いやーまいったまいった。エステの飛ばし方がわからねーからって無茶しすぎたか?でも上手くごまかせたからいっか。でも今回文珠を使った所為でもう二個しか残ってないんだよなぁ・・・いくら今14個も必要ないからって、もしもの時のことを考えると、もう何個かストック欲しいな・・・

「おい横島。なんでエステで飛べんだよ?」

 ウリバタケさん・・・?もしかして、何かまずかったですか?








GS横島 ナデシコ大作戦!!





第七話 「ファイナルアタック、承認」





 一応言っておくと、ここは格納庫である。


「え、なんでって・・・飛んだほうが囮しやすいし・・・」


「あのな・・・お前が乗ってったエステな、飛べねーんだ。

 ・・・陸戦フレームだから」


「え?りくせん・・・?シャイン王女?」


「そりゃリクセント公国だろ」


 ボケもあっさり返される。


「エステバリスって、空戦用のフレームじゃないと、飛べないらしいんです。

 横島くんはフレームを換装せずに行っちゃったから飛べないはずなのに・・・今度は一体何やったんですか!?」


「もしかして、お前しか知らねぇリミッターとかあるんじゃないだろうな?さあ吐け!吐きやがれ!」


(やべ・・・どうしよう)


 完全な横島の勘違いだったとやっと気付いた。


「あ〜横島さん?ちょっといいですか」


 プロスだ。


「ちょっと待ってくんねーか。今コイツから陸戦で空をどうやって飛んだか聞き出すところなんだからな!」


 ウリバタケに譲ろうとする様子はまったくない。


「ウリバタケさん。ここは見逃してもらえませんか?」


「はぃ!?なんだってそんなこと・・・ネルガルの利益にもなりそうじゃねえか!」


「・・・また、横島くんに何かあるんですか?」


 技術者としての好奇心なのか、ウリバタケのは純粋な探究心のようだ。明乃は心配そうだ。


「・・・そのことも含めて、今は何も聞かないでくれますか?お願いします」


「「・・・・・・」」


 必死にではない。むしろ静かにプロスは二人に頼んだ。


「・・・わかった。

 そこまで言うんなら今は聞かねぇよ」


「ウリバタケさん!?」


「でも時がきたら絶対教えろよ!!」


「はい。それはもう・・・では横島さん、行きましょうか」


「え・・・はい。俺もプロスさんに話すこと、あるッスから」


 二人は格納庫を出て行った。


(横島くん・・・)





 ――――――――――





 二人は無人の廊下で足を止めた。


「で、話なんですが、横島さん。念のために聞きますが、陸戦フレームで空を飛んだもの・・・あれは何ですか?」


 単刀直入だ。


「プロスさんは、心当たりがあるんじゃないスか?」


「あります。まぁ、念のためというやつです。霊能力と一口に言っても、その能力はピンキリありますから」


「で、なんだと思います?」


「ずばり、文珠でしょう。霊力を凝縮したものに念を込めることによって、理論上は何でもできる神の如き能力・・・」


「いろいろ制約があるから、プロスさんが言うほど便利なモンじゃないっスよ。

 ・・・やっぱり有名なんスか?文珠って」


「いえ、それほどでも。

 私は神・魔族から聞いただけですから」


 黙っていようとしていたことはあっさりばれてしまった。というか初めから知っていたようだ。確信がなかっただけで。


「で、むしろこっちが本題なんですが、あなたの平穏のためにも、このことは黙っていた方がよいと思うのですが。

 それに、この能力に依存してしまうとクルーの練度が落ちますからな。せっかく高いお給料を払って雇ったのが無駄になります。

 また、依存されると肝心な時に文珠が無いときに何で今に限ってないんだって横島さんがいわれのない責めを受けるかもしれませんからな」


(プロスさん・・・)


 ちょっと感動した。思えば、この人は経歴不詳の自分を雇ってくれたり、クルーに霊能力のフォローを入れてくれたりと、横島にとってかなりの助けになってくれている。たとえそれがトラブルの種を早めに摘んだだけだとしても。

 そして、形だけだとしても、自分に良くしてくれた人にこの艦を降りたいと言うのは、気が重かった。


「はい。解ったっス。

 もともとこの能力のことは黙っておくつもりでしたし・・・」


「ふむ。そうですか」


「で、俺の話なんスけど・・・」


「おお、そうでした。横島さんの話とは・・・?」





 ――――――――――





 そんな2人を物陰から見つめている影が1つ。メグミだ。何でこんな所にいるのか。トイレだろうか。


「で、むしろこっちが本題・・・


(へ〜。何でもできるんだ。そんな便利な能力を持ってたなんて・・・一足先にブリッジのみんなに教えて上げよっと。

 でも、それにしても・・・)


 ・・・を受けるかもしれませんからな」


 肝心の、文珠のことがばれることによる弊害の所は考え事の所為で聞き取れなかったようだ。


(それにしても横島さん・・・隠し芸同盟に誘おうかな?彼なら資格十分・・・まだ私とプロスさんしかいないし・・・)


 ブリッジに駆けて行くメグミ。プロスの配慮は、いきなり無駄になりそうだった・・・




 ――――――――――





 ふたたび横島&プロス。


「ナデシコから降りたいんスけど」


「だめです」


 0,2秒。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「何でっスか・・・?」


「横島さんこそ、なぜ?」


「俺の最終目標は元の時代に帰ることっス。

 知っての通り、はじめはここを共通点の多い別世界と思ってたんスけど、そうじゃないと解った今、この時代でゆっくりとしている理由はなくなったんスよ」


「ですが、冥界とのチャンネルが完全に閉じられて神・魔族の協力を得られないのに、どうやって時間移動を行なうおつもりで?

 文珠でも十個以上の数を操らなければ正確に時間を超えることは不可能でしょう? でなければとっくに元の時代に帰っているはずですから」


「(何でそんなこと知ってんだろ?)・・・まずは妙神山っス。もうそこに行っても何もないかもしれないっスけど、手がかりぐらいならあるかもしれない・・・

 それに、手がかりがなくてもまだ手はある・・・」


「その手とは?」


「・・・たとえば、人里離れた山奥で、文珠でもなんでも使って、大きな霊力を一定のタイミングで放射します。

 そうすることで神・魔族の誰かが様子を見に来るかもしれない・・・様子を見にきたらそこで事情を説明して、元の世界に返してもらうってやりかたっス。

 ・・・むこうもイレギュラーな俺なんかとっとと何とかしたいと思うでしょうし、プロスさんの言ったことが本当なら、いろいろ戦果がある俺を問答無用で殺したりはしないでしょうし」


「なるほど。ちゃんと考えてはいるようですな。

 しかし、この時代に未練はないんですか? この時代の人・・・例えば、テンカワさんとは仲が宜しいようですが、あっさり別れてしまって良いんですか?」


 こう言えば横島は思いとどまるかもしれないと考えたプロスだったが、


(仲がいい・・・か・・・)


「横島さん?」


「・・・いや、なんでもないっス。確かに未練はあるんスけど・・・やっぱりここを降りることにします」


「でもだめです」


 がくっとこける横島。ここまできたらさすがに許可が出ると思ったのだが・・・


「何でっスか!?」


「契約です。この契約書のここの部分を見てください」


 と、どこから出したのか契約書を取り出して、横島に突きつける。


「・・・(熟読中)・・・つまり、今このままナデシコを降りたら違約金っスか・・・?」


「そういうことです」


 もちろん横島に違約金を払う金などない。


(でも文珠を使えば・・・)


「文珠を使って逃げようとしてるんだったら無駄といっておきましょう。ネルガルのシークレットサービスは優秀ですよ?

 確かに文珠を使ったら逃げられるでしょうが、それは一時凌ぎです。後から後から次がやってきます。

 文珠などすぐになくなるでしょうな」


 まるで抜け忍のようである。


「何でそこまで俺を引き止めようとするんスか!?シークレットサービスまで使って!」


「それは企業秘密です」


 はぐらかした。怪しい。


「さあどうしますか?このままナデシコに残るか、限りなく低い確率に賭けて逃げるか。

 とりあえず、最低火星まではついてきてもらうことになります。それからのことはそのときにということで・・・」


「・・・・・・」


 どうしようもなかった。少なくとも今の横島には。


 そしてその数分後、横島とプロスにとって寝耳に水な出来事が、コミュニケから伝えられることとなった・・・





 ――――――――――





 次の日。
 

 ブリッジに向かっている横島。出前を頼まれたからである。ちなみに、ミナトからオムライス、ルリからチキンライスである。


「しかし、盗み聞きされていたとはね・・・」


 横島は知らないが、プロスに気取られずに盗み聞きできるとはかなりすごいことである。メグミ恐るべし。


「プロスさんが何とか取り成してくれたから助かったけど・・・」


 皆に呼び出されてブリッジに行ったときはえらい騒ぎになった。ユリカなど、「もんじゅって、アキノを男にすることもできるの!?」と言ったぐらいだ。まだ諦めきれないのだろうか。

 3日に一個しか作れないと嘘をついて(今の横島なら一日に一個)、「そんなにアテにできるものでもない」など、横島とプロスは説得にかなりの苦労を要した。そして何とか納得してもらった。疲れたが。


「ちわーす、出前っスー!・・・・・・って、艦長、なんスか、その格好・・・」


「え?着物だよ?」


 そんなもの見れば解る。何でそんな格好をしているかを聞いているのである。


「ミナトさん、一体何が起こってるんスか?」


 オムライスを渡しながら尋ねる。


「さぁ?なんか軍のお偉いさんたちに、地球の回りにあるバリヤーを解除するように頼むらしいけど・・・」


「このままだとOKもらうどころか神経逆撫でしかねないっスよ・・・?」


「私に言われてもねぇ」


 確かに一操舵士にどうこうすることはできない。ナデシコならできる気はするが。


「おい、そこの・・・え〜と」


「ジュンだ。アオイ・ジュン」


「ジュン。副長としてこれでいいと思うのか?」


「(いきなり呼び捨て?)いいと思うわけないだろ!?こんなことしてたらますますユリカの立場が悪くなる・・・」


「じゃあ何で止めないんだ?」


「・・・・・・逆らえないんだ・・・あきらかに間違ってても・・・笑顔のユリカに何か言われたら、全然逆らえない・・・」


「・・・なんか身につまされるな・・・俺も逆らえない人、いたからな〜」


「横島も?」


「ああ・・・艦長とはタイプが違うけど・・・」


「そうか・・・」



 何か友情めいたものが芽生えたかも。


「ちょっと艦長!そんな格好じゃ、偉いさんを怒らせるだけっスよ!」


「え〜どうして〜?可愛いのに」


 ユリカは本気だ。


「いや確かに可愛いとは思いますがね、偉いさんはそういう格好じゃ馬鹿にされたと思いますよ!」


「わたしは軍を敵に回してもかまわない!なぜなら、私はナデシコの艦長だから!そして艦長として、ビッグバリアを無理やり突破してでも火星に向かいます!」


 つまり、ユリカに着物を着るのを止めるという選択肢はないということだろうか。


「(こらあかん・・・)なぁルリちゃん。軍の通信設備をダウンさせることってできる?もちろんこっちが細工したってばれないように」


「できると思いますけど・・・」


「どういうことですかな?横島さん」


「軍の通信設備を故障させれば、

『軍との通信が不可能であったために、仕方なく当初の予定どうりに地球を出発した。ビッグバリアは破壊することとなった。実に遺憾だ』

 ・・・って言えると思うんスよ。後で何かいちゃもんつけられても、知らぬ存ぜぬで通せば、証拠がないからいけると思うんスけど」


「なるほどねー」


「確かに、摩擦が少ないに越したことはありませんな」


 ミナトとプロスから賛成が出る。


「やっぱり隠し芸同盟に・・・ぶつぶつ・・・」


「でも、それじゃーこの着物は披露できないんですかー?」


「軋轢を生むよりマシでしょう」


「でも、横島くんってよくこんなこと思いついたわね?」


「美神さんから見て学んだんスよ。あの人はこういう反則技や裏技が得意だったからなー」


「へえ・・・」


 感心するべきだろうか。


「む〜しょうがないからアキノに見せにいこっと。

 横島さん、アキノ、どこですか?」


「食堂っスけど」


「そうですか。じゃ、プロスさん。アキノに着物見せにいってきまーす!」


「俺も食堂に戻ります」


 横島も出て行く。そして、ルリがミナトに話し掛ける。


「あの、ミナトさん」


「なぁに?ルリルリ」


「食堂につくまで艦長は横島さんから無防備なんじゃないんですか」


「そうかもしれないわねぇ」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「あの、気になりませんか?」


「(そろそろ助け舟だそっかな?)そうね。じゃあちょっと様子見ようか?」


「そうですね」


 答えるなりいそいそと覗く準備をはじめる。


(可愛い〜んだから♪)


 程なくオモイカネから映像が送られてきた。


「・・・別にただ歩いてるだけですね」


「そうね〜。何か話してるみたいだけど」


 ちなみに音声はない。


「何もないまま食堂に着いちゃいましたね」


「あっ、アキノちゃん驚いてる驚いてる」


「あ、横島さんがやっと艦長に襲いかかりました」


 で、明乃から攻撃を食らう。今回は無尽脚から繚乱花の連続技だ。そのうち投げ技や武器攻撃まで出すかもしれない。


「ホウメイさんやホウメイガールズの皆さんにはウケてるみたいです」


「・・・・・・」


「ミナトさん?どうかしたんですか?」


「あ、いつも通りだな〜ってね」


 返事を返したものの、ミナトはなんとなく映像からわずかな引っかかりを感じていた。





 ――――――――――





 横島の部屋。


「は〜ちかれた〜」


 どさりとベッドに倒れこむ。


(今日は疲れた・・・文珠はばれるし、暫くは帰れそうにないし、今日もきつい一発もらったし、ガイはゲキガンガー見ろってうるさいし・・・


「そういやもう、文珠のストック二個しかないんだよな・・・手っ取り早く増やす方法は・・・」


 寝転んだままむ〜と考え込む。その時あるアイディアが浮かんだ。


「あるじゃねーか・・・あの時の方法を使えば・・・」


 あの方法とはなんだろうか。横島は体を起こし、ものすごく真面目な顔つきになる。


「んじゃ、さっそく・・・・・・・・・煩悩全開ーーーーーッ!!!


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!


 なぜなにナデシコ出張版ではないが説明しよう。この技は今までに横島が出会った一定以上の容姿を持つ女性たちの全裸姿を妄想し、急激に煩悩=横島の霊力を増大させるものである。

 説明をしている間にも横島の霊力はどんどん膨れ上がる。だが、この技には横島も気付いていない重大な欠点があったのだ。それは・・・


「あの、横島くん?ノックしたのに返事がなかったけど・・・大丈夫なんですか?」


 明乃だ。ノックの音が聞こえなかったのは、妄想がそれだけ深かったということである。そして・・・


「あ!?明乃ちゃ・・・って・・・」


 ぷしっ


「ぷし?」


「ぶはあああああああああああっ!!!」


 どばーっと横島の鼻から大量の鼻血が噴出する!


「きゃあああああああああ!! よ、よ、よ、よ、横島くん!? 何でそんな鼻血・・・って、ああっ! 耳血までーーーっ!?」


 そう。この技の欠点は、そのコントロールの難しさにある。横島の限界の400%を超える妄想は、常に鼻血の噴出という危険と隣り合わせなのだ。

 このときの横島は、元の時代にいた女性限定で(それでもかなりの人数だったが)妄想を行なっていたが、そこに明乃という妄想に参加していなかった女性の登場により、危ういバランスを保っていた横島の鼻血の堤防はあっさりと決壊してしまったのである。

 そして、400%を超えるほどの激しい妄想は、激しい分だけ鼻血の噴出量が大量だった要因になったのである。耳血も出たし。

 明乃が横島の好みに、顔、スタイル共にストライクゾーンど真ん中だったということも、原因の一つだったのかもしれない。

 そしてもうひとつの欠点、それは失敗した時のリスクである。一つはその出血量。言うまでもなく常人なら出血多量であの世行き間違い無しであろう。横島は何故かひどい貧血を起こした程度のようだが。

 もう一つは、霊力の一時的な減少である。成功すれば一週間分くらいの文珠を生み出せる程の霊力が得られるが、失敗すれば、血と共に流れ出てしまうのか、一週間は文珠が出せなくなる。まぁ、文珠のストックはまだ2個あるから死にはしないだろうが・・・


「えっと、あああっ、と、とにかく医務室ーーー!!」





 ――――――――――





「あれ・・・?」


「おや、目が覚めましたか」


 横島が目を覚ますと、横にプロスの姿が。


「なーんだ、プロスさんか・・・」


「何だとはご挨拶ですな。今は戦闘中ですから、テンカワさんもハルカさんもホシノさんも艦長も来れませんよ」


(何でそこにルリちゃんの名前まで入ってんだ・・・?)


 にぶい。


「あれ・・・?戦闘中ったって、何で明乃ちゃんまで来れないんスか?」


「テンカワさんはエステで戦闘中です。ヤマダさんも出ましたが、いくらなんでも怪我人がデルフィニウム8体を相手にするのはさすがに無茶でしょう」


「でも、明乃ちゃんは素人っスよ!」


「いえいえ、テンカワさんはなかなかのセンスを持っています。このままコック兼パイロットをやってもらいたいぐらいでして」


「・・・コック兼パイロットならオレがやりますよ・・・明乃ちゃんの方が料理上手いし」


「そうですか。でもそれはあなたが決めることではないと思いますが?」


「・・・・・・」


「ま、そのお話はまた今度。そろそろ私も仕事に戻らせてもらいますよ」


「ええ・・・」


 プロスが出て行った。


「・・・・・・」


 そして数分後、横島はプロスを黙って見送ったことを後悔した。


「・・・・・・・・・・・・」


 彼は今、たまらなく暇なことに気付いた。





 ――――――――――





 戦闘終了後の格納庫近くの廊下。


「ふんふ〜ん♪へっへっへ、初戦闘が5機撃墜とは幸先良いぜ!

 とりあえず俺のエステにシールを5枚張らなきゃな・・・!」


 ガイである。彼は撃墜した数だけ、エステにゲキガンシールを貼ろうとしていた。だが、


「うお〜い、ガイ〜」


「お?横島か?なんだ、もう起き上がれるのか?」


「(お前が言うな・・・)いやな?今オレ激しくヒマでさぁ・・・今ならお前のロボットアニメ、見てやれそうな気がするんだよな・・・」


「ホントか!?」


「でも!ゲキガンガー以外で、だ!じゃないと見ない!」


 暇つぶしを求めるくせに贅沢なやつである。


「ゲキガンガー以外で・・・?むぅ、あれが一番名作だと思うんだが・・・

 まあ仕方ない、今日は病人の言うことを聞いてやるか!!」


「んじゃ、いこーぜ・・・」


 けだるげに答える横島。だが彼は、今一人の人間の命を救ったことを知らない・・・まったく当然のことだが。

 ムネタケ一行は、何の妨害も受けずに脱出した・・・





 ――――――――――





「うわああああああっ!!!」


 どしゃあああっ


 巨大なロボットが吹き飛ばされる。


「フン・・・無様だな。未熟な電童のパイロットよ」


 電童と呼ばれたロボットを吹き飛ばしたロボットが言う。


 ふらつきながら立ち上がる電童。だが凱の目からは闘志は失われてはいない。それを示すように、両腕、両足のタービンが激しく回転する。


「く・・・きさま、何者だ!」


「フン、私の名は、アルテア・・・この機体は、騎士王蛇(ナイトおうじゃ)だ」


「騎士王蛇だって・・・?」


「フン・・・バイパードライブ・インストール」


 シュイイイイイン・・・


 騎士王蛇の左腕に蛇のようなものが現れる。


 と、フルフェイスのマスクを身につけた男・・・アルテアは、腕についているバイザーのカードスリットに、なにやらカードを通した。すると一瞬でカードが燃えてなくなり、


『ソードベント』


 バイザーから合成音が響く。

 すると騎士王蛇の右手に剣が現れた。データウェポン・バイパーウィップ(AP5000)のソードベント、ベノサーベル(AP3000)だ。

 躊躇なくベノサーベルを振り下ろすアルテア。だがその前に電童も剣を呼び出していた。


『ソードベント』


 こっちはデータウェポン・ドラゴンフレア(AP5000)の、ドラグセイバー(AP2000)だ。ドラゴンドライブは既にインストール済みだった。

 すんでのところで鍔迫り合いに持ち込む凱こと獅子王凱。だが、剣の腕も体勢的にも彼は圧倒的に不利だった。アルテアは電童の剣を振り払い、電童を地面に叩きつける。

 そしてアルテアは仰向け状態に近い電童に躊躇なく追撃を仕掛ける。


「凱!!」


 オペレーターの命が悲鳴を上げる。


 ガキンッ!


 電童の顔に突き下ろされた切っ先を首を捻ってかわす。

 剣が地面に刺さった隙を見逃さず、手足のタービンを使って地面を滑るように移動し、距離をとった。


「くっ・・・!」


「フン、自分以外の十二体の勇者を下した勇者の王・・・仮面の勇者王、電童の力はこんなものか・・・?

 他の奴らはよほどの雑魚ぞろいだったようだな・・・勇者が聞いて呆れる」


「なんだと・・・!」


「フン・・・敗者を貶められて怒るか・・・?ならばその怒りで、もっとあがいて見せろ!ブルドライブ・インストール!」


 バイパーウィップとベノサーベルが消え、今度は右手にバッファローの角が付いた篭手が現れる。データウェポン・ブルホーン(AP6000)だ。


「!!」


『シュートベント』
『ガードベント』


 両者のアドベントカードがほぼ同時に発動する。

 直後、電童の手に現れたドラグシールド(AP2000)に、ギガランチャー(AP2000)が着弾した。


「くぅっ・・・!」


「ほう、かわしたか。ならばもっとだ!」


 さらにギガランチャーを連発するアルテア。だがやられっぱなしではなかった。今度はドラグシールドを使うまでもなくかわす。


「フン、一度見た攻撃はそうそう当たらんか。さすがに勇者王の字は伊達ではないということか・・・」


「まだこんなものじゃない!それより、お前は何の目的があって俺を倒そうとする!?」


「知りたければ、この危機を退けて見せろ。これをかわしてな」


『ファイナルベント』


「!!」


 ブルホーンにギガランチャーとは比べ物にならないほどの力が集まるのを肌で感じる凱。とっさにドラグシールドを構えつつさらに距離をとる。


 ズギャアアアアアッ!!


 ブルホーンから発射された、圧倒的な破壊の力が電童に襲いかかる!!


「凱ーーーっ!」


(避けられない!?)


 キュゴオオオオオオオオオオン!!


 ドラグシールドで防ぐものの、電童は簡単に吹っ飛ばされた。シールドもこなごなだ。

 地面に落下、倒れこむ。


「・・・フン、他の勇者と戦った傷は癒えてなかったようだな。

 そんな満身創痍ではブルホーンのファイナルベント、エンド・オブ・ワールド(AP7000)を堪えきれなかったのも無理はない。

 ・・・・・・弱くはなかった。だが弱くない程度では、ここで死んでおいた方が幸せだ」


 アルテアと騎士王蛇は、用は終わったとばかりに電童に背を向けた。

 だが・・・


「まだ・・・まだ、終わっちゃいないぜ・・・!」


 なんとか立ち上がる電童。タービンの勢いも衰えていない。


「フン、まだ起き上がる気力があるとはな。だがそのなりで何ができる?」


「何ができるか、今から見せてやる!

 長官!ファイナルアタックを承認してくれぇっ!!」

「しかし、今の君の体ではファイナルアタックに耐えきれない!」


「よしんば耐えられたとしても相手もガードベントがあるでしょうから、一発で撃破できる可能生は2%程度です!」


 猿頭寺も反対の意を示す。


「ゼロじゃないんだろ!?それに、確率なんか単なる目安だ!だったら、結果は撃破できるかできないかの2つだけだ!

 それに、やらなきゃ勝てる可能性は本当にゼロだ!やるしかない!!」


「しかし・・・」


「長官、僕はやらせてみたいと思う・・・」


「しかし!」


「凱はできると言ったんじゃ。なら、僕は凱に任せてみたいと思う」


「長官、早く!!アルテアがいつまでもおとなしくしているとは限らない!」


「・・・・・・・・・わかった!

 ファイナルアタック!発動、承認!!!」


「!!・・・了解!!ファイナルアタック、セーフティーデバイス・リリーーーッヴ!!」


「ようし、いけ!勇者!!そんなオルタナティブ野郎、ぶっとばせ!!」


「(オルタナティブ?)フン、無傷と言わずとも、致命傷を受けなければ良いだけのこと。

 ファイナルアタックとは言え、ガードベントを使って防御に徹すれば・・・!」


『ガードベント』


 騎士王蛇の手に巨大な盾が現れる。ブルホーンのガードベント、ギガアーマー(AP3000)だ。


「確かに、普通のファイナルベントやファイナルアタックでは致命傷を与えられないかもしれない。だが!!

 ユニコーンドライブ、レオドライブ・インストール!」


 電童の右手にドリル、右足に円形の装甲が現れる。データウェポン、ユニコーンドリル(AP4000)とレオサークル(AP4000)だ。


「フン、何をするかと思えば・・・データウェポンを二つも呼び出して操りきれるわけがなかろう」


「確かにな。だが、こうすればっ!!」


『ユナイトベント』


 その時、二つのデータウェポンが融合をはじめた!


「な・・・!?データウェポンを合体させただと・・・!?」


「その手があったか!!凱め、いつの間にあんなものを・・・!」


合体データウェポン、輝刃(きば)!!

 いくぞ!!輝刃ストライカー・ファイナルアタック!!!(AP10000)


 キュィィィィィィィィィィィィィィン!!


 輝刃のドリルが高速回転をはじめる。


「ファイナルアタックのエネルギーを、一点に集中させればっ!!」


 凄まじいスピードで騎士王蛇に突撃する電童。余談だが、他のデータウェポンのファイナルアタックは、すべて遠距離攻撃である。


「ぬ・・・・・・!!」


 ギャギャギャギャギャ!!


 激しくぶつかり合うファイナルアタックとギガアーマー。

 だが一点に集中された強大なエネルギーの前に、ギガアーマーの強度は木製の如しだ。


「ギ、ギガアーマーが、こうも簡単に・・・!?」


 そして、ファイナルアタックの勢いは止まらない。


「うおおおおおおおおおおっ!!!」


 このままでは数秒と経たないうちにドリルはアルテアの命を奪うだろう。そのとき!


「その人を殺しちゃ、ダメェェェェェェッ!!」


 緑に輝く、羽の生えた少年が突如乱入してくる。






 ――――――――――





「・・・・・・・・・・・・」


 アニメはまだ続いている。


「どうだ、横島?おれのゲキガンガーの次にお勧めの、『仮面勇者王 電童』は!!」

「あー、なんてゆーか・・・とりあえず、ファイナルアタックとファイナルベントの違いって何だ?」


「ファイナルベントは、データウェポンごとに設定された強力な必殺技。

 ファイナルアタックは、超必殺技ですね。威力はすごいですが、使うとエネルギーが完全に空になります」


 いつの間にか上映会に参加していた明乃が解説する。


「・・・詳しいな。明乃ちゃん・・・」


「ええ。わたし、このアニメも好きでしたから」


「・・・へ〜・・・」


 なんともいえない複雑な気分だった。


(しかし・・・このパクりアニメのあの技、使えるかもな・・・)


 そしてナデシコは、宇宙に出る・・・







 続く







 イネス先生のなぜなにナデシコ出張版

 良い子の皆さんこんにちは。今日もなぜなにナデシコの時間がやってきました。ここではいつものように「GS横島 ナデシコ大作戦!!」のギモン・専門用語・モトネタ等を、解りやすく、かつコンパクトに説明するわ。


Q1・シャイン王女って誰?

 「スーパーロボット大戦 オリジナルジェネレーション」に登場した、リクセント王国の小さなお姫様よ。予知能力を持っていて、そのせいでDCの残党に狙われることになるわ。

 基本的に礼儀正しいんだけど、ときたまやんちゃな地が出るみたい。ライディ様が大好き。


Q2・今回の明乃が出した技は?

 このコーナー恒例になりつつある、アキノちゃんの技コーナー。

無尽脚
・ストリートファイターZERO3の神月かりんの技の一つ。前進しつつ右足の前蹴りから逆の足の蹴り上げにつなげる技よ。
 
 ガードされても隙が少なくヒットすると相手を浮かせる優秀な技で、浮かせた相手にさらに無尽脚や立ち強パンチを当てたり、神月流皇王拳につなげるのが常套手段。

繚乱花
・上に同じく神月かりんの立ち強パンチ。キャンセルはできないけど、かなりの対空性能を持つわ。無尽脚の追い討ちにも良いわね。


Q3・仮面勇者王 電童・・・?

 言うまでもなく、モトネタは「仮面ライダー龍騎」、「勇者王ガオガイガー」、「GEAR戦士 電童」よ。ファイナルつながりね。

 細かい説明は・・・・・・やめておきましょう。


 あとがき
 第7話です。まずはお詫びを。うちのパソコン、一時期ウィルスに感染していたらしく、その所為で、私にメールをくれた人にご迷惑をかけたようです・・・ごめんなさい。

 で、今回ちょっと文体を変えてみました。行間を多めに空けたり・・・前とどっちが読みやすいですか?

 それと、仮面ライダー龍騎のネタは、私の友人のHP、「HG黒卍帝国」(http://kuuga.easter.ne.jp/)の、「仮面ライダー」のコーナーを参考にさせてもらいました。・・・もちろん許可はもらいましたよ?

 

 

 

代理人の感想

あーもうなにがなんだか(爆)。

取りあえず目が点になったり苦笑したりはさせていただきましたが(笑)。

 

それはさておき本編のほうで違和感を感じたこと(細かいですが)が二つ。

一つは着物を咎められたときのユリカの口調。

「かまわない」じゃなくて「かまいません」じゃないかなーと。

もう一つはルリ。彼女がTV版の彼女と同一であるとしたら、イレギュラーの存在があっても

ミナトさんにほほえましく思われるくらいの「人間らしい反応」を示すのはちと時期尚早のように思われます。

 

 

 

 

本編の内容?

えーと、伏線はありましたが鼻血出して寝こんでアニメ見てただけだし(爆)。