「私がナデシコBに……ですか?」

「うむ。君の成績は宇宙軍の中でもピカ一でな。艦長候補生としてナデシコBへ行ってもらいたい」

「わかりました。拝命いたします」

 敬礼をして目の前にだされた書類に目を通しながらシオンは内心複雑な心境だった。ナデシコへ配属され
ることは狙いどうりだが、艦長候補生として乗艦するとは思ってもみなかった。

(補充パイロットとして配属されると思っていたのですが……やはり先のことはわからないものですね)

「シオン君、聞いているのかね!?」

「ええ、勿論聞いていますよ。ミスマル総司令」

 いきなりミスマル・コウイチロウの顔が目前までせまり、内心の驚きを顔にはださずに平静を保つ。

「そういえば、初代ナデシコ艦長は総司令の御息女とお聞きしましたが……」

「おおう! よくぞ聞いてくれた!! 娘のユリカがナデシコに乗ったのは…………」

 話を最後まで聞かずに、聞いてもいない昔のことを喋りだすコウイチロウを尻目にまた書類へと目を移す
。『ホシノ・ルリ』その顔写真を見て、アキトのことを思い出す。彼の義妹で守るべき大事な『家族』。

 チャルメラを吹き、裕福とは言えない生活をしながらも幸せな毎日を過ごしていたあの頃。その光景が脳
裏に浮かぶが、それはもう自分が持つ意味の無くなった記憶だ。アキトが生きていたのだから……

「シオン君、聞いているのかね!?」

「ええ、勿論聞いていますよ。ミスマル総司令」

 先程のように顔を近づけてきたコウイチロウに先刻と同じ答えを返し、再び昔話───主に娘ことについ
て───を語りだすコウイチロウを無視して、部屋に飾ってあった初代ナデシコのメンバーの集合写真を見
る。そこには、幸せな笑顔を浮かべるテンカワ・アキトの姿があった。

(必ず……必ず捕まえてみせますよ。山崎……)

「聞いているのかね!?」

 再びコウイチロウの顔が目前に迫る。今度は唇が触れ合うか否かの距離だった……



 機動戦艦ナデシコ ANOTHER MISSION 第二話


「あれがナデシコB……ですか」

 スペースシャトルの窓から見えるナデシコBを見て思わず呟く。白と青の二色で染められたナデシコBは、宇宙空間に咲く花の印象を与えた。

 ハッチが開き、いよいよナデシコBへと着艦する。シャトルを降りようとすると、パイロットに呼び止められて何かが入った袋を渡された。

「これは一体何ですか?」

「我々からの餞別だ。生きて……帰ってこいよ」

「は? ちょっとそれはどういう……」

 全てを言い終わる前にドアは閉じ、少しの時間乗艦していたシャトルは月ドックへと帰っていった。疑問に思って袋を開けてみると中には大量の薬が入っていて、胃薬と頭痛薬が多めにある。

 何故こんな物が餞別なのかわからず考えていると、通路から一人の男性が現れ声をかけてきた。

「いやいや、ナデシコBへようこそ。貴方が艦長候補生ですかな?」

「シオン・ツワブキと申します。色々とご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いいたします」

「ええ、こちらこそ。私の名前はプロスペクターと申します。プロスと呼んでいただければ結構です」

 挨拶とともに何故かだされた名詞を受け取りながら、ブリッチへの案内を受ける。到着するまでに、艦内
専用のコミュニケの扱い方を教わる。

 その他にも艦内の勤務時間やお風呂場の使用時間など、戦艦とは無縁ばかりのものの説明受ける。やはり色々な意味で変わった戦艦である。

「ここがみなさんがお待ちかねのブリッチですよ」

 ドアが開き、プロスペクターに先を促されブリッチへ入った瞬間に警戒を知らせるアラームが鳴り響く。

「ボース粒子増大中!」

「前方に重力波反応、敵艦隊ボソンアウトしました」

「敵艦数は不明!」

「どうしますか? 艦長」

 いきなり戦闘指揮を任せられ、少し混乱してしまったがここで取り乱すわけにはいかない。艦長席に座り状況を確認する。彼等を信用しない訳ではないが、シオンは自分自身の目で確かめないと行動は起さない事にしている。

「間もなく戦闘宙域に入ります」

「敵の識別は終わりましたか?」

「識別完了しました。カトンボ1隻、その後方にはエステバリス2機を確認!」

 ウインドウを開き、ナデシコBの兵装を確認する。グラビティーブラスト、ミサイルが十六門装備されている。本来ナデシコBにミサイルは装備されてないはずだが、ここに来る前の書類にミサイルが付けられたと書かれてあったのを思いだした。

「射程に入り次第カトンボにミサイルを発射。その後グラビティーブラストのチャージをお願いします」

「了解! ミサイル発射します!」

 ナデシコBから発射されたミサイルはカトンボへと直撃する。カトンボはディストーションフィールドを展開したが、ミサイルに耐え切れず爆発する。

 爆煙の中から二機のエステバリスが現れ、こちらに一直線に向かってくる。

「グラビティーブラストのチャージは?」

「チャージ完了! いつでも発射OK」

「グラビティーブラスト広域放射」

「了解、発射します」

 逃げる間もなくエステバリスは黒い奔流にのまれ、塵も残さずに霧散する。戦闘は終わりに見えたが、再度警告のアラームと共に少年が緊張した面持ちで報告をする。

「艦後方にボソン反応! ヤンマ二隻がジャンプアウトしてきた!」

「っ!? ヤンマから巨大なエネルギーを感知! グラビティーブラストきます!」

「フィールド張りつつ緊急回避!」

 ヤンマから発せられたグラビティーブラストがナデシコBへと牙を向ける。グラビティーブラストを撃った直後でフィールドの出力は低かったが、性能のおかげか受け流すことに成功する。

「チャージまで後どれくらいかかりますか?」

「先程のグラビティーブラストとフィールドにかなりエネルギーを消費しましたので、後三十秒ほどかかります」

「敵、チャージの姿勢に入りました。オモイカネの予測では二五秒後にグラビティーブラストが発射されます」

 シオンは少し考えた後、訓練シュミレータで一度やってみたかった事、『特攻』を決行することにした。

「フィールド出力を最大にして敵艦へぶつけてください」

「ええ!? 敵艦にぶつけるんですか!?」

 予想してなかった指揮に少年は驚きの声をあげる。普通、艦をぶつける行為は最後の手段か、もしくは玉砕覚悟の時であるから少年の反応は当たり前のことではあるのだが。

「勿論。全速前進、お願いしますよ。あ、チャージも忘れないでくださいね」

 敵もこちらの意図を察したのかこちらにレーザーを発射してくるが、フィールドによって弾かれる。止めることができないと思ったのか、急遽回避行動をとるヤンマだが、時すでに遅くヤンマの片方に特攻を加える。

 お互いに強い衝撃が走り、ナデシコBとヤンマのフィールドが相殺され消滅する。

「ミサイル八門づつヤンマへ発射」

 ナデシコBから発射されたミサイルが、フィールドを失いがら空きとなったヤンマの側面に着弾する。もう一隻のヤンマはミサイルを三発受けたようだが、フィールドに阻まれ撃沈にはいたらなかった。

「グラビティーブラストのチャージは終わりましたか?」

「チャージ完了! いつでも発射OKです!」

「グラビティーブラスト発射」

 ナデシコBから放たれたグラビティーブラストにより、ヤンマはフィールドごと黒い奔流に飲まれた。

『成功』『OK』『クリア』『合格』それらのウインドウが次々と表示されては消え、最後に『よくできました』と表示されたウインドウが大きく表示される。

「オモイカネの総合評価がでました。92点です」

「いやぁ、素晴らしいですな。訓練レベルA3の高難度でこれだけの点数をだすとは。この調子で明日からの模擬戦闘もがんばってくださいよ」

「すげえな。報告書にも書いてあったけど、まさかこれをクリアするとはね〜」

「僕は72点だったのに……」

 模擬戦闘を終え、ブリッチから緊張感が消えうせる。先程の緊迫した雰囲気とは思えないほどの変わりようだ。研修で色々な軍艦を見回ってきたが、これほどシュミレーションに本気で取り組めるなど滅多にいないだろう。

「挨拶がまだでしたね。ホシノ・ルリ少佐です。これからがんばってください」

「タカスギ・サブロウタ大尉。ヨ・ロ・シ・ク♪」

「連合宇宙軍少尉、マキビ・ハリです」

「シオン・ツワブキです。色々とご迷惑をおかけしますが、これからよろしくお願いします」

 お互いの挨拶が済むと、目の前に通信ウインドウが開く。勝気そうな女性とメガネをかけた女性、片方の顔が髪で隠れている女性が語りかけてきた。

「おいおい、俺達の出番はなしかよ!?」

「折角準備してたのにね〜」

「私達は邪魔みたいだから、パジャマを着て寝ましょう…………アハハ」

 どうも先程の模擬戦闘で出番がなかったことが不満らしくて、通信をしたようだ。彼女等にも挨拶をするために格納庫へと向かう。

 これから火星の後継者との戦いの火蓋がきっておとされる。大変な道のりだろうが、アキトが守ろうとした場所でなら見つけられるかもしれない。今まで探し続けてきたものが、ここにはあるかもしれない。

 そんな思いを秘め、シオンの艦長候補生としてのナデシコの生活は始まった。

 余談だが、格納庫へつくと何処からかミサイルが飛んできたり、駄洒落を聞かされ思考が凍りついたり……
シャトルの艦長から貰った薬の意味を理解したシオンであった。 




 あとがき

 ジルです。ここまで私の小説を読んでいただいた方、とても感謝いたします。前回言い忘れてたいました。
これは、DC版の主人公の設定をイジった創作小説です。主人公とアキトが知り合いだったらおもしろいと思って、今回の話を書きました。
周りに聞いてみると、DC版のはつまらないとか聞くのですが、私はとても好きな作品だったりします。
それではまた次回の小説に向けてがんばります! 

 

 

代理人の感想

なるほど、DC版ですか。

今回だと「シオンは優秀」ってことの再確認だけなんでちょっと感想はでませんねー。

と、いうかシオンの紹介だけで終わらせるのはちょっと構成が冗長なのでは。

もっと詰め込むべき要素があると思います。