機動戦艦ナデシコ

魔剣士妖精守護者伝

第1話  男らしく行くか!

 


日本国、佐世保。

かつて造船によって栄えた街。今は少し寂れ気味な街。

その都市の幹線道路を疾走する一つの自転車があった。

2人乗り(違法)である。

一人は二十歳前後の青年で、肩口まで届くボサボサの黒髪黒目の典型的な日本人。

少々怖い系だがなかなかの美形。身長は日本人の平均より高く、185cmはあるだろう。体格も良い。

彼が自転車をこいでいる。

もう一人は、後ろに座り、青年にしがみついている。

12歳ぐらいのツインテールの瑠璃色の髪と神秘的な金色の瞳を持った妖精のような可憐さと儚さを持った少女だ。

ふと少女が、自転車を(必死で)こいでいる青年におびえた様子で声をかける。

「兄さま。少しスピードを上げ過ぎなんじゃ…。」

「しかたねえだろ瑠璃。このままじゃ間に合わねえよ。」

妹、瑠璃(正確には義妹)の質問に当然のごとく答える兄。なお彼の名前は山下龍一

と言う。

それはさておき、瑠璃が怖がるのも無理のない話である。

なぜなら…、現在自転車の時速は74kmなのだ。

怖がるなと言う方が無理がある。

この高速の自転車に揺られ?ながら、瑠璃は何故この様になったのかここ2週間の

出来事を思い出していた。

 

 

 


事の発端は2週間前。その日もいつもと同じ平穏で、楽しくて、そして…とても幸せな日常だった。

東京、葛飾区。

彼らはそこに住んでいた。

全ていつもどうりだった。

朝は何時もの様に義姉と供に寝坊して兄にからかわれ、姉『達』と共に学校へ行く。

小学校に着けば友達と他愛ないお喋りをし、退屈な授業を受ける。

そんないつもの生活。ただ一つの不満と言えばおこずかいが少し少ない(瑠璃視点)事ぐらい。

しかし、ずっと続くと思われたその日常はいとも簡単に崩れる事を彼女達は

この日の夜に知る事になる。

 

 

 

放課後、今日は瑠璃は2人の『姉』と共に家に向かっていた。

「纏、あんた部活は?陸部(陸上部)サボって良いの?」

今答えたのは、山下美月。龍一の実妹である。

やはり黒髪黒目で、ボブカット。しっかりした感じの美少女だ。

「今日は休みだよ〜。今朝話してなかった?」

美月とは対照的な受け答えをしたのは卯月纏。龍一の母方の従妹である。

ほよほよした雰囲気の腰まで届く艶やかな黒髪の美少女だ。

「あのねえ…、瑠璃と一緒に寝坊しただろ纏は。おかげで遅刻しそうになったし…。

何が悲しゅうて朝っぱらから走らにゃならんのだ。」

この美月の非難の言葉と目線を受けるが纏は、

「間に合ったから大丈夫だよ。」と悪びれる事もなくほよほよと答える。

「そう言う問題じゃないそ。」と美月。

瑠璃は微笑みを浮かべていた。姉達のいつものやり取りだからだ。

「あんたもよ、瑠璃。」

いきなり横からの美月の声。

「ううっ、ごめんなさい。」

申し訳なさそうにあやまる瑠璃。

「まあ、良いけどね。」と美月が答える。

もう家はすぐそこだった。

 

 

「「「ただいま〜」」」

「おう、帰ったか。」

出迎えたのは珍しく龍一だった。

「龍一、こんな時間にどうしたの?」

纏が質問する。

「兄さま、お仕事は?」

瑠璃も不思議そうに尋ねる。

「とうとうクビになったか。」

美月に対しては龍一は答えた。  ゲンコツで。

 

 

「親父に呼ばれたんだ。大事な話があるってさ。客が応接間にいる。俺達も来いってよ。行くぞ。」

龍一に連れられて応接間に入ると、両親に向かい合う形で2人の客がいた。

一人は2mほどの大男。もう一人は赤いベストを着たちょび髭のおっさんだった。

「なんとかならんか?プロス。」

父将明の声が響く。プロスぺクターはそれに答える。

「誠に申し訳ありません。私の権限ではここまでが限度でした。申し訳ありません。」

母夏樹が龍一達に気付く。他の3人はとうに気付いている。

「さあ、座りなさい。話があります。とても…重要な…。」

 

 

プロスの話を要約すると、ネルガルが新造戦艦を建造したのでオペレーターを探している。

正オペレーターはすでに決まっているのだが彼女だけに負担をかけさせるわけにも行かない

ので、副オペレーターを探していたとの事。

過去に多大なる恩義がある将明の娘をスカウトするわけには行かなかったが、彼女山下瑠璃

しかいなかったので仕方なくスカウトする羽目になった事。

このスカウトに拒否権はない事、そして山下家に対する謝罪となる。

 

「私………乗ります。」

プロスの話が終わってからの瑠璃の第一声だった。

「な、なな、何言ってんだお前は!バカか!」パニくる龍一

「そうよ瑠璃。違約金だって払えない額じゃないんだし。」

母夏樹もいなさめる。美月と纏はあまりの事に呆然としている。

「これ以上ご迷惑をかけれません。それに私は、自分の立場をちゃんと理解しています。

それに…もう会えないわけでもありません。…いえ、きっと会えます!だから……。」

そこまで言って言葉に詰まる瑠璃。目には涙を浮かべていた…。

それを見た龍一は一瞬の思案のあと、おもむろに立ち上がり、

「プロスさん。俺も雇ってくれ…いや、雇って下さい!!」

沈黙を守っていた将明の口元には、笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

「わりぃ。勝手な事言っちまって…。」

プロスとゴート(セリフ無し)が帰った後、龍一は家族に向かって謝っていた。

「まったく、仕方の無い子ねぇ。」とか言いつつ全然困った素振りを見せない夏樹さん。

「やっぱあれでこそお兄ちゃん!漢だね!」

「う〜、とってもかっこよかったよ龍一。」

美月と纏は賛成のようだ。

「に、兄さま。何を言ってるんですか?!私は戦艦に乗るんですよ。」

「だからなおさらだ、瑠璃。第一人見知りのお前ひとりじゃ危なっかしくてとても乗せらんねえぞ。

それに、俺は警備担当として乗るんだぜ。ドンパチするわけじゃねえしな。」

決して揺るがない決意がその言葉から感じ取れる。

 

最後に将明が口を開く。

「まあどの道あのまま瑠璃行かすんだったら勘当モンだったけどな。

それより瑠璃連れて駆け落ちでもすれば良かったんじゃねえか?」

「と、父さま、」将明の言葉に真っ赤になる瑠璃。

「出発は二週間後。それまでに準備しねえと。寂しくなるな。」

 

 

 

 


そして今に至ると言うわけである。

なお、瑠璃(と龍一)が戦艦に乗る事を知った彼らの友人達は当然激怒した。

瑠璃は彼等をいさなめるのにとても苦労した。

……龍一は煽っていたが…。

なお、一番怒ったのは美月と纏である。

 

 

 

ふいに瑠璃は前の龍一に抱き着いている腕の力を強くした。

「ん、どうした?」

「ありがとうございます。着いてきてくれて。」

龍一の背中に顔をうずめて顔を赤らめて言う。

「ああ。そんことか。別に感謝される事じゃねえよ。当然の事じゃねえか。お前一人じゃ不安だしな。」

そっぽを向いて答える龍一。それが照れ隠しだと言う事は瑠璃は知っていた。

(兄さま……。ありがとう……。)

現在自転車の時速は76km。

荷物はすでに目的の戦艦に送ってあるので、わずかな手荷物のみだ。

それでもいくら小学生とはいえ、とてもではないが人一人乗せて出せるスピードではない。

ふいに龍一は前に青年が一人が立っているのに気付く。

「お、おい!そこをどけええ!!!!」

その突っ立っている人物は、気付くのが一瞬遅れた。

「チイ!間に合わん!!離脱!!

瑠璃を抱きかかえ自転車から飛び降りる!!

見事な受身を取って着地成功。

「瑠璃!大丈夫か?」

「な、なんとか…。」

平気そうな龍一と対照的にそうとう参った様子の瑠璃。

龍一は自転車の方を見る。

「やっちまったか…。」

そこには自転車と正面衝突してしまった青年が倒れていた。

頭から血を出して。

(やべえな…。マジで殺っちまったかな…。)

「に、兄さま!そ、その人、」

「ああ、大丈夫だろ。多分

(この状況じゃどうあがいても罪は免れんな…。

どうやら救急車を呼ぶと言う考えはないらしい。

「兄さま!救急車を呼んだ方が…。」

「ああ。」

瑠璃に言われて返事をする。が、

(いっそ棄てちまうか?

とんでも無い事を考えていた。

とその時、現場のそばを一台の車が通る。

そしてその車は止まった。

(チャンス!!)

即座に駆け寄る龍一。

車からは藍色の髪の女性が降りてきた。

「あのう、どうかなされたんですか?」

女性が尋ねる。

「ええ。どうやらひき逃げがあった様で、青年が一人負傷しているんですよ。」

と、答える。嘘は言っていない。そして、

「あと、はこう言う者です。」

と言って警察手帳を出す。

偽造ではない。本物である。

「あっ、刑事さんですか。けどこんな所で何をしていたんですか?」

「そこにいる義妹とともにネルガルのドッグへ。ちと用事がありまして。」

「へえ〜、奇遇ですね〜。私達もそうなんですよ。」

「そうですか…。あの青年を運んでもらおうと思っていたんですけど…。」

「へっ?救急車呼ばなくていいんですか?」

「ぱっと見ただけですが、頭切ってるだけですよ。」

「ユリカー。何しているの?遅れるよー。」

車から降りてきた押しの弱そうな男性が声をかける。

「ジュン君。今刑事さんとお話しているの。」

「今はそんな場合じゃないだろ。ってこの人が刑事?」

「悪かったな!」

よくある事である。龍一は刑事というよりマフィアの若き幹部(ヤクザの若頭)と言った方がしっくりくる。

よくソッチ系の仕事の人と間違われるのだ。

「んな事よりコイツをどうするかだ。」

 

 

「すいません。乗せてもらって。」

「いいのよ。目的地も同じだったしね。」

あのあと、双方とも時間が無いので、青年はとりあえず佐世保のネルガルドッグの医務室に

入れられることになった。

その際ユリカの「目的地が一緒なら一緒に行こう!」の一声で龍一と瑠璃は車に便乗させてもらった。

「へえ〜。それじゃあ山下さんと瑠璃ちゃんって兄弟なんだ〜」

「はい。そうなんですよ。」

初対面でもユリカには関係無い。

瑠璃も初めは戸惑っていたが、馴れたみたいだ。

「ちっ。このままじゃ間に合わねえ。飛ばすからしっかり掴まってろ!」

龍一が言いアクセルを踏む。

一気に加速する。

後ろからサイレンの音が聞こえてくるのは仕方ない。

現在時速210kmである。

その最中、ユリカが疑問に思ったことを口にする。

「このはねられた人、ごこかで見たような…。」

龍一も思ったことを口にする。

「けっ!ポリ公ごときに捕まっかよ!!

どうやら高校の頃のヤンキー癖が再発したらしい。

 

 

「で、なんとか間に合ったと…。」

佐世保ネルガルドッグまで警察を撒いて逃げ延びた龍一達。

現在プロスに連れられて乗る羽目になった戦艦に案内されている。

ユリカ達は用事があるらしくドッグに着くなりどこかへ行ってしまった。

「見てください。これが我が社の誇る最新鋭戦艦ナデシコです。」

プロスが高らかに言う。んが……、

「佐山さん(ご近所の方)の所のゴンちゃん(♂3歳)みたいですね。」

あまりにもあんまりな瑠璃の意見を聞き、プロスは少しへこむ。しかし、龍一は、

「ペガサス級…。ホワイトベースじゃねえな。グレイファントムか?いや、ネルガルがデザインパクったか。」

瑠璃と同じく論点がずれていた。

 

 

ナデシコの性能の基本的な説明も終わり、今度は内部を案内しようと格納庫に入った時、

ドガシャーン!!!

と、ひときは大きい音がした。

「ロボットがこけとるな。」

「そうですねえ。」

そこですかさずプロスが説明に入る。

「あの機体はエステバリスと言って…「知ってっからいいっすよ。。」そうですか…。」

龍一に言われ心なしか寂しそうなプロス。

「バカヤロー!俺のエステちゃんに傷つけやがって!」

と、整備班班長のウリバタケ氏(29)の声がした。

「おかしいですね。パイロットの搭乗は来週のはずなのに。」

「待ちきれなくて乗ったんじゃないんすか?」

龍一とプロスが話している横で、瑠璃は呆然と向こう側を見ていた。

「に、兄さま…。あ、あれ…!」

「ん、…………って、瑠璃がもう一人??? …ってことは、ドッペルゲンガー??

「へっ?」

もう一人の瑠璃も答えた。

 

 

 

もう一人の瑠璃の話によると、彼女の名前はホシノルリ。機動戦艦ナデシコのメインオペレーターらしい。

つまり瑠璃の同僚である。ある人がナデシコに乗りこんでくるのをまっているらしい。

「しっかし、気味が悪いほど似てるな。血繋がってたりして。」

冗談がましく言う龍一。ちなみにプロスは、エステをこかしたパイロットに説教に行っている。

「私もビックリしました。世の中不思議な事もあるものですね。」と、ホシノルリ(以下ルリ)。

「世の中には同じ顔の人は三人いると言われてますけど、ほんとに会うとは思いませんでした。」と山下瑠璃(以下瑠璃)。

(こりゃマジでシャレに何ねえかも。こいつ(ルリ)の方は11だから家の妹のクローンかもな。)

彼女らの立場を考えればありえない話ではない。龍一はその事をよく知っている。

(バックアップ取ってたって訳か?ネルガルめ、人を道具としてしか認識してねえな。クソどもが!!)

「兄さま、兄さま?」

「あ、いや、何でもねえ。それより、ルリ…でいいよな? さっきナデシコの医務室に怪我した兄ちゃんいれたんだけど、アレじゃねえのか?お前が待ってるって人間は?」

別に確証は無いが、龍一は何となくそういう気がした。

「本当ですか?行ってみます!!」

そう言うと、嬉しさを隠すことなくテッテッテと走っていった。

「兄さま、私達もブリッジに行きましょう。」

「いや、俺はもう少しここにいるよ。」

「もう、先に行ってますよ。」

「ああ」

(男の人ってそんなにロボットが好きなんでしょうか?はぁ〜。)

少し残念そうな顔をして格納庫を立ち去る瑠璃。

 

 

そして………………………………

 

ビィィィィィィィィーーー

「もう敵襲か? いつつつ。」

「ダメですアキトさん。寝てないと。」

「けど奴らが、このままじゃナデシコが落ちてしまう!」

「けど、怪我が…。」

アキトの怪我は、そんなに重いものではなかった。かといって軽いものでもないが…。

「大丈夫だこの程度。」

「ルリちゃん、大至急ブリッジに戻ってきて。」

<前回>とは違い、すでにブリッジにいるユリカ。その他にも色々変わっているが二人はまだ知らない。

「私行かなきゃ。アキトさん無茶しないでください。」

「ああ、わかったよなるべくね。」

<絶対に>とは言わないアキト。その事に先ほどまで泣いていて真っ赤に充血した目に悲しみの色が浮かぶ。それを見て、

「大丈夫。約束する。」

アキト、折れる。

 

 

 

そしてブリッジ

「キィィィィィィィィーーー!なぜ動かないのよこの船は?」

「ですからオペレーターがいませんから。」

がたがた騒ぐキノコをなだめるプロス。なおこのキノコ、名をムネ茸サダアキ(誤字ではない)と言う。連合宇宙軍から嫌がらせアドバイザーとして送りこまれた。頼んでないのに。

「その小娘にやらせればいいでしょう!!」

「彼女は未経験者です。」

「そうよ〜。そんな子にやらそうなんてひっど〜い」

「最低ですね。」

今のセリフがそれぞれハルカミナトとメグミレイナードである。

「ごめんなさい…。」

罪悪感にかられ、ふいにあやまる瑠璃。

「気にする事なんて無いわ。あの軍人が悪いんだし。」

「そうよ瑠璃ちゃん。」

「ありがとうございます。ミナトさん、メグミさん。」

とても戦闘前のブリッジとは思えない。と、そこへ、

「遅れてすいません。」  ルリが入ってきた。

 

これまで沈黙を守ってきたフグべ提督が口を開く。

「艦長、作戦は?」

「海底ゲートを抜け、敵の背後に回り込みグラビティーブラストで一気に殲滅します。ドッグ注水、ミナトさん舵よろしく。」

実にきびきびとしたユリカの指示。先ほどまでのユリカの様子を知っているブリッジクルーはその変化について行けず、唖然としていた。と、そこに、

「パイロットのヤマダ「ダイゴウジガイ」さんは骨折しているので出撃できません。なのでパイロットはいません。」

とルリの突っ込みが入る。

「ええ〜〜。どうしよう〜〜」

しかし、「あ、エステバリスが一機地上に向けて出撃しています。」

「すぐに通信つないで!」

「はい。」

 

そこにでてきたのは…………………………

「君、名前と所属を言いたまえ。」

「山下龍一、警備担当っす。」

「に、兄さまッ!!何故そんなとこに??」

「コクピット見てたら勝手に何時の間にか…。」

「何故警備担当が俺のエステバリスに乗ってるんだ!!」

「乗りたくて乗った訳じゃねえ!!」

「もしもし、危ないから降りた方がいいですよ?」

「降りれるなら降りてるよ!」

「君、操縦の経験はあるのか?」

「んなモンあるわけねえだろ!」

律儀に(?)全て答える龍一。

「すいません。」

「あんた…、さっきの…。ここの艦長だったのか。」

「はい。あの、実はこの船パイロットがいないんですよ。だから囮役お願いできませんか?」

「お、囮ったって、プロでもムズいのに素人の俺には…。」

そう言って後ろを見る龍一。そこにはこんな無茶までしてこの船に乗るきっかけになったかけがえの無い大切な妹がいた。

(ここでやらなきゃ瑠璃は、いやここにいる連中は死んじまう。やるっきゃねえか…。)

「何分逃げればいいんだ?」

「えっ?」

「何分逃げればいいのか聞いている。」

「あ、はい。10分、いや5分です。」

「兄さま! 危ないです! やめて下さい!!」

とたんに瑠璃が通信に割り込む。

とても不安げに…。

「で〜じょ〜ぶだって。死にゃあせんだろ。」

「でも…!」

なお食い下がる瑠璃。それを見た龍一はふと珍しく真面目な顔をして静かに言った。

「俺を信じろ。」

絶対的な説得力のある声。瑠璃は何も言えなかった。

通信を切る龍一。後には、頬を赤く染めた瑠璃がいた。 

 

 

「強がるんじゃなかった……。」

バッタの攻撃を避けながら、地上に出てから囮役になった事を痛烈に後悔していた。

(5分も持たねえかも。やっぱ瑠璃連れて逃げた方が良かったか?)

かなりヤバめの思考になっている。それほど切羽詰っていた。

ちなみに龍一はマニュアル操作で操縦している。ゲーセンでの訓練(遊び)が大いに役だっていた。

ブリッジからは「信じられん。」、「素人とは思えません。」、「スゴイ。」、「結構カッコイイ顔してるわね。」、など聞こえてくるが、わざわざきにする余裕など今の龍一には無かった。

(これが機動兵器での実戦か…。 雰囲気は喧嘩とあんま変わんねえな。これなら…!)

平静を取り戻してきた龍一。とそこに、「上だ!!」

「うおっ!!危ねえ。さっきの兄ちゃんか。ありがとよ!」

先ほどはねた青年――アキトに礼を言う龍一。

(どうやら無事みてえだな。良かった良かった。それに逃げるだけってぇのも癪にあわねえ。やるか!)

今まで逃げていたエステを反転させ敵の方に突っ込む。

「素人なめてんじゃねぇぞコラアアアア!!!

ワイヤーフィストをブッ放し、今まさにミサイルを放とうとしているバッタを捕まえ敵の密集地に投げ飛ばす!!

発射しかけのミサイルが次々と敵に降り注ぐ!

ボディ内部のミサイルにも誘爆し盛大に爆発するバッタ達。

上空を飛んでいたジョロ達が龍一の視界外からミサイルを放つ。しかし、

(なんだ、この感じ…、!くる!!)

ふと何かを感じ、とっさに右へと飛ぶ。

その直後、龍一がいた場所にミサイルの雨が降り注ぐ!

「上手い!!」 その光景を見ていたアキトが反射的に叫ぶ。

「あぶねえー、あと少し遅れてたら…。あと(時間)どんぐれえだ?」

「後少しです。兄さま頑張って!!」

瑠璃の激励を受け、海岸に向かってローラーダッシュで走り抜ける!

「げっ、行き止まりぃ〜?」

「大丈夫です。飛んでください」 ルリが言う。

「うっし、ちっ、左?いや前か!」 間一髪でミサイルを避ける龍一エステ。

「ええい!ままよ!!」 空高くジャンプする龍一。

そして水面に、いや、海中ゲートから出てきたナデシコの甲板に着地!

「よ〜し、目標敵まとめてぜ〜んぶ。撃て〜!!」

ユリカの宣言と共に放たれるグラビティーブラスト。

敵はほぼ消滅した。

甲板の上と言う特等席にいた龍一の感想はシンプルに、

「すげぇ……。」だった。

 

「兄さま!大丈夫ですか?」

戦闘が終わっての瑠璃の第一声がそれだった。

「ああ。何とかなるもんだな(ヤバかった…)。」

「けど……、よかった…………。」

「んなオーバーな。」

このやり取りを見て微笑むミナト。

(良いお兄ちゃんじゃないの瑠璃ちゃん。)

 

程なくして…………、

「アキト!! アキト、アキト!! アキトなんでしょう!!」

「………ああ、そうだよユリカ、久しぶりだな。」

(なんか辛そうだな、あの兄ちゃん。ミスマルさんと何かあったのか?って俺には関係ねえか…。)

龍一は、その鋭い観察眼でアキトの感情の変化を捉えていた。それは、常人には絶対にわからないレベルの物だった。

とたんに騒がしくなるブリッジの声を聞いて龍一は思う。

(まあ、退屈はしねえかな。)

 

 

 

まだ始まったばかりだ。すべてが……。

 

 

                                                    第二話へ


 

後書き

やっちまった。書いてしまった。とうとう書いてしまった。早ActionHomePageに出会って8ヶ月。まさかSS書きになろうとは…。世の中わからないものですな。

まだまだ新参物のへタレSSですがこんなので良かったらどうぞよろしくお願いいたします。

ちなみに魔剣士とは龍一の事を指します。しかし、それが意味を持つのはまだ先です。

最後にすばらしいSS書でありすばらしい人生芸人である管理人Benさんと、日夜ページの更新に(ほとんど)命を懸けている代理人鋼の城氏に惜しみない感謝の意をささげます。

 

 

 

 

代理人の感想

いや、さすがに命はタマにしか懸けてませんが(爆)。

しかしマシンチャイルドというのはナニゆえ誰も彼もブラコンの気があるのでしょうか(爆)。

 

 

 

>男の人ってそんなにロボットが好きなんでしょうか?

 

 たうぜんである!