さくら戦神 ポンパドゥール近松の場合

 

 

―― あ〜、失礼しま〜す。

 

       さだめ
星の描きし運命は鉄。並大抵の覚悟では抗うことはかないません。
     はがね
しかし、鋼鉄の意志と紅蓮の思いあらば、決して不可能なことではありません。

ここはポンパドゥール近松の星詠みの館。ここにいかなる御用でしょう。

 

 

―― あの・・・・私は・・・・

 

存じてますよ、「漆黒の戦神アナザー」からの方ですね

 

―― え? 何でわかるんです? ひょっとして占いですか?

 

ふふふふ。いえ、先ほど編集長さんから電話があったんです。

 

―― あ、そうですか。では早速ですが『彼』との出会いを。

 

いえ、正確には『彼』を最初に知ったのは出会う前なんです。

 

 

 

 

 

―― ほへ?

 

最初は『視た』んです。

『ささやかな希望』 『高圧的態度』 『憎しみ』 『破局』 『徹底的破壊』 『辛うじての脱出』 『絶望』 『苦しみ』 『希望の発見』 『和解の提案』 『差し伸べた手の拒絶』 『戦い』・・・・・・

 

 

 

―― ?

 

 

 

そして・・・『思わぬ再会』 『新たな出会い』 『早過ぎる別れ』 『故郷への帰還』 『気付かぬ再会』 『ギリギリの脱出』 『戦いの日々』 『悲しい真実』 『破れた恋』 『今一度の和平』 『裏切られた友情』 『原因の放逐』・・・・・

 

 

―― あの〜〜〜。

 

 

『ひとときの安らぎ』 『引き裂かれた結婚』 『一方的正義』 『実験』 『踏みにじられた愛』 『砕かれた未来』 『憎しみと復讐』 『戦い』 『果ての無』・・・・・・・

 

 

―― 先ほどからなにを・・・・

 

 

それが私の視たもの。戦争という激流の中に転がったテンカワアキトと言う名の小さな小石の流れの道。

しかし、ある時、それの全てが大きく歪み、変わったのです。

何があったのかは分かりませんが。

そして数ヶ月後、私は東京にいました。

―― 私は知っていたのです。その地が炎に包まれるのを。

私は私自身の未来を視ることは出来ません。しかし、どうせ死ぬなら故郷で。そんな思いだったんです。

やがて私の視た通り、『チューリップ』が東京に襲来しました。燃える町並みに逃げ惑う人々。

立ち尽す私の眼前にバッタが現れました。

ああ、ここで私は死ぬんだ、そう思ったときにそのバッタがいきなり横へ吹っ飛んだんです。

 

―― パターンとしちゃアレですな、彼でしょ。

 

ええ、『彼』でした。例の黒装束の。キック一発でバッタを蹴っ飛ばしたんです。

 

―― もう突っ込む気にもなれませんな。

 

 

 

こちらをキッと睨むと『何をしてる? 早く逃げろ!』で、私は言ったんです。

『今日滅ぶのはこの街の宿命。ならば先祖代々この名と力をもって見守り続けてきた私がここで死ぬのも私の宿命。故郷とともに死にたいのです』

 

すると物凄く怒った顔でずかずかと怒気を漲らせて歩いてくるんです。

恐ろしくて足がすくみ、背後の壁に倒れこんだんです。

『彼』はそのまま抜いたナイフを逆手に振り上げ私に向かって突き立てたんです。

 

――ええっ?

 

思わず閉じた目をそっとあけると、彼のナイフは私の顔のすぐそばに刺さってました。

ひょっとしたら産毛が切れていたかもしれません。そして眼前には例の微笑みがありました。

 

―― ひょっとしてドアップですか?

 

ええ。そして言ったんです。『今あなたはたすけてと言った。死にたくないと。なら思いっきり生きて見ません?運命に従うのも運命なら、運命に逆らうのも運命なんですよ、きっと』

 

 

―― たは〜、何か背中が痒くなってきますな

 

(苦笑) ええ、まあ。

しかし私には分かったのです。『彼』はその言葉を実践しているのだと。

宿命をうちやぶり、運命を切り開いたが故の言葉なのだと。

気付くと、焼け果てた街と機動兵器の残骸だけが残っていました。

『彼』はもうどこにもいませんでした。しかしきっとまた次の道を切り開きにいったのでしょう。

その後の私は人々に宿命を告げるのではなく、運命を切り開く手伝いをする事にしたのです。

 

 

――ひょっとして貴方も彼を?

 

いやだ(笑) 私はもう四十も後半ですよ? 夫もいますしさすがにね。 

まぁ、私の後を継ぐ娘はミーハー丸出しで騒いでますけどね。

 

 

――では最後に『彼』にメッセージを

 

誰に尋ねられようがあなたの行き先を教えたりはしません。ただし、逃げてはいけませんよ。

逃げた所で鉄拳娘と斬撃少女と天真爛漫蹴少女らに引っ掻き回されるのがオチです。

ある意味『不運と不幸』という宿命に立ち向かうことは出来ても逃げることは出来ませんよ。―― それだけです。

 

 

 

なお、彼女はこの戦争のいきさつを全て知って話してるように聞こえますが、このインタビューは戦争中、

かのナデシコが和平策を練っていた頃の物です。

 

『漆黒の戦神その軌跡』第25巻より

 

 

 

 

 

 

「読みました、なる先輩?」

「もちろんよ。『漆黒の戦神』の最新作でしょ」

「相変わらずムチャしよんなー」

「『運命に従うも運命なら逆らうもまた運命』実に含蓄のある素晴らしい言葉。

 まさしくテンカワアキトでなければ口に出来ませんね」

「そーいやウチのアキトは?」

「いつものよーに、本を前に油汗タラタラです。殆ど四六のガマですね」

「四六のガマってウマイんか?」

「腹壊すぞ、やめておけ。しかし一体幾つトラウマあるんでしょうね、アイツ」

「数えてみたくなるわね。それにしても今どこにいるのかしら」

(しかし斬撃少女やら天真爛漫蹴少女ってのは心当たりあるけど鉄拳娘って言うのは・・少なくともここじゃないわね)

(しかし鉄拳娘やら天真爛漫蹴少女なんてのは思い当たる節があるのだが斬撃少女と言うのは・・恐らくここではないだろうな)

(テッケンやらテンシン何とかってナンやろ?)

「なあしのぶ、ウチ今の彼の居場所って・・・・・何や知ってるような気が・・・・」

「ええキツネ先輩、あたしも何やらすっごくそんな気がするんですが・・・」

 

ゴロゴロゴロゴロ、ドッシーン!

 

「また壁にでもぶつかったみたいね、あの馬鹿」

 

 

 

 

あとがき

 

どーも失敗作っぽいです。私はシリーズである以上他のキャラ・作品で代用できてはいかんと思っています。

それゆえ他の占い師でもよい、ポンパドゥール近松である必要性のないこの作品は成功したとはいいがたいです。

後、今回はオリキャラの危険性について。

私自身も含め多くの投稿作家がオリキャラを作っていますが、これ実は大変危険だと思うッス。

よい例が清音真備です。「天地無用!」のスタッフの一人が美星がお気に入りなので

引き立たせる為の突っ込み役として作った新キャラ(オリキャラ)なのだが、

彼女はほぼ完璧で完全な警察官であり、生真面目な彼女が居候なんぞ出来るわけもなく、

このせいで相方の美星はヒロインの一人から脱落してしまいました。

しかも本来頭がよく、重要なことを決して見逃さず(重要なこととそうでないことの見分けが出来ませんが)

責任感が強いと言う美星の長所は全て清音に持って行かれてしまい、

彼女は結局運がよいだけの無責任なにぎやかしの脇役Aにまでなってしまいました。

美星を目立たせる為の新キャラがこういう結果になった事を考えると

やはり安易な新キャラと言うのは控えた方がいいかなと思っちゃいます。

それではこれにて。

 

 

 

 

代理人の感想

 

む、オチがよし(笑)。

 

オリキャラに関しては全くその通りですね。

というか、キャラクターはそれぞれのバランスを考えて配置すべき物であって、

件の清音でいうと、天地を中心に安定していた所にぽんっと清音を置いたが故にああなったと。

そう言うことなんじゃないかなと思います。