「それにしても、ちょうど食堂の当番が終わって部屋へ帰ろうという時に会うなんて、偶然だね」

 

「ええ、まったくですね」(2時間ほど待ち伏せして用意した偶然・・・いえ運命です)

 

(ルリ・・・・邪魔)

 

 

「部屋についたよ、ルリちゃん」

 

「ありがとうございます、わざわざ送って頂いて。あ、ちょっとお話があるのですが」

 

「ああ、何だい?」

 

しゃがんで同じ高さになってくれる、このさりげない優しさがアキトさんですね。

 

「耳を貸してください」  ちゅっ

 

「わっ」

 

 

「!!!!!」

 

 

「それじゃおやすみなさい、アキトさん」     シュン

 

「びっくりしたなあ。それじゃ帰ろうラピス」

 

(ルリ・・・・・殺す!必死と書いて必ず死なす!

 

どうでもいいがアキト君、あちらの片隅で殺気みなぎらせてる、10対を越える視線に気付いた方がいいと思うぞ。

 

 

「フンフンフンフ−ン♪、今日もアキトさんと一緒に居られました。いい一日でしたね」

 

豊○体操を終えたルリは、電気を切り「ラブリ−あっくん」を抱きしめて布団に入る。

 

「また明日もいい日でありますように・・・・アキトさんが幸せな一日でありますように・・・・・」

 

 

 

見るかもしれないこんな夢

 

 

 

第5.5代将軍家家の治世で平和な世の中の、ここはナデシコ藩。気候もおだやかで適度に豊か。

ついでに人々の頭の中も適度にユルかったりする。

 

 

「ユリカあああああ!ユリカはどこだああああ!」

 

 

ナデシコ藩藩主ミスマルコウイチロウは今日も怒鳴っていた。

 

「また手習いを逃げたぞ!ど−せあの男に会いに行ったにきまっとる。すぐ連れ戻せ!」

 

「ははあ」

 

「まったくお父様ってば、あたしはアキトに会いたいだけなのに。

 待っててアキト。今行くからね・・・ってなんであたし、縄でがんじがらめなの?」

 

「ふっふっふっふっふっふ。捕まえましたよ姫。さあ戻りましょう」

 

「侍女役のメグちゃん?見逃してくんないかなあ」

 

「いいえ駄目です。わたしはまだ出会ってないのでアキトさんとラブラブになれないんです。

 なら幸せな人は一人でも少ないほうが・・・」

 

「メグちゃん?アリサさんやレイナさんまで!お願い勘弁して!」

 

「連れてきなさい!」

 

 

「アキトォ−−−−−−」

 

 

 

 

「ん?」

 

「どうしたい?テンカワ」

 

「なんか誰かに呼ばれたような・・・まあいいか。はい炒め鳥ご飯あがりましたよ」

 

妹二人を連れて諸国を旅し、この料理屋「日々平穏」に最近落ちついた彼の名はテンカワアキト。

鳳龍天昇流の剣の達人でありながら

力を嫌い、他国の料理に通じた彼を近所の人々はあっさり受け入れた。

ついでにフクベ道場の臨時師範もやっている。まあ判りやすく言えば道場破り対策だ。

 

「アキトくん居るかしら」

 

一息ついた店内に入ってきたのは「いかにもタヌキ」な男性と妙に「キツい」女性のコンビ。

 

「おやエリナさんとプロスさん。何かご用ですか?」

 

「はいコレ」

 

「何ですか?こんな大金」

 

「いえね、先日紅屋のやとった与太者五人をテンカワさんが叩き出してくれましたよね。

 そのお陰もあってこの辺りの治安が随分良くなったんですよ。

 町内会からのそのお礼もはいっているんです」

 

「受け取って欲しいの。あなたに」アキト君の手を両手で包み込むように握らせるエリナ。

 

「あ、ご説明しましょう。ウチはネルガル屋。小間物から呉服までなんでも扱っている店です。

 主人はいささか暴走気味なところがありまして私達番頭コンビが店をしきっております。

 結構評判よろしいですよ。コレなんかあなたに似合いそうですね。

 ただ最近隣町の商売敵「紅屋」からの嫌がらせが増えてきたので。

 テンカワさんに用心棒のような事をお願いしてんるんですよ。

 ついでに夜中の見まわりもお願いして、お役所からお手当てなんかいただいてますが」

 

「誰に説明してんだい?」

 

「まあそれはともかく」

 

などとやってると店に一人の男性が飛び込んできた。ナガレとコンビ組んでいる遊び人のサブだ。

 

「テンカワのダンナ!フクベ道場に男女の道場破りだぜ」

 

「男女?」

 

「ああ。男は蜥蜴みてぇで気持ちワリぃんすけど女がすこぶるつきのイイ女でねえ。

 ヤマダ・・・じゃなくてダイゴウジのダンナがあっさりやられちまったんす」

 

 

「弱いですわよアナタ達!もっとつよい殿方はいないのですか?」

 

「まあそう言うな舞歌、われらの木蓮流が強すぎるだけの事。ところでそこの女どもは勝負せんのか?」

 

壁際に座り込んであやとりなんぞやってる二人組に話しかける北辰。

 

「や−よ。痛い思いしたくないし、ちょっとまってればすぐアナタ達叩きのめされちゃうから無駄だもの」

 

「剣道部の部室・・・・・メン・胴・臭い・・・・・くっくっくっく」

 

「面白い事を仰いますわね。一体誰がわたくし達を叩きのめしてくださるのかしら?」

 

「オレがやってみようかな・・・と」

 

突然背後からかけられた声に驚愕する二人。自分達に気付かれずここまで接近を許した者など久し振りだ。

 

「ケガするのもさせるのも嫌いだから」

 

壁にかかっている木刀・・・というよりは細い丸太のようなものを手に取るアキト君。

 

「手早く終わらせようか」

 

 

 

 

時は夕方。空は紅く染まり、鴉も寝床へ帰る頃。

 

アキト君は「フレサンジュ療養所」に来ていた。

 

「お−いルリちゃん。向かえに来たよ」

 

その呼びかけに「後頭部を蹴飛ばす様な」走りで飛び出してくる二人。

16になる妹のルリと、この診療所の主イネスだ。

 

ルリはココで医者に為る為の勉強を兼ねたバイトをしている。

 

「はあはあはあはあ、このウチの婿になる決心はついたのかしら?アキト君」

 

「い、いえそれは・・・・」

 

「さあかえりましょう、にいさま!」

 

「まだ診察の途中でしょう。いくらただの手伝いとはいえ速く終らしてらっしゃい」

 

「むう・・・・ちょっとまっててくださいね」

 

二人の妹の片割れを連れて家路を歩くアキト君。

 

「魚屋のリョ−コちゃんにいい鯖貰ったから、今夜は鯖の塩焼きにしよう」

 

天秤棒での棒術の使い手でもある知人の名を出すアキト君。

こういう状況で他の女の子の名、しかもライバルの名出してどうする?

 

「そういえば・・・」恐る恐るといった感じで兄に問い掛けるルリ。

 

「にいさまは・・・ご結婚は・・・・いかがなさるのですか?」

 

「お前達が一人前になって、婿迎えたら考えるよ」

 

妹達と血は繋がっていないのだが、本人らも含めてだれもが知っている。

 

顔立ちや髪・瞳の色もそうだが自分が「テンカワアキト」なのに。

「ホシノルリ」や「ラピスラズリ」と名乗らせておいて血の繋がりが無い事に気付かれてないつもりでいる。

・・・・・大物かもしれない。

 

器用に、見えない所だけ血管を浮き上がらせたルリはキツく兄の手にしがみ付いた。

 

 

今この時だけでも彼女は幸せだった・・・・・

 

 

「?」

 

長屋の、自分達の部屋の前に帰ってきたアキト君は中から妙な妖気・・・

いや瘴気が二種類噴出してるのに首をかしげる。

 

片方はラピスだろう。寝る時の並び方(兄に近い方)などを争ってよくルリと交わしているから。

 

ではもう一方は何だ?

 

がらり、障子を開けると、そこには・・・・・・

 

「おそい、アキト」

 

「おかえりなさい、ムコどの」

 

 

「ムコどのぉぉぉぉぉぉぉ?」

 

 

 

「で、君は流派の発展も自分が強くなる事も興味なかった・と」

 

「はい。わたくしの目的は『真に』強い男を探し出してムコにすること。

 真に強い男とは力だけでなく、心も強いことだというのはそちらのお嬢さんがたもご承知でしょう」

 

いかにもしぶしぶといった感じでうなずく二人。

 

「で、オレがそうだと?」

 

「ええ。昼間、わたくしをうち倒しながらも傷つけなかったあの一撃にわたくしの心は打ちのめされたのです。

 『傷つける』ではなく『倒す』、あれぞまさしく『風の拳』!」

 

いや、それ作品違う。

 

「もはや流派には絶縁状を送っておきましたから行く所もありません。

 料理洗濯家事全般万事おっけいです。

 ふつつかものではありますが、以後宜しくおねがいいたしま・・・」

 

 

「「駄目!」」 

 

 

 強烈な、それこそ人殺せそうな視線をぶつけ合う三人。

 

「明日の天気はどんなかなあ。張れるといいなあ」 現実から逃げ出した一人。

 

これまで、微妙にバランスを保っていたアキト君の周囲の恋模様は・・・

これ以降関をきったかのごとく混乱していくのですが、それはまた次の機会に。

 

 

それでは失礼いたします。

 

 

「あれ、どうしたのルリルリ?」

 

「なんか夢見が悪かったんです。ひどく不愉快な夢だったのですが・・・・覚えてなくて」

 

「なら食堂でアキト君の顔見て来たら?最高の薬でしょ?」

 

「そうですね。それじゃ行ってきます」

 

 

 

終り

 

 

後書き

 

影竜「あうあうあうあうあうあうあうあうあうあう」

ルリ「ど−するんですか?まるで連載みたいな駄文書いて」

影竜「なんか時代劇っぽいの書いて見たかったんだよう」

ルリ「『深い』と言って頂いたのはいいけど、裏を返せばマニアックで普通人には理解するのが難しいって

   ことなんですよ」

影竜「しくしくしくしく。でもアメコミをもっと普及させよう委員会お茶汲みとしては」

ルリ「そんな変な組織潰れてしまいなさい」

影竜「ひ−ん。でもまあ面白いと言って頂ける人がそれなりにおいでだったら続き書くかもしれないっす」

ルリ「カケラでもいてくれればいいんですけどね」

影竜「はあああああああん」

 

 

 

 

管理人浮遊・・・(いや、ちょと浮いてみたいな〜って)

 

 

影竜さんから九回目の投稿で〜す!!

時代劇に突入しちゃいましたね(笑)

このネタはBenも考えていたんですけどね(笑)

ここは責任を持って影竜さんに連載を・・・(バゴッ!!)

しゅ、しゅみません(涙)

真面目に自分で書きます。

 

さて、今回一番笑ったのがココ!!

 

>『傷つける』ではなく『倒す』、あれぞまさしく『風の拳』!

 

>いや、それ作品違う。

 

わははははは!!

『風の拳』ね(笑)

う〜ん、いったい何を修得してるんだアキト君は?

・・・謎の多い男だ(苦笑)

 

では、影竜さん九回目の投稿、有難うございました!!

 

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後、影竜さんはどちらかと言うと掲示板に感想を欲しいそうなので。

この掲示板に出来れば感想を書き込んで下さいね!!