くられ、そして救われたあの日に俺は一度死んだ」

 

君の知っているテンカワアキトは死んだ。

 

「そして生き返った。貴様を殺すためにな」


 0:14 0:13 0:12 0:11


「そのときから、この瞬間が来ることはわかっていた」

 

−生まれし日より−

 

「貴様、最初から我とともに」

「ああ、死ぬつもりだったさ」


 0:06 0:05 0:04


「最後に教えてやる」

「く、くくくくくく、ははははははははははははは!!!」

 

−我が身はすでに−

 

 0:03 0:02


「これは・・・・・・覚悟だ!」


 0:01

 

 

 

  

 

  

 


 

グーテンダークこんばんは hiro-mk2です。

今日の午前中にネタを思いつきました。午後にネタをまとめました。
仕事が終わって帰宅して一気に書き上げました。

ネタはやったもん勝ち、思い立ったが吉日というヤツです。

まあいろいろ突っ込みどころはありましょうが、ご勘弁ください。
劇場版アフターだけど、みんな死んでますし、サレナは更にわけわからん兵器になってるし、そもそもエクスだし。
まあよくあるブットビ設定ですんで。

それはともかく、コンセプトは「覚悟完了!」の歌に乗せてSSを書くということでした。
結構、こういう歌に乗せてSSを書くのって好きなもんで。
まずはじめに思いついたのがこの対決だった訳です。

いくつか歌詞と符合する展開だったり、それを暗示する言葉だったり。
こんな雰囲気、大好きです。


ま、それだけの話なんですけどねw

では、最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

代理人の感想

うーむ、面白いんですけど・・・「覚悟のススメ」をネタにしているからには

やはり最後はハッピーエンドで締めて欲しかったという気も。

あの作品における「覚悟」とは必ずしも死の覚悟のことではないんですよね。

 

曰く「覚悟とは本能を凌駕する魂のことなり! 正義とは邪悪に挑戦する肉体のことなり!」と。

 

言い換えると、死ぬこと前提ではなくて、あくまでも生きることが根底にあって、

生きることが好きで、自分を大切にする気持ちがあって、それでもなお死を賭して戦う・・・

それが「覚悟完了!」の意味なんですね。

大切な自分の命を危険に晒してでも、守らねばならぬもの、戦わねばならぬ戦いがあると。

最初から死ぬこと前提、自分に価値を置いていないこの作品のアキトとはそこが違うわけです。