全員の注意が、通信映像の方に向く。


『アキノちゃん、戦いを止めて!』


『ミナトさん! それにメグミちゃんも!?

 卑怯な・・・人質をとるなんて・・・!』


『違う!!

 彼の名誉のために言うわ。彼は純粋に私たちを助けようとしてくれてるのよ!!』


『信じられない! 早く二人を降ろして。降ろしたら信じるのも吝かではない!』


『私たちがこの人は信用できるって言ってるのよ!?』


『ミナトさんたちは脅されてるかもしれない!』


『アキノちゃん!!』


 ミナトが半ば本気で怒鳴る。明乃は明乃で、その頑なさは追い詰められているようにも見える。


「お、落ち着け明乃ちゃん! さっきも言いかけたけど、見りゃあ解ると思うけど、そいつら蜥蜴じゃないんだぞ!? 話も通じる人間で・・・」


『知ってます。かつて面子を保つためだけに月を追放された地球人』


「だったら・・・」


『だから! だからこそ!! そんな事情を知らないシェルターの避難民を、アイちゃんを虫を殺すかのように殺す、そんなロボットを送り込んだのは許せない! 

 知らないことこそ罪だって言うかもしれない。ならそれが罪なら逃げるチャンスも与えないまま殺されなければならないほど罪深かったと!?』


「明乃ちゃん・・・・・・」


 明乃はそれ以上の問答を拒むかのように、憎むべき敵に視線を戻す。


 もう戦いは避けられない。そう誰もが思ったとき、





『アキノ!!』


 月面の地面をぶち割り、ユリカとナデシコが出現する。出現場所は、ちょうど九十九の機体の真下だ。


『地面の下から戦艦!? ・・・・・・・・・しまった!!』


 九十九は急に焦った顔になって、機体をその場から離脱させるが、時既に遅かった。


 
 ガキィン!



 ダイマジンはナデシコのフィールドに弾かれる。



『くっ、遅かった・・・歪曲場に閉じ込められたか・・・』










 ナデシコブリッジ。


「ちょっと艦長! どういうつもり?」


「一対一の戦いです。邪魔者は排除です!」


「相手にはボソンジャンプがあるのよ!?」


「しませんよ。ミナトさんとメグちゃんがいるんです」


 エリナはあからさまに「はぁ?」という顔をし、


「するわよ! 敵なのよ?」


 いらだち混じりの声を投げかけるも、


「・・・でも私、こういうやり方しか、出来ませんから」


 ちなみに、他のパイロットはカタパルトが故障しているため出撃不可だった。










『・・・・・・・・・』



 ドンッ



『ぐうッ!?』


 明乃は無言でレールガンを倒れ伏すダイマジンに打ち込む。


「明乃ちゃん!? 待てよ、もう戦わなくていいんだよ!」


『敵なんですよ! 地球の!! こいつらが攻め込んできたらまた人が死にます!! もう人間だからとかそういう問題じゃありません。無人兵器でも人間でも、こちらを殺そうとするなら止めなきゃならない!!』


 確かに、明乃のいうことにも一理ある。しかし、明乃はそれ以上の強迫観念のようなものに突き動かされているようにも見える。


 その事を察した横島は、ある言葉を口にしようとした。


「・・・・・・・・・」


 口にすれば横島は地球に居場所がなくなるかもしれない。モモも一緒に。明乃に憎しみの目を向けられることになるかもしれない。だが、止められなかった。


「・・・・・・でも明乃ちゃん。木星の人は、火星で俺を殺せたはずなのに殺さなかった」


 


『・・・・・・・・・え・・・?』





 明乃はその言葉が理解できなかった。理解は出来るのだが、理解できなかった。それはモモ以外のナデシコクルー(通信を聞いていた人のみ)も、似たような状態で絶句していた。


『え・・・そんな、それってどういう・・・』


「俺は火星で無人兵器を振り切った後、木星の試作有人機に負けた。普通ならそこで殺されてたはずだけど、俺はそのまま木星に連れて行かれたんだ」


 横島はそこで一度言葉を切り、明乃のほうを見る。先程と同じく、驚愕を顔に貼り付けた状態だった。





 ナデシコ


「モモ、本当なんですか!?」


 非常に珍しいことだが、ルリは驚きの感情を露にしてとなりのモモに問いただす。


 だがモモの返答はごく短い物だった。


「本当」


「ふぅむ・・・」


 プロスは顎に手を当て、考え込む。


「ふぅむじゃないでしょふぅむじゃ!! あいつは木星にいたのよ!? なのに何の情報も伝えずに数ヶ月間だんまり? これは地球に対する裏切りよ! 今すぐ拘束して・・・」


「拘束して、何?」


 エリナの台詞を遮るようなモモの静かな、だがよく通る声。その目は「そんなことさせない」と雄弁に語っていた。


「な、なによ。これは地球のために必要な事だってくらい、子どもでもわかる理屈よね!?」


「自分は木星蜥蜴の真実のこと、黙ってたくせに・・・」


 イツキがボソッと呟いた。


「何か言った!?」


「いいえ? 別に」


 そ知らぬ顔でとぼけるイツキ。リョーコとガイがとなりで「ナイスだ新入り!」と言っていたのはバレバレだったが。


「でも、モモはどうするんです? もし横島さんがここに居られなくなったら・・・」


「ついていくだけ」


「あ、そうですか・・・」


 ルリは、何の躊躇も無くそういえるモモがうらやましかった。こう答えることぐらい解りきったことだったが。


「艦長! 艦長は横島君の処分、どうするつもり!?」


「もちろん、ちょっと事情を聞いてからいつも通りですよ」


「本気で言ってるの!?」


 なんで自分はさっきからこんなに叫んでいるんだろう。もしかして変なのは自分のほうか? と一瞬思ってしまったのはエリナだけの秘密だ。


「それがナデシコだもんねー」


「むう・・・確かに」


 ヒカルの軽い声と、ゴートの重々しい声を聞いた瞬間、驚いたことにエリナほどの人物が問答する気力を根こそぎ奪われたと言う。






「・・・でも、俺はそこで非人道的扱いは一切受けなかった。やってたことはメシを作ることと雑用。それどころか、いまそこでぶっ倒れてる月臣から格闘技もちょっと習ったし、俺を保護してる人たちは極力俺の素性がばれないように取り計らってくれたし、」


『もういい、横島君』


 横島がそこまで喋ったとき、九十九は自らそれを遮った。


「白鳥!?」


『どこをどう繕ったとて、いま我々が地球を攻めていることに変わりは無い。ならばそこの女子が私を憎むことも仕方の無いことだろう。だから、その女子・・・否、赤い機動兵器のパイロットに提案したい。私と一対一の決闘を受けてもらいたい!』


『・・・え?』


 明乃はびくりと顔をあげる。


『もちろん、この2人はいまここで解放する! 私が勝てば、そこの月臣は見逃してもらいたい。逆に私が負けたときは、煮るなり焼くなり好きにしてもらって結構。

 さあ、返答やいかに?』


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


 明乃は無言だったが、その目には戦う意思が宿ったように感じる。





 しかし、先程の激情に駆られていた状態と比べると、かすかに迷いが混じったようでもあった。





 ――――――――――





 横島の説得も無意味だった。いま、明乃の乗ったヘリアンサスと九十九の乗ったダイテツジンが月面にてぶつかり合っていた。


「ぅくっ!?」


 明乃は驚きと悔しさの混じり合った声を漏らす。


 先程と同じく、戦い自体は一方的であった。ダイテツジンの攻撃はヘリアンサスに掠りもしない。逆にヘリアンサスの攻撃は面白いように命中する。さらにCFランサーを持つため、ダイテツジンには短時間で深い傷がいくつも刻まれていた。


 しかし、九十九も伊達に優人部隊をやっていない。





 〜先程の攻防〜


『ゲキガンパーーーンチッ!!』


 ダイテツジンはロケットパンチを放とうと腕を突き出す。だがその行動は明乃に何の脅威も感じさせない。


「いまさら!!」


 明乃は敵の腕が突き出されると同時に反応し、発射前の腕を切り落とす。


 だが、九十九は密かにほくそえむ。


(かかった―――――!!)


 九十九は、切り落とされた自分の腕に向け、口部レーザー砲を発射した。


 明乃は、敵のよくわからない行動に戸惑いに似た感情を覚えた。


 その隙がいけなかった。


 


 白鳥九十九は知っていた。テツジンタイプの前腕部には、コミサイルが搭載されていることを。


 まだ一発も発射していないことを。


 月の重力は地球の六分の一で、腕はまだ地面に落ちていないということを。




 レーザー砲は、ヘリアンサスの至近距離の、コミサイル満載の、切り落とされた自らの機体の前腕部に命中した。


「うあああっ!?」


 さあ地球人。ここからが本番だ。





 〜回想終了〜





「ぅくっ!?」


 なんてことだ。正面からまともに爆発を食らってしまった。ディストーションフィールドは展開していたが・・・。


 素早く状況をチェック。


「―――!! ディバインアームがっ・・・!」


 右腕が吹き飛ばされている。とっさにかばってしまったのか。右腕以外の部分に致命的な損傷は見られないのは不幸中の幸いだが・・・。


(二刀流じゃなくなったのは痛い・・・)


 とっさに距離を取り辺りを見回す。物陰に落ちているのか、長剣のCFランサーは見当たらない。


(でも、まだこっちが有利のはず・・・!)


 明乃は左手の中剣を握りなおし、ダイテツジンに向かって突撃し―――――





 ―――――ようとしたところで、また、事体はややこしい動きを見せていた。





 ――――――――――





『白鳥隊長ーーーーーっ!』


 明乃らのもとに、新たに一機の機動兵器が接近してくる。ゆめみづきに積んであった予備のテツジンだ。


『なっ!? お前は・・・・・・』


『狭山か!?』


 九十九と元一朗は驚きの声を上げる。


 予備のテツジンに乗っているのは、優人部隊候補、狭山甲太(さやま こうた)だった。


「くっ、そっちから一対一を持ちかけておいて・・・! 結局こういうことか!」


『ま、待て!

 つっ・・・馬鹿者! 勝手に装備を持ち出して・・・貴様、どういうつもりだ!!』


『何を言われます! 卑劣なる悪の地球人のこと、最初から真っ当に戦う気などなかったはず。ここは先手を打つのが良策です!』


『馬鹿な・・・!!』


 九十九は奥歯をかみ締める。狭山が血気盛んであることはわかっていたが、まさかこの場面で勇み足が出るとは・・・。


「あなたは裏切った!! 横島くんとミナトさんの信頼を裏切った!!」


 今度こそ明乃は激昂した。


『違う!』


 九十九は弁解しようとするが、


『悪の地球人が賢しげなことを言う。我々をキョアック星人にも劣る性根によって追放した分際で白鳥隊長を罵倒するか!! 二対一でもまだまだ温情ある行為と知れ!』


「!! ・・・・・・こ・・・のぉおッ!!」


 九十九の弁解も狭山によって台無しにされる。





 しかし、この状況を横島が黙っているわけも無かった。





『おい・・・どうでもいいけど、お前の考え方自体が既にキョアック星人だと思うけどな・・・。二人で一人と戦おうとする所なんか特に』


『何奴!?』


 どうでもいいが、芝居がかった口調である。


『ホンマに。上司はちゃんと教育しとるんか?』


『・・・・・・・・・・・・・・・』


 言葉も無いとはこのことだ。


『明乃ちゃん、背後の敵は引き受けたから。

 ・・・・・・でも、マジでそいつの命だけはカンベンな』


 そう言って、横島INコンメリアはテツジンに突撃した。


(まったく、どうなることかと・・・・・・)


 九十九が安堵しながらヘリアンサスに視線を戻す。・・・が、誰も居ない。


 瞬間、九十九の背中に悪寒が走った。


『しまった、やつは跳躍を・・・』


「その通り」


 九十九は見なくても解った。この状況は、背中に剣を突きつけられている状況。


 実際、中剣型のCFランサーは、ダイマジンの後頭部に突きつけられている。


「王手」


『ぐっ・・・』


 明乃の声は静かな響きだ。だが、もう絶対にこっちを信用しなさそうな雰囲気を纏っている。今すぐ貫かないのはさっきの横島の言葉があるからに過ぎないのか。


 明乃は九十九の動きに注意を向けながら、横島のほうへ注意を向けた。





 ――――――――――





 横島と狭山。お互いがお互いに向かって突撃する。


「んでりゃあああ!!」


 横島が霊波刀で切り下ろす。


 だが、あらかじめ攻撃を読んでいた狭山は、ボソンジャンプで横島の背後にジャンプする。そのまま殴りつけるのだろう。スペック自体はノーマルエステに毛が生えた程度の性能である。まともに食らえば間違いなく大破だ。


 この戦いを見ていた者は皆息を呑んだが、


(木連式柔―――「無縫」)


 はたから見たら横島がテツジンのパンチをすり抜けた様に見えただろう。実際は敵の動きに逆らわず、最小限の動きで回避しただけなのだが。


『何!?』


 狭山は戦慄した。攻撃後の隙を、絶対当たるタイミングで攻撃したにも関わらず外れたからだ。


「もぉらったーーーーーっ!!」


 こんどはテツジンが隙だらけだ。コンメリアは逆袈裟の斬撃を放つ体勢に振りかぶる。


 このときのコンメリアは無手。だが、勿論ここで文珠を出す。


(自分の中の霊力ではなく、コンメリアの中から霊力を引き出す感じ・・・・・・カオスのじーさんはそう言ってた)


 不意に、カオスとの格納庫での台詞を思い出す。


 ―――――わしを誰だと思っておる? ヨーロッパの魔王、ドクターカオスじゃぞ!


 ・・・・・・コンメリアの右手に文珠を呼び出すプロセスを、一瞬で終える。


(・・・使うべき文珠は・・・『剣』!!)


 横島は、コクピットに命中しないように注意しつつ、右手を逆袈裟に振りぬいた―――――!










 一方その頃。月神族の城、格納庫。


「ドクター・カオス・お届け・物です」


 マリアがカオスの下へ、一個の30cm四方の小型の箱を持ってくる。


「なんだ、ドクターカオス。神族から身を隠しているのではなかったのか? 通販までするとは、いいご身分というかいい度胸だな」


「何を言う。いくらなんでもわしがそんな下手を打つ訳なかろう。これは知り合いに秘密裏に頼んだもんじゃ。月では手に入らんものをな」


 そう言い、どれどれ・・・と箱を開ける。


 中には、一個の白い石。でこぼこで、かすかに光っている。


「・・・なんだ、これは? 並々ならぬ力を感じるが・・・」


「マリアも・ミス・神無に同意・この力は・文珠とでさえも・比較になりません」


 二人が感想を述べる。カオスは、この石を見て、なにやら考えているようだったが、


「おお! そうじゃったそうじゃった! これは小竜姫に頼んであった霊気の結晶じゃ。やっと届いたか」





「「・・・・・・・・・・・は!!?」」





 マリアと神無が大いに驚き呆れ呆然とフリーズする。


 フリーズがかった2人を余所に、カオスは年齢のわりには無邪気に喜んでいる。


 神無はフリーズが解けきらない状態で、ギギギとカオスのほうへ顔を向け、


「おい・・・ドクターカオス・・・つかぬ事を尋ねるが・・・」


「ん。なんじゃ」


「それは、コンメリア用の、結晶、ではない、だろう?」


 一句一句区切って、言葉を搾り出す。


「何を言っておる。コンメリア用にきまっとる。大体これほどのもの、意外と使い道は無いぞ」


「「・・・・・・・・・・・・・・・」」


 悪い予感、的中。


 これがシャイニングフィンガー・・・もといマーフィーの法則というものか。


「ドクター・カオス・ならば・先程出撃した・横島さんの・機体には・・・」


「何?」


 カオスは怪訝な顔をする。


「・・・・・・・・・・・・・・・」


 そして数分考え込む。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ」


 気付いてしまったようだった。










「・・・あれ?」


 それは誰の声なのか。


「えっと、」


 コンメリアは逆袈裟の斬撃を確かに放った。


 ただ、右手には何も持っていなかったが。


 そして、敵はそのチャンスを見逃すほどお人よしではなかったわけで。


『なんだか解らんが、もらったーーーーー!!』


「!!!? うわっ!!」


 とっさに横島は、敵のパンチを両腕を交差して防ぐ。だが、そのパンチは、そんな防御などあまり意味は無かった・・・。



 どがっしゃあああん!!



 コンメリアは、致命的なダメージを受けつつ吹っ飛んだ。


 不意に、もう一度カオスとの格納庫での台詞を思い出してしまった。


 ―――――わしを誰だと思っておる? ヨーロッパの魔王、ドクターカオスじゃぞ!





 ああ、あんた確かにドクターカオスだよ・・・。なぜだかこうなったことを納得しちまってる自分が悲しいけど。


 つーかさ、このタイミングは無いんじゃないの・・・?





 ――――――――――





 明乃と九十九(勿論、元一朗・ナデシコクル―らも)は、テツジンのパンチをまともに食らったコンメリアを目撃する。このままでは、コンメリアは確実にでかい岩石に衝突だ。


「横島くん!!!」


 九十九は、後頭部に感じていた冷たい殺気が一瞬で消え去ったのを感じた。


 九十九は安心よりも先に戸惑いを覚え、それとほぼ同時に背後の気配が消え去った。ボソンジャンプだ。


『・・・・・・・・・』


 この瞬間だけだが、彼女にとっては確かに、仇は何の意味も無くなっていた。


『・・・・・・フッ』


 その時九十九が浮かべた表情は、なぜか苦笑だった。




 明乃のボソンジャンプ先は、コンメリアが吹っ飛ぶコース上。


 二秒と経たずに突っ込んできたコンメリアを、バーニアをフルスロットルにしてキャッチする。減速するコンメリア。


 だが、岩石に衝突するまでに停止するまでには至らなかったようだ。



 どっごおん!!



 二機は、岩盤にめり込んだ。





 岩盤にめり込んだ二機は、ヘリアンサスがコンメリアを抱きかかえている状態に見えた。


『・・・・・・明乃ちゃ〜ん・・・無事?』


「・・・なんとか」


『機体のほうはどう? こっちはもう分解寸前! 死んでないのが不思議なくらい』


「何とか飛べます。でもボロボロで、ジャンプフィールドも発生しない感じですけど」


『そっか・・・・・・』


「・・・・・・・・・・・・」





 そのまま数秒、沈黙が流れた。





『なあ、明乃ちゃん』


「なんですか」


『あいつさ、本当にいいやつなんだ。だからさ、今回だけは見逃してやってくれないか?』


「でも・・・」


『わかってる。あいつはいいやつだけど、攻めてくるのを止めない以上、誰かが死んじゃうもんな』


「・・・」


『だからさ、』


「横島くん」


 明乃が、横島の台詞に割り込んだ。


「横島くんが言うほど、彼がいい人とは思えません。仲間だってあんなですし・・・」


『・・・・・・これは受け売りだけどさ、地球にはあいつより性根が腐った奴がわんさか居るんだ』


「え?」


『もちろん、火星にもそういうのは居る。その反面、白鳥みたいなやつもいれば、地球にも明乃ちゃんやミナトさんみたいな人、いるだろ?』


「・・・はい」


『だからさ、結局人間同士が争う場合は正義なんか無いんだってさ。価値観の相違ってのもあるだろうし』


「それを踏まえた上で、その、白鳥と言う人を見逃せと?」


『ああ。これはただの勝手な頼みだ。それを承知で、頼む』


「・・・・・・・・・」


 明乃は答えない。それは思案か葛藤か。


 だが、それは数秒。


「そんなにお世話になったんですか・・・?」


『いや、あいつ以上にお世話になった人なんか何人も居るけど・・・でもさ、』


「解ってます。もう訊きません。くさい台詞も聞けたことですし」


『あ、あんなぁ! 柄じゃねー事ぐらい解っとるけど、引用せずには上手い言い回しが見つからなかったんだー!!』


「・・・・・・」


 明乃は無言で笑い、コンメリアを押して、ヘリアンサスを立たせる。


『明乃ちゃん?』


「・・・行きます」


『なんで!?』


「大丈夫です。もう解ってますから」


『え!?』


 横島は明乃の言葉の意味を図りきれない。



 ゴオッ!!



 それ以上何も言うことは無く、再びヘリアンサスは飛び立った。


『続けると言うのですか!?』


 この声は九十九だ。


「・・・・・・・・・」


 明乃は無言で突っ込む。


『・・・・・・・・・』


 九十九も戦士だ。ここまで来たら言葉は要らない。おもむろに、無事な左腕のロケットパンチを、“発射させずに”飛ばす。


「!?」


 推進剤を噴射しない左手はくるくる回りながらヘリアンサスを越えていった。


「何を―――――」



 どごんっ!!



「!!?」


 背中に衝撃。


『何をした・・・か。ミサイルを発射しただけだ。推進剤を噴かしたら、掌をそっちに向けられないからな』


 その言葉は真実。背後から襲い掛かったコミサイルは、数発ヘリアンサスに命中する。


 その一つが、バーニアに命中したようだ。急速に高度が下がる。


「くっ!?」


 ずざざ・・・とヘリアンサスは月面に着地した。


『もらった!』


 ダイテツジンの胸部が黒く明滅する。おなじみ、重力波砲。回避できるかどうかは微妙だ。


(ならば・・・!!)


 明乃はヘリアンサスの左腕を掲げ、『奥の手』を発動させる。


 ヘリアンサスの特徴の一つに、『展開式大型ソーラーセイル』が六枚背部に搭載されている事があげられる。それを展開することで、重力波ビーム圏外でも正常な状態と遜色ない高機動力を発揮することが出来る。

 もちろん、太陽光線の届かない場所ではこの装置の恩恵を受けられない。だが、重力波ビーム圏内に居る時もソーラーセイルを展開しておくことで、吸収したソーラーパワーを余剰エネルギーとして溜め込むことが出来、それを利用することでエネルギーを供給できない状況でも正常に稼動させることが可能なのである。

 そして、余剰エネルギーの使い道はもう一つある。それは、ためたエネルギーを掌から一気に放出すること。もちろん、放出時の破壊力は距離が近いほど高い。





「サンシャイン・フィンガァァァァァッ!!」





 明乃はヘリアンサスの左掌を、月面に叩きつけた。ちなみに、技の名前を叫ぶ必要は待ったくない。



 どっごおおおおおおおん!!



 その衝撃で、ヘリアンサスを中心に莫大な量の砂埃が舞い上がる。


 その粉塵の中心をグラビティブラストが貫いたのは、一秒後のことだった。


『明乃ちゃん!!』


『横島君、心配することは無い。ギリギリ壊れない程度には出力は絞ったつもりだ。

 ・・・しかしさっきの行動はいったい? 煙幕のつもりなのか・・・? それに、彼女はなぜわざわざ戦いを続けようとしたのか・・・』


 返答はすぐに帰ってきた。





「それは、決闘の結果をちゃんと出しておきたかったからです」





 言葉が聞こえると同時に、九十九は頭上に何か思い物体が落下してきたような衝撃を感じた。


『何!!?』


「こんどこそ、王手」


 横島が見た光景は、ダイテツジンの上に着地したヘリアンサスが、残った中剣型CFランサーを頭部に突きつけている光景だった。


「さっきのは煙幕だけが目的じゃなくて、その衝撃でここまで跳ぶことが目的」


『・・・なるほど、自分の完敗です』


 その言葉を聞いた明乃は、CFランサーを突きつけたままダイテツジンの上から降りた。


 その時、ナデシコのルリから通信が入った。


『月軌道上から連合軍が降下』


『なんだか様子を見てたって感じですな〜』


 枠外からプロスの声も聞こえてきた。上を見ると、確かに艦隊が降下している。


『俺も元一朗も、ここまで、か』


「行っていいですよ」


 そう言い、CFランサーを引く。


『え? しかし君は』


「勘違いしないでください。横島くんが頼むから今回だけ見逃すだけです。次は無いですよ」


『そうか・・・。ならば行かせて貰う。あ、自分の名は・・・』


「名前を知っているひとと殺し合したくありません」


『しかし、自分は君の名前を知っている。よかったら横島君にでも聞いて欲しい』


 そう言って、九十九は倒れ伏すダイマジンの傍に跳躍する。


 そして、一緒に消え去った。





「・・・・・・・・・・・・・・」


 明乃は黙って九十九らが去った方向を見ている。


『・・・明乃ちゃん』


「・・・横島君」


『見逃してくれたんだ。・・・サンキュ」


「・・・まあ」


 明乃は曖昧に頷く。横島は大きく伸びをして、


『いっや〜、今回もしんどかったな〜。じーさんめ、憶えてろよこん畜生』


「ふふ・・・・・・はい」


 コンメリアは立っていられるのが驚異的なまでにボロボロだ。その歩みは牛歩のそれと比べても遜色ない。飛行など論外だ。


『そういえば、決闘を邪魔したあの馬鹿は何処行ったんだ?』


「そういえば・・・?」


 二人して首を捻った時、





『九十九が無理矢理帰還させた。忠夫達がめり込んでる間に』





 横島の目の前にいきなりモモが写ったウィンドウが開く。


『おわぁっ!?』


「きゃ!?」


『・・・・・・・・・』


 驚く二人。モモの額には青筋が立ち、気のせいかそのまなざしはいつもより冷ややかなような。


『雰囲気作ってないで早く帰ってきてね。じゃないとお姫様の気嫌がと〜っても悪くなっちゃうから』


 イツキがニヒヒ笑いをしながら助言してくれた。


『いや、もう既に悪いような・・・』


『忠夫』


『はいっ!』


『早く帰ってきてね』


『さ、サー! 了解であります、サー!』


『・・・』


 そのまま通信が切れた。


「横島くん、ひとまずコンメリアはそこにおいて、こっちに移ってください。なにしろ、早く帰らなきゃいけないですからね?」


『いいのか?』


「変な事したらペガサス流星拳です」


『・・・はい』


 いつものことだが、女性にとことん弱い横島だった。



 〜五分後〜



「では行きますよ。シートの後ろにしっかり掴まってくださいね」


「りょ〜かい」


 返事と共に、ヘリアンサスは走行を開始する。重力が小さいためか一歩が大きい。


「あ、そうだ」


「?」


「今のうちに言っておかないと」


「? 何を」


 頭に疑問符を浮かべる横島に、明乃はさらっと言った。





「横島くんって、まだルシオラって人のこと、好きなんですよね」





「――――――――・・・・・・・・・・・・・・・」


 そのとき、ヘリアンサスのコックピット内は、確かに時間が停止した。


「そして、私のことは単なる同僚、良くても、親密な友人」


「明乃ちゃん、それは・・・」


「今は黙って聞いておいてください。これは私の決意を語っているような物です。宣言のような物です」


「・・・」


 明乃は一回深呼吸をし、


「まとめると、横島くんはいまだに好きな人がいて、今でも忘れられなくて、それ以外の女性は、愛する人物としてみるならば眼中にない」


「・・・」


 そうなのだろうか。明乃が何を言いたいのかも良く解らないが、自分のことの方がもっとわからない。





「でも、よく考えたらそんなこと何の関係も無いんですよね」





「・・・え」


「相手に好きな人がいようが結婚してようが、好きになった物はしょうがないですよね」


「!!?」


 横島は沈黙でなく絶句した。


「つまり、横島くんに好きな人が居ても、悩まないことにしましたってことです」


「・・・・・・・・・・・・」


 いくら鈍い横島でも、明乃が何を言いたいのか察した。察してしまった。


「これが一ヶ月間、ドクターカオスにマリア、朧さんに神無さんに横島くんのことを聞いて悩みぬいた末の答えです」





「・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」





 コックピット内は沈黙に支配されていた。横島はもとより、話している最中は平然としていた明乃も、じわじわ恥ずかしさがこみ上げてきたようだ。


 以前の横島なら「このねーちゃんが・・・全部俺の物!?」とか言ったで有ろう事は想像に難くないが、無意識に深入りを避けていた横島、軽口を叩こうにも舌が回らない。





 その時、単なる偶然か運命のいたずらか、月面を歩いていたヘリアンサスが、地面の出っ張りに足を引っ掛けてしまった。





「あっ!」


「うわっ!?」


 バランサーが壊れていたのか、ヘリアンサスは片膝をつく。そのときの衝撃で、横島と明乃の体は前方に投げ出され、もつれあった。


「いってー・・・」


 横島が痛みをこらえ、目を開いた。


「う・・・機体に無理をさせすぎ・・・」


 明乃も目を開いた。


 そして至近距離でぶつかるお互いの視線。今気付いたが、お互いの吐息がかかるほどの超至近距離。


 二人の状態を簡単に説明すると、横島が明乃を押し倒しているという状態だ。


 状況を認識した途端、明乃の顔は熟したりんごのように真っ赤になる。





「きゃあああっ!!!」





 ぼきゃん!



「ぶほあぁっ!?」


 明乃のペガサス彗星拳が横島を吹っ飛ばした。


 ここで誤解の無いよう説明するが、このとき明乃はさっきの状態が嫌だと言うわけではなかった。むしろ密かに嬉しかったほどだ。


 不幸だったのは条件反射がこのケースででもしっかり発動したことだろうか。悪いのは、条件反射になるまで殴られつづけた横島なのかもしれない。


「よっ横島くん!? 横島くーーーん!?」


 殴り飛ばされ壁面に激突した横島を必死に揺さぶる明乃。哀れ。





 ――――――――――





 お約束と言うかなんと言うか、ペガサス彗星拳の衝撃で横島のヘリアンサスに乗ってからの記憶は飛んでいた。


 明乃は落胆を隠せなかったが、まあいいかという思いもあった。


 思った以上に照れくさかったため(終わった後で気付いたことだが)、暫くは同じ事が出来そうに無いもののまだチャンスは有る。


 それに何より、横島と以前と同じように自然と会話していることに気付いたからだ。





 あの日、ナナフシを攻略したあの日、明乃と横島の間にあった大切な何かが壊れた気がした。





 だが、壊れた何かはいつのまにか修復され、覆水は盆に還った。これも横島の不思議な力のおかげかもしれない。





 明乃は落胆はした。でも、明日からは晴れやかな気持ちで笑えるに違いない。





 なぜなら明乃は、ほんの少しだけ、素直になったから。










 ・・・・・・・・・・・・横島が血迷ったら、迷わずぶっ飛ばしてしまうのだろうが。




















 続く



















 イネス先生の、なぜなにナデシコ出張版

 良い子の皆さんこんにちは。今日もなぜなにナデシコの時間がやってきました。ここではいつものように「GS横島 ナデシコ大作戦!!」のギモン・専門用語・モトネタ等を、解りやすく、かつコンパクトに説明するわ。


Q1:コンメリアって?

 武装:イミディエットナイフ×2
    ラピッドライフル×1
特徴:
 機体性能自体はエステに毛が生えた程度。武装もたったの二種類。
 しかし! 機体の核になる部分には小竜姫たちの霊力が込められた霊力の結晶があり、その霊力を使って紋珠を作ることができるの。つまり、横島君は自分自身の霊力を使わずに、文珠を作れるってことね。

 さらに、このコンメリアは機体の手の上に直接文珠を出すことができるわ。ただし、結晶から出せる文珠は一度に二個まで。文珠を使いきらないと次の文珠は出せないの。でも、横島君自身が出した文珠は例外よ。

 ちなみに、いくら小竜姫たちの霊力が込めらてるといっても、無限に出しつづけられるわけじゃないわよ。空になったらまた補充が必要。

 って言うか、武器は単なる予備。ディストーション・パンチは可能。動力源はエステと同じ。つまり、重力波ビーム。

名前の由来:
 「コンメリア」とは、ツユクサの学名、「 Commelina communis」のCommelina からとったもの。
 ツユクサはツユクサ科ツユクサ属の多年草で、日本中のいたるところに分布。別名「蛍草」、「ツキクサ(月草)」。
 ツユクサの花の一日でしおれてしまう儚さは、寿命が短い本物の蛍に通じるものがあるわね。別名も蛍草だし。それ故に横島君の機体にふさわしい名前と言えるかも・・・
 花言葉は、あなたを尊敬します。


Q2:ディバインアームって?

 登場作品:第二次スーパーロボット大戦、他。

 ビアン=ゾルダークが設計したロボット、ヴァルシオン、ヴァルシオーネに標準装備されている片刃の剣のことよ。このSSではヘリアンサス用CFランサーのモデル。もう片方がただのミドルソードなのは、単に時間が無かったため。

 余談だけど、「魔装機神」のディバインアームは文字通り腕部による打撃で、フル改造することによって、ようやく「ディバインブレード(スパロボα以降のディバインアーム)」になったのよ。とは言っても「魔装機神」のディバインアームは弱すぎるから改造する人はあんまり居ないんでしょうけど。


Q3;狭山甲太

 もう登場しないんでしょうね、あ、オリキャラだから。念のため。


Q4:サンシャイン・フィンガー

 登場作品:機動武闘外伝 ガンダムファイト7th

 若かりし頃のマスター・アジア、シュウジ・クロスが、敵との最終決戦の時に使った技(?)。台詞は、

「俺のこの手が唸りをあげる!炎と燃えて全てを砕く! 灼ーーーーーーー熱!!サアアアアアン・シャイン・フィングアアアアア!!」

 とりすがさん、ありがとうございます。


Q5:ペガサス流星拳

 登場作品:聖闘士星矢

 主人公星矢の有名な必殺技。さながら流星の如く、一撃必殺の拳の連打を敵に浴びせる技。一巻の時点で、一秒間に百発の拳を放ってたわ。


Q6:ペガサス彗星拳

 登場作品:聖闘士星矢

 主人公星矢の、流星拳ほど有名ではない必殺技。無数の拳を放つ流星拳に対し、こちらは一撃の強烈な拳を叩き込む技。破壊力なら流星拳より上みたいよ。

 例えるなら、流星拳はダッドリーのマシンガンブローで、彗星拳はリュウ昇竜拳(強)って感じかしら? ・・・全然違う?

 どうでもいいけど、ペガサスとパンチに何の共通点が・・・?





 あとがき。


 すいません。間があいてしまいました。もう私のことなど忘れてしまった方も多いのでは。

 言い訳をさせてもらいますと、私、就職しまして、SSを書く時間が大幅に減ってしまったのです。忙しすぎて死にマス。

 なので、これ以降も投稿ペースが落ちると思います。何年かかっても完結はさせたいですが・・・。


 



 といいつつ、GS横島とフェイトのクロスオーバーの予告編を書いたりもしてたんですけどね・・・(死刑)


 名付けて、「GS改めサーヴァント横島 聖杯大作戦!!」(アホ)

 GS横島の最終回の後、凛に呼び出されちゃうお話。




 CLASS:アーチャー(仮)

 マスター:遠坂 凛

 真名:横島 忠夫

 性別:男

 身長・体重:173cm 70kg(鍛えたので結構重たい)

 属性:中立・中庸

 筋力:D

 耐久:E

 敏捷:D

 魔力:B

 幸運:A

 宝具:??


 クラス別能力

 気配遮断:E
 気配を絶つ能力。ただし、勘のいい者には簡単に気付かれる。主に覗きの際に使用される。

 狂化:E
 このサーヴァントの価値観において一定以上の容姿を持つ異性に対した時、敏捷が4ランクアップするが理性の大半が失われる(笑。ただし、その狂化は短時間で解除される。

 単独行動:A+
 マスター不在でも行動できる能力。



 超アホですね。つーかアーチャーのクラス別能力じゃねーし。


 あ、それと、シロとタマモも出すつもりでしたが、長くなったので次回に持ち越し!

 

 

代理人の感想

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見事だ、ドクターカオスッ!

もうこの一語につきますね、ええ(爆)。

そう言えば依頼主って誰だったんでしょう?

ナデシコ関係者でなければ・・・・・サイゾウさん?(爆)

 

> ディバインアーム

異議ありっ!

ヴァルシオンのディバインアームとディバインブレード(もしくはヴァルシオーネRのディバインアーム)はまるっきり別物でしょう。

ちぅか、ヴァルシオーネの獲物も「魔装機神LOE」とα系で全く別モンですし。

ヴァルシオンのディバインアームは中国の大刀(刃の大きいなぎなた、ないし柄の長い青龍刀)、

魔装機神のディバインブレードは細身で緩やかな湾曲を持つまんま日本刀、

α系列のヴァルシオーネのディバインアームは片刃ではありましたがどう見ても日本刀には見えず・・・

と、名前は同じ、あるいは似ていても全く別の武器というほうが自然でしょう。

あるいは「ビームサーベル」のように同じ動作原理を持つ武器をひとくくりで呼んでいるのかもしれませんが。

 

> ペガサス彗星拳

異議ありっ!(もーええって)

もとい、一応突っ込んでおきますと彗星拳も基本的には流星拳と同じく乱打系の攻撃です。

ただ、ショットガンのように拳をばら撒く流星拳に対し、

無数のパンチを一点に正確に集中させるのが彗星拳である、という点が違います。