遥かなる時の流れに身を任せ。


 行き着いた先は……。









 ビィー!! ビィー!! ビィー!!


「……来たか」


「今、ユリカさんが到着して、ナデシコのマスターキーを使用しました」


「了解。俺は今から地上に出る」


「今更、バッタやジョロ如きに、アキトさんが倒されるとは思いませんが……気を付けて下さいね」


「ああ、解ってるよ……先は長いからな」


 そして騒ぐガイやメグミちゃんの話を懐かしく思いつつも聞き流し、出撃した。


 そこには……。





 ものすごい勢いで無人機を殲滅する、二機のエステバリスでした。




「ああっ! あなたはあの時の変態!!」


「へ、変態!?」


 周囲の人間が思いっきり引いた。
 初戦に全くといっていいほど出番がなかったアキトが、明乃から浴びせられた第一声がそれだった。



 ―――――



「ラピス!? なんでラピスがここに?」


「っ!?」


 急に叫びだしたアキトに、ラピスは怯え、横島の後ろに隠れた。


「研究所にいるんじゃなかったのか……? でもなんにせよ良かっ……た……?」


 アキトは遅まきながら気づいた。持ち直したと思った周囲の目が、再び冷たくなっていることに。


「え? なんでその人の後ろに? って言うか俺、アキトだぞ? ほら、一心同体も同然だったじゃないか」


「ひっ」


「この変態! やっぱり変態! ロリコンなんて最悪です!!」


「いくらワイでもモモに手ぇ出すんなら覚悟決めるぞ」


「えっ」


「すいませんすいません! アキトはちょっと記憶喪失の影響で……。
きっと火星で辛いことがあったんです! よく言って聞かせますから!」


「……艦長がそう言うなら」


 違う世界とは言え、ユリカに多大な恩のある横島だ。渋々矛を収めた。
 警戒を解いてはいないが。


「……あれ、ラピス? やっぱりラピスは研究所に? だったらこのラピスは一体誰だ?」


 急に何者か(ラピスだが)と会話し始めたアキトに、周囲はさらにドン引いた。


「……やっぱ拘束しましょうよ」


「すいません! すいません!!」



 ―――――



「成程、平行世界の明乃ちゃんってわけか。それなら確かにモモを知ってても変じゃねーな」


「……」


 一応誤解は解けたアキトだが、モモには完璧に怯えられていた。


「むしろあなたが誰なんですか? 横島なんて人は私の知るナデシコにはいませんでしたよ」


「誰って」


「横島くんとしか言い様がないですよね」


 ねー、と横島と明乃は首をかしげ合った。仲がいい。


「て言うかアキト、だっけ? なんでまた過去に来る羽目になってんの? 俺らはそれに巻き込まれたっぽいんだが」


「それは……おいそれと人に話せることじゃない」


「アキトさん……」


「じゃあいいや。別に野郎の過去バナなんか興味ねーし」


「ちょおい!!」


 アキトは横島に鋭いツッコミを入れた。



 ―――――



「それにしても、アキトさんはもちろんですけど、横島さんとアキノさんもとっても強いですよね」


「俺としてはメグミちゃんのキャラクターに激しい違和感が……」


「……同感です」


「なんですかそれ」


 いや、こっちの話。三人は目を逸らした。


「……ここまで強ければ、もしかして北辰とも……」


「北辰!?」


 横島がアキトの言葉に激しく反応した。


「北辰を知っているのか!?」


 アキトは横島の肩を掴み、がくがくと揺さぶった。


「あ、いや、その」


「はっきりと言ってくれ!!」


 アキトのあまりの剣幕に超ビビった横島は、久々にガン泣きしてしまった。


「しかったなかったんやー! 正当防衛なんやー!! あンの爬虫類、ガチで殺しに来おったから! わざと殺したんやないんやー!」


 うおーん! と泣き叫ぶ横島を余所に、アキトは呆然とよろめく。


「ほ、北辰を……殺した……?」


「じがだな”がっだん”や”ー!!」





 ハードでシリアスなアキトの、横島と明乃に振り回され空回る日々!


 明乃には警戒され、モモには怯えられ、ルリに慰められ、その他クルーには生暖かい目で見られるアキトの明日はどっちだ!?


 つーかそもそも当初の目的を忘れてはいないか!?


 アキトと横島のへっぽこ珍道中が、今始まる!!





 GS横島時ナデ大作戦!!(仮) 刮目して待て!!










 あまりにも人様のキャラを馬鹿にしすぎなので没。



















 ナデシコの仲間を、大切な人を救うため、横島は跳んだ。


 しかし、やはり制御に無理があったのか、横島は元の時代ではない、未知の場所に流れ着いた。


 このままでは仲間が死ぬ。早く元の時代に帰らなければ。もし出来るなら、この世界で封印してもいい。


 横島の戦いが、再び始まる……!


 ――――――――――――――――――――
 〜ここまでテンプレ〜










「最悪……! なんでセイバーじゃないのよ!」


「ワイはキミで大当たりですー!! ……ってあれ、なんで俺はこんなところに?」


「しかもサーヴァントの自覚もないの!?」




 行き着いた場所は日本の冬木市。ここで魔術師の戦争に巻き込まれた横島の運命は?





「へぇ……今の一撃を避けるとはな。舐めたことは詫びるぜ」


「いやいやっ! マグレですから舐めてください! むしろ靴でよければいくらでも舐めますッ!!」


「何言ってんのよあんた! 情けないこと言ってないで力を見せなさい!」




 夜の学校で青タイツの通り魔に襲われる横島! いつもながら明日はどっちだ!?





「■■■■■■■■■ーーーー!!!」


「んぎゃああああ!」


 ぶんっ、っと横島の眼前を凶器を振り抜かれる。横島の前髪が数本ちぎれとんだ。


『加』『速』


「二個使ってんのにギリとかどんだけー!? おうち帰るー!!」


「へぇ……。情けないけど、バーサーカーの攻撃をここまで避けるなんて。だったら……『狂いなさい』」


「へ?」


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーー!!!」


「ほんぎゃああああああああ!」


 避けた。なんとか避けた。正真正銘のギリだった。今回の間一髪さに比べたら、さっきの間一髪の髪の太さは……って何言ってんだ。


 死ぬ? 今度こそ死ぬ?
 横島は濃厚な死の気配に慄いた。
 つーかこの世界に来てから命の危険しかない。青タイツの槍男に可愛いけど惜しくも守備範囲外のセイバー、極めつけはこの筋肉。


 未来で多少なりとも鍛えられた覚悟が、今やっと定まった。

 殺らねば、殺られる。


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーー!!!」


「そう何度も何度も…………大口開けてんじゃねぇよ!」


『剛』『剣』


 ガキン、と鈍い音ともに、文珠の剣でバーサーカーの石斧が軌道をそらされ地面にめり込んだ。


 そして間髪いれずに、


『貫』


 手に持った『剛』『剣』を、さらに文珠の力でバーサーカーに投擲した。
 ありえないほどの早で投擲された剣が、狂戦士の喉奥に、深々と突き刺さった。


「――――――――――」


 バーサーカーの後頭部から、突き抜けた文珠の剣が突き出ていた。
 それを見てこの場の全ての人間が言葉を失った。今までの情けない印象を払拭して余りある姿。
 しかも、横島のターンはまだ終了していなかった。


「おまけな」


『爆』


 そのまま動きが止まったバーサーカーの口腔内に、文珠をポイと投げ込んだ。
 瞬間、投げ込まれた口腔内で大爆発が起きた。


「うわ!?」


 凄まじい爆風に士郎は顔を腕で守る。剣を杖にして立つセイバーも、目の前の光景に驚きを隠せない。


「まさか」


 煙も収まらぬうちに、厳しい表情でイリヤが口を開く。


「まさか、リンのサーヴァントがそんな宝具を持ってるなんて」


「宝具?」


「……力の結晶。理論上どんな奇跡も起こしてのける宝具」


「そう! これは文j……」


「名付けるなら、『神秘生み出す模造の聖杯(イミテーション・オブ・ホーリーグレイル)』ってところかしら」


「え、いやこれは」


「模造の、聖杯ですって!?」


「バーサーカーを「四回も」殺したのも納得というかんじかしら?」


「へ?」





 白い少女に目をつけられた横島。この先の展開にどんな影響を与える……?





「く、この魔女メディアともあろうものが、なんでこんな真似を……」


 この聖杯戦争は、所謂原作とは些か趣が異なっていた。その一つが、キャスターのマスターが変わっていないことである。


「あのアーチャー(横島のこと)を篭絡して、可能なら殺害、又はルールブレイカーか……」


 いくら嫌でも命令に手は抜けない。男嫌いのキャスターが男のために服選び。ちょっと泣きたくなったのは秘密だ。


「ミディアさーん!」


「あ、横島さん」


 締りのない笑顔で駆けてくる横島。出会い自体は昨日に終わらせてある。
 ミディアというのはキャスターが名乗る偽名である。


「そういえばミディアさんの名前って、聖騎士みたいですね」


「それファイアーエムブレムですからっ」





 意外といいコンビかもしれない。





「くっ、なんてインチキなの!」


 門の上に立つのは蒼いサムライ、アサシン:佐々木小次郎。そして、


「おわっまたきた!」


 隣に立つのは正体不明の赤い弓騎士。その弓から放たれる矢は、セイバーでも弾くのが精一杯。
 接近するまで弓騎士の弾幕、近付いてもアサシンの剣技に阻まれる。まさに鉄壁の布陣だ。二人だが。


 そのとき、弓騎士がおもむろに口を開いた。


「衛宮士郎よ。貴様、正義の味方とやらを目指しているらしいな」


「……だったらなんだ」


「ならば、貴様の隣にいる男を参考にしたらどうだ?」


「へ?」


 いきなり話を振られて間抜け声を上げる横島。


「なぜならその男、世界を救ったことがあるのだぞ」


「……!!」


「……なんだって?」


「世界を救ったと言ったのだ。しかも、信じられないほど少ない犠牲でな。無論、一人で救ったわけではないが」


「…………やめろ」


「知っての通り、魔術の基本は等価交換。だが世界と引き換えに失ったモノは、世界に比べあまりにも小さい」


「やめろっつってんだろ……!」


 周囲の仲間は、弓騎士の言葉の内容より、怒りを湛える横島の様子にこそ驚いていた。


「それは」


「やめっ」


「その男の恋人だ」


「そんなっ!」


 セイバーが、信じられない、とばかりに横島を見た。関わった時間は短いが、彼女も横島の為人は多少なりとも解っている。
 そのつもりだったが。


「世界と恋人を天秤にかける。作り話ではよくある話だが、たったそれだけで世界が救えるとは俄かには信じ難い。……で、」


「てめっ……!」





「その程度の犠牲で世界を救ったのだ。その時どんな気分だったのかね?」





「――――――――――っ!!!」


 キレた。完全に。


 だがその瞬間に、横島の背中を、ふわりと誰かが抱きしめた。


「―――――!?」


「あの人のためにも怒るんじゃないわよ。あんた、受け入れて乗り越えたんでしょ?」


 そういえば、横島も凛の過去を夢で何度か見ている。


 ならば、普段どつき漫才しかしていないと思ってなかったが、凛はすべてを知り、見守ってくれていたと言うのか。




 思えば、この時初めて横島と凛はパートナーとなったのかもしれない。










 遺跡の封印を願いと定め、横島と凛は聖杯を目指す。


 今までにないほどの死の気配、出会いと別れ、戦いの果てに待つものは――――――?


 運命の夜、彼の者、聖杯の奇跡を代行す。






「お前は、アーチャーなどではない。お前は――――――――――」






 GS横島運命大作戦(仮) coming soon!










 二番煎じどころか、千番煎じでもまだ足りない程のテーマなので没。







おまけ。

 CLASS:アーチャー(仮)

 マスター:遠坂 凛

 真名:横島 忠夫

 性別:男

 身長・体重:173cm 70kg

 属性:中立・中庸

 筋力:D

 耐久:D

 敏捷:C

 魔力:B

 幸運:A++

 宝具:??(EX)


 クラス別能力

 ???:?〜?
 ??????????????

 気配遮断:E
 気配を絶つ能力。勘の良い者には簡単に気付かれる。

 騎乗:A
 機動兵器を操る才能。多くの戦闘を潜り抜け、確かな能力を身につけた。このサーヴァントの場合、特に回避行動に優れている。
条件が合えば、幻獣種にも騎乗可能。

 狂化:E
 このサーヴァントの価値観において一定以上の容姿を持つ異性に対した時、敏捷が3ランクアップするが理性の大半が失われる。
ただし、その狂化は短時間で解除される。

 単独行動:A+
 マスター不在でも行動できる能力。



 詳細

 平行世界において、最強クラスの超上級魔族から世界を救った者たちの一人。彼無しでは人類の滅亡は確実であったと言う。ただその知名度は低く、近しい知人以外に彼の能力と功績を知るものは少なかった。

 なお、無類の女好きであったことは彼を知る者たちでは一致した見解である。

 他、詳細不明。



 技能

 心眼(真):――
 心眼スキルは失われている。


 異能生存体(偽):A
 不死身ではないものの、どんな事態に遭遇しても、何をされても死なない異能。異常に高い生命力と、奇跡と言える程の強運によって、如何なる事態でも何とか生き残ってしまう。
 Aランクとは言え、偽(近似値)では真の異能生存体の不死性には遠く及ばないが、それでも極めて死ににくい事には変わりはない。


 IFS:C
 イメージフィードバックシステム。このシステムに対応した機器を操作することが可能となる。CランクではIFSが必要な端末、車両、機動兵器等を操作できるが、戦艦、高性能演算機等には対応していない。召喚された時代や文化によっては意味のない技能。


 商才:B
 商売の才能。彼の興す大抵の事業は成功する。金運が良いわけではない。


 カリスマ:D
 人を惹きつける能力。表面上はともかく、心底彼を嫌う者は少ない。


 ゴーストスイーパー:B
 悪霊、妖怪等を祓う仕事人。サーヴァントも霊の一種なのでランク以上のダメージを与えられる。



 宝具

 神秘生み出す模造の聖杯(イミテーション・オブ・ホーリーグレイル)
 霊力を球形に凝縮させて精製する淡い緑に輝く珠。そのままでは無色の霊力の塊でしかないが、それに一定のキーワードを込めることにより無色の力に方向性を持たせ、念じたことを実現させる宝具。ただしその宝具の持つ力以上のことは実現できず、一度使用すると消滅する。

 複数個同時使用によって段違いの出力・汎用性を発揮することもできるが、制御する数が一個増えるごとに制御が飛躍的に困難になる。理論上、魔法クラスの神秘さえ発現可能。人間の持ち得る霊能力としては最高峰。

 術者以外の者も使用できるが、基本的に制御できる個数は一個のみ。正式名称は「文珠」。

 ランク:C〜EX 万能型宝具 レンジ:1〜 最大補足:1〜


 永久に夢見る妖蛍(ブライトネス・ソウル)
 敵対者が一定以上の魔力、威圧感等を発した時に自動的に発動する宝具。サーヴァント自身の意思では解除できない。発動すると、パラメータ全てが1ランク(宝具を含む)アップする。また、発動中は属性が混沌・中庸になる。

 ランク:A 対人宝具 レンジ:―― 最大効果:一人




ほかの宝具は現在不明。













 ナデシコの仲間を、大切な人を救うため、横島は跳んだ。


 しかし、やはり制御に無理があったのか、横島は元の時代ではない、未知の場所に流れ着いた。


 このままでは仲間が死ぬ。早く元の時代に帰らなければ。もし出来るなら、この世界で封印してもいい。


 横島の戦いが、再び始まる……!


 ――――――――――――――――――――
 〜ここまでテンプレ〜









 平凡な小学3年生だった私がその人と出会ったのは、全くの偶然でした。
 春、出会いの季節。春、何かが始まろうとしている季節。
 本当にあった魔法、かけがえのない親友、そして……。

 いつの間にかそこにいた、不思議な雰囲気を持つあの人。
 その人と魔法が何をもたらすのか。それはまだわかりません。
 それはいつの間にか、始まってしまっていたのです。

 始まったのは、不思議な出会い。
 出会った人は、三人の異能者。





 リリカルなのは、始まります。










「いってー……転移は成功したけど、どこだここ?」


 横島が現れたのは、山の中の森だった。
 この場所は少し開けており、川の流れる音がする。
 とりあえず、人の気配はしない。


「ここなら簡単な迷彩でもコンメリアは隠せるかな……。目立つもんな、コレ。
ん? つーか……」


 横島は周囲を見渡す。


「うお? まさかこの下、龍脈通ってる!? やべー、霊力の回復スピード半端ねー!
しかも、コンメリアの霊力結晶まで回復していってるじゃないの! ゆっくりだけど」


 後の話になるが、コンメリアの文珠で自分の霊力回復、それで一日数個の文珠を補充、龍脈の霊力を吸い上げ今メリアの霊力回復、
との永久機関のコンボを発見し、文珠をかなり潤沢にストックできるようになる。
 訓練用で適宜消費するので劇的に増えることはないが、これはかなりの精神的余裕となる。

 しかしこれで、この世界が元の世界ではないことが判明した。
 元の世界では、このような地脈系は、さっさと神か国が管理してしまっているからだ。
 稀に管理していないものもあるが、これほどの規模の地脈が放っておかれることはありえない。

 横島は、この場所に仮住居を立て、拠点とすることに決めた。


 実はこの山は鳴海市にごく近い山中に位置し、街から結構近い位置にいると気づくのは、三日後のことだった。





 リリカルなのは、始まります?





「あ、きみ可愛いね! ちょっと一緒にお茶でもどう?」


「え、私? うーん……」


「美由希、どうした?」


「あ、恭ちゃんと忍さん」


「おおっ、これまた美人! 姉ちゃん、ワイと茶ぁしばかへん?」


「……」


 いきなり忍をナンパし始めた横島を見て、なんとなく面白くない美由希だった。そりゃそーだ。


「えー、流石に彼氏の前でナンパされてもねぇ」


「彼氏ぃ?」


 横島が横を見ると、恭也がむすっとした表情で横島を見ている。


 気に入らん。


 お互いの気持ちが一致した瞬間だった。


「んじゃあ、えっと、美由希ちゃんだっけ? 改めてお茶でもどう?」


「……」


 忍がダメだったから妥協して選ばれた。別にそんなことはないのだが、やっぱり美由希には少し面白くない。


「待て。それは許さん」


「ああ? なんでお前に許可もらわにゃならん」


「美由希は妹だからな。関係はある」


「彼女持ちのくせに妹もそこまで束縛しようってのか?」


「普段はそこまででもない。相手が貴様のような奴でなければな」


「……は?」


「なんだ」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ← 空気の重みが増した音。


「……別にいいよ。お茶くらいなら」


「マジ!?」


「美由希!?」


「ただし! 恭ちゃんと勝負して勝ったらね!」


「へ?」


「……」


 美由希のこの言葉に恭也の頭は冷えた。つまりこの男と付き合う気はないということだろう。


「へー、だったら俺はいいぜ」


 最近文珠に余裕のある横島は、気が大きくなっていた。


「こっちも構わん。いつでもかかって来い」


「恭也ー、頑張ってー!」


 忍の声援に、軽く手を挙げて答える。


「おいお前。俺には許せないものが三つある」


「……なんだ」


「イケメンと」


 手の中に文珠を密かに出して準備する。


「金持ちのイケメンと」


 速度系を使うことに決めた。一瞬で決めるつもりだ。


「彼女持ちのイケメンじゃーーーーー!!」


 この叫びに女性二人はガクっとこけた。
 恭也も少し毒気を抜かれた。……その瞬間。


『速』


「!!」


 恭也の背中を戦慄が駆け抜けた。少なくない実戦を積んだ恭也だからこそ感じた、幾度も危機を救った直感だ。


 反射的に、切り札「神速」を発動させてしまう。


「!!」


 今度嫌な予感を感じたのは横島だった。


 咄嗟に栄光の手で腕を覆い、顔の右横で構えた。
 その瞬間だった。0.1秒の誤差もなく、とてつもない衝撃とともにガードごと左に吹っ飛んだ。


「へっ?」
「うそっ?」


 忍は何が起きたかわかってないようだ。美由希には見えた。恭也が神速を使い、あまつさえ、横島がそれを防いだことを。


「…………」


 恭也の驚愕も半端ではなかったが、偶然かもしれない。そう思ったが、
 いててて、と言いつつ起き上がった横島は、涙をどばーっと流しつつ喚く。


「てめー、生身の人間の分際で、生身の人間に向かって超加速するとかどーゆーつもりじゃーっ!!」


「…………!!」


 その言葉に、今度こそ恭也は驚愕に固まった。





 えっと、リリカル……その……。





「なのは! あの大きな木の中心にジュエルシードが!」


「わかったよユーノ君! レイジングハート、セ」


 そこまで言った時、なのはは後ろから何者かに抱きとめられた。


「へっ!? し、忍さん!?」


「なのはちゃん、ここは危険よ! さ、避難するわよ!」


「え、でも、あれを止めないと……」


「何言ってるの! そういうことは、あの二人に任せとけいいの」


「え?」


 なのはが忍の視線の先を見ると、


「お、お兄ちゃんと横島さんっ!?」


「そういうこと」


 そんなやりとりは露知らず、二人は大きな木を見上げていた。


「今回はまた派手やなー」


「これも霊障というヤツなのか?」


「さぁなー。前に見た青い石が関係あるかも……っと」


 横島が、伸びてきた触手のような枝を切り払う。


「んじゃ、手早く終わらせるか」


「仕切るな。だが同感だ」


 そして二人は気に向かいダッシュする、横島は文珠の補助付きだ。


 大木の攻撃を難なくやり過ごし、枝やくぼみなどを利用して駆け上がる。


「よし、ここで……」


『探』


「青い石は……あそこだ、あの出っ張ってるとこのすぐ右!」


「よし、つぇりゃあ!!」


 恭也が裂帛の気合とともに木刀を突き込んだ。
 どんな力が働いたのか、木の幹の表面が弾け飛ぶ。そこには青く光るジュエルシードが。


「よっしゃ! のびろー!」


 横島はジュエルシードを引き寄せ、


『封』『印』


 ジュエルシードは急激に輝きを失い、沈黙した。





「えー……」


「さすがは恭也と横島君ね! 避難するまでもなかったわ」


 そんな二人にとてつもないコレジャナイ感を感じながら、なのはは肩を落とした。







 リリカルとはなんだったのか。






 で、でもそんな逆境に負けずになのはは頑張ります!


 頑張るったら頑張ります!





GS横島リリカル大作戦!!(仮) リリカルマジカル頑張ります!










偉大なる先駆者の作品が既にあるので没。









あ、本当の次回予告は、ナデシコ大作戦外伝、明乃の戦いVです。
近いうちに投稿できると思います。予定は未定ですけどね。