生命の宿り木〜中編の壱〜




 ユーチャリスとナデシコCが消えたという噂は月軌道でまことしやかに広がった。

 それに伴い地球にも広がったが、

 ミスマルコウイチロウの圧力でミスマルユリカには知らされることはなかった。

 ユリカには

 『ルリくんには今仕事を頼んでいるんだ。』

 『アキトくんは知らんな。どっかで浮気でもしてるんじゃないかな!

  そういえば最近、黒マントでバイザーを着けた男が月で年上の女性と仲良く歩いていて、

  ブティックホテルに入ったのを目撃したという噂を聞いたんだが…。

  誰のことだろうな?』

 と伝えている。

 あんたアキトとユリカのこと認めたんじゃなかったのか?

 アキトの言った『君の知っているテンカワアキトは死んだ』論でいえば、

 コウイチロウの認めるテンカワアキトは死んだわけだから、

 極論でいうと今のアキトは認められてないアキトなわけだが…。

 娘を守りきれなかったとういう点では同じかな?


 それはさておき、そんなこと言われたユリカのほうは、

 『大丈夫、アキトの気持ちはわかってるよ!愛する私を子供に取られるのが嫌なんだよね!

  だから私のところに来るのが恥ずかしいんだよね。アキトったら照れ屋さんだね!

  でも、こっそり影から見守ってくれているんだよね。アキト。』

 と言っていてた。

 もうどこから突っ込んでいいものか…。

 まあ唯一あげるとしたら前、中、後ですべて言っていることに矛盾が生じてることか。

 第一、コウイチロウの話したことを聞いているのか?

 もし、素直に「アキトくんとルリくんは行方不明だ。」と言われても

 同じ答えを返したのでは無かろうか?

 だとしたら、コウイチロウの配慮(?)などまったくの無駄だろう。

 ともかく、そんなこんなでこの事件のミスマル家の騒動は

 アキトとルリにはかわいそうなくらいあっけなく終わった。



 それから6ヶ月、最初は目立たなかったユリカのお腹も(特に胸の大きい人はそうらしい…)

 だんだんと大きくなり、臨月を迎えるまでなった。


 「アキト、そろそろだよ。」  


 ユリカはいつ来るかもしれない陣痛を気にしながらも、

 自分とアキトの愛の結晶に思いを馳せていた。

 先ほど書きそびれたが、

 ユリカは自分の子供をアキトとの愛の行為で出来た愛の結晶だと信じている。

 無論事実は体外受精に他ならないのだが…。

 火星の後継者に見せられたラブラブな夢の中にそんなのがあったのだろうか?

 それともただの妄想なのかはよくわからんが…。

 「うっ!」

 陣痛がはじまったらしい。ユリカはナースコールを押す。

 すぐに女性看護士が駆けつけて、ユリカは分娩室に運ばれた。


 一時間後、ユリカに第一子が誕生した。安産である。

 ぐったりしているユリカに


 「生まれましたよ。お、あれ?」


 赤ん坊を抱いている看護士は性別を言おうとして、一瞬ためらった。

 最初見たときにには無かった男性のシンボルが今見たときにはあるのだ。


 「どうしました?」

 
 同僚が声をかけた。


 「いえ何でもありません。」


 と返し改めてなにかを確認すると、


 「かわいい…男の子です。体重は2895グラムです。」


 「うわー、かわいい。まるでお猿さんみたい。」
 

 ・・・・・ともあれ誕生である。




 
 アキトとユリカは籍を入れていない。

 新婚旅行後に入れる予定だったらしい。

 したがって、ユリカはシングルマザーである。

 まあ、父親がアキトだという周知の事実があるだけにそうは感じづらいが…。

 つまりユリカの子の姓は『ミスマル』である。

 子供の名前を考えるにあたって、

 ユリカが出した名前は、


 「名前は考えていたの、私とアキトの子供だから
 
  男の子は『アキト』、女の子は『ユリカ』にしようって!」


 である。

 親と同じ名前の子が通じるかどうかは知らないけど、

 他の人の猛反発のためあえなく変更した。

 そのことを考慮して次に考えたのは、

 『アキトU世』とか『アキトJr』とか『アキトver2.00』

 というあまり変わっていないというか余計酷くなったのでは?とういう名前だった。

 無論却下されたのは言うまでも無い。

 そこでコウイチロウが考えていた、『シノブ』という名前が採用されることになる。

 ただし、名前の由来がアキトとルリをしのぶ気持ちからということは明かされなかった。






 シノブと名づけられた子は、すくすくと成長…しなかった。

 生まれて1ヶ月、一切の成長が無かった。

 生まれたときと全く変わらないのだ。

 そのことについて心配した関係者は、イネスさんに来てもらい検査をしてもらうことにした。

 イネスの検査の結果、驚愕の事実がわかった。

 シノブは常人には考えられないほどのナノマシンを体内に保有していた。

 除去することは出来るがあまりにも小さいためかなり難しくある意味手がつけられなかった。

 その検査の際にもう一つ分かったことがあった。

 母親であるユリカの体内には一切のナノマシンが検出されなかったことである。

 そこから推測するに、ユリカのナノマシンは全てシノブにいったものと思われた。

 病気その他の問題も無かったので、

 一年間様子を見て変わらないようであれば手術決行というコトになり落ちついた。


 2ヶ月、3ヶ月経っても変化が見られず、360日経った日の事、事件は起きた。

 シノブが急に苦しみだした。

 病院関係者を含めたシノブの関係者がシノブのもとに駆けつけていたときには、

 シノブはある変化を起こしていた。

 シノブは成長していた、急激に。

 まるで1歳児相当の子供がそこにいた。

 全員が息を飲む中シノブと思われる子供はユリカに向かって『ママ』と言った。

 はっきりと、みんなに聞こえるように。

 周りの驚きをよそにユリカはあまりの嬉しさに、

 シノブを抱きかかえその場でジャンプしトリプルアクセルを決めるほどだった。
  (しかし、あまりの遠心力にシノブが飛びそうになった事実は伝えておく。)

 イネスはごねるユリカをよそにシノブを取ると『検査ね!』と言って出ていってしまった。

 その他の全員が呆然と見守る中15分後にイネスが帰って来た。

 検査結果にまた驚くことになる。

 シノブは間違い無くシノブであっているそうだ。

 ただし、性別が女になっていた。

 その場にいる全員は凍りつくか気絶していた。

 まあイネスからシノブを剥ぎ取り、『ママだよ!』と言っているユリカは別にして…。

 
 その後、どんな理由でいきなり成長し性別まで変わったかは不明であった。

 


 シノブは女として、1歳をすごした。

 0歳の時と同様一切の成長も見られなかったが…。

 そして、360日たったとき同様の変化を見せ、成長とともに性別の変化が起こった。

 その点を除くとシノブは順調に育った。


 
 シノブが11歳になった日である。

 シノブがユリカに日ごろ聞きたくても聞けなかったことを聞く決心をした。

 
 「ママ。あのね、聞きたいことがあるんだけど。」


 「何?」


 「パパはどこにいるの?」

 
 日頃聞けなかったこと、パパことアキトの所在である。

 シノブがユリカにアキトについて聞くことはたくさんあった。

 ただ、現在の場所についてだけは触れてはいけないようだと子供心に思っていたが、限界がきた。

 学校の父兄参観である。

 他の友達はお父さんの自慢、または嫌いだなどという話自体がうらやましかった。

 パパに会いたい。

 そう感じるようになってきた。

 特に女の身体になったときは特にである。

 ちなみに学校では女で通っている。

 コウイチロウの配慮で性別は男で通すより女で通したほうがいいと感じたのだろう。

 身体測定等を行わなければ問題ない。


 「ねえ、パパはどこにいるの?」


 「パパはね。恥ずかしがり屋さんだから会えないの。

  でもいつも近くで見守ってくれるから。問題無いよ。」


 問題大有りである。会いたいという子供の気持ちに何故気づいてやれない。

 さらに、ユリカは素である。

 本当にそうだと信じているのである。困ったことに…。

 ユリカも母親になって大人になったんだし、

 コウイチロウも教えてあげればいいのに…。

 コウイチロウで思い出したがコウイチロウは無論、親ばかならぬジジばかである。

 それはさておき、ユリカにそんなこと言われて理解できるほどシノブは大人ではない。

 というか大人でも厳しいかな?


 「会いたい!パパに会って話すの!」

 
 「でも、今は会えないんだよ。」

 
 「じゃあ、いつ会えるの?」


 「う〜ん、昔は会えたんだけどね。」


 ユリカのその一言がいけなかった。


 「じゃあ昔のパパにあってくる!」

 
 そう爆弾発言を言ってCCを握るシノブ。

 書き忘れたがシノブはA級ジャンパーである。

 ユリカは体内のナノマシンがなくなりジャンパーではなくなったが…。


 「待ちなさ〜い!!」


 「やだ!」


 ユリカの止めも聞かずジャンプしようとするシノブ。


 「待ちなさい!今日は、今日はお肉安いの、買ってきてからにして〜!!」


 「え!」

 
 その発言にシノブはジャンプを止めた。

 それはそうだろう。過去と肉を天秤にかけたら肉が勝ったのだから…。

 
 「そんな!ママなんでそれを早く言わないの?」


 もう何も言うまい。

 きっとここの家はそんなシステムだと納得するしかないだろう。

 まあ、ユリカのところだし…。


 「じゃあ、行ってきます!」


 そういってシノブは出ていくと家から走って5分の店に7分で行って来た。


 「ただいま!」

 
 「おかえり。」


 シノブは直接ジャンプして行ったようだ。肉を持っているため帰りは走りだが。

 帰って来たとき、シノブは『男』だった。

 実はシノブはジャンプでも性転換する。


 「それじゃ、行ってきます。」


 「いってらっしゃい。昔のアキトによろしくね。」


 この親子には心配という言葉はないのか?


 ともかく、CCを握り手を振るシノブ。

 シノブが光につつまれる。

 

 

 

 




 青い空、白い雲、緑の草原。

 目覚めると俺は、そこにいた。

 いったいどうなったんだ。

 
 ルリちゃんに迫られ、ナデシコがせめてきて、ラピスが言うコトを聞かなくて。

 ランダムジャンプか。

 それにしてもルリちゃんがあんなに強引だったとは…。

 じゃなくて、視界が妙にはっきりする。

 俺は、目元に触れた。

 バイザーがない!

 まさか肉眼か?俺はどうなったんだ?

 そうだ、ラピス。

 『ラピス、聞こえるか?』


 『えっ、アキト?…アキトだ!』

 
 『ラピス、どこにいる?』


 『なんか研究所。それよりアキト、私小さくなっているんだけど…。』


 そう言われてから気づく、俺は若すぎる。

 そして、五感が完全に戻っていることに…。


 『ラピス、今は…何時だ。』


 俺は再び時を刻むのか……。


 


 

  あとがき


  ひとみ みともです。

  生命の宿り木〜中編の壱〜いかがだったでしょうか?

  中編を分けてしまいました。二つに分かれる予定です。すいません。

  う〜ん。まだ話が繋がりませんね。

  ラストあたりでやっと、というところでしょうかね。

  主にシノブの紹介になってしまった気がします。

  弐ではバンバンいろんな人に動いてもらいます。

  

 裏話コーナー

  オリキャラとして、アキトとユリカの子のシノブが出てくるのでちょっと補足を、

  ギャグ主体にしたかったので、詳しい設定は本文中では避けましたが、

  A級ジャンパーで360日ごとに360日分成長するという特異な人物です。

  さらに、その際に性転換します。
   (遺跡に融合したユリカのナノマシンをごそっともらった影響で)

  また、ジャンプをしても性転換します。
  (ナノマシンが身体をかきかえる際に成長と勘違いするため)

  男と女では本能的な性格の違いを除けば性格は一緒。

  


  ご意見、ご感想をおまちしています。

  それでは次回に会いたいです。

 

 

代理人の感想

ん〜〜〜む。

ギャグとすればちょっと外してるかなぁ。

もっとコミカルな描写とエピソードの挿入がないと、只のトンデモ設定に終わってしまうと思います。

小学生以下だと体の違和感で押すのは難しいでしょうから、

男に変わると男の子のおもちゃを、女に変わると人形やままごと道具を買いにデパートに走るコウイチロウとか。

どうもひとみさんは作者の方で意図した効果を読者に喚起する為の描写とか演出とかを

素っ飛ばす傾向があるように見受けられますので、少し考えてみていただきたいと思います。

 

 

以下余談。

日本では一般的ではありませんが

海外では親と子が同じ名前なのもそれほど珍しい事ではありません。

プロレスラーのテリー・ファンクJr.とか、架空ならインディ・ジョーンズとか。

(彼の本名はヘンリー・ジョーンズJr.で、インディアナは実は昔飼っていた犬の名前。(^^;

 同じ名前の父親に反発してインディアナを名乗ってる訳ですね)

また、日本でも昔は父親と同じ名前を名乗ることも珍しくは無かったようです。

例えば「鬼平」こと長谷川平蔵の父親も長谷川平蔵と言います。

正確には父親が「長谷川平蔵宣雄(のぶお)」、息子の鬼平が「長谷川平蔵宣以(のぶため)」。

このうち、下の「宣雄」「宣以」は「諱(いみな)」と言って普段は使わない名前なので

やっぱり名乗るときは両方とも「長谷川平蔵」な訳です。

もっともこれは武家の話(しかも中国産の風習らしい)であって、

庶民がそんな命名をする事はまず無かったようなので

実質的には日本でもそういう習慣は無かったと言っていいかもしれません。