私立ネルガル学園 〜青春は涙の味〜

第一話
<入学式は運命の出会い?>


 






さて、時の流れとは、本人の意思とは関係なく。
進むものである。

もちろん、アキトとて、その普遍的な事からは逃れられない。
が、しかし。人間、心の準備をする時間が欲しいものである。

俺には、その時間も与えてくれないらしい。

というのも、父からの突然の、ネルガル学園、入学の話が。

入学式の当日の朝である。

アキトは、もう笑うしかなかった・・・
人間、限度をこえると、自然に笑いが出てくるものである

手紙には、こう書かれてあった。

「アキトよ、人生、常に刺激が必要なのだ、
  よって父は、あえて入学式の朝に届くように仕向けた、
    感謝するのだ!!刺激こそ人生のカンフル材だ!!」


アキトはいまだに、父さんを、理解できないでいた・・・・

「父さん・・・僕には分からないよ・・・・」


ともあれ、アキトに他の選択肢は残されていなかった・・・



アキトは父親が残していった、一人には大きすぎる家にカギをかけて。
ネルガル学園に向かい歩き始めた。

さて、ネルガル学園とは、小学校から大学まである
巨大な学園で、近所では有名な学園であった。

アキトも、場所ぐらいは知っており、学園に到着はしたのだが・・・

いかんせん、巨大なために、入学式のある
体育館が何処にあるのか分からず、途方にくれていた。

そこに、ちょうどネルガル学園中学校の生徒らしき少女が見えたので。
俺は体育館の場所を尋ねようと、少女に駆け寄った。

「すいません、僕は新入生なんですけど、体育館の場所わかります」

俺はその時、初めて、少女の顔を見た。

淡い水色の髪、吸い込まれそうな金色の瞳、雪のような肌・・・・

俺は一瞬彼女の後ろに後光が、さしてるかのような感覚を覚えた。

うっ、綺麗だ・・・・。


俺が呆然と少女を見ていると。

「あの、私の顔に何か?」

少女が俺に問い掛けてきた。

いかん、どうやらじっと見つめてしまったらしい。

俺はうろたえた。非常にうろたえた。

頭が働かない、
とっさに、本音が口から出た。

「いや、綺麗だと思って・・・」

俺はいったい何を言ってるんだ!!

「・・・・・・」

少女は無言のまま、ますます顔を紅くして顔を下に向けてしまった。

俺はどうして、いいか分からない。

しまった、こんな事なら、親父に昔、誕生日プレゼントに貰った。

「女心100%!!婦女子との会話、百選!!。」


を真面目に読んでいれば良かった!!

二人の間に沈黙が流れる・・・


はっ、そうだ入学式だ!!

完璧に当初の目的を見失っいる、結構、お馬鹿なアキトである。


「あっ、そうだ、入学式だ。時間が!!」

俺は場所は分からないが、今の沈黙を抜け出すために、駆け出した。

「パサ・・・」

何かがアキトのポケットから落ちた。
それは生徒手帳であった。

少女は生徒手帳を拾い上げた。

「天河アキトさん・・・・」

心なしか少女の顔は紅かった・・・・



アキトは焦っていた。入学式の場所が分からない。

「ちくしょう、何処だ」

その時、俺は同じく新入生らしい人物を見つけた。


「君も新入生かい?」

「おうよ、お前もか?、たっく広すぎるよなこの学園は」

この男子生徒、かなりハイテンションである。

とりあえず、俺は名前を聞くことにした。

「君の名前は?」

「俺か、俺はダイゴウジ・ガイ!!、ガイと呼んでくれ!!」


なにやら、嬉しそうな顔をしながらガイは叫んだ。

常人とは思えない声の大きさだ!!

俺は幽体離脱しかかる。

なんて声だ!!

何やら、アキトから、白い物体が出てくる。

魂が、はみでている危険だ!!

「バサ!!」

なにやら、空から落ちてきた。

・・・・鳩だ・・・・

どうやらガイの声は鳩を気絶させる事が出来るらしい。

某漫画の餓鬼大将のようである。

とりあえず、意識をたもった俺は、名前をなのった。

「俺は天河アキト、アキトでいいよ」

「アキト、お前は入学式の会場を知っているか?」

「嫌、俺も分からないよ。お互いとも、分からずだな」

「う〜ん、どうすっかな〜」

その時である、後ろから高級車が俺達を追いぬいていった。

その、次の瞬間、その高級車のトランクから、巨大な積荷が飛び出してきた。
俺はとっさに避けた。

ゴン!!

何やら、後ろで鈍い音がした。

「きゃ〜大変、大丈夫ですか。怪我はありませんか?」

車から学園の生徒らしき、女子生徒が降りてきた。

「いや、大丈夫だけど、はっ!ガイは?」

「ガイ?周りには誰もいませんよ」

「そんなバカな!俺はガイと一緒にいたぞ」

「ユリカ〜早くしないと遅れるよ〜」

車から、陰の薄そうな、学園の男子生徒が降りてきて、女子生徒に声をかける。
この生徒はユリカと言うらしい。

「ジュン君〜ちょっと待って〜」

「あの〜何処かで、お会いしませんでしたか?」

彼女が俺の顔を不思議そうに眺めてくる。

「嫌、知りませんけど」

俺は、その時は思い出せないでいた。そう、この時は・・・

「そうですか、じゃあ急いでるので、これで、失礼しました」

「あっ、すいません、体育館の位置わかりますか?」

俺はとっさに思い出し。彼女に尋ねた。

「体育館、それなら、そこですよ」

「えっ」

灯台下暗しである。なんと真横だ(気が付けよ!!)

「じゃあ、失礼します」

彼女は去って行った。

「さて、行くか」

俺はいそいで、体育館に向かった。

アキトの、頭の中からはガイの存在は消えていた。

結構、薄情なアキトであった。

ふと、俺が横の植え込みに目をやると、何やら動いている。

俺は不思議に思い。植え込みを覗いた。
何やら、人の形をしている・・・・

その物体はいきなり、立ち上がった!!

俺は驚いて、後ずさりをした。

「いって〜、なんかトランクから飛び出してきたぞ」

その物体はなんと、喋った。

俺はその声で、なんとか物体の正体がガイであると悟った。

「ガイ!!大丈夫なのか・・・・」

俺は、ガイの様子を見てそう問うた。

それも、そのはず、ガイの体は、植え込みがヒイラギだったため。
傷だらけで、積荷との衝突により顔は変形していた・・・

「俺様は無敵なのよ!!」

ガイは平然と答えた。特異体質なのであろうか。

アキトは思った。

しかし、深くは考えないことにした。
世の中、知らないで良い事もある。

「ガイ、体育館の位置がわかったぞ、ここだ」

「おお、ここか。さすがアキト、たよれる仲間!!」

ガイの心の中では、すでにアキトは仲間のようである。

この事にも、俺は深く考えない事にした。

そんな、事でなんとかアキトは入学式を迎えた。


入学式は、順調に進んでいった。

そして、お約束の校長の挨拶である。

わりと、若い校長だ。

「諸君、私は校長のオオサキ シュンだ諸君!!
 この学園に入学したからには、おおいに青春を味わって欲しい!!以上」

なかなか、話の分かりそうな校長である。

次に、生徒会長挨拶である。

「みなさ〜ん!!入学おめでとうございま〜す!!
  私は、生徒会長 ミスマル ユリカで〜す!! ブイ!!

ん!!

あの人は、確か今日の朝の人だ。

着物姿で、可愛らしい姿をしている。

生徒会長だったのか、全然、そんか感じじゃなかったのに。

「うお〜うお〜」

男子生徒から歓声がとぶ。
俺は何で、歓声がおきるのか、分からない。

この時、新入男子生徒のほとんどは、ユリカの姿に、目を奪われた。

その時、俺とユリカさんの目が合った。

「あ〜アキトだ!!アキト!!アキト!!アキト!!」

「さっきは、どうして気が付かない、ふりをするの?」

はっ!!

思い出した!!

アイツは、いや、ユリカは、親父がまだ家に、いた頃。

隣に住んでいた、女の子だ!!

いつも、俺の後をつけまわして。

「アキトは私の事が好き!」

と、連呼して、俺に様々な体験を与えてくれた人物だ。

俺としては、あまり、ありがたくない体験である。

「そうか!!ユリカがあまりにも、美人になってたから、見とれちゃったのね!」

それは、違うぞ!!本当に気が付かなかっただけだ!!

「ユリカ感激〜〜!!、やっぱり、アキトは私の王子様だね!!」

何が、やっぱりなんだ!!何が!!

うっ!!

何やら、周りから、激しい殺気を感じる!!

なんだ、俺が何かしたのか?
いったい、何なんだ?

しかし、俺の頭が、深く考える事を拒否する。

本能が叫んでいる危険だ!!

「あの〜、挨拶を進めないで、いいいのですか?」

俺は、とりあえず、この危険を脱出しようと試みる。

「あ〜アキト、やっぱり、照れてる〜!!」

「もう、アキトと私の仲でしょう、気にしない、気にしない!!」

「それより、アキトは私を追いかけて、入学してくれたのね!!」

「ユリカ感激〜〜!!アキトは私の事が好き!」

うっ、忘れていた。

ユリカは昔から人の話には耳を傾けないのだ。

しかし、どう考えたら俺が照れてる事になるのだ?

状況は、ますます悪化した。

非常に、この状況は、まずい!!

周りの、殺気がUPしている!!

「アキト〜、もてるな〜」

ガイが、俺に話しかけてくる。

頼むから、火に油を注がないでくれ。


はっ、そうだ、校長だ、校長なら。

「校長先生。話を進めないで、よろしいのですか!!」

俺は最後の望みを掛けて、校長先生に問い掛けた。

「私も、詳しく聞きたいな〜」

オオサキ校長は、怪しい笑いを、浮かべながら、答えた。

どうやら、俺に退路は無いようである。

まさに四面楚歌だ。

「ユリカ!!挨拶を進めないと!!」

と、そこに意外な、救世主が現れた。

たしか、あれは朝、ユリカと一緒にいた陰の薄そうな生徒である。

「もう〜いい所なのに〜ジュン君じゃましないでよ〜」

「ユリカ怒るよ、プンプン!!」

やはり、影の薄そうなだけに、発言力も弱かった。

「ユリカ〜〜」

その生徒は、涙を浮かべながら、隅っこのほうで、いじけてしまった。

あわれである。

だれか、俺に救いの手を!!

「校長!!、話を進めないと、新入生諸君も静粛に」

「いいではないか、カズシ、面白そうじゃないか」

どうやら、校長は面白ければ、それでいいようである。

そんな、校長でいいのか?

「良くありません!!」

どうやら、彼は一般的な感情を持っていそうだ。

「アキト〜。あっそうだ!!私が学園の案内をしてあげる!!」

「ユリカ、生徒会長なんだよ!!えっへん!!」

かってにユリカが話を進めている。

もはや、彼女の頭からは入学式は完全に消えていた。

「アキト、さっ行こう!!」

「ちょっ、ユ!ユリカ!!」

アキトは問答無用で引きずられて行く。

「じゃ〜これで、入学式は終わりにしますか」

校長オオサキが、もうどうでもいいかのように、言う。

酒のつまみが、無くなったと言わんばかりの顔である。

それでいいのか校長よ・・・・

ともあれ、アキトの学園生活はスタートした。

 

 

代理人の感想

「よいではないか、よいではないか」

 

・・・・・・・一瞬、シュンが顔を真っ白に塗って扇をあおぐ馬鹿殿様にみえました(爆)。

勿論カズシは胃を痛める家老役(核爆)。