<未来からの帰還?>

 

 第1話 其の一

 

「ここは……。」

少年が目を覚ました。

「第三新東京市…か。まさか、本当に異世界に飛ばされるとは……。」

そう言いながら辺りの様子をうかがうアキト。

どうやらここは高台にある公園らしい。アキトの眼下には第三新東京市の風景が広がっている。

 

 

アキトは暫くその風景に魅入っていたが、その後これからの事を考え始めた。

(さて、これからどうしようかな……別にエヴァを使わなくても『昴氣』と『遺跡の力』を使えば使徒を倒すことができる。……でも、それだと俺が見せてもらった歴史とは違う物になってくる。そんな事になると、ゼーレやネルフがどんな事をしてくるか分からないな……)

(……という事は、やっぱり使徒はエヴァで倒す必要があるな……それなら早めにシンジ君やレイちゃん、アスカちゃんに会ったほうがいいな…………ん?そういえば俺はいつ頃に跳ばされたんだ?)

「ミコト、現在の時間を教えてくれ。」

アキトがそう言うと、

<<了解、マスター>>

返事が頭に響き、その後に問いの答えが頭に浮かび上がる。

 

【ミコト】

それはアキトが、この世界に来る前に『遺跡の力』を使って作ったA・Iのようなものである。

アキトは遺跡の管理者に歴史を見せられたのでこの世界のことなら全て記憶していた。……しかし、アキトの頭では記憶はしていても理解できない事もあった。

せっかく知識があっても、理解できなければ意味がないと感じたアキトは自分に理解できる物だけ頭に残し、それ以外の物は全てミコトに記憶させた。

こうしておけば、アキトは情報が欲しい時にミコトに尋ねれば、ミコトはそれをアキトにも分かる程度に翻訳して教えてくれるというわけだ。(アキトとは精神でリンクしているため、アキトが何処にいようと関係ない。)

その他にもハッキング能力や、テレパシー能力、なども付けてある。

 

<<西暦2015年、五月六日、十二時五十三分です、マスター>>

「そうか………確かその日はシンジ君がゲンドウに呼ばれてネルフに来た日じゃなかったか?」

<<照合中、照合中…………、はい、その通りです。マスター>>

「じゃあ、俺はシンジ君に会いに行くか……」

そう呟くとアキトの体は、一瞬虹色に光って消えた。

 

 

 

◇◆◇◆◇

じっとりと、熱い風が少年の顔を撫でる。

額にうっすらと浮かんだ汗を拭いながら、その少年、碇シンジはガシャンッと受話器を置いた。

「ちぇっ……電話もダメかあ……こんな所で足止めくってどーすんだよ。」

溜息混じりに呟くシンジ。

「まいったナ……よりによってこんな時に待ち合わせなんて………」

無人の町。

遠くから機械的なアナウンスが聞こえる。

「……本日、十二時三十分東海地方を中心に、特別非常事態宣言が発令されました。住民の方々は速やかに指定のシェルターへ非難してください。繰り返し………」

「……ハァ、こんな所にいても仕方ないよな。しょうがない、シェルターに行こう……。」

そう言い、シンジはゆっくりと歩き始める。

その時……

 

シュパァァァァァン!!

 

「わっ!」

シンジの前方の空から、いきなり巡航ミサイルがかなりのスピードで打ち出され、
あっという間にシンジの上空を通り過ぎていった。

「な、なんだぁ!?」

そして、数秒後、おそらく先ほどのミサイルのものであろう爆発音が聞こえた。
そのさらに数秒のち、シンジの遥か前方の山陰から数機のヘリが姿を現す。
そして、そのヘリ群に囲まれるようにしてソレは姿を見せた。

「な、……なんだよ、あれ……。」

なんとなく人に似ている形をしているが、そのシルエットは全く異なっている。
黒光りするダークグリーンの体。
所々についている白いプロテクターのようなもの。
さらに、本来在るべき所に顔が無く、代わりに胸の中心にマスクのような物がついている。
そしてソレは周りの山と同じくらい……巨大だった。

 

ズドドオオオオオン!!!

 

そのとき、状況についていけず、呆然としていたシンジの直ぐ側でミサイルが爆発した。シンジにむかって瓦礫が飛ぶ!

「わあああっ!!!」

 

キンッ

 

 

 

 

 

 

 

(?……………!!)

いつまでたっても襲ってこない衝撃を不審に思いながらも、シンジが目を開くと、自分の数m前に薄い蒼銀色の膜のようなものがあった。

「なんだ……?コレ…」

シンジがそれに触ろうとすると蒼銀の膜は跡形も無く消える。

シンジが訝しげに首を傾げていると、ふいに声が掛かった。

 

「大丈夫だったかい?」

 

いきなり背後から聞こえてきた声にシンジは、心底ビックリした。

振り返り、思わず身構える。

が……

次の瞬間には警戒を解いていた。

そこにあったのは微笑み。

シンジはその優しい微笑みに目を奪われていた。

そして、しばしの時間(とき)が流れる。

蝉の鳴き声が二人に時の経過を伝える。

「え〜と、あの…大丈夫だった?」

自分を見つめたまま何の反応も示さないシンジにむかって、もう一度同じ問いを問い掛けるアキト。

その言葉に我に返ったシンジ。

「え、あの、その……」

まだ、状況をよく理解していないようだ。

それに何故か少し、怯えているような様子がある。

それに気が付いたアキトは微笑を絶やさずに、優しくシンジに話し掛ける。

「そんなに怯えないでくれよ。別にとって食おうって訳じゃないんだからさ。」

「あ、う、うん。」

「自己紹介がまだだったね。俺の名前はテンカワ・アキト。君は?」

「あ、はい。碇シンジ…です。」

そう言って、今度はアキトの全身を見るシンジ。

そのとき初めて、アキトの身長が自分と同じくらいだと気づいた。

「ねえ、テンカワ君は……。」

「アキトって呼んでくれないかな。俺もシンジって呼ぶし。」

「あ、ごめん……。アキト君の背は僕と同じくらいだけど……何歳なの?」

「ん?…俺の歳か。十九……あ、いや、十四だ。」

シンジは驚いた。

それは、わずか数km先で奇怪な巨人が暴れているというのに、慌てず、微笑を絶やさない
アキトが自分と同い年だということが信じられなかったからだ。

「アキト君は……っ……!?」

自分の疑問をアキトに聞こうとしたシンジの声が驚愕に変わる。

なぜなら先ほどの黒い巨人がこちらに向かって歩いて来ているからだ。

「なんなの?……アレ。それに…なんでこっちに……。」

「あれは使徒って呼ばれてるものだよ。」

アキトは後の問いには答えず、最初の問いの答えを述べた。

「使徒?」

「そう……第三使徒、サキエル。嵐を司る天使……。」

「第三使徒……サキエル。」

アキトの言葉をオウムのように繰り返すシンジ。多少は思考が回復してきたようだ。

一方、アキトサイドは……

<<マスター、碇シンジにこんな情報を与えてよろしいのですか?前の歴史では、現時点では知るはずも無い情報ですよ>>

(いいんだよ、この世界の歴史を返るためにはシンジ君の力が必要なんだから。そのためには、多少、ドーピングをしてでも早く成長してもらわなくちゃ。)

<<マスターがそう言うなら、私は何もいう事はありません>>

(そうか、……ありがとう)

<<い、いえ……私の主はマスターですから(ポッ)>>

なぜか赤くなるミコト。もう一度説明しておこう。

ミコトはアキトが作ったA・Iのようなものである。

……もちろん、女性型の

 

キキィッ!!

 

そのとき、二人の側にけたたましいブレーキ音を上げて青いルノーが止まる。

中から二十代後半くらいの女性が二人に向かって声をあげた。

「お待たせ!シンジ君っ!……は、早く乗って……!!」

 

 

◇◆◇◆◇

 

(一体どういうことなの、コレは?………何で二人もいるわけ?)

 

そう考え、記憶を探る。

私の名前は葛城ミサト。

昨日、ビールを飲みすぎたおかげで待ち合わせの時間に遅刻した。

そして、使徒と連合軍との戦いの中、やっとの事でシンジを見つけ、急いで車に乗せた。

ここまではいい……。

が、何故かシンジの隣りにいた少年も車に乗せてしまった。

まさか、放っておくわけにもいけない。

目の前では使徒が暴れているのだから。

しかも、めったにお目にかかれないほどの美少年なのだからなおさらだ。

どう話し掛けようか迷っていると……あっちから話し掛けてきた。

 

「あの……戦闘機が変な動きをしてますけど…どうしたんですか?」

「!!ちょっと、まさかN2地雷を使う気?こんな街中で?」

戦闘機がサキエルから離れていく。

「伏せて!!」

そう言って、助手席に座っていたシンジに抱きつく。

「・・・・・・結界(ボソッ)」

 

ズガアアァァァァァン!!!

 

N2地雷、大爆発!!

車の一台や二台、軽く吹き飛ばすほどの爆風がルノーを襲う!!

しかし。

「…………………アレ?」

「何、ボーッっとしてるんですか?早く行きましょうよ。」

「え?あ、そ、そーね。運が良かったのよね。」

実際は爆風が来た瞬間に、アキトが『結界』を張ったからなのだが、そんなことがミサトに分かるはずが無い。

そんな出来事の数分後、

「そう言えば自己紹介がまだだったわね、私は葛城ミサトよ。それで………貴方がシンジ君よね?」

そう言って、助手席のシンジを指差すミサト。

「あ、はい、そうです。」

シンジが答える。

その答えを聞くと、

「そう………じゃあ、君は?」

そう言って今度は、後ろの席のアキトを指差す。

アキトは例によって、ニッコリと微笑みながら

「初めまして、葛城さん。テンカワ・アキトっていいます。」

ミサトはその微笑に年甲斐も無くときめく。

(ウッ!!なんなの、コレは!!……この微笑みは反則だわ)

が、己の薄っぺらい理性を総動員して顔がニヤつくのを何とか抑える。

「私の事はミサトで構わないわ。それで……シンジ君の友達なの?」

「う〜ん、出会ったのは今日なんですけど、俺は友達だと思ってますよ。」

それを聞いたシンジは、一瞬驚いた顔をしたが、その後、少し恥ずかしそうに俯いた。

アキトはシンジの様子を見て嬉しそうに微笑む。

 

◇◆◇◆◇

同時刻 NERV本部 発令所

 

ある一人の初老の男が苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
その男は国連軍の制服を着ている。

「………碇君、我々国連軍の兵器が目標に対して無効であった事は素直に認めよう………だが碇君!!君なら勝てるのかね。」

さりげなく嫌味を含んだ言葉を吐く国連軍のお偉いさん。……がそう問われた男は気にした風もなくずれたサングラスを直しながらこう答える。

「ご心配なく………その為のNERVです………。」

 

第1話 其の二へ続く

 

 

◇◆◇◆◇

ATOGAKI

 

影法師です。

読み直して思ったこと。

お前ら、目の前に使徒がいるのに
見つめあってんじゃね〜〜!!

以上。

P・S 

アキトが妙に落ち着いちゃってますが、それは遺跡の力を貰ったためです。

そういうことにして下さい。お願い(涙)。

 

 

 

管理人の感想

 

 

影法師さんからの投稿です!!

何気に若返ってますねアキト・・・

だってシンジと同じくらいの少年でしょう?

そうか14歳か。

・・・怪しすぎる14歳だな、俺なら無視するね(爆)

 

では、影法師さん!! 投稿有難うございました!!

 

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