死神が舞うif黒衣の死神〜第一幕〜




 「君、だれ?」


えっ?


 「どこかで会ったっけ?」


 アキト、私を知らないの?


 「大丈夫?顔色悪いけど…。」


 「大丈夫…。」


 笑顔で答えたつもりだったけど、だめだった。

 アキトの顔を見れば一目瞭然だ。


 「本当に大丈夫?近くまでなら送るけど。」

 
 アキトは心配そうにしている。


 「ううん、いい。

  それと、さっきはごめんなさい。人違いだったみたい…。」


 私は首を振ったあと、頭を下げた。


 「そうなんだ。気にしてないよ。」

 
 アキトは散らばった荷物を片付ける。


 「ごめんね。俺、もう行かなきゃ。じゃあね、気をつけて。」

 
 アキトはそう言って自転車にまたぐと走りだした。




 「ユリカーーー!! 俺はお前を知ってるぞ!待ってろよ、ユリカ!」


 アキト…皮肉なの?

 ユリカのことは知ってて会いに行くのに、私は知らないの?

 アキト、辛いよ、胸が痛いよ。


 「アキト…。」

 
 私の呟きは夜の道路に消えた。
 



 どれくらい時間がたったのかな…

 道の端にしゃがみこんでいたせいで、お尻が痛い。

 ずっと考えていた。

 アキトが私を知らないこと、アキトのこと、私自身のこと、これからのこと、ずっと。


 アキトが私を知らないこと、これはきちんと考えていたら答えはすぐ出たはずだった。

 私自身のことも考えるべきだった。

 私がこっちに跳んだとき、私は縮んでいた。そして私と同じ存在はいない。

 つまり心だけがこの時代の身体に入ったんだと…。
 
 どんな理由かは知らないけど、私はまた大きくなった。

 だから、私は過去であり未来の私と勘違いを起こしたんだ。

 アキトは絶対私の知ってるアキトだって…。

 アキトもジャンプしたんだったて…。

 でも、違った。

 アキトは私の知ってるアキトじゃなくて違うアキト。私を知らないアキト。

 
 これからどうしよう。

 私にはアキトしかいないし…。

 そうだよ、アキトしかいないならこれからすることは決まってる。

 行こう、ナデシコへ、アキトのもとへ。

 私は佐世保ドッグをイメージした。

 
 



 


 「いい加減にしろーー!!」

 
 俺は目の前の虫型のメカにパンチを飛ばす。

 本当に何が何だか…。

 ユリカの向かったほうに走っていたのはいいがどこにいるか分からず、

 そのあとドッグにいた警備兵にとても良心的にユリカの行方を聞いただけなのに…。

 不審者に間違われつかまり、プロスペクターという人にコックとして採用されて、

 ナデシコの内部を見ていたら熱い奴がこけたのを見て、そいつの頼みで宝物を取りにいったら、

 警報が鳴り、このロボットで逃げようとしたらユリカが現れて、艦長とかいいだして、

 とか何とかしているうちに囮を頼まれて、すぐに地上に着いて10分間囮をしろと言う。


 パンチが当たり、メカが壊れる。

 
 「へへ、俺ってやれるじゃん。」


 そうだ、あのメカを倒したのだ、火星でみんなとアイちゃんを…。

 そうあのメカを…だめだ、身体がすくむ。

 逃げるしかない。

 反転して、走り出したが、一番手前のメカの銃撃があたりそうになる。

 
 「くっ!」

 
 ジャンプでかわすと今度は上空で待機していたメカが撃ってくる。


 当たる!


 俺は一瞬目を閉じた。

 そして軽い反動ののち目を開いて見えたものは、真っ二つに裂かれたメカだった。

 何が?


 俺の機体が水面に落ちる。

 …筈だったが足元から来たナデシコによって、今度は浮上した。


 「おまたせ!」


 ユリカがいう。 

 先ほどのことに違和感を持ちながらも、

 俺はタイマーをちらりと見て、10分も経っていない事に気づいた。


 「まだ、10分経ってないだろ。」


 「あなたのために急いできたの。」


 やはり、先ほどのこともユリカが、ナデシコがやったのか?

 『敵残存兵器、有効射程内にほとんど入ってる。』

 『目標、敵まとめてぜ〜んぶ、てぇーー!』

 そんな考えに浸っている間もなく、ナデシコは敵を殲滅した。


 その後、ユリカや他の乗員に話を聞いてみたが、何も手を加えていないそうだ。


 ユリカにいたっては


 「アキトが知らないうちにやったんだよ!さすがアキト、私の王子様だね!」


 といっていた。どうでもいい話だが…。

 ともあれ、俺を乗せたナデシコは出発した。

 

 
 


 佐世保に着いた私は、目の前に広がる光景に驚いた。

 一機のエステバリスにバッタやジョロが集中攻撃を仕掛けていたから…。

 乗ってるのはアキト、私には分かる。

 助けなきゃ、でもどうやって?

 戦闘で私に出来ることあるのかな?

 私に出来ることは電子戦ぐらいだから。

 そうだ、ハッキング!



 幸い近くにいいものがあった。

 私はハッキングの前にアキトのエステバリスのコックピットに盗聴を仕掛ける。

 『くっ!』

 アキトの声、成功した。

 ドンッ!

 そのとき、大きな音が鳴った。

 顔を上げると、アキトの近くいたバッタとジョロが縦に真っ二つに切られていた。

 あれ、アキトがやったの?

 違う、アキトじゃない。

 第一アキトの乗ってるエステバリスは敵をきれいに真っ二つにする武器なんて持っていない。

 じゃあ、どうしたの?

 誰かが助けたのかな?

 まあどっちでもいいかな、アキトが助かったなら…。



 ナデシコがグラビティーブラストでバッタとジョロを殲滅した。

 今、私に聞こえる音はアキト達の会話。

 『大大大好き!』

 『人の話を聞けーー!!』

 アキト楽しそう。

 私のことなんてぜんぜん思い出そうともしないんだね。

 確かにアキトの役に立てなかったけど…。

 今のアキトは私を必要としないんだね。

 じゃあ、私はそうすればいいの?





 『未来にジャンプして、あなたの探してるアキトに会えばいいんじゃない?』


 後ろから突然の声に私は振り返ると、声の主は…いなかった。
 
 どこかで聞いたようなそれでいて聞き覚えのない女性の声だった。


 私はさっきの言葉を言ってみた。


 「未来にジャンプして、私の知っている、私が知っているアキトに会いに行けばいい。」


 そうだ!そうすればいいんだ。


 私はすぐにジャンプを試みた。

 あのときの、ランダムジャンプする前のユーチャリス、お願い、跳んで!


 この光を見たのは何度目だろう、そんなことを考えながら光に包まれた。

 





 着いた先はユーチャリスの内部。

 私は間違いなく未来に跳んだみたい、ユーチャリスがあるんだから。

 私はブリッヂに急いだ。

 アキト、アキト。

 ブリッヂをのドアを開ける。


 「アキト!」


 「誰だ!」

 「誰ですか?」



 私が見たものは立ってモニターを眺めていたアキトと、


 私の席に座っているホシノルリだった。







  あとがき

  
  ひとみ みともです(慣例化してるなぁ)。

  死神が舞うif黒衣の死神〜第一幕〜です。いかだでしたでしょうか?

  今回はまんまナデシコの第一話ですよね。

  でも、ものすごく苦労しました。
  
  だって、死神が舞う第二話のあとがきでは、

  >アキト探しをはじめるラピス。
  >
  >見つけたがそこにいたのは自分のことをまったく知らないアキトだった。
  >
  >再びショックをうけるが、自分の知っているアキトを探そうと決意、未来へと跳ぶラピス。

  の部分でしかも下二行しか書いていない話ですよ。

  まあ自分のせいなんですけど…。

  でも、よく考えたら次のほうがきついですよね。

  後半はほとんどプロットできているから大丈夫なんですけど…。



 裏話

 そういえば話の後半で謎の人物?が出ました。

 物語上大変重要な人?です。覚えていてくれると嬉しいです。


 
 物語のアキトくん、なかなかひどい人ですよね(ラピスから見れば)。

 突然自分の上から降ってきて、自分の名前を叫びながら抱きつくような少女を忘れるとは…。

 いくら自分の両親の死について絡む幼馴染との再会があってもちょっとひどいですよね。

 でもアキトくんも自分のことでいっぱいいっぱいなんです。許してやってください。



 あとラピスがCCなしでジャンプしている理由ですが、すいません今は秘密です。

 あとあと分かってくると思うので、

 それまでは『S級ジャンパーみたいなもの』と思っていてください。
 



  ともあれ、次作でお会いしたいです。










代理人の感想

ぐわっ!?

・・・・・やはり読者の意表を突くことにかけては一級品ですね、ひとみさんは。

この辺見習いたいと思います。

内容も二転三転して・・・・・いや、続きが楽しみです。