ATTENTION!!

この話は見る人にとっては不快な描写があります。ぶっちゃけイタイです。
そういう話しが苦手な人は見ないほうが賢明かもしれません。



飾り気のない、果てしなく続くかの様な、白く真っ直ぐな通路を駆ける。

自分がもうどれぐらい走っているのかも分からない。

ただ前へ前へと強迫観念のような感覚が自らの身体を急き立てる。

その焦燥感からか、実際にはそれほどの時間ではないのだが、ひどく長い時間走り続けているような錯覚に陥る。


(ちぃっ!)


心の中で大きな舌打ちをする。

彼は今のこの状況に苛立っていた。

ただし、自分の心を平静に保てない事に苛立っているのではない。

何故自分はこんなにも苛立っているのか、その理由が分からない事に対して、である。


テンカワアキトは走る。


ぼさぼさの黒髪、黒瞳にさらにその目を隠す黒いバイザー、そして黒のボディスーツに黒マント、

周囲とは対照的な、まるで光を拒むかのような黒尽くめの容姿である。


(この通路はどこまで続いているんだっ!)


彼の走る姿は彼の割と端正な顔も手伝い、何も知らない一般人が見たら惚れ惚れするほどに速く、

そして足音などはほとんど出ない洗練された動きだったろう。

しかし、アキト本人はそれを誇るどころではなかった。


――――絶対に立ち止まるな。


彼の心がひたすら警告音を出し続ける。

この根拠の無い焦燥感が彼の心を埋めていく。

ただただこの本能に従って彼は動いて、いや動かされていた。


――――通路の終点まで行けばこの状態から開放される。


これもまったく根拠の無い考えなのだが、アキトはなぜかそう確信を持って行動していた。

………

……



走り始めてからどの位が経ったのだろうか。

どこまで行っても同じ景色―まるで自分が動いてはいないのではないかと錯覚するほどの―に変化が起きた。

何者かが通路を塞いでいるのである。

その何者かとは…………


(北辰とヤマサキ!?)


そう、通路の先にいるのは紛れも無く彼がこの手にかけた北辰と、連合宇宙軍刑務所で裁判待ちのはずのヤマサキであった。

彼らはなにやらアキトのほうを指差しながら嘲笑っている。

アキトの脳裏に様々な考えが浮かんでは消えた。

何故この二人が今ここにいるのか、

二人は俺に対して何を言っているのか、

そもそも死んだはずではなかったのか、等である。

しかし、彼の中ではそれらの事を確かめる好奇心よりも、

対峙するために立ち止まってしまう事により生じる恐怖のほうが勝ったようだ。

懐から愛用のコルトパイソン改を取り出して躊躇せずにトリガーを引く。

一発!

二発!

三発!

四発!

五発!

六発!

銃弾は走りながら撃ったというのに正確に二人の眉間、のど笛、そして心臓へと吸い込まれていった。

直径0,38インチの悪魔は着弾点をざくろのように吹き飛ばし、そこから血の華を咲かせる。

二人は顔に嘲笑いの表情を貼り付けたまま、血と脳漿の海に倒れた。

そして、アキトはそんな二人の横を一瞥もせずに駆け抜けていった。










北辰達を屠った後、程なくしてアキトは通路の突き当たりにある扉の前に辿り着いた。

何かの部屋のようである。

ここで初めて彼は立ち止まった。

これで自分の心は開放された、そう思ったのだろう。

しかし彼の心の揺らぎは収まらない。

むしろこの扉に近づくにつれて強くなってきている。


(何だっていうんだッ!)


ぶつける相手もわからないまま悪態をつく。

今ここで彼の採り得る選択肢は二つ。

来た道を引き返すか、扉を開けて先に進むか、である。

まったくの未知の場所だ。

注意深い普段の彼なら少し位は逡巡するはずである。

が、彼はまったく躊躇わずに扉を開けた。

その行動はもはや麻薬中毒者が禁断症状から逃げる時のそれに似ている。


シュン


扉を開ける。

例え中に何があろうと、何がいようとかまわない。

これでやっと楽になれる、そんな顔で部屋に入る彼の瞳にとあるものが映った。

一人の女性である。

女性は部屋の隅でガタガタと震えていた。

アキトの足はそこで止まる。

その女性に見覚えがあったからだ。


「ユリカ!?」


思わず声に出た。

中にいた、あまり大きいとも言えない部屋の隅でガタガタと震えている女性とは、

彼がいくら望もうとも会うことが出来ず、

会うことが出来るようになってからは決して会おうとは望まなかった女性、

妻のテンカワユリカであった。

アキトは全身の血液が沸騰するかのような焦燥感を覚える。

歓喜、後悔、疑念、安堵、戸惑い、絶望………。

様々な色を混ぜた感情が彼の心を染め上げ、混ぜすぎた絵の具が灰色になってしまうように、

彼の表情をいつも以上に無機質なものへと染め上げた。


(さっきから何がどうなってるんだ、くそっ!!)


しかし表情とは対照的に、彼の心の中ではありとあらゆる感情がうごめいている。


(これは本当にユリカなのか?

 だとしたらどうする?

 何を話す?

 会えた事を喜び合うか?

 それとも護りきれなかった事を謝るのか?

 そんな事、今の俺に出来るわけが無い。

 例え偶然とはいえ、

 ユリカの前に現れてしまったことだけでも愚かしいというのに…)


アキトの思考はフリーズしその場で停止する。

そしてユリカはひたすらに震え続ける。

しばらくの間はその構図のまま二人は止まっていた。

だが、アキトがあることに気づきその構図は崩れる。


(…………………?

 おかしい。

 明らかに様子がおかしい。

 いくらなんでも変わりすぎている。

 昔のユリカなら俺を見れば、犬が尻尾を振るような顔で飛びついてきたものだ。

 まさか、俺と同じようにユリカも体中に異変があるのか!?)


その考えに至り、アキトはユリカの状態を見ようと駆け寄ろうとした。

だが、


「いやっ、来ないで!」


びくっと肩を震わせ、そう叫んだ。

アキトは自分の耳を疑った。

今まで、自分からはあってもユリカから拒絶の言葉を聞いたことなど無かったからだ。


「おい、ユリカ、何言ってるんだ!?」


「いやっ、来ないで、殺さないでー!!」


ユリカはアキトに怯えているのか、すでに半狂乱となっていた。

見得も外聞も無く、涙と鼻水を流しながら子供のように手をばたつかせる。

そして腰が抜けているのか、四つんばいになって少しでも部屋の奥に行こうとした。


「待てって。俺だ、アキトだ!!」


アキトは逃げるユリカの肩を掴み、強引に自分のほうに向かせる。


「嘘よっ、アキトはあなたみたいな人殺しじゃないわ!!」


『アキト』の単語に反応したのか、ユリカは泣きながら、しかしそれでもアキトをキッと睨んで言い返す。


「なっ?」


ユリカからの予想外の一言にうろたえるアキト。

見ると彼の身体には先ほどの返り血か、はたまたそれ以前のものかは分からないが、

全身にべっとりと血が付着していた。

掴んだユリカの肩にもその一部がしっかりと跡を残している。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。これは違うんだ!!」


うろたえるアキトを尻目に、畳み掛けるようにユリカは言い続ける。


「何が違うのよ、さっきの銃声だってあなたのものでしょ!!」


「ま、待ってくれ!お前にまでそんな事を言われたら俺はこれからどうすれば良いんだっ!?」


「そんな事知らない!私にとってあなたはただの人殺しよ!!

 帰って!あなたはアキトなんかじゃないわ!!あなたなんて大大大ッ嫌いよ!!!」


アキトは足元が崩れていくような気分になった。

もともと万人に認められるような手段ではない事は分かっていた。

アキトにとっては、例え世界の全てを敵に回したとしても、

ユリカさえそれで笑ってくれればそれで良かったのだ。

だが、そのユリカにまで拒絶されてしまった。


今まで、俺は何のために生きてきたのか・・・


(わからない)


これカら、何ヲシて生きていケバイいのか・・・


(わからないわからない)


何ノタメニ生キテイケバ・・・


(わからないわからないわからない)


ブツ!!


「う、うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」













































劇場版アフター
Alive

presented by 鴇






















































「―――!!
 

 ッハァ、ハァ、ハァ、ハァ。・・・・・・夢か」


アキトは両の手の平をじっと見る。

何時もの、今はかなり汗ばんでいるが、見慣れた両手だ。

しかし・・・・・・・・・・・・・・・今は血に染まった、殺人者のそれに見える。


(人殺し、か。例え夢とはいえ、面と向かって言われるとやはり来るモノがあるな)


アキトは右手で顔を抑えながら自嘲気味に笑う。

今は火星の後継者の反乱から二週間が経った時だ。

その間、ろくに休憩も取らずに火星の後継者の残党狩りをしていたために身体が限界を超えてしまったのだろう。

ネルガルの月ドックへ補給に帰る途中、艦長席で眠りに落ちてしまったみたいだ。


「アキト、苦しいイメージ来た、大丈夫?」


気がつくと横には桃色の髪の少女、ラピスが上目遣いにじぃっとアキトを見つめていた。

ラピスとアキトは感覚全てがリンクしている。

そのためアキトの考える事は、例え夢とはいえ、部分的にだがラピスにも伝わってしまうのだ。


「・・・ラピスか。なんでもない。

 もうすぐネルガルの月ドックに着くからそれまでは休んでいてくれ」


そう言ってラピスの頭をなでてやり、手櫛で髪をといてやる。


「・・・うん、分かった。それとエリナからメールが来た。

 アキトに話しておきたい事があると言ってた」 


一応頷きはしたが、まだラピスはアキトのことを気にしている。

しかし、これには訳があった。

火星の後継者を潰した時から、アキトは情緒不安定に陥っているのだ。

その事がラピスの思いに拍車をかけている。

別にただ興奮しているだけならラピスもここまで気にはしない。

今までにも、特に北辰との戦闘中には恐ろしいほどの復讐心を燃やしたからだ。

だが、今回アキトの精神の平衡を乱しているのは怒りや復讐心ではない。


不安なのだ。


ネルガルに助けられてから、火星の後継者への復讐とユリカの救出のみを生きる糧にしてきたアキトにとって、

その二つの目的、自己の存在理由と置き換えてもいい、を達成してしまった今、

アキトは何のために生きるのかを完全に見失っていた。


(今までは、ただ火星の後継者への復讐とユリカの救出のみを考えていた。

 だがその後はどうする?何が残る?)


アキトはもう一度両の手の平を見る。


(必ず幸せにするという誓いすら果たせなかったこの両手。

 世界でただ一人、最愛の女性すら護る事が出来なかったこの両手。

 あいつは望んではいなかったかもしれないのに、多くの咎なき命まで奪ってしまったこの両手。

 こんな薄汚れた手じゃ、ユリカはおろか、もう誰を抱く事も出来ない。)


艦長席から遠く、前方を見つめる。

漆黒の宇宙の彼方に見える月が、ぽっかりと穴の開いてしまった自分の心のように見えた。


「アキト」


不意にラピスがアキトの首に両腕を絡ませてきた。

慣れているのか、アキトはそっとラピスを膝の上にのせる。

小さな吐息が首をかすめてくすぐったかった。


「私は、ずっとアキトの傍にいるよ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


アキトは答えず、無言でラピスを抱き返し、その髪に自らの顔をうずめた。

そして、ラピスの体温と柔らかな感触をその身体で感じ、全てを包み込むような暖かさをその心で感じながら、

アキトは再び眠りに落ちていった。
























アキト達が眠りに落ちてから10時間後、ユーチャリスはネルガルの月ドックへと到着した。

本来ならばボソンジャンプで戻っておきたいところだったが、

もともとCCの残量が心もとなかった上、アキト自身の疲労も重なり通常航行での帰還となった。

ステルス性能は折り紙付きである。

その性能を限界まで引き出せば、ナデシコC以外の艦では視認する以外に発見は不可能である。

さらに連絡を受けたネルガルの手回しにより、史上最悪のテロリストを乗せた艦は

悠々と地下ドックへと入っていった。


「接舷完了」


ラピスの声が他に何の音も無いブリッジに響き渡る。

幾度と無く繰り返した、事務的な行動だ。


「ラピス」


アキトがラピスを呼び止める。

その顔には前日まで色濃くあった疲労感は無い。


「昨日は、その、ありがとう。ラピスと出会えて・・・・・・・・・本当によかった」


百万の言葉を尽くしても言い足りない。

そんな気持ちを感情のリンクとわずかな言葉に乗せてつむぎだす。

そして彼は微かにだが、笑った。

その微笑みは夜空に輝く、全体比からすれば極々小面積の、星のようであった。

真昼に星は輝かない。

太陽という圧倒的な光の前にかき消されてしまうからだ。

それだけに、アキトのこの微笑みは星のように輝き、またすぐに消えてしまう儚さを併せ持った

何とも言えない魅力をかもし出していた。


「・・・・・・うん。私もアキトと会えてよかった」


ラピスもアキトを見つめて笑った。

慣れていないせいか、ぎこちなくはにかむような微笑みである。

この微笑みも淡雪のように儚げな、しかし見るものに安らぎを与える、

そんな彼女の名前、ラピスラズリのような輝きを放っていた。


(復讐を決めたあの日から、俺は『テンカワアキト』を捨てて一人の修羅となった。

 もう、二度と戻る事なんて出来ないと考えていた。

 だけど、俺はもう一度『テンカワアキト』に戻れるかもしれない。

 味覚はなくなってしまって、もう料理人にはなれないけど・・・

 またユリカと、ルリちゃんと、そして今度はラピスも加えた四人で暮らす事が、

 あの日々を取り戻すことが出来るかもしれない・・・)

 




















「やあ、テンカワ君。ずいぶんとすっきりした顔になったね〜」


ネルガル会長アカツキナガレは開口一番彼らしいライトな口調で言った。

ここはネルガル月ドック内にある貴賓室だ。

エリナが言った『話しておきたい事』を聞くためである。

アキト達が中に入った時、すでにエリナとイネス、それにアカツキがいた。

落ち目落ち目と言われながらも、それでも地球圏屈指の経済力を未だ保持するネルガルの会長がじきじきに来たのだ。

『ネルガル』にとってなのか、それともアキトの『親友』として来てくれているのか、

どちらにせよこれから話されることは極めて重要性が高いものと考えていいだろう。


「アカツキ、直接会って話すのは久しぶりだな」


「まぁ、座りなよ」


促されるままに高級感のあるソファーに身を沈める。

どこまでも優しく、柔らかく、しかししっかりと二人を受け止めてくれる質感がそのソファーの値段を物語っていた。


「・・・・・・・・・お疲れ様、お兄ちゃん」


「本当に、お疲れ様。テンカワ君」


上から順にイネス、エリナの台詞だ。

ライトなアカツキと違い二人の空気は何故か、重い。


「さて、何から話そうか。

 今日は一日時間をとったからね。いくらでも話すことが出来るよ」


そう言ってエリナ、イネス、アキト、ラピスの順に顔を見て、


「それじゃあテンカワ君。これからどうするか、漠然とでもいいから聞かせてもらえないかな」


まずアキトを指名した。


「・・・・・・・・・・・・とりあえず、時間が欲しい。

 自分のこの気持ちを整理したいんだ。

 だからどこか適当な所に隠れていようと思う。

 だけど、この気持ちに整理がついたら、その時はユリカに会いに行こうと思っている。

 そうしたらユリカにルリちゃん、そして今度はラピスも加えた四人で暮らしていきたい」 


そう言い切ったアキトの目にはもう迷いは無かった。

少し前まではこんな事は考えられなかったであろう。

『テンカワアキト』を捨て、大量殺人者となってしまったことへの負い目、

もし会いに行っても拒絶されるのではないかという猜疑心、

自分だけ幸せになるなんて許せない自虐心・・・、

これら諸々のものがアキトの思考をがんじがらめに固めてしまっていたからだ。

しかし、修羅となってからの自分を、

自分の一番嫌な部分をずっと見続けていた少女が

自分のことを慕ってくれている。

一緒にいてくれる。

このことがアキトの心の枷を取り外した。

人を心から信頼するという事を思い出したのだ。


「そうかい、そいつは良かった」


アカツキはいつも以上に軽い口調で話し続けた。


「それじゃあこっちからも伝えておかなくちゃならないことがあるから言うね。

 ・・・・・・・・・イネス君」


イネスは名前を呼ばれた瞬間びくりと肩を震わせた。


「ユリカ君の身体の検査の結果を説・・・解説してくれないかな」


イネスはしばらく黙って俯いていたが、やがて意を決したように顔を上げた。


「いい、お兄ちゃん。これから私が言う事は全て真実よ。

 何を言っても落ち着いていてね」


イネスの言葉にアキトは眉根を寄せる。

何とも言えない不安が腹の底から湧き上がってきた。

ここから先は聞きたくない、ふとそんな衝動に駆られてしまう。

が、そんなわけにも行かない。

アキトは沈黙をもってイネスに先を促した。


「検査の結果、命に別状は無いわ。
 
 それどころかお兄ちゃんの時と違って何の後遺症も無いし、

 身体のほうにもほとんど異常は無かったわ。ただ・・・・・・・」

 
イネスにしては簡潔すぎるほどの解説はそこで区切られる。

彼女の顔には未だかつて彼女がした事のないありとあらゆるマイナスの感情を混ぜたような表情が貼り付けてあった。

怒り、後悔、躊躇い、恐怖、悲哀、無力感、そして、絶望・・・。


―――短く、けれど気が遠くなるように長い静寂。


イネスの沈黙は、これから話す内容がアキトにとって不快なためだけではない。

もちろんそれもあるが、イネスの沈黙の本当の理由は、彼女にしては本当に珍しい事なのだが、


恐怖なのだ。


今から言う自分の言葉が目の前の青年を、ここ何年も見ていないような晴れ晴れした顔の青年の心を、

また誰も寄せ付けない奈落の底へと戻す事になる。

その恐怖が強気なイネスをして話すことを不可能にしていた。


「ただ・・・なんだ。ユリカの身体に何があったんだ」


アキトもイネスの表情を読み取ったのか、

はやる気持ちを無理やり押し込めてゆっくりと問いかける。

しかし、その瞳は鋭く、『嘘は決して許さない』、口には出さないがそう雄弁に物語っていた。


「・・・艦長の身体にあった異変は二つ。

 一つはオペレーター用のナノマシンが注入されていた事。

 でも、さっきも言ったとおり、お兄ちゃんの時と違って身体に異常をきたすほどではなかったわ。

 そして二つ目は・・・・・・」


ゴクリ、と喉を鳴らす音が聞こえる。

誰も何も喋らない、肌を切るような沈黙の中、その音は妙に大きく響いた。


「艦長が・・・・・・妊娠していたという事よ」


絶句した。

アキトはユリカと行為に及んだ事は無い。

共に暮らしていたころも、『そういうことは晴れて夫婦になってから』、というユリカの意思を尊重したためだ。

だから、アキトが父親なのではない。

アキトが父親では無いという事は、つまり、そういうことだ。

イネスの言葉を理解するほどにある感情がじわりじわりとアキトの心を侵食する。

つい先日捨てたはずの、捨てたと思ったはずのドス黒い感情である。

顔に彼が猛る時の証拠である光の筋が浮かび上がった。


「ヤマサキ、か」


「・・・ええ」


二年前に戻ってしまった彼の表情にイネスは耐え難きを忍ぶかのように目を閉じて答えた。

アキトは予測していたのか、その答えに対して表情を変えず、代わりに無言で立ち上がった。


「待ちなさいっ、一体何をする気!?」


「五月蝿い、黙れ」


エリナの抗議はこの一言で終わらされた。

その言葉は彼を知るもの全てが信じていない、『黒い王子様』の口調であった。

今まで、彼はどんなに火星の後継者を恨み、殺意を抱いたとしても、

決してイネスやエリナ、アカツキ達に対してその思いをぶつけた事はなかった。

そのアキトが初めてその底なしの暗闇をぶつけたのだ。

どろりとしたものが部屋中に充満する。

あまりに濃密なそれは、空気自体が変質したような錯覚に陥らせた。

免疫の無いイネスやエリナは心臓を鷲掴みにされたような恐怖にただただ呼吸を荒くするだけであった。


「おやおや、怖いね〜。

 でも、今ここを出て行くということはネルガルの意思に反している。

 つまりネルガルと手を切るということだよ」


ただ一人動く事のできた男、アカツキはアキトの殺気を全身に浴びながらもなお飄然と話してくる。

いや、これは脅しか。

体中にガタが来ているアキトにとってはイネスの治療が不可欠である。

その治療を打ち切るという事は事実上の死刑宣告である。


「分かった。ブラックサレナとユーチャリスはお前らに返そう」


「それだけじゃないよ。

 もちろんラピス君も返してもらうからね」


「・・・・・・分かった」


今まで静観を決め込んでいたラピスがこの言葉に反応する。

金色の瞳を大きく見開き、アキトの顔を覗き込んだ。


「アキト・・・もう私のことはどうでもいいの?

 アキトについていっちゃだめなの?

 それとも、もう・・・・・・私は必要ないの?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


無言のまま見つめてくるアキトの目の前でラピスの表情が歪んだ。

見る見るうちにその金色の瞳に涙が溜まり、そして流れ落ちる。

ラピスはそのままゆっくりと近づき、渾身の力でしがみついた。

抱きつく、のではない。

それは溺れた者が差し伸べられた救いの手にすがるかのような動きだった。


「行かないで・・・、行かないで・・・、行かないで・・・、行かないで・・・、行かないで・・・・・・・・」


針の飛んでしまったレコードのようにただひたすらに懇願するラピス。

その語気は悲しいまでに、弱い。

彼女は何を言っても無駄だという事をリンクを通して悟ってしまった。

けれど、その価値観の全てをアキトに依存しているようなラピスにとって、

それは世界の全てが壊れてしまうかのように感じているだろう。

その想いが彼女に無駄な抵抗を強いている。

しかし、今のアキトはひたすらに無慈悲であった。


「・・・ラピス、すまない」


アキトは無理やりラピスを引き離すと、素早く踵を返し、部屋を飛び出した。

地下ドックを進む足取りは無意識に速くなる。

イネスから、エリナから、アカツキから、そしてラピスから一刻も早く逃れたいかのように。

いや、アキトが最も逃れたかったのはアキト自身の心からかもしれない・・・・・・。




















パチン・・・チャ・・・ゴト・・・カチ・・・



分解して部品を一つ一つ確認していく。


コト・・・コト・・・コト・・・コト・・・


銃弾を一つ一つ確認する。


チャッ・・・チャッ・・・チャッ・・・チャッ・・・


一発づつ装填していく。

スタンドライトだけの薄暗い部屋でアキトは愛銃であるコルトパイソン改を手入れする。

ブラスターが圧倒的に主流を占める中、アキトは頑なにリボルバーにこだわった。

どうしても前時代的なイメージが拭えないリボルバーであったが、

その簡単なつくりから、発射の確実さ、堅牢性、耐久性などの信頼性は未だ高く、

堅実な性格のアキトはそこが無性に気に入ってしまったのだ。


(く、くくく、くくくくくくくく。

 上等だよ、ヤマサキ。

 今すぐ殺しに行ってやるから待っていやがれ)


引きつった笑みを浮かべつつ、ヤマサキの顔を吹き飛ばすために銃の手入れを丹念に続ける。

ふと、銃に映った自分の顔が見える。


(所詮、人殺しは死ぬまで人殺しか・・・・・・。

 過去という鎖からは誰も逃れられない。

 一度堕ちた人間はもう這い上がる事は出来ない。

 奇麗事の入る隙なんか無い。

 ・・・元に戻れるかもしれないとは、我ながらずいぶんとバカな考えだったな)


銃に映った自分の顔がひどく歪んで見えたのは、鏡面が曲がっていたからだけではないだろう・・・。
















目の前の光にヤマサキヨシオは思考を止めた。

彼の考えていたこと――主に倫理観や人道、人間の尊厳と言った単語をまったく省みない

A級ジャンパーの短期間での「製造」である――から興味を目の前の光に移す。

ここは日本の連合宇宙軍極東刑務所の独房である。

彼はA級戦犯として統合軍ではなく、連合宇宙軍によって捕まり、

ここで一月後の裁判を待っている状態であった。

だが裁判とは名ばかりの、さながら宗教裁判のようなものである。

連合宇宙軍は自らの風体のため、統合軍との関係のため、ヤマサキの死刑をすでに決定していた。

そのままでも一月後には無くなる命。

しかし、その残り短い命をさらに短くするための来訪者だ。

それは虹色の光の中から現れ、漆黒の衣を身にまとい、

自らはその衣を凌駕する奈落の暗さを漂わせる一人の青年であった。


「そろそろ、来る頃じゃないかと思っていたよ」


ヤマサキは普段通りの、柔和な笑みを浮かべながらそう言った。


「俺が来た理由は分かっているな?分かっているなら・・・死ね」


アキトは怒気と狂気を織り交ぜた気を発しながらヤマサキに銃口を向ける。


「あははは、怖いな〜。いきなり殺すときたか。
 
 でもね、聞きたくない?僕がお姫様にあんな事をした訳を」 
 

ヤマサキは朗らかに笑いながら両手を挙げる。

アキトはすぐにでも頭を吹き飛ばしたいという衝動に支配されながらも一呼吸置いて自らを御した。

精神的に追い詰められていたアキトは救いを求めていた。

それが、例えヤマサキの口からだとしても・・・。

もしもヤマサキに正当な理由があるとしたら、

例えば草壁に強要されたとか、そんな理由があるとしたら、幾ばくかはユリカも救われる。

アキトはそう考えていた。


「言いたい事があるならさっさと言え。殺す前に聞いておいてやる」


銃口はヤマサキにロックしたまま先を促す。

その言葉にヤマサキは笑みを深くした。


「心の保険、かな?

 正直言って草壁さんの計画って科学者の僕が見ても分かるくらい穴だらけだったんだよ。

 ま、僕にとっては好きな研究を好きなだけさせてくれる良い人だったんだけどね。

 それで計画の途中から、二月の半ば位だったかな、

 それ位からこのクーデターは失敗するんじゃないかなーって思うようになっちゃったんだ。

 そう思うとさ、癪じゃない?

 僕らはみんな殺されるか高い塀の中にいるって言うのに、君たちは家族揃って幸せをエンジョイしてるんだよ。

 だからイタチの最後っ屁って言うのかな?

 最後の抵抗って言うのをしてみました。

 その顔を見る限りは大・成・功って感じだね」


そう言い終わったヤマサキの顔は思い切り楽しそうだった。

まるで子供が悪戯を成功させた時にするような顔である。

いや、ヤマサキにとっては大差ないのかもしれない。

この男は遊んでいるだけなのだ。とても無邪気に。

アキトの身体を弄くった時も、ユリカを孕ませた時も。


「つまり・・・あいつは、ユリカはそんな下らない事の為にお前に孕まされたという事か?」


理性を失いそうな激情の中、アキトは辛うじてその言葉だけをつむぎだした。

ヤマサキに向けられている銃口はヤマサキに対する怒りか、護れなかった自分に対する怒りか、震えている。

対するヤマサキはアキトの反応を見て満足したのか、ますますその笑みを深め、そして饒舌になっていった。


「あぁ、安心していいよ。

 別に僕と交わっちゃったわけじゃないから。

 その時にちょうど興味があったものに『人は「膜」を破らないで受精できるのか』ってのがあってね。

 まったく何の役にも立たないことなんだけど、やっちゃった。

 やっぱり人間、自分のやりたい事をするのが一番。

 それが探究心ってもんだよ」


「・・・めろ・・・・・・も・・・いい・・・・・」 


「でも苦労したんだよ〜。予定日をクリスマスにするのって。

 僕の子供が生まれるんだからやっぱり一年に一度の奇跡の起きる日にしなくっちゃ。

 ああ、そうするとクリスマスに処女懐胎って訳か。

 イエス・キリストのようだね〜。

 もっとも、生まれてくるのは神の子ではなく僕の子なんだけどね、あははははははははははははは」


「もういい、やめろ!!」


アキトはそう叫ぶが早く銃を放り投げ、一瞬でヤマサキとの間合いを詰めて胸倉を掴んだ。


「貴様の言いたい事はよく分かった。

 一撃では終わらせない。じっくりと地獄を見せてやる!!」


引きつった笑みに充血した目でヤマサキを壁に押し付けて、有らん限りの力を込める。

ギリッとヤマサキの骨が悲鳴を上げた。


「あいたたたたたた。

 も〜、乱暴だなぁ〜。

 そんなんじゃ女の子に嫌われちゃうよ?

 そんな悪い子には・・・お仕置きだ!」


「なっ!?」 


そう言ってヤマサキは手を振り上げる。

その手は予想以上に早い。

アキトは咄嗟の事にそれを避け切れなかった。


カランッ


アキトの目を覆っていたバイザーが飛ばされた。

アキトのバイザーは特別製である。

五感のほとんどを失ったアキトの感覚補助として作られたのだ。

つまり、アキトの五感は今、著しく低下している。

無いと言っても良い。

何も見えず、何も聞こえず、そして何も感じない。


「驚いたでしょ?これでも僕も木連男児だからね。

 木連式柔の基礎位はかじらされたんだよ。

 あの頃は拒否不可なんてナンセンスだと思っていたけど、やっていてよかったなぁ〜」


すでに聴覚のないアキトには聞こえていないと分かりつつもヤマサキは話し続け、

ボディービルダーのようにポージングをしている。

そしてアキトに近づき、どこに隠し持っていたのか、それとも独房内で作ったのか特殊繊維の縄を取り出して、

その縄でアキトの両手両足を手馴れた手つきで縛り上げた。


(うんうん、良くなってきたぞ。計画通りだ)


そして、完全に身動きの取れなくなったアキトに再びバイザーを掛けさせた。


「やぁ、気分はどうだい?

 君はちょ〜っと暴れすぎるから拘束させてもらったよ」


ヤマサキはまるで園児を諭す保父さんのような口調でアキトに言った。

が、アキトは五感が戻るや否やヤマサキの咽元目掛けて噛み付こうとした。

どうやら縛られているのは予想済みのようだ。


「おっと、危ない」


しかしヤマサキもアキトの行動を読んでいた。

難なくアキトの攻撃をかわすと頭を足で踏むような形で押さえつけた。


「うおおおおお、殺してやる、殺してやる!!」


手負いの獣のようなアキトの叫びにもヤマサキはまったく動揺しない。

むしろアキトが壊れていくのを見て、喜んでいる節がある。


「少しはおとなしくしてよ。僕は君とお話が―――」


「うおおおおお、殺してやる、殺してやるぞぉ!!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ヤマサキは少し眉根を寄せて不愉快そうな顔をすると、


「えい」


と言ってアキトの頭を踏んでいる足に力を込めた。


「が、ああっ!?」


突然の出来事にアキトの抵抗が一瞬弱まる。

その隙にアキトの無防備な腹を思い切り蹴り上げた。

アキトは低い放物線を描いて飛んでゆき、そのまま転がって壁にぶつかる。

さらにヤマサキは再びアキトに上を向かせ、トドメとばかりに渾身の踏み下ろしを先ほどの蹴りの位置と寸分違わぬ場所に決めた。


「ぐは、がは、あ、あ、あ・・・」


「木連式柔の技の一つ、稲妻落とし。

 少しやりすぎちゃったかもしれないけど君が悪いんだよ。

 人の話はちゃんと聞きましょうねって学校で習わなかったの?」


アキトは予想もしないヤマサキの鋭い蹴りの威力にただもがくだけである。


(畜生、畜生、畜生、畜生・・・)


アキトは地獄の苦しみの中、己の油断が招いたこの事態と、

バイザー一つ獲られただけで役立たずの木偶になってしまうこの身体がひたすら悔しかった。


「さ〜て、アキト君もおとなしくなってくれたことだし、

 もう少しお話をしようか」


ヤマサキは再びアキトの苦悩にまったく気づかないで、

いや、気づいてはいるが気づかない素振りでさっきまでと同じく飄々とした口調で話し始めた。


「そういえば今の君の殺気、凄かったね〜。

 思わず君がコロニーに攻めてきた時のことを思い出しちゃったよ。

 あの時みたいに・・・たぎったかい?

 人を殺す事に快楽を覚えたかい?」


「なっ、そんな訳―――」


「そんな訳無い、かい?

 それは嘘だね。

 僕は君の事をずっと見てきたんだ。

 ウワツツ、ホスセリ、タカマガ、シラヒメ、そしてアマテラス。

 あの時の君も今と同じように良い顔をしていたよ。

 何故って顔をしているね。

 理由は、君が僕にとって最高のパートナーだったからだよ」


「ちっ、ふざけるな!!」


アキトは腹の痛みも忘れて吠えた。

しかし、吠える事しかできないアキトをヤマサキは笑いながら見下し、

そしてまた園児を諭すような口調で話し続けた。


「ふざけてなんかいないよぉ。

 良いかい。科学者と実験体というのはパートナーなんだ。

 どんな理論を思いついたとしても、実験ができなくては机上の空論だからね。

 だから科学者にとって実験体はとっても大切なものなんだ。

 特に君は素晴らしかった。

 僕が出会った中では群を抜いて優秀な実験体だったよ。

 何しろどんな実験をしても死ぬ事がなかったんだからね。

 だから君が奪われたと知ったときにはショックだったな。

 それから先はどんな研究をしても消化不良でね。

 君を実験した時の感触がまだ忘れられないんだ。

 分からないかな?この気持ち」


「分かる訳無いだろう。

 そんな、人を人とも思わない考え方など・・・」


アキトはヤマサキに最大級の殺気をぶつけ続ける。

例え四肢が動かぬと分かっていても、常人ならば5秒と持たずに気を失っているだろう。

しかしヤマサキには小指の先ほどの効果も見られない。

それはヤマサキという人間がこういうものに対して不感症なのか、

それとも人並みはずれた胆力の持ち主なのか。


「そうかな、僕と君にどれだけの違いがあるって言うんだい?

 君のコロニーを攻める時の顔。

 あれは間違いなく悦んでいる顔だ。

 君はそれを僕達に復讐が出来る、奥さんを助ける事が出来るって思っていただけかもしれないけど、 

 それだけではないね。

 復讐と言う隠れ蓑を身に着けることで人殺しをする事に対する愉悦が見えなくなっていただけなんだよ」


「違う!!」


アキトの叫びに対してヤマサキは目を細める。

そしてことさらゆっくりと、確認するかのように話し始めた。


「本当に、そう言えるのかい?

 君は人を殺す時に本当に快楽を感じなかったと言えるのかい?

 少し前まで有った命を自分の意思で摘み取る事で征服欲を満たした事は?

 人の生き血をランの様に香しいと思った事は?

 血の朱を極上の漆の様に美しいと思った事は?」  

  
「五月蝿い!五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!」


心当たりがあったのか、アキトは癇癪を起こした。

ヤマサキはそんなアキトをうつ伏せの状態にして、

落ち着かせるように後ろ手に縛られた手をそっと触り、そして耳元で囁いた。


「確かに僕の手は沢山の人間の血にまみれている。

 だけど、それは君も同じ事だ。

 受け入れるんだ。

 そうすれば罪の意識とやらに悩まされることもなくなる」


「う、五月蝿い・・・」


「何を迷っているんだい?

 そんな事は認めたくないって言うのかい?

 現実を見るんだ。

 ネルガルのシークレットサービスにいた君なら分かるはずだよ。

 殺人、傷害、暴行、脅迫、強姦、猥褻、売春、窃盗、詐欺、強盗、放火、横領・・・

 人は自分の欲望と理性の紙一重のところで暮らしているってことを。

 諦めるんだ。そうすれば楽になれる。

 君はおきれいな人間じゃないんだ」


「う、ああ・・・」


(もう一息、かな?)


「君がここにいることは君の独断なんだろ?

 と、いうことは君を支援してくれていたネルガルとも手を切ったはずだ。

 一緒にいた娘、ラピスちゃんと言ったかな、彼女とももう別れたはずだ。

 つまり、今の君は命以外に何も持っていないんだ。

 これ以上何を失うことがある?」


「俺は・・・、俺は・・・」


アキトの心は揺れていた。

復讐と妻の救出という自らの行動理念すら疑い始めた。

自分は本当に復讐をしたかったのか、ユリカを助けたかったのか、

そのことを口実として人を殺してはいなかったのか、と。

そんなアキトの心を知ってか知らずか、ヤマサキは止めの一言を囁いた。


「認めてしまおうよ。『私は人を殺すのが好きで好きで堪りません』ってね」


パキッ



アキトは自分の中の何かが、とても大切な何かが砕け散るのを感じた。

厳しくも優しかった『父親』、全てを包み込む『母親』、絶対に幸せにすると誓った最愛の『幼馴染』、

妹のように思っていた『少女』、自分を助け出し、牙をくれた『親友』、

こんな自分なんかとリンクをして、ずっと支え続けてくれた『半身』、

料理の、人生の師と仰いだ『女性』、自分の居場所と言えた『故郷』・・・・・・、

修羅になり、何度も捨てようとして、それでも捨てられなかった、

捨てたと自分に言い聞かせておいたものが一つ一つ音を立てて崩れていく。


「分からない・・・、俺は、俺は・・・・・・」


アキトは虚ろな目で呟き続ける。

視線の先には虚空だけが映り、その焦点は定まっているとは言い難い。


(もういいかな?)


「君にはもう誰との絆も残っていない。

 何の信念も残っていない。

 残っているのは・・・・・・」

 
「俺の命と・・・人を殺したいという欲求・・・・・・?」


アキトがポツリと呟いた言葉にヤマサキは再び歓喜した。

そして、亡霊のようになったアキトの拘束を解いてやる。

今度はいきなりヤマサキに襲い掛かるような事はなかった。

そんな事をする気力ももはや失せたようだ。


「そうだよ。やっと認めてくれたね。

 じゃあ、ちょっとこっちを見て」


ヤマサキはそう言って右のポケットから光る粒を取り出す。

それはアキトの持っていた帰還用CCであった。


「さっき縛る時に抜き取らせてもらったんだけどね。これをこうしちゃう」


ヤマサキは手に持っていたCCを鉄格子のある窓から外へ放り投げた。


「これでもう君はここを出ることができない。

 どんなに君が人を殺したいと思っても獲物は僕しかいない。

 ついでに言ってしまえば、遅くとも明日の朝には君は発見されてしまうだろう。

 そうなれば、最凶のテロリストとして連合宇宙軍に連行されるだろうね。

 君はそこでも人体実験を受ける事になると思うよ。

 断言しても良い。

 君ほど面白い身体を持った人間は二人といない」

 
ヤマサキはさも楽しそうにアキトに死刑宣告を言い渡した。

端から聞いていたらそれはヤマサキがアキトを道連れにしようとしているように見えただろう。

だが、ヤマサキの狙いはそれとは若干異なっていた。


「・・・・・・なら、俺はお前を殺し、そしてこれで俺もお前も身体ごと消えてなくなってやる」


アキトはそう言って懐から高性能小型爆弾を取り出した。

 
(来た来た来たー。最高の結果だよ!やっぱり君は最高の実験体だ!!)


ヤマサキの狙いはアキトの心を完全に掌握する事だった。

実は連合軍の研究に協力するという条件で司法取引が持ち込まれていたのだが、ヤマサキは即座に断っていた。

研究とは言っても、今までのように好き勝手にはできない。

人道やら倫理観やらを考えた研究でなければならない。

そんなものは自分のやりたい研究ではない、そう考えたからだ。

では自分の最後の研究をどんなものにするのか、

ヤマサキの考えはそこに辿り着いた。

そして、それならば身体を弄くり尽くした最高の実験体を、心までも弄くり尽くそうではないか、という結論に至った。

それはこちらからではなく、自らの口から自分は人殺しが好きであると認めさせ、

そして、自らの意思でその命を散らせるという計画であった。

アキトの取り出した爆弾にも、ヤマサキは気付いていたのだが見逃していただけなのだ。

まさにアキトはヤマサキの掌の上で踊り続け、そしてヤマサキの最後の研究もクライマックスを迎えようとしていた。


チャキッ


アキトは放り投げた愛銃を拾ってきてヤマサキの心臓にポイントする。


(う〜ん、僕が認めた最高の実験体の手によって殺される、か。

 まさに科学者冥利に尽きるって奴だね)


ヤマサキは自らの最後に満足し、そして笑いながら目を閉じて最後の時を待った。



































唐突に、何の前触れもなく、ヤマサキの計画は崩れ去った。

何時まで経っても最後の審判が下らない事を不審に思ったヤマサキが薄目をあけてアキトを見ると、

何者かが自分とアキトとの間を遮るように立っているのが見える。

ヤマサキの方からではその後ろ姿しか見えなかったが、彼には見覚えがあった。

腰まで伸びる艶やかな黒髪、

すらりと伸びた手足、

後ろから見ても嫌でも分かる見事なプロポーション・・・


「お姫・・・様?」


見間違えるはずがない。

目の前の女性は彼がひたすら研究を重ねた女性、ミスマルユリカだったのだから。


「ユリ・・カ・・・?」


アキトの虚ろだった瞳に生気が戻る。

だがしかし、それは逢瀬の喜びよりも今の自分を見て欲しくないという恥辱と、

今度こそ拒絶されるという強い絶望に彩られていた。


「やっと、やっと会えたね。アキト・・・」


ユリカはゆっくりと、今までの事を思い返しながら言葉をつむぎ始めた。


「エリナさんからCCをもらって、ラピスちゃんからここのイメージを送ってもらって、

 またみんなに助けてもらって・・・やっとアキトに会えた」


感極まったのかその大きな黒い瞳に涙を浮かべ、そしてアキトの方へと近づいていった。

だが、アキトはユリカが近づくに連れて一歩、また一歩と後ずさってしまう。


「う、ああ、来るな・・・、来ないでくれ・・・・・・」


アキトは弱々しくそう呟き首を振った。

それは母親に叱られた子供のような仕草であった。

ユリカはそれを見てくすりと笑い、そしてアキトに向かって両手を広げる。


「アキト・・・、こっちにおいでよ。また一緒に暮らそうよ」


その微笑みはまさに聖母のごとき慈愛に満ち溢れていた。

思わず膝を折ってしまいそうになるその微笑。

しかしアキトはそうはしなかった。

彼の心の闇はそれほどまでに深く、

皮肉な事に彼自身もそんな自分を許すことが出来なかった。


「俺には、そんな事は出来ない。帰ってくれ、ユリカ・・・」


下を向いて、苦悩の末に出した答えを口にする。

その顔はユリカとは対照的に苦渋の色に満ちていた。


「アキトは私のために、ずっと頑張ってくれた、

 独りで走り続けてくれた。

 だから・・・もう休んだら?疲れたでしょ?

 良いんだよ、ボロボロになった心を癒しても、

 安らぎを求めても・・・」


「ダメ・・・なんだよ・・・・・・。

 俺にはそんな資格はない・・・。

 知ってるんだろ、俺がどんな事をしてきたのか。

 史上最凶のテロリストとして、罪も無い人達を万単位で殺してきたんだ。

 そんな俺がぬくぬくと幸せと享受するなんて出来るわけが無い。

 だから、もう帰ってくれ・・・。

 そんな目で俺を見ないでくれっ!!」


アキトの瞳には涙が浮かんでいた。

どこまでも不器用で、どうしようもないくらいバカで、

自分を痛めつける事しか出来ない男の涙である。

その表情はどこか達観した感じすらあった。


「そうだよ、その男は咎人なんだ。

 安らげる場所なんて何処にも無いし、して良い筈が無い」


しばし呆然としたヤマサキであったが、

現在の状況を理解すると、またアキトを精神的に追い詰め始めた。

表情こそ笑っているが、その内面は有終の美が飾れなかった怒りと悔しさに歪んでいる。


「しかも復讐のためではなく、自らの快楽のために人を殺しているんだ。

 そのことを彼自身が認めたし、さっきも僕を殺そうとしていたんだよ」


アキトは顔を反らす。

その拳は震えていた。

最愛の女性の前で自分の最も見てもらいたくない部分を暴露され、

そしてそれを否定できない自分の情けなさに。


「あなたがどんなに彼を許したとしても、世間が決して許しはしない。

 過去から逃れる事なんて出来るわけが無いんだ。

 彼が流したその血が激流となって、あなたと彼との仲を流し尽くす」


ヤマサキの言葉にユリカは何を思ったのか窓の方へと歩いていった。

そして備え付けてあった花瓶を足元へ落とす。


ガシャン


花瓶は粉々に砕け散った。

ユリカは砕けた花瓶の欠片を手にとり、

そして自らの手の平を切り裂いた。


「「なっ!?」」


突然の事に驚きを隠せない二人。

たちまちユリカの手からは血が溢れ、その細く長い指を通って血の雫が滴った。

ユリカは呆然としているアキトの手に、その自らの血にまみれた手を絡める。


「人なら・・・私もいっぱい殺しちゃったよ。

 火星の生き残りの人達や木連の軍人さんをいっぱいね。

 私はそのことを後悔してはいない。

 でもね、もっと他にやり方があったんじゃないか、

 こんなに人を殺さなくてもよかったんじゃないかって思う時もあったの。

 そう考え出したら、なんだか自分は何をやってるんだろうって気になって・・・

 私は何のためにナデシコに乗っているんだろうって気になって・・・

 自分のことを黒い染みの様に思うようになっちゃったの。

 でもね、あなたが、アキトが気付かせてくれたのよ。

 時は・・・前にしか進まないってことを。

 だから人も・・・前に進むしかないんだよ。

 例えその先には辛い事しかなくても・・・自分の信じた道を・・・・・・」


そう言ってユリカはアキトの手の平を握る力を緩めた。

普通ならそれで力を入れていないアキトの手はユリカから離れてしまう。

しかし、アキトの手はユリカの手から離れなかった。


「ほら見て。

 血ってね、乾くと接着剤みたいにくっついちゃうんだよ。

 だからもしこの血が私とアキトの仲を流し尽くすと言うなら、  

 それは違うよ。

 この朱い血が、人殺しの証明こそが、私とアキトを結びつける絆となるの。

 それにね、アキトは自分が好きで人を殺したって言ったみたいだけど、それも違うよ。

 アキトはとっても優しかったから・・・、復讐なんて出来ないくらい優しすぎたから・・・、

 だから仮面をかぶっちゃったんだよ。殺人者って言う仮面を・・・」


「嘘だ!詭弁を弄してアキト君を操ろうとしているだろう!!」

 
このままではアキトが立ち直ってしまうと考えたのか、

ヤマサキは自分のことを棚に上げてユリカに反論した。

ユリカはそんなヤマサキの言葉に笑って応える。
 

「嘘じゃないよ。

 ラピスちゃんが、私の知らないアキトをずっと見続けてきたアキトの半身が私に教えてくれたの。

 アキトは苦しんでるって・・・、復讐をして悦んでいる様に見えても、実はそんな自分が一番嫌いなんだって・・・。 

 もしもアキトが本当に人を殺す事が好きな人なら、

 多分ラピスちゃんはアキトから離れていったはず・・・。

 でもラピスちゃんは決してアキトから離れなかった。

 ずっとアキトを支え続けてくれた。

 そのことが、アキトは変わってないっていう証拠だよ」


そう言ってユリカは懐から何かを取り出した。

それはユリカの帰還用CCであった。


「アキト、帰ろうよ・・・。

 ルリちゃんと、ラピスちゃんと、ナデシコの皆の所へ・・・」


ユリカは再びアキトに対して微笑んだ。

その微笑みはぞっとするくらい綺麗で、

その声は全てを包み込むように暖かった。

アキトはしばしユリカの顔を見つめてから、目をつぶって顎を上げる。


(ああ・・・。俺のしてきた事は無駄じゃなかった。

 この笑顔のために俺は頑張ってきたんだ・・・。

 確かに、人として間違った手段だったかもしれない。

 でも、それでも、良かった・・・。

 本当に、良かった・・・・・・)


アキトは目を開けて、そしてユリカからCCを受け取った。

二人の周りを虹色の光が包み込む。

ジャンプフィールドが発生したのだ。


「ヤマサキ。俺は貴様の事も自分の事も許してはいない。

 でも自分も含めてこれ以上人を殺そうとは思わない。

 だから・・・俺は生きるよ。 

 自分を許せる日まで、贖いの人生を。

 それはとても辛い日々かもしれない。

 もしかしたら今ここで死んでしまったほうが楽なのかもしれない。

 でも、こいつとなら・・・もう道を間違えることは無い」


アキトはそう言ってユリカを抱きしめた。

ユリカも嬉しそうにアキトを抱き返し、
 
そしてアキトに抱かれながらも器用に頭だけ曲げてヤマサキの方を向く。


「ヤマサキさん。

 私もあなたのことを許せないんですけど、赤ちゃんは産もうと思います。

 イネスさんの話によると、アキトってもう赤ちゃん作れない身体なんですって。

 だから私たちの子供として育てちゃいます。

 あっ、でもエッチは出来るみたいだから帰ったらたくさんしようね」


「なっ、バカ。何言ってんだ、こんな場面で」


アキトは顔を真っ赤にして、ユリカはそれを見ながら笑う、

実に幸せそうな残像を残して二人は跳んだ。

ヤマサキはしばし呆然としていたが、やがてその場にへたり込む。


「参ったなぁ、さすがお姫様だ。

 今更ながら死ぬのが惜しくなってきたよ・・・」


そのまま大の字になって大きく伸びをする。

その顔は最後の実験が完全に失敗に終わったというのに何故か清々しかった。






















そして、時は流れて・・・
























コンコン


「ど〜ぞ〜」


扉を叩く音にヤマサキは顔も上げずに応える。

その手には綺麗な琥珀色の液体がビーカーの中で揺れていた。

ここは連合宇宙軍技術開発局第七研究室である。

今現在、ヤマサキはここの室長、といっても彼独りだが、をしていた。

アキトとユリカが訪れたその翌日、

それまでけんもほろろに断っていた連合軍との司法取引にヤマサキが応じたのだ。

それによりアキトの身体を害していたナノマシンの除去手術が可能となり、

五感の方もほぼ元通りに回復する事が分かった。

ただ、司法取引の際にある条件が追加されたのだが・・・。


「頑張っているかい?」


ヤマサキは眉を持ち上げた。

彼の来客者とは地球権屈指の経済力を誇る大企業、ネルガルの若き会長アカツキナガレその人であったからだ。


「暇なんですか?ネルガルって」


「いやいやそうでもないよ。

 そうでもないけど秘書に仕事押し付けてきたから」


そう言って二人は笑った。

つい先日まで彼らは天敵同士。

とてもじゃないが談笑なんて出来る相手ではなかった。

特にアキトの親友を自負するアカツキには千回殺しても飽き足らない男でもある。

だが、アキト自身が復讐をやめたことと、アキトの五感を元に戻したことから、

彼の中でのヤマサキに対する憎悪は急激に下火となっていた。


「でも人間変われば変わるもんだねぇ。人体実験大好きの君がこんな地味な事をやってるなんて」


ひとしきり笑った後、アカツキはヤマサキの手に持つビーカーを指して言った。

ちなみに中身は低排気ガスの車両用ガソリンだったりする。


「あははは、まぁあの条件を飲んでもらうからには何だってやりますよ」


司法取引の際にヤマサキは減刑の他にもう一つ条件を出していた。

それは『ミスマルユリカにもう一度会わせてくれ』というものである。

如何に司法取引をしたといっても彼には前科があった。

その彼が極東方面軍提督の一人娘であるユリカと会うことは難しかったのだ。


「あぁ、司法取引の際のアレだね。

 あんな条件を提示するってことはやっぱり君はそうなの?」 


「ええ、そうですよ。ま、僕も男だったって所でしょうか」


恥ずかしそうにぽりぽりと頬を掻くヤマサキ。

その顔を見ながらアカツキはヤマサキの今後を自らの経験と照らし合わせ、

心の中で盛大に溜め息をついた。


「難しいと思うよ、あの二人の間に入るのは。

 実を言うと僕も以前挑戦して失敗したんだよね」


アカツキの苦笑いまじりの言葉にヤマサキは満面の笑みで返す。


「わかってますって。でもね、昔から言うでしょ?『父は強し』って」

































後書き


はじめまして、鴇(とき)と申します。

今回はSS初挑戦となる拙作を読んでくださいまして本当にありがとうございました。

ただ内容の方がはじめに書いた通りかなり痛かったかと。

何が痛かったってそりゃ文章の下手さが・・・(ゲフ)

当初この話を思いついた時は実は一月の初めだったりするんですよ。

インフルエンザで40度の熱を出しながら朦朧とした頭で思いついた本作。

まともな頭で書いている時にやばいかなー、これって思いました。

それにしても書くのが遅かったです。

イメージは頭に浮かぶのですがそれを文章にする難しさを改めて思い知りました。

進行具合の遅さは某首相の構造改革に匹敵するでしょう。

ただこんなものを書いておいてなんなんですが、実は私はギャグ作家志望なんですよ。

うふふって笑えるようなほのぼの系や、あははって笑えるようなギャグを書きたいのですが、

頭に浮かんでくるのはイネスさんの怪しい薬によって

うふふふふふふふふふ、オクレ兄さぁ〜んって嫌な笑い方をするようなものしか浮かびませんでした。

むぅ。


ATTENTION!!

ここから先はネタバレを多数含みます。
もしもこちらを先に見ている方は、出来れば本編を見てからにしてください。


補足

有難いことに『Alive』を見てくれる方が何人かいてくれまして、

いろいろと私の力不足により伝わらなかったことが分かりました。

そこで、そのことも含めてここで説明させていただきます。

・ヤマサキの態度

はじめはとても強気だったヤマサキ。

だけどユリカが来てからは一転してヘボキャラになってしまってます。

これは私のヤマサキの受け止め方が他の人と少し?ズレているところから来ています。

私の受け止めたヤマサキはとてもとても純粋なんです。

ただ、自分の欲望に忠実に、倫理観も道徳も踏み潰して行動します。

ちょうど善悪の区別がよく分からない、子供のようなものだと思っていただければ。

子供は純粋で無垢なだけに行動にも思慮を含まないことが多く、

平気で残忍な行動も時としてとってしまうものですから・・・。

笑いながら蝶の羽をむしる行為なんかが良い例じゃないかと。

で、何故ヘボキャラになってしまったかと言いますと、行動を極力子供っぽくしてみた所こうなりました。

ユリカ登場後のヤマサキは一言で言ってしまえば『お気に入りのおもちゃを取り上げられた子供』です。

子供ゆえにすぐにムキになって反論し、そしてそれが上手くいかなくなると癇癪を起こす、

そんな子供っぽさが伝わってくれると嬉しかったんですが、なかなか上手くはいきませんね。

むぅ。


・ヤマサキの今後

まず、エンディングの時点では改心はしていません(笑)

と、言うよりも悪いことをしたという自覚がありません。

上述のとおり、自分の欲望に忠実に、今度はユリカに会おうとしているだけです。

変われるかどうかは今後次第ですね。



それでは管理人様、代理人様、このようなKlezより性質の悪い拙作を載せていただきありがとうございました。

読んで下さった皆様(っているのか?)、改めて御礼申し上げます。

少しでも面白いと思ってくださればこれ幸いです。



管理人の感想
鴇さんからの投稿です。
しかし、初投稿ながら強烈な作品でしたね(苦笑)
まさか、ユリカがああなるとは・・・確かにある意味ダークです。
登場キャラは誰も死んではいないのに、心に残る暗さがありますね。
ま、最後の最後でユリカが出てくれば、アキトとしてもどうしようもないですか(苦笑)
それでは、鴇さん投稿有難う御座いました!!