一冊の本が生んだ哀れな男の愉快な喜劇   
       第5話     後編  
        ―喜劇を演じる阿修羅達―
                       作者 広島県人+アヤカ













さて何はともあれ翌日実戦訓練は開始された。

まずは起動兵器戦だ。
これはロングレンジでグラビティブラストの打ち合いをやっても
どちらも有効打が無い事から当初からこの展開は予想されていた。


訓練の流れを実況すると、
ナデシコ側は数的に一機多いにもかかわらず、
シャクヤク艦長哀河が臨時指揮をとった優華部隊に
火点の集中と巧みな誘導等、
理詰めの戦術によりグラビティブラストの射線上に誘い込まれる。
が、ナデシコ・エステバリス隊としては不用意に特出していた
優華部隊・御剣万葉機を追い詰めた所であり、
いくらグラビティブラスト射線上に居ても
仲間ごと撃たないだろうと言う判断により、
他の優華部隊への牽制をしつつ万葉機を撃墜しようとしていた。
しかしこれが哀河の仕組んだ作戦だったのだ。
包囲されていた万葉機を援護する為の
シャクヤクからのミサイルと他の優華部隊機からの一斉掃射が
エステバリス隊に降り注ぎ全機が回避行動を取っている間に
万葉機が有人起動兵器としては漆黒の戦神についで二人目となる
単体ボソンジャンプにより包囲網から離脱、
同時にシャクヤクからの高集束型グラビティブラスト。
グラビティブラストによるミサイルの誘爆で破壊力の相乗効果が起こり、
ナデシコ・エステバリス隊はヤマダ機・ガンガーを除き
全機撃墜判定を受け訓練開始57分で戦線離脱。
ガンガーも5分後それまでのダメージ判定から動きが悪くなっているにも拘らず、
同じく動きの悪くなっている万葉機との一騎打ちを繰り広げ仲良く相打ちになる。
エステバリス隊の全滅を受け、
ナデシコは電子の妖精姉妹のハッキングにより戦況の逆転を狙ったが、
シャクヤクは完全マニュアル操艦、
起動兵器も元々マニュアル操作の為意味をなさないと言うか、
通信システムと操縦システムの完全な独立機構により
ハッキングに成功しても精々ウインドウを出して
パイロットの邪魔をする位しか出来ない。
起動兵器全機撃墜判定後1時間に渡り
逃げ回っていたナデシコではあったが、
何時までたっても降伏しない為、
舞歌が邪笑を浮かべつつ哀河に告げる。


「クス、男女問わずしつこい人は嫌われるわよ。
大佐、作戦目的を過剰攻撃(オーバーキル)・・・
いえ、ナデシコの完全殲滅に変更します」

「イエス・マム。
ナデシコを完全殲滅します(邪笑)」


哀河は上官と同じ笑みを浮かべ多少芝居がかった仕草で敬礼する。

1分後シャクヤクのミサイルとグラビティブラストの同時着弾、
起動兵器からの一斉掃射により
撃沈判定が下りここに実戦訓練の幕が下りる。












訓練後ナデシコ・エステバリス隊と優華部隊
その他の希望者により開催された反省会と言う名の宴会場にて



「いやー万葉があそこでジャンプするなんて思わなかったぜー。
さっき博士(ウリバタケ)が言ってたが、
あれってアキト以外じゃ人類初なんだろう?
すっげーなー」

「ふふふ・・・まぁ跳躍門を使った練習は良くやってたからな。
そう言うガイこそ凄いぞぞ?
シャクヤクの射線上からしっかりと退避してたじゃないか。
哀河大佐が言ってたぞ
『あれでエステバリス隊を全滅させるつもりだったのだが・・・』ってな」

「ん?ありゃ何となく万葉らしくない操縦だな〜とか思ってたら
シャクヤクからミサイル飛んできたろ?
あの時なんかヤバイと思ってな」

「はー、すっごいねーヤマダ君。
あたしそんな事考える余裕なかったよ〜」

「・・・あの時ヒカルも引っ張って行こうと思ったんだが、
遠くてどうしようもなかったんだ。悪かったな」

「へ!?え、いや、えっと
べ、別にいいよ!!」

「いや!漢として仲間を護れなかったなんて許されない!!
ダイゴウジガイ一生の不覚!!!」 


会場の端の方で女性二人と話して羨ましい筈の男が
何故か拳を握り、漢泣きしつつシャウトしている。
女性達の方はそんな男を何とか宥め様と話し掛けている。
傍から見ると話の内容にも関わらず、
そこはかとなくほのぼのしている様に見えるのだから不思議だ。
この宴会には対同盟委員会から哀河が出張っていて
彼は自分の作戦から生き延びたパイロットに声をかけ様としていたのだが、
三人の何となく微笑ましい空気を見て後回しにする。
今回の会食に参加したのは
同盟に対して実際に会って話をしてみる事が主な目的だったのだが、
某同盟は参加していない様だ。
仕方なく会場に居た参加者の人間ウォッチングをしていたのだが、
ふと視界の端に長髪の男が映った。


「おや?(確か彼はネルガルの『名目上の』会長だったか?)」


元大関スケコマシは隅の方で椅子に腰掛けただ酒をのんでいた。
彼の持つ空気を避ける為か彼を中心として半径1.5m内に人は居ない。


「うぅぅぅー・・・・・。
千紗君・・・・何で、何で〜(滝涙)」


・・・自棄酒だった。
彼の想いはその相手に届く事無く、
木っ端微塵に砕け散っていったのだから。・・・いと憐れ。
















同時刻
ナデシコ艦内某同盟会議室



反省会に出席していなかった某同盟のメンバーは
彼女等がナデシコ内に設けた会議室で喧喧諤諤の論争をしていた。
当初の予定では怨み連なるシャクヤクを訓練中の事故と言う事で撃沈し、
そこから『お情け』で救出した舞歌や哀河等を嘲笑しつつ
勝利の凱歌を挙げる様になっていた。


そう、『なっていた』
しかし現実ではよりにもよって哀河の指揮と
御剣万葉による単体ボソンジャンプでエステバリス隊は1時間ほどで全滅。
ナデシコ側も何とか起死回生の一手を打とうとしたがそれも敵わず
エステバリス隊全滅の一時間後ミサイルと高集束型グラビティブラスト等によって撃沈。
そして現在は無理を重ね応急処置しかしていなかった(出来なかった)
相転移エンジンの停止により怨敵シャクヤクに曳航されサセボを目指している所だった。
本来なら相転移エンジンは最優先で修理するのだが、
それが出来なかったのは
一重に某同盟が修理の為の時間を捻出しなかったのが一番大きい。
現在最低限の動力は核パルスエンジンによって賄われているが、
相転移エンジンは大規模な修理・取替えが必要な状態になっていた。
整備班は現在どうしているかと言うと、
某同盟の不条理な責任追及により肉体的に瀕死の状態に送り込まれる所を

『彼らに責は無い』

と、シュン・プロス・ミナトさらにホウメイの連合軍により救われ、
現在相転移エンジンを騙し騙しでも使えないかと奮闘中だ。






さて、話をナデシコ艦内某同盟会議室に戻そう。
現在彼女等は・・・・・・責任の擦り付けは終わったようだ。
そしてこれから実刑が申し渡される所だ。
ちなみに今回被告席にいるのは
ミスマルユリカ・メグミレイナードの二名だ。
主犯はユリカ、共犯メグミと言う形になっている。
ユリカが主犯になっているのはまだ理解できる。
彼女が今回の実戦訓練を思い立ち他のメンバーに了承を得る事無く、
独断で実行したのだから。
だが、メグミが何故共犯として被告席にいるのか?
それは彼女の同盟での役所が関係してくる。
彼女は言わずと知れた謀略家であり、常駐する場所もブリッジだ。
よって彼女は某同盟内で参謀長の様な立場にいる。
今回彼女はその立場に在りながら『結果』として愚策『だった』
ユリカの作戦を事後だったとは言え積極的に支持した。
他にも支持した者もいたが彼女等は結託し巧みに責任を逃れ、
その他の同盟員も最近大きくなってきたメグミの権能を削る為に
責任を二人に押し付けた。


「何故ですか!?
あの時金の糸も作戦に乗り気だったじゃない!!」byメグミ

「あの時私は何を目的とした物か確認する為に
口に出しただけで支持はしてないです」byサラ

「な!?
そんな詭弁です!!」byメグミ


カンカン!!


「被告は静粛にして下さい」byルリ

「くっ!!」byメグミ

「刑を宣告します。
同盟規約に基き、両被告に
次回から10回お仕置きへの参加を禁止し、
会議場での発言権を刑の終了まで凍結します。
ただし会議への出席と提案の可否支持権は現在のままとします」byルリ

「そ、そんな!?」byメグミ

「うぅぅー厳しすぎるよルリちゃん〜」byユリカ


項垂れる二名を速やかに無視し会議は本案へと移る。


「さてこれからの話ですが、
何かありますか?」byルリ

「はい」byエリナ

「裏方さん、どうぞ」byルリ

「では、
先の件によってどんなに急がせてもナデシコは暫く使い物にならないわ。
最低でもサセボドックで二週間の修理と検査。
これ以上は縮めようがない状態よ。
そして情報に関してだけど、
日本地区の政治・軍等の高官は役に立たないし、
使えたとしても現在木連との交渉中で手が回せないそうよ。
だからこちらの残る手としてはネルガルの諜報部を使うしかないの。
既に指示を出して探らせてるわ」byエリナ

「・・・・仕方ないですね。
じゃあ、ナデシコ修理完了までに何らかの手がかりを得る。
これが目標ですね」byルリ

「事後承諾ですが、すばやい対応ですね」byサラ

「では私達も個人で動いて捜索します。
・・・何もしないよりいいでしょう?」byサユリ

「では、そうしましょう。
ただしこれだけは覚えておいて下さい。
TAの傍にはあの真紅の羅刹がいます。
例え発見しても単独・少人数で攻撃を仕掛けるのは愚の骨頂です。
必ず全員に連絡をいれ、最大戦力で一気にアキトさんを『救出』します!」byルリ

「了解」×全員


未だに『救出』と明言している時点で彼女等が
全く反省していないのが良く解る。
何はともあれ
こうして某同盟はアキトの居ない日本を全力で捜索する事になる。
そして早くも翌日には手掛かりを見つけ
NSS(ネルガル・シーックレットサービス)の猛者一個中隊と共に
その隠れ家らしき場所を急襲するのだが、見事にはずれ。
どうやらアキトが施した布石「対某同盟用フェイクハウス」に引っかかったらしい。
その他アキトが自分の口座から逃亡資金を引き出した銀行を
虱潰しに捜索するが引き出された紙幣は使用済み紙幣であり、
番号を特定する事は不可能だった。
さて、アキトの隠れ家に関しても初日以降もフェイクハウスが発見される。
その数総計で十三箇所にわたり隠れ家らしき場所を見つけ、
それらを次々に急襲するものの全て外れ。
中には北斗が手伝ったのかブービートラップが仕掛けられている物もあった。
少なくない損害を出しつつも某同盟のアキト捜索は続けられた。
しかし容易に行方は解らない。
ナデシコの修理も間も無く終わりではあるが、
肝心の情報が無く某同盟の(元々無いも同様ではあるが)理性は臨界突破寸前だった。


しかし本来ならもう1、2話某同盟イヂメをしようとしていた
兄神(作者その1)と周りに迷惑をかけまくる某同盟見かねて
妹神(作者その2)が苦笑と共に同盟へ一つの情報を送る。


そして・・・


『最近男一人、女二人分の身分証を作った』


と言う噂のある裏では名の通った偽造屋を発見したのだ。
すぐさまNSS10名と紅の獅子・銀の糸が現場に急行しその偽造屋を確保した。
その偽造屋は自分の仕事上の守秘義務を守り一向に口を割らなかったが、
家捜しをしていたNSSが偽造屋の個人端末から情報を入手した。
そこには彼が極最近手がけた三人に関する情報があり、
それは自分達の探している生贄の羊一行だった。
そしてその情報は某同盟全員に行き渡る。
電子の妖精姉妹は即座に裏表問わず身分証の人物を捜索し、
一つの情報を得る。
彼らの移動ルートだ。
それは彼女等の裏ルートによる移動と言う予想から180度違い、
正規ルートによる移動だった。
しかしこれで生贄の羊の行方が解明された。
ナデシコも突貫工程により修理済み、
よって彼女等を止める物は何もない。
さぁヨーロッパへ!!














翌日未明
ドイツ・イゼルローン
シュバルツリッター社屋上空100m地点



ヨーロッパへの移動中、
電子の妖精姉妹はヨーロッパのあらゆる電子媒介に侵入、
アキトと思われる人物の割り出しをしていた。
その結果生贄の羊一行と思われる三人組が
シュバルツ・リッターの業務に関与していたとの情報が入ったのだ。
今回はキッチリ事実確認も済ませ、
メール機能を使うことなく面と向かった交渉で証言も取っている。
つまり彼女等は完全にチェックメイトをかけた状態と確信していた。
少なくともここでより確実な証言を得る事ができる。
そう踏んでいた。












だがそうは問屋(作者その1)が卸さない(邪笑)

















ナデシコでは通信可能域に入り次第
シュバルツ・リッター社屋の電子媒介へとハッキングを仕掛けていたが、
これは完全な無意味と終わる。
シュバルツ・リッター代表取締役アカギオウカは
すでに某同盟がヨーロッパへくる事を察知しており、
ナデシコの到着時間が深夜から明け方になると踏んでいた為、
その日に限り外部からのハッキングルートとなりうる回路を
全て物理的に切断して置いたのだ。
勿論前もって関係者に向けて連絡を送っていたので、
緊急連絡等は別経路だ。


「くっ!?
駄目だよ。繋がんない。
多分物理的に回路を遮断してるんじゃないかな?」byラピス

「そう・・・仕方ないわね。
暫く待ちましょう。幾らなんでも朝になれば人が来るでしょう」byイネス

「!?
何悠長な事言ってるんですか!
外部スピーカーで呼び出せばいいんです!!」byユリカ

「無駄よ」byエリナ

「やってみなければ解らないじゃないですか!」byメグミ




どうやら某同盟年長組は冷却期間を置く事で多少は冷静になれたようだ。
・・・所詮多少だが。
しかしお仕置きの不参加と発言権の停止を喰らっている
二名は既に理性がどんな物だったかすら覚えていないようだ。
他の同盟員も何か考えがあるのかおざなりな制止をするだけで
本気で止めようとしていない。



「シュバルツ・リッター関係者に通達します!
即座に責任者は本艦へ出頭するか!
通信を開きなさい!!」









シーン(無反応)








イゼルローン市に女性のヒステリックな声が響く。
通信士でもある元声優はその元の職種を疑ってしまうほど
裏返ったり不必要に高い声で同じ事を2回繰り返す。
しかし反応は返ってこない。
思わず『貴女達は本当に地球人類ですか?』と聞いてしまいそうなほど
顔の造形を壊した二人の阿修羅は無言で盟友達の職権を奪い、
ナデシコの主砲・グラビティブラストを放とうとする。


「な!?ちょ、ちょっと止めなさい!!」byエリナ

「何してるんですか!?」byルリ


「「何って・・・決ってるじゃない。
・・・・・・・・壊すのよ」」byユリカ&メグミ


大急ぎで二人を取り押さえ、
『科学者』開発の鎮静剤を打つと拘束衣と猿轡を装着させ
医務室へと輸送される。
その際鎮静剤が効いたのか二人の顔がこの世の物とは思えないほど
どす黒い紫に変色していたのは当事者たちの記憶からリセットされた。






数時間後



シュバルツ・リッターの社員たちが続々と出社している。
珍しく自制心を発揮している某同盟は始業時間まで待っているが、
苛立ちは募っている。
それ故に気付いていない。

『市街地上空300mにナデシコが存在している』

と言う事によって周辺に与える影響に・・・。




「そろそろ良いでしょうか?」byルリ

「良いと思うわ」byイネス

「始業時間10分前だし、
もう大抵の関係者が出社してるでしょうし・・・」byエリナ

「あ!?
シュバルツ・リッターが通信を求めてきました!」byサラ


ナデシコでそれまでとは違い理性的な会話がされている。
これは医務室に輸送された二人の錯乱者を見ることで
逆に彼女等が冷静さを取り戻した事が原因だ。
(科学者の鎮静剤を見たためかもしれないが・・・)
そんな中シュバルツ・リッターへ通信を繋げようかと言う時に
相手の方から通信を求めてきた。
幾らか理性を取り戻していた彼女等は、
シャクヤクの哀河の例を思い出し慎重に対処しようと
ブリッジに居る同盟員はアイコンタクトを交わす。


「裏方さん、交渉になるでしょう。
私はこういった事は不得意ですのでお任せします」byルリ

「そうね。お任せするわ」byイネス

「じゃ、私サポートに回りますね」byサラ

「・・・解ったわ。
金の糸、通信を繋げてくれる?」byエリナ

「了解」byサラ



久しぶりに・・・・いや、
初めて某同盟の理性的(まともな)な会話を書いた気がするが、
何はともあれ通信が繋がる。


「はじめまして、ナデシコの皆さん。
私はシュバルツ・リッター代表取締役アカギ・オウカです」

「こちらこそはじめまして、アカギさん。
私はナデシコ副操舵士兼臨時交渉人エリナ・キンジョウ・ウォンです。
丁度そちらに通信を入れ様としていた所です」

「そうなんですか?
それは丁度良かったです。
そちらの用件は大体予想しています。
その事に関して出来れば直接お話したいのですが?」

「・・・・この場で、
通信で情報をこちらに送るという事は出来ないんですか?」


思わぬ申し入れに同盟員の脳裏に疑問が浮かぶ。
これまで他の情報提供者は出来る限り関わりになるのを回避するように
映像越しにしか話をしなかったのだ。
それが今回に限って直接交渉。
何か在ると思うのは至極当然の結論だった。
自分の中で結論が出なかったエリナは他の同盟員に視線を送る。




サラは悩んでいるようだ。        一時保留

ルリはラピスと視線を交えた後で肯く。  直接交渉に賛成2

イネスは視線が会うと即座に肯く。    これで直接交渉賛成が3

サラに再び視線を送ると躊躇しつつも肯く。これでこの場の同盟全員の賛成がでた




「ああ、それとアキトさんから貴女方に渡すよう頼まれた・・・」

「!?!?今すぐいくわ!
ナデシコの艦載機で屋上に降りるから場所を開けておいて!!
では!」


エリナが通信を切ると共に某同盟員全員に連絡が行き渡る。
2分後艦載機がシュバルツ・リッター社屋屋上に着陸する。
かなり移動時間に無理があるが、
不可能を可能にするのが漢乙女(おとめ)と言うものらしい。
しかも医務室に連行された筈の二人も含めしっかり全員が
シュバルツ・リッター社屋屋上に勢揃いする。
某同盟が屋上で待つ事3分、
アカギオウカ及び
目立たない程度に武装したシュバルツ・リッター社員が屋上に現れる。


「・・・お早いですね。
連絡から2分で屋上に着くなんて、
どうやったんですか?」

「恋する漢乙女(おとめ)に不可能はありません!」byルリ

「・・・そうなんですか?」


予想以上に速い行動に冷や汗を流しつつ話し掛けたオウカに
ルリは何の躊躇も無く全ての物理的現象すら
事象の彼方に撥ね退ける真理を堂々と言う。
半ば呆れを含んだ返事を返しながら道を空けてビル内へと案内しようとする。
しかし・・・
同盟メンバーはここまでは思わず勢いで来てしまったが、
この先何かトラップが無いとは言い切れない事を思い出し、
屋上での交渉を提案する。


「出来ればこの場でテンカワ君から預かった物を
渡して欲しいんですが?」byエリナ

「ああ!そうですね。
早くナデシコには市街地から離れてもらわないといけませんからね」byオウカ

「?」×同盟メンバー

「・・・気付いてないんですか?
ナデシコの重圧[せい]でこの辺の市民には
多大な精神的重圧がかかっているんですよ」byオウカ


オウカがにこやかに笑いながら某同盟に棘を含んだ言葉をかける。
ここでエリナ・イネスのお姉さん組が気付く。
オウカは微笑んではいるが、
その目は全く笑っていない!
そして先ほどかけた棘には致死性ではないがしっかりと毒が付いていた。

「それに非常識な時間に
非常識で根拠のない『命令』
『騒音の様な声』でがなり立てたりするので
我々には良い迷惑でしたよ」byオウカ

「・・・・それに付いては謝罪するわ。
『一応』止めたんだけど一部の乗組員が暴走したのよ。
後で改めて正式な謝罪をそちらに送るわ」byエリナ

「いえ、この場で謝罪していただければ十分ですよ。
では本題に入りましょうか?」byオウカ


これまでに無いほど相手に譲歩するエリナ。
これは悔い改めたのではなく、
ただ単に早くアキトから託された物を受け取りたいからに過ぎない。
そしてオウカもそんなエリナの心情を大体ではあるが理解している。
オウカがいったん話を切った時、
先程オウカから指示を受けて階下に行っていた
シュバルツ・リッター社員が大き目の段ボール箱を持って帰って来る。
オウカは懐から紙を取り出しそれを見ながら
何かを探し出すと先程まで交渉していたエリナに渡す。


「これがアキトさん、
マイン・カイザーから貴女達へと渡すよう頼まれた物です」

「テンカワ(アキト)君(さん)・・・・」by同盟メンバー


渡された物、それは花束だった。
ただし唯の花束にしては色やバランスなどが考慮されていない。
だが某同盟からみればあの『鈍感帝王』テンカワアキトが
自分たちに送った花束(?)なのだ。
彼女等が嬉しくないはずは無い。
それこそ至福の表情を浮かべた某同盟に対して
オウカは何処か憐れみすら覚えるが、
彼女等が自分『達』の想い人にした事は決して許容できなかった。
よって幸せの絶頂から彼女等にふさわしい場所へ・・・
絶望へと突き落とす為、断罪の剣を振り下ろす。


「それに入っている花は、
コケサンゴ・ゴボウ・ツリフネソウ・アスクレピアス・ミヤコワスレです。
それで花言葉を繋げ合わせるとアキトさん曰く、

『虐めないでそっとしておいて、行かせて下さい。
私に触れないで下さい。また会う日まで』
だそうです」


ビシ


それまでの至福の表情のまま某同盟全員が凍りつく。


「そ、そんなの嘘です!
アキトさんがそんな事!!」byルリ

「それに虐めるってなんだよ!?虐めるって!」byリョーコ

「そうです!私達はアキトさんの事を想って!!」byアリサ

「アキト君の事をいつも一番に考えて行動してるのに!」byレイナ

「ギュッキャーーキャキャキャ!!?」byユリカ(猿人?)

「フシューフシュー・・・グルグルグル」byメグミ(オーガ?)


不満爆発だ。
冷静さを損ないつつあるが他のメンバーもオウカに不審の目を向ける。
数分前まで医務室で拘束されていた二人に至っては
人外の存在へと変貌しつつある。
先ほど打たれたイネス印の鎮静剤の効果だろうか?
しかしオウカは慌てずに紙を見つつ
再びダンボールの中から花束(?)を取り出し、エリナへ渡す。


「えーっとですね。
もう一つありまして、
そう言う事、つまり『私達はアキトさんの事を想って』等の事を
貴女達が言った時はこれを渡すよう書いてあるんですよ」

「・・・これは何?」


花束(?)を受け取ったエリナが不審感を隠す事無く、
オウカへ問う。
それに応えるオウカは営業用の笑顔だ。


「それはですね。
ウシノシタクサ・ハナズオウ・ホオズキ(朱)・マルバノホロシです。
それで花言葉を繋げ合わせるとアキトさん曰く、

『疑惑、いつわり、欺瞞、あなたが信じられない、だまされない』
となります」

「・・・・・っく!
信じられません!
これは貴女が勝手にやった事だと・・・」byルリ

「これ、どうぞ。
あ、後証拠の映像がありますので・・・
これです」


ルリの言葉を途中でさえぎり、
オウカはアキト『直筆』のメモを手渡し、
ウィンドウを某同盟の前に展開する。



『ルリちゃん達が来たらこのメモの通りにして欲しいんだ』

『花ですか?
・・・あ、渡した後でこの花言葉も言えば良いんですね?
でもこれ、結構辛辣ですね』

『ん、これ位やらないと彼女達は理解してくれそうにないからね。
頼める?オウカ』

『勿論ですマイン・カイザー』



ほんの15秒程度の映像が終わる。
某同盟は動くことが出来ない。
とりあえずオウカは映像を最高画質で容量一杯まで
エンドレスで保存したDVDをエリナに渡す。
それでも元に戻らない。
そこでその場に居たオウカを含めるシュバルツ・リッターが
艦載機に同盟メンバーを乗せるとナデシコへと自動操縦で送り出す。
遠ざかっていく艦載機を見ながら
オウカは若干の罪悪感と想い人との約束を果たせた充実感を感じていた。
もっとも罪悪感の方は充実感にかき消されて大して認識できなかったのだが。








とうとうアキト自身に突き放された某同盟!
これから先彼女等の歩む道はどんな物になるのだろうか!?
ただ明らかなのは作者その1が
彼女等に明るい未来は似合わないと想っている事だけだ!!











後書き


広島県人(以後、広):
ども、お久しぶりです。
就職活動と卒論で死にかけた広島県人です。

アヤカ(以後、ア):
お久しぶりです皆さん!
長らくお待たせしました♪

広:
あー生きてるって素晴らしい!!

ア:
いきなり何言い出すのよ。
誰にもわからないよ。
強姦魔さん?

広:
誰が強姦魔じゃ!?

ア:
そんな事言って誤魔化すんだ。
私の胸に顔埋めた上に腰に手とか回して
水中に連れ込んでお尻触ったくせに・・・。
・・・ダメって言ったのに、あんなの初めてで・・・ぐす(泣)
痛かったよ、お兄ちゃん・・・・・・。

広:
ぐは!?
いやだって、あれは事故だろ?
つーか俺等が飛び込むって言ってるのに防波堤の下で
のん気に泳いでるアヤカにも非があるだろ!?
結果としてお前に突っ込んだのは俺のミスかも知れんけど!(半泣き)
それより誤解を招きそうな言い回しは止めて(懇願)

ア:
・・・・お兄ちゃん、
いつものお兄ちゃんに戻ってるね!!
やっぱり『愉快な喜劇』が切欠なんだね!!


スパン
(ハリセン炸裂)


広:
それを確かめるために俺を強姦魔ってよんだんかい!?
それ以前に後書きじゃなくなってるだろうが!?

ア:
まぁ、それはそれという事で♪
お兄ちゃん今回花言葉とか頑張ったね〜♪
ん、良い子良い子 (頭なでなで中)

広:
いや、頭撫でられても・・・(汗)
まあ確かに話に会う花言葉を持った花を探すのに手間取ったが、
アヤカに頭撫でられても違和感バリバリなんだけど。
・・・やけにご機嫌だな。

ア:
そうかな〜♪
あ、そう言えば話の途中にあったオウカさんとアキトさんの会話、
まだ続く予定だったんでしょ?
どんなのだったの?

広;
無理やり後書きっぽくしてるような気がするが、
ま、いっか。こんなのが続く『予定』だった。



『ルリちゃん達が来たらこのメモの通りにして欲しいんだ』

『花ですか?
・・・あ、渡した後でこの花言葉も言えば良いんですね?
でもこれ、結構辛辣ですね』

『ん、これ位やらないと彼女達は理解してくれそうにないからね。
頼める?オウカ』

『勿論ですマイン・カイザー』

『ありがとう。
お礼は・・・何が良い?(にっこり)』

『・・・いつものでお願いします(赤面)』

『了解(0.13秒)
じゃ、今夜で良いかな?』

『はい・・・ご主人様』

といった感じでさらに続いて、
アキトが半分前払いと言う事でその場


ゴシャ
(中身の入ったビールの大瓶で後頭部を痛打)


ア:
はぁーはぁーはー(深呼吸)
ナチュラルに18禁に持っていこうとしないの!
全く、これだからお兄ちゃんはもてないのよ!
ごそごそ(赤く粘性の高い液体の着いた瓶を処分している)

広:
ぐ、が・・・ちょ、ちょっと待てい・・。
今の・・は、マ・・ジで洒落に・・ならんぞ?
し、死ん・・でしまぅ・・・・・。
そ・・れに、アヤ・・カも俺の・・
女・友達に・・毎回ケンカ、吹っか・・・けてる・・・じゃ


メギ
(閃光の様な左肘が広島県人の眉間にヒット)


ア:
はー・・・彼女達、
お兄ちゃんが居ない所でお兄ちゃんの悪口ばっかり言ってたからよ。
それに○○○ちゃん(実の妹さん)も一緒にケンカ売ってたわよ?
自分の家族の悪口言われて黙ってるほど私悟ってないもん!

広:
だ、だからって・・・何故俺が・・・
死・・・死に、掛けな・・・きゃ・・・・

ア:
(無視)全く、ちょっと仲良くなったからって直ぐ有頂天になって、
相手の事しっかり見てないんだから・・・って。
もしもーし・・・お兄ちゃん!?
は、ははははは・・・やりすぎちゃった(^^;;
・・・・お、起きてよーーー!!
で、では皆さん。
次回作も頑張りますので、応援してください!

・・・・・・ああ!?お兄ちゃん!起きてーー!!

 

 

代理人の感想

ん〜む。

さすがにいぢめはもう勘弁して下さいおなか一杯ですたい、とゆー感じですな。

「同盟いぢめ」ももう旬が過ぎた感もありますし。

 

さて、次回はどうなるんでしょうかね〜。

らぶらぶ?

 

追伸

たとえSSの中であってもそう言う言葉を無造作に使うのは感心しませんね〜。(苦笑)