機動戦艦ナデシコ

魔剣士妖精守護者伝

第6話 とある出会い 前編 

 


現在は12月。ナデシコが火星で消息を絶ってから2週間になる。
サイド7より地球に降りた後も、龍一と瑠璃の生活はナデシコ乗船前と何ら変わる事は無かった。

将明と夏樹が子供達に仰天の告白をしたのは、そんな最中の事、12月の初めであった。






「明日、家に新しい家族が増えるぞ。喜べお前ら」
将明が唐突にこう言ったのは、12月1日の夕食時。
「つまり明日、母ちゃんの久しぶりのお通じがでへぶらっ!!」
何やら食事中において、凄まじく適さない事を口にした龍一に将明が拳骨を落とすを
尻目にリオが口を開く。
「えーと、それはひょっとしてギャグで言ってるの、父さん?」
「残念ながらマジだ」
間髪いれずに返した将明の口調、表情とも真面目だった事もあり、リオはどうやら将明が言った事が
本当だと頭を抱えながら確信した。
「そんないきなり言われてもっ!」
「そうですよ。色々準備とかもありますし。家の掃除とか、お部屋の準備とかっ」
美月と瑠璃も確信したらしく、いよいよ慌て始める。
「この前の日曜に掃除したあのお部屋?」
そんな二人の喧騒を横目に、纏はやっぱりマイペースに記憶を探りながら、受け入れの為の準備を
していたと思われる、ここ一ヶ月の伯父夫婦の行動を思い出していた。
「そうよ。もう準備は万全なのよ」と夏樹が笑うのを見て、殴られた頭を擦っていた龍一はリオと共に
溜息をついた。
「って!」
龍一が最も大きな問題に気付いたのはその時だった。
「コイツはどうなるんだよ、コイツは!!」
「ふへっ?」
そう言いつつ、龍一は間の抜けた声を出したコイツ――レナードの首根っこを緩くだが掴まえる。
「コイツの事は……」
とても言い難い事――パニック症候群を患っている――である為、龍一はそこで言いよどむが
それでも龍一が言わんとした事は家族全員にほぼ伝わった。

「けど、大丈夫よ」
今だ龍一に首を掴まれた状態のレナードがそう口を開いた。
「え? 何でだよ?」
そう返す龍一に、レナードは少し悪戯っぽさを含んだ笑みを浮かべながら続けた。
「だって、会ってるもの。3回位かな? それで色々とお話ししたの。私の事もちゃんと理解してくれたし
とっても良い子だったわ」
「そーなんだ」
そう声を上げたのは美月だった。
「うん。小父様と一緒にね」
「えーと、これは……」
龍一は両親にどういうことだ、と言う言葉を含ませた視線を来る。
「だからさっき母ちゃんが言ったろ。『もう準備は万全』だって」
最大の問題への心配は杞憂に終わった。
龍一はその事に安堵を覚えたが、と同時にレナードが自分の知らない所で自分の知らない他人と
会っていた事に、何やら言葉では言い表せない不思議な気持ちになった。
それが表情に出ていたのか、弟妹達はしきりに首を傾げていた。







「で、どんな奴が来るんだよ?」
食卓に起きた一連の混乱が終息し、最大の懸念も無くなったので、龍一はいよいよ本題とも言える
領域に、話を突っ込んだ。
皆も勿論興味があるので、息を飲んで両親とレナードを見た。
期待と不安。それらが織り交ざった視線が3人を射抜いた。
「ええっと、それについては小父様か小母様がっ」
はその視線に気圧されたレナードは、将明と夏樹に話を振った。
「ウヒッ」
話を振られた将明の口からそんな音が漏れる。
それに不吉な気配を感じる間も無く、夏樹が口を開いた。
「さっきレナードちゃんが言ったと思うけど、とっても可愛らしくて良い女の子よ。歳は12歳。つまり
美月や纏と同じ学年ね。後は明日会ってからのお楽しみ」

とっても可愛らしくて良い『女の子』。その言葉に妹達は歓声を上げたが、龍一とリオは固まった。


思春期の女の子が、見ず知らずの男が居る家にやって来る。
新たな、そして大きな懸念が生まれた瞬間だった。

















翌日、学校の放課後。リオは当ても無く近所の商店街を徘徊していた。
12月の冬の空気は、学校の制服を容赦なく刺した。



「俺、今日みたいな事有ったらキターってなると思ってたんだよ実際。それなのによ、何か期待
よか不安の方が強いんだよな」
「そりゃ俺もだ。こんなエロゲ見てぇなシチュ、普通はねーかんな」
夕食の後リオと龍一は、龍一の部屋で明日山下家に来る少女について話し合っていた。
「けどさ、何でだろ?」
「そりゃおめぇ、相手の顔が解んねーからな。親父らのお墨付きっぽい相手だから、滅多な事は
無ぇと思うけど」
そう言って、自分の愛機のPCで20世紀末より脈々と続く世界最大の某匿名掲示板の閲覧を再開する龍一。
「あったら困るっつーの」
リオは溜息を吐きながらPCのモニターを覗き込んだ。
「ラウンジに書き込んでる場合かよ」
「厨が物凄い勢いで暴れてる!」
「今話してる問題は厨房以下か」
リオはモニターのスイッチを消す。
「俺にとっては等価値……な訳無いか」
そう言って龍一はリオに向き直った。
「今までが本当に良い環境っつーか居心地が良かったからな。それがどう変わってしまうのかってのが
不安なんだろうな、俺達」
「何か情けないね、それ」
そう言いつつも、恐らく兄の言った事が不安の答えなのだろうとリオは感じていた。

「つまりだ、今までの性活態度が取れなくなる可能性が高くなるって訳だよ。風呂上りに素っ裸で涼んだり
エロビを夜中のリビングで見たり、エログッズを部屋に出したままにしたり、エロゲを大っぴらにしたりは
出来なくなる!」
「そうそう。ってそれは今までも出来なかった事じゃん!」
「だからだ、より出来なくなると」
「解ったからもういいっつーの」







「そいや、例の娘が家に来るのってそろそろだったよな」
紅茶の缶を片手に公園のベンチに座っていたリオは、携帯電話のディスプレイに表示されている
時計を見ながら呟く。
「結局、どう接したら良いかなんて決まらなかったしな。……って!」
リオは頭を振った。
「ええーい! 俺等がこんなんでどうするんだよ? 俺は山下家の次男だぞ」
そう口から漏らすと、幾分か気が晴れた。
「しっかりしないと。こんな女々しいのって、男らしくない……」
制服のブレザーのネクタイを緩めながら地面に視線を降ろすと、落ちた枯葉が目に入った。
「それに妹達も、向こうだって……てか向こうの方が不安な筈だし。やっぱり俺等がしっかりしないとな」
結論は出た。
今までのとても居心地の良い環境が、どの様に変わるのかはまだ全然解らないが、ここは
男である自分がしっかりしなければならない。

恐らくは兄も同じ結論に達してる。

そう考えて、とっとと家に帰ろうと顔をあげた時――――――

「え?」
リオの感覚は、その刹那の時間鳥――白鳥らしき物を視た気したが、それが何かと考える前に








夕日に映える淡い赤色がリオの視界に入った。







瑠璃と同じ様に、ツインテールとなった淡い赤色の髪を風に緩やかになびかせるその姿は、その少女の
愛らしい容貌や、ドレスの様な素人目でも一目で解る仕立ての良い上品な服装と
相まって、まるで童話の中の姫君の様だとリオは思った。

「?」
少女がこちらを向く。リオが凝視していた事に気付いたからか。
無神経だったか、と反省しつつリオは彼女が日本人で無い事を理解した。
(俺と同じで白人……だよな)
少女はジッとこちらを見ている。リオにどういう言語で話し掛ければ良いのか解らないのだろう。
そしてそれはリオも同じである。
しかしコミュニケーションには困らないだろう。何故かは解らないが、彼は日常会話程度
なら20ヶ国語を操れるからだ。

さてどの言語で話し掛けようか? やはり英語が一番無難か。リオは英語で話し掛けようと
口を開きかけた時、少女が先に口を開いた。

「私の事、見てた?」
えっ?と言う声が思わず出そうになった。
それは少女が話した言葉がとても流暢な日本語だったからだ。
「ねぇ、見てた?」
そんなリオの戸惑いに気付いたのか、少女は少し苦笑しながら続ける。
「あ、ああ。とても綺麗だったからね」
そんな台詞がおくびも出さず出たのは、日常でよく使っているからか。
とにかく自然にそんな言葉が出た。
少女は一瞬、キョトンとしたがすぐに笑い出した。
「あはははは。もう、綺麗だったら貴方だって同じじだよ?」
「俺が?」
リオは首を捻ったが、少女はさらに言葉を続けた。
「だって、まるで白馬の王子様みたい」
今度はリオが笑う番だった。
「ははははははは。俺が、ねぇ。金髪碧眼だからかい?」
リオがそう言うと、少女は首を振った。
「ううん、違うよ。たしかにとても綺麗な顔してるけど、それだけじゃないよ。
もっとこう……雰囲気みたいな。ええっと……、日本語で言うと気品とか、そんな感じかな?」
それに金髪で青い目だけで王子様なんておかしいよ、とも少女は付け加えた。
そんな少女の答えに目を丸くしながらも、「俺も感覚は完璧に日本人だな」等と感慨を浮かべた
リオは、自分が座っていたベンチの横に少女を招いた。


ベンチに座った事で、さらに近くで見る事になった少女の顔はさらに愛らしく美しい。
「旅行かい?」
リオの口から出た言葉は、ありふれた質問だった。

だが、少女の答えは違った。
「ううん、今日からこの街に住むの」
「えっ?」
「今日からお父様のお知り合いのおじ様の家にお世話になるの」
そう言葉を続けた少女は、少し不安げだった。
「そうなんだ……」
どう答えたら良いのか解らないリオはそうとしか言えなかった。
「けど大丈夫」
少女は微笑みながら言った。
「一緒に住んでいれば、それでもう家族なんだから」
それはとても共感できる言葉だった。

「あー! もうこんな時間だ。戻らなくちゃ」
少女は慌てて立ち上がる。
「私行かなくちゃ。バイバイ」
少女は駆けていきながらリオに手を振った。
「ああ、バイバイ。それと、君なら絶対大丈夫だ!」
リオも手を振り返しながらそう大声で言った。
「ありがとっ」
その言葉を残して、少女は立ち去った。
「ウチ以外にもそんな事があるんだな……」
リオは少女が走り去った方向を見ながら呟いた。
「『一緒に住んでいれば、それだけでもう家族』……」
少女が言った言葉を反復する。心にとても染み渡る、そんな気がした。
「ウチもそうなんだよな。そうでなきゃ、成り立たないよな」
そう呟いた後、約束の時間をオーバーしかけている事に気付いたリオは、急いで家へと駆け出した。



















山下家玄関――――――

走って戻ってきたリオは、門をくぐり庭を抜ける。
玄関の前で息を整えると、引き戸を引いた。

「お帰りなさいませ、ご主人様!」
見覚えの無い可愛らしい少女が自分を出迎えている。

どうやら家を間違えたらしい。
「どうもすいませんでした」
何事も無かったように引き戸を閉めると、2,3歩後ろに下がり家全体を確認する。
「間違える訳無いよな」
自分の家である。
さっきのはなんだったのかと首を捻りながらも、再び気を取り直して玄関に向かった。
さっきのアレは気のせいだ、等と思いつつ――――


「お帰りなさいませご主人様!」


……気のせいでは無かった。

リオは戸を開けた状態で固まった。
そして自分を出迎えた少女も笑顔のままで固まった。

何故なら出迎えた少女は、先程公園で話したあの少女だだったからだ。

何だかとっても気まずい沈黙が降りる。
1分程過ぎた頃だろうか。奥のリビングの方から母親――夏樹が出てきた。
「ね、私の行ったとおりでしょ? あなたみたいな可愛い女の子がご主人なんて言っちゃうと、オトコノコはイチコロなんだから」
そう笑いながら玄関に出てきた夏樹は、そこで固まっている二人の少年少女を見て首を傾げた。





















山下家リビング――――――

「はっはっはっはっはっは。そりゃあまた凄い偶然だ」
「笑い事じゃないよ。マジで凍っちまったんだから」
爆笑する将明に、苦笑を返すリオ。
集まっていた皆もやはり笑っていた。
リオ以外の家族は既に集まっており、後は彼の到着を残すのみとなっていた。

「えーと、皆集まったみたいだし、そろそろ自己紹介と相成るか」
龍一が先頭を取って音頭を取る。
「それじゃ改めて自己紹介、お願い出来るかな?」
「はい」
龍一に促されて、少女は姿勢を正して立ち上がり、口を開いた。
「それでは改めて……。初めまして、今日からこの家でお世話になるロックフィーネ=グローマンです。
ドイツから来ました。ロックと呼んでください。」
少女――ロックはそう言い終るとぺこん、とツインテールを揺らしながら頭を下げた。
その動作は何処か優雅で洗練された物だった。

――上流階級の人間なのか?

そんな事をリオに思わせる動きであるが、それと同時にロックの身長が意外に低い事にも気付いた。
恐らくは150cmを切っているだろう。
だが、彼がそんな事を考えている内にも自己紹介は進んでいく。
「では俺から。山下将明、素敵なナイスミドル48歳、この家の家長だ。職業は軍人、ヤクザじゃ
無いぞ。階級は……まぁいいか。これからもよろしくな、ロックちゃん」
「親父、顔怖いから、顔」
立ち上がり、ロックに向かって笑い掛けながら自己紹介をする将明とそれを茶化す龍一。
そして茶化した龍一は将明に耳を抓られる。
そんないつもの山下家の光景に、ロックは「よろしくお願いします、おじ様」と言いながら思わず噴出した。

「はいはい、喧嘩は外でなさい。それでは私も改めてまして、山下夏樹です。この方、将明さんの
妻です。夫や子供達共々これからも宜しくお願いね、ロックちゃん」
夏樹は優しく微笑んだ。
「はい、よろしくお願いします、おば様」
「俺の名前は〜〜〜」
夏樹の後ろからそんな声が聞こえてきたのはその直後だった。
将明に腕の関節を決められた龍一の声だ。
「ほれほれほれほれほれ」
「あ痛たたたたたたた」
「アレは放って置いて、次行って見よー!」
将明の関節技から(何処か余裕があったが)逃れようとする龍一を尻目に、美月が音頭を取る。
「ゴラヴィヅギ カッデルジギヅナ! 」
「次はお姉ちゃん、どうぞ」
痛みの為か、滑舌がかなり悪くなった龍一を美月は無視した。

「えーと、私も改めまして。レナード=ティルエルスです。故あってこの家でお世話になって
います。これからもよろしく」
レナードは軽く頭を下げ、ロックも「よろしくお願いします」と頭を下げた。
ロックは、レナードが何故この家に引き取られているのかを聞くと言う愚行は犯さなかった。
彼女もまた、自分と同じ様な状況だったのだろうと思えたからだ。

「お次は私ね」
美月は元気良く声を出した。
「私は山下美月。中学一年です。この家の長女、かな? よろしくね、ロックちゃん」
「よろしくね、美月さん」
元気の良い自己紹介をした美月だが、ロックの言った美月『さん』にかなりの戸惑いを感じた。
「そ、そりはちょっと……」と言いよどむ美月に、ロックは人懐っこい笑みを浮かべた。
「じゃあさ、ミツキって呼んで良い?」
「え、良いの?」
「うん。その代わり私の名前もちゃんとロックって呼んでね!」
「うんよろしくね、ロック!」
「こちらこそよろしくねミツキ!」
二人の少女はお互いに手を取り合った。

「バヂディイタイッデ!!」
「ええい、オンドゥル星人め。どのルートから密入星したんだ。吐かんか!」
「俺はディガル!」
「デカ長、こやつは中々強情ですね。我々MIBの拷問に耐えるとは」
「うむ。しかもよりにもよって俺のバカとは言え息子に化けるとはけしからん」
「いい加減にしよろバカ親父! リオ、お前も何混じってんだ!」
関節技実行中のバカ親子は、何時の間にか申し合わせた様にリオまで寄って来て、更に混沌と
した状況になっていた。
「あの〜、そろそろ止めないとっ。お客さんが居るんですよ。それに兄様が〜」
龍一に関節技を掛けている将明と、それを煽るリオを何とか止めようとしている
瑠璃は、健気にも哀れにも見えた。

「瑠璃〜、何時もみたいに放って置いたらすぐ収まるよ〜」
と、瑠璃にそう言ってから纏はロックの方に向き直った。
「それじゃ次は私ね」
「えっと、大丈夫かな?」
そう言ってロックが指差したのは、言うまでも無い事だが2馬鹿から3馬鹿へとパワーアップした
お馬鹿な親子である。
「大丈夫よ、スキンシップみたいな物だもの。それよりご免なさい。この家で暮らす初日から
こんな見苦しい物を見せてしまって」
夏樹が申し訳無さそうに頭を下げるのを、ロックは慌てて止めた。
「そんな事無いですよ。とっても賑やかで楽しいです」
それは本心からの言葉だった。
確かに戸惑いは有った。だが、ロックは将明達親子が自分の緊張を解く為にあえてこの様な事を
やっているのでは?と考えたのだ。
(((受けてる!!!)))

――そしてそれは事実であった。

将明自身にはそういった意図があったのだ。だからこそ、ああいった行動をこの様な場面で取ったのだ。
息子達もそれに気付いたのか、一言も打ち合わせが無かったにも関わらず
将明に行動をあわせたのだった。
ちなみに、この様にこの親子が事前に何の打ち合わせも無いのに、まるで申し合わせたかの様な行動を
取るのは、別段珍しい事でも何でもなかったりする。

「それはちょっと買い被り過ぎだと思うなぁ。と、それは置いといて。私の自己紹介を。
卯月纏です。美月やそこで関節技を掛けられてる龍一とは従兄妹になるの。よろしくね、ロック……でいい?」
「うん! こちらこそよろしくね、マトイ!」
もっとも、この親子が多分に悪乗りによる暴走をしていた事を想像していた纏は、今だ関節技を
解いていない将明達にジト目を送りつつも、ロックとにこやかに握手を交わした。

――とても良い友達に成れそう。
それはロックと纏、両方が抱いた思いだった。

「え〜と……」
「ほら、次は瑠璃。さあ!」
美月は、将明達の元からこちらに来た瑠璃をせかす。
瑠璃は少ししどろもどろになりながらも、口を開いた。
「や、山下瑠璃です。山下家の次女で、今は小学六年生で……、えと、えと。よ、よろしくお願いします!」
そう言って、瑠璃はぺこん、と頭を下げた。
「うん、うん! よろしくね瑠璃!」
そう言い終わる間も無く、ロックは「可愛いーー」と言いながら瑠璃に抱きついた。
「わ、わ、わ、わ、わわわわっ!」
瑠璃は一瞬何が起こったのか解らずパニックとなる。
「とっても綺麗な髪と瞳だね。すごく素敵。まるで妖精みたいだ!」
「ふえ?」
瑠璃は一瞬何を言われているか解らなかったが、自分の容姿を褒めているのだと
解りはにかむ様に微笑んだ。
「ロックちゃんのその気持ちは、おばさんもよーっく解るわ。わが娘ながら可愛すぎるもの」
その様子を見た夏樹の言葉に、美月と纏はうんうんと頷いた。

「なーんか、全然心配無かったな」
「うん。てかあんなにいい娘が来るなんて思いつかないよ、普通」
今だ将明に間接を極められたままの龍一と、その側にしゃがみ込んでいたリオは、新しくこの家に住む
事になるロックが、無事妹達に受け入れられた事に、そして瑠璃の容姿を受け入れた
事に深い安堵を感じていた。
「俺と母ちゃんのお墨付きだぜ、あの子は」
そう得意げに笑う将明も、今だじゃれ合う娘達を見て目を細めていた。
「よーーーっぉし! それでは歓迎パーティーを始めたいと思います!」
美月のハツラツとした声が高らかに響く。

「……何か、俺ら忘れられてね?」
「……っぽいね」
兄弟の呟きは、少女達の歓声にかき消された。


そしてこの二人は――――――、


「こっちの図体でかくて怖い顔した厳ついのが長男の龍一。こんなツラなのに何と刑事をやっている。しかも
マルボウじゃなくて一課の方のな。で、こっちのやたらめったら腹立つ位にイケメソなのがリオ。
正確には山下=リオルファス=ハースト、ウチの次男坊だ。今は高1」
女性陣の紹介が終わってから始まった、ロックフィーネ=グローマン歓迎パーティーの
冒頭で、かなりぞんざいな形で将明から紹介されるハメになった。









後書きは後編で。

けど二言言わせて。




種スタッフはガノタを舐めてるのか?
何だあの小学生のガンプラ改造みたいなザク『モドキ』は?


もう一遍も期待出来ねぇぞ、アレ!