『真紅の髪の女神』

 

 

 

 

 

 

「ふぁふ・・」

 

暗い夜道、白い月、瞬く星

 

「ねむ・・・・」

 

その世界、限られた知覚の世界、自らが観うる、聴こえうる、嗅ぎうる、自分だけの世界

・・人の物とは明らかに隔絶された

 

「少しバイト減らそうかな」

 

その片隅を、何かが掠め

 

「枝織ちゃんにまた逢えますように」

 

それは儀式、単純で・・・だからこそ、何処にでも存在する

幾度も、同じ願いを想い続けた儀式は・・・何時か必ず形になる

・・・流れ逝く星を眺めながら・・・男は、たった1つの願いのために生きていた

それを何と形容するか

・・・まず、貧乏くさい

見窄らしい

情けない

頼りない

当てにならない

優柔不断

 

・・・要は、人としてどうにも何かが欠けている、それが全てだ

・・・もっとも外見上の物だけを並べたのであって、実際には・・・

・・・ふっ

そうして彼は、帰路に就く・・・自分を見る、一対の冷たく無機質な眼に、気付きながらも

 

それをどう表現するか

力強い

心強い

人目を引く

行動力がある

美しく、強い

人として全てが傑出している、それが全てだ

それは確かに美しかった

 

「はっ」

 

紅い髪が後に流れる、風に流れに呑まれるように弛む髪、白い星に引かれるように紅い髪が風になる

力強く、見る者全てに檄を与えるその様は、心強くもあるだろう

美しく、目立つ様など一目で分かろう物だ

けれど、それでもそれを表現するもっともな一言を捜すなら

 

「強い」

 

その一言だろう、今のように

 

「こいつ等が弱すぎないか?」

 

言って、髪を掻き上げる女、背は・・・170に満たないだろう、小柄な・・・背だ

体型はそれを大きく裏切る、鍛えられた身体に一部の肉もなく、全ては鋼の如き筋肉だ、それでいて、大柄に見えないのは

その全てが弓の弦のように引き絞られるからだ

ちなみに・・・胸は結構ある

邪魔そうに髪を掻き上げる女、険しい眼に男を映しながら

 

「言ったな、私は・・・自分より弱い奴に教わることなど無いと」

 

美しい容姿に似合わぬ剣呑な様、不満げに息を吐き

 

「悪いがここに所属する気はない」

 

シャツにスラックスという地味な服装の女がジャケットを肩にかけながら愚痴る、胸が無ければ中性的な美丈夫

髪が短ければ、女性的な美男子と言うところか・・・

けれど、内から滲み出る様は確かに女としての美しさを感じさせる芸術と言うほどに、

力強さと美しさを兼ね揃えた美女・・・顔の小ささがその脚の長さを際だたせ、モデル泣かせのスタイルを惜しげもなく晒す

いつの間にか集まったのだろう、自分に向けられる好意の視線を感じ苦々しげに呻く女

 

「北斗様、見事でした」

 

「北斗様、タオルを」

 

すぐに女達が自分の周りに集まってくる、それを鬱陶そうに払いながら

 

「君、綺麗だったよ、良ければこの後・・」

 

声をかけてきた軽薄そうな男を問答無用で蹴り飛ばす、男達がわざわざ遠巻きに観ていたことに気づけなかったのか

女の名は北斗・・・男のような名だが、れっきとした女

ナデシコ大学(苦笑)でも有名な美女、美少女である

ただ、その容姿に対して性格は明らかに男っぽい・・・にもかかわらず人気はダントツで一位である

まず同性に対する人気は・・・

美しい容貌と男を寄せ付けない強さ、ストイックな雰囲気と何より容貌・・・よくわかる

対して男に対しては、容姿だけでここまでの人気を誇るのは難しいはずだが・・・

・・・ふと、北斗の動きが止まる

人だかりの一点に視線を向け・・・薄くその顔が綻ぶ

無垢な少女のような、綺麗な微笑みだ、それが一転、むっとしたような仏頂面になり

 

「アキト」

 

何の気無しに言う・・・本人にすればそのつもりだ、けれど何処か・・・嬉しそうな響き

すぐに人垣が割け・・・そこには・・・

まず貧乏くさい

見窄らしい

情けない

弱そう

・・・何はともあれ優柔不断

そんな感じを全身から振り回す男が立っていた、もう言語道断全身からこれでもかと振りまいている

・・・そして、その雰囲気を補って・・・余ってこぼれ落ちる優しい雰囲気、それが笑みの形になり

 

「暇そうだな、荷物を持て」

 

ずかずかと人垣を横通りながら言う北斗・・・横にいる男達は暇そうには見えないのだろうか・・・正解は、そもそも目に入ってない

 

「この後バイトがあって」

 

言った言葉を気にも留めず荷物を手渡し・・・

 

「・・・また痩せたぞ」

 

そっと、アキトの頬に手を添える北斗、それだけで周りから不穏な雰囲気が上がる

 

「少しは身体を休ませたらどうだ?」

 

・・・眼を細め、俯きがちに言う・・・少し背の高いアキトを見上げる形だが、

普段大きな瞳の彼女がコレをやると泣き顔のようにも見える

ナデシコ大学名物の1つ、涙目北ちゃんである

拗ねたように寂しそうに見上げるだけの技なのだが・・・

横から見るだけでも男達の視線を集め、女達に溜息を付かせるほどに可愛らしい、普段とのギャップが力を産むってーか、

あの可愛らしさは言葉では表現できないと二回生のT・Kが大学塔(40m)から「可愛いぞーー」と叫びながら飛び降りるほどの

愛らしさである・・・道連れはその弟子だったらしい・・・その後硬派北斗連合(別名真紅の・・・)に灼き打ちされたらしいが

 

「学費がちょっとやばくてね、この後もバイトなんだ」

 

心配そうに見上げる北斗

・・・普通の男なら親の死に目だろうと迷わず予定をキャンセルのこの技も唯一この男にだけは通じないらしい、

特定の女性陣に必殺のテンカワスマイルを浮かべながら北斗に笑みを返し

 

「途中まで行っていいか?」

 

「あ・・・うん」

 

アキトのその返事に、目元が緩みわずかに紅潮し唇がすぼめられる・・・左頬のえくぼがアクセント

・・必殺の北ちゃんスマイル、T・Kが釣り鐘を背負って名古屋港に飛び込み三日三晩釣り鐘の中でその愛らしさを湛えたことで

有名だ・・・当然弟子も持参らしい

普段は照れ隠しに仏頂面しか浮かべないためこれを見れるのは幸運だ

そのまま歩き出すアキトの後に続く北斗・・・ぷらぷらと揺れるアキトの左手と自分の右手を見比べながらう〜う〜唸る

・・・その様は超が付くほど愛らしいのだが・・・残された者はアキト許すまじの一言の元に団結するのだった

・・・最も、あからさまにやると北斗が制裁に来る上、アキトと知り合っておけばあの北斗達と食事がとれると言うことで、

すぐに下火になるのだが・・・

 

「・・・アキト、時間がないんだろ、急ぐぞ」

 

言って、勢いを付けるとアキトの手を握って走り出す北斗

 

「お、おい・・別にそんなに急がなくても」

 

・・・ちなみに、アキトの手の感触に全神経を集中させている北斗にその声は聞こえてない

 

「っふふ」

 

含み笑いを零す北斗を不思議に思いながら・・・運命の一日は幕を開けた

 

 

 

次回『瑠璃色の髪の天使』に続く

 

あとがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「更正完了と」

A「ちなみに、このSS以前メール配信した物を加筆、改訂した物です、是非投稿して連載して欲しいという声が多かった物で」

「理由はもう一つある」

A「却下です」

「お仕置きリストの筆頭はおそらく不動の物となる」

A「聞こえません」

「とすればぁ、次に目指す物はきまっとるだろうがぁぁぁ」

A【ごすっ、めきっぐしゃ】

A「と言うわけで、既に3話まで完成し、メール配信している・・・枝織とアキトの間に出来たルリと北斗、四人の家族によるラブコメ・・・

 なんですが、賢明な方ならお気づきでしょう、まず1つ、今回出てきた北ちゃんはなんだ・・・正解は枝織さんが偽名を使ってる、です、

 つまりこのSSでは枝織、の方が本名なんです、次に・・・ルリと血縁があるのはまずくないか、火元のSSを読み慣れた方には当然の

 ことでしょうが・・・んなこと気にする性格なら苦労はしません、次、子供の北斗は何だ・・・男の子の北斗さんです、ある意味某氏の

 理想の北斗に近いでしょう、コレに関してはハーリーさんですか?と言う声が多かったんですが、あの子には無理です、性別は・・・

 そのうち考えます、あ、それと、私はナデシコ大学の理事長さんです・・・(くすっ)北斗(枝織)さんの実家、影護家の傍系です・・・

 ちなみに、直系の当主は舞歌さん、鏡華さん、零夜さんの3人・・傍系には草壁家と蜥蜴家があります・・・枝織さんのご両親は既に

 ご逝去為されてます、まぁ・・・この辺ですね」

「ま、待て・・あいつの両親は・・」

A【ごす・・どすっげしっ】

A「では、また次回、お会いしましょう・・・次回は北斗さんとアキトさんの愛の結晶の登場です、再見」

 

 

 

代理人の感想

 

某氏ってわたしの事かな?・・・・って、他にいないか(笑)

誤解があるようなので書いておきますが私の理想とする所は「誇り高い戦士」としての北斗、

嫌いなのは「媚を売る北斗」です。

いわゆる「北ちゃん」の大半は媚を売ってるだけのキャラクターなので

読んでいて「北斗らしさ」が感じられないから嫌いな訳です。

 

あ、そうそう。

普段使わない読み方なんで注釈しておきますが「見窄らしい」は「みすぼらしい」と読みます。

 

 

 

管理人の感想

 

 

火元さんからの投稿です!!

なんか、代理人と火元さんが紙上で争うのが目に浮かぶな〜(笑)

しかし、ダディだとやはり上手く落ち着きますね。

このまま北斗(枝織)がどういう行動を起こすのか楽しみです。

・・・まあ、ルリ(美沙)は黙っていてもその行動力は桁外れなままでしょう(苦笑)

では、続きを楽しみにして待ってます〜

 

それでは、火元さん投稿有難うございました!!

 

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