ループ:3





俺は今、ナデシコで歓迎と祝勝会を兼ねたパーティーに出ている。

普段の黒い服装にバイザー、その上、頭に包帯を巻いている格好でガツガツ飯を食ってる姿は目立っているに違い無い。

だが何故かガイを称える人々が殆どで、俺の事は忘れられているようだ。

目立たないのは確かに好都合だが・・・俺は怪我までしてナデシコを守ったってのに。

この差は一体何なんだ?

まぁ、死ななかっただけでも喜ぶべきなのだろうが、納得いかないのも確かだ。

頭を強く打ったのが原因だろうが、例のミサイル一斉射から記憶が飛んでる。

我ながら良く生き残ったのが不思議なぐらいだ。

日頃の行いかな。

それにしても・・・。



「これからもナデシコはダイゴウジ・ガイが守ってやるぜ!」


「「おおおおぉぉぉぉ!!」」



パーティー会場はさっきから、この調子だ。

ったく、良い所は全部持って行きやがって・・・。







「プロスさん、パイロットのヤマダ・ジロウさんが到着したようです。」



絶望的な状況で半ばパニックに陥ってたクルー達も、私の言葉で静かになりました。



「ルリさん、それは本当ですかっ!?

 すぐに出撃するように伝えて下さい。

 あ・・・案内が必要ですな。」


「いえ、その必要は無いようです。

 警備員を振り切って場所も知らないはずなのに何故かハンガーに向かってるようですから。」



プロスさんの額に今までの焦りとは違う汗が浮かびました。



「そっ、そうですか。

 では、ウリバタケさんに連絡して、すぐに出撃の用意をしておいて下さい。」


「分かりました。」



プロスさんと話している間にも、テンカワさんの機体は敵を薙ぎ倒しています。

その動きは華麗とは程遠く、獣の動きを連想させるような動きです。

先程までは敵の攻撃は殆ど回避していたのですが、今のテンカワさんは敵の攻撃を敢えて受けてるように見えます。

今まで以上に敵を倒すのを優先しているのでしょう。

死をも恐れないテンカワさんの心。

私が死を実感出来ないように、テンカワさんも同じなのでしょうか。







ギンッ



敵の弾が俺のエステの装甲にぶち当たる。

角度が浅かったのか装甲が削られただけで済んだようだ。

幾ら敵を殺したかは分からない。

だが、あの時に比べたらマシだ。

それこそ万単位の敵の群れの中に、死ぬ覚悟で飛び込んだのだから。



ゴォッ!



ちっ・・・また被弾してしまった・・・。

スラスター・間接のアクチュエーター。

IFSを通じて、操縦している俺が一番良く知っている。

その全部が機体の状態を俺に伝える。

機体はもう限界を超えているのだ。

敵の残りは約100・・・いや、100機は切ったか・・・。



「オオオオォォォ!!」



俺は気合がわりに雄叫びを上げると、もはや何度交差したか覚えていない敵の群れに突っ込んだ。

右半身のスラスターが殆ど死んでいる為、機体を右に傾け右足を軸にして辛うじて生き残った全面と背面のスラスターを使う。

機体が万全の時に比べて緩慢な動作になってしまうが他に方法が無い。

それでも動きを最低限に抑えれば直撃は避けられる。



現時点で出せる最高の速度を出し敵を突き抜ける。

こうなっては完全に敵の攻撃を避ける事は出来ない。

交差時にDFを出力全開で前面に展開し、正面の敵は体当たりで吹き飛ばした。

もちろん敵前ギリギリまでライフルを乱射している。



だが、こちらも無傷とはいかったようだ。



「なっ!

 ・・・くっ!」



突然、機体が言う事を聞かなくなったのだ。

慌ててスラスターを微調整し後を振り返るが、敵を突っ切る為に全速近かった速度は簡単には殺せない。



ガガガッ!



そのままエステの背中から倒れてしまった。



「・・・つぅ・・・。」



激しい振動で遠くなる意識を何とか堪え、機体の状況を確かめるが絶望的だった。

メインのブースターが焼き切れてしまったのだ。

その上、今の転倒のショックで左手からの反応が無い。

とっさに手で受身を取ったのだろう。

地面を見ると機体が擦れた跡が50メートル以上も付いている。

機体代わりに左手が犠牲になったと考えれば儲け物だ。

が・・・こちらの主な攻撃手段が無くなってしまった。



「くそっ!」



今の特攻で敵は20程落とした。

しかし攻撃手段は殆ど無いのだ。

その上、ブースターが焼き切れた為に機動力はゼロ。

脚部の間接が音を立てて軋むが、何とか機体を立ち上がらせる。

額から流れる血が目に入って視界は真っ赤だった。

機体は満身創痍。

だがまだ動ける!



両手を失った事で狂ったバランサーを必死に調整し、またも敵の群れに向かって駆け出す。

ブースターがいかれた為、文字通り残った2本の足で走った。

幸いにもDFは稼動してる。

回避とは呼べないような動きだが、着弾の瞬間にDFを一点集中させ弾く事で敵の攻撃を何とか凌ぎ。

破損している右足のおかげで機体がもつれ、転倒しそうになるのを耐える。

敵の攻撃が幾らか被弾したが群れまで近付く事が出来た。

俺は軋む脚部を酷使し飛びあがると、目の前に居たバッタを回し蹴りで地面に叩き落とす。

敵も応戦して来るが、蹴りを放った反動を利用し即座に位置を変える事によって何とか躱した。

直前まで居た位置に雨のように銃弾が降る。

すぐさま蹴りの反動を計算した位置のバッタをDFの遠当てで弾き飛ばした。

・・・2匹。



俺はすぐに第2撃目を放つべく着地と同時に飛び上がる。

その時だった。



ドゴォッ!



限界以上に酷使した機体が最後の悲鳴を上げた。

俺は激しい轟音と共に機体が吹き飛ばされたのを感じる。

同時に今までIFSを通じて感じていた物が、手の平から零れ落ちるように消えて行った。

咄嗟にコクピット内の計器を見るが、機体状況のモニターは全身が赤く表示されている。



「ここまでかっ!」



口ではそう言ったものの、無反応のIFSに強く手を叩きつけながら足掻いた。

その度に、既に死に体のエステがギシギシと金属の擦れる音とモーターが空回りする虚しい音が聞える。

偶然なのか辛うじて生きていた外部モニターは迫ってくるバッタとジョロを写していた。



「ふぅ・・・。」



そこまでして気付いた。

やけに冷静な自分が居る。

自分は何故、そこまで戦うのか?

今まで熱くなっていた血が急激に冷めて行くのを感じた。

出血の影響だろうか、少し震える手でコクピットの隅に落ちてるバイザーを付け直す。

ああ、そうか。

俺はまだあの時の事を忘れられずに・・・。



「ったく。

 何年生きても忘れられないよなぁ。」



苦笑しながらそう言って、俺は懐にしまっていたタバコを取り出し火を付けた。

バッタやジョロは何故かゆっくりと近寄って来ている。

俺はタバコを咥えシートにもたれかかる姿勢で頭の上で手を組んだ。

体中がエステと同じように軋む。

何しろコクピットはミキサー状態だったからな。



「なぁ、今度こそ俺を死なせてくれるのか?」



狭いコクピットに吐いた煙が充満した。







俺は興奮していた。

俺がガキの頃から好きだったゲキガンガー。

実際にゲキガンガーに乗る事は出来なかったが、こうして思い通りに動くロボットを自分で操縦しているのだ。

男だったら血が騒ぐのが当然ってもんだろ?

しかも研究所が襲撃されて緊急の呼び出しとなりゃぁ、もっと燃えるシチュエーションじゃねぇか!

何やらパイロットの誰かが出撃してるって話だが、俺の見せ場を取ろうなんて10年早い。

まぁ、そのパイロットのピンチを颯爽と助けるってのも悪くな・・・っ!

その光景を目にした俺は、それまで思っていた事が一瞬で吹っ飛ぶのを感じた。



鬼神の戦い。

そう表現しか出来ない。

今までシミュレーターで模擬戦闘を何度もやった事は有るが、あんなデタラメな戦闘は始めてだ。

俺が見ただけでも武装は無し。

両手は無い上に、右足の動きもぎこちない。

一番の問題がメインのブースターがイッちまってるのか、さっきから全然使ってないのだ。



シミュレーターでも模擬戦闘でもこんな状況じゃ撃墜とされる。

実戦だってあの状況なら撤退するのが普通だ。

そんな機体で奴は敵に向けて駆けた。



「バカ野郎!

 そんな機体で何をしようってんだっ!」



言うと同時に俺は奴の機体に向けて全速で飛んだ。

返事がねぇ。

通信もできねぇ程機体の損傷がひでぇとは。



「くそっ、間に合え!」



俺と奴では、奴の方が敵に近い。

俺が奴の所に行くには最低でも20秒はかかる。

そのたった20秒が致命的だった。

そして奴は敵に向けて飛んだ。

そのボロボロの機体で、惚れ惚れするほど綺麗な回し蹴りだ。

だけど、それだけだ。

次の瞬間にはバッタの集中射撃を受ける。

俺は助ける事が出来なかった・・・そう思った。

だが、恐ろしいまでの悪運が奴を助けたのだ。



蹴りの反動で弾けた奴の機体がピンボールみてぇに敵に当って着地しやがった。

こっちも全速で敵に向かってるのだ、この偶然で俺は間に合うと確信する。

加速によるGでシートに体が押し付けられるが気にしてられねぇ。

これがラストチャンスなのだから。



が・・・突然、奴の機体が爆発し吹っ飛んだ。

俺は機体の事は詳しく知らねぇが、メインコンデンサが過負荷で爆発したんだろう。

だが、今は敵をこっちに引き付けるのが先決だ。

幸か不幸か奴の機体は今の爆発で敵からだいぶ離れている。

こうなったら生きてるかは奴の運次第。

俺は艦長が到着する時間を稼ぐ為に、ラピットライフルを乱射しながら敵を誘き寄せる。



掛かった!



敵は奴から俺に攻撃目標を変更したようだ。

そのまま俺は回避に重点を置いて時間を稼ぐ事に専念した。







テンカワさんの機体が爆発し、ブリッジの雰囲気が絶望的になってしまいました。

ナデシコが戦いに参加する前にクルーを失う事になろうとは、誰も予想出来なかったでしょう。

その直後にヤマダさんが敵を誘き寄せるのに成功したようです。



そしてヤマダさんに続くように艦長が到着しました。

艦長がマスターキーを差し込むと同時にナデシコの全システムが稼動を始めます。



「ミナトさん、ヤマダさんが敵を誘き寄せている間に、全速で海底ゲートから地上へ。」


「了解。」


「海底ゲートを抜けたら即座に敵の側面からグラビティーブラスト発射。

 タイミングをヤマダさんに伝えるのはメグミさんに任せます。」


「了解、艦長。」



既にテンカワさんが危険な状態だと言うことで、艦長は即座に作戦をクルーに通達しました。

私にも仕事は言い渡されたのですが、気になるのは未だにスパークしているテンカワさんの機体です。

だけどテンカワさんが死んだと決まった訳では有りません。

私は今まで以上に真剣に自分の役割をこなす事にしました。







近付いてくるバッタやジョロの動きが妙だ。

最初は俺を警戒していたのか、ゆっくりと近付いて来て居たのだが急に方向を変えたのだ。

今の機体で出来る事は何も無い。

援軍か何かが来たのだろうか?

分からんが・・・どうやら俺は助かったようだ。



また、死ねなかったか・・・。



死神すら俺を見捨てたらしい。

今の境遇に無性に腹が立ち、吸いかけのタバコをコンソールで強く揉み消した。







私は今、食堂でナデシコの出航祝いを兼ねた祝勝会に出ています。

出航までの時間に余裕が有るのが主な理由でしょう。

今回の戦闘の結果はヤマダさんが見事に囮を果たして。

ナデシコのグラビティーブラストで敵を全滅させる事が出来、何とかテンカワさんの命も助かりました。

私はこういう場に慣れて無いので、ちょっと息苦しさを感じてしまいますが・・・。

今回の戦闘ではヤマダさんが大活躍したのでVIP待遇です。

先程からヤマダさんは暑苦しい演説をテーブルの上で叫んで居ます。



でも、私が気になっているのは頭を包帯でグルグル巻きにしているテンカワさんです。

普通なら絶対安静だと医務室の先生は言ってましたが、テンカワさんの回復力は凄まじく既に自由に艦内を歩き回ってるようです。

お医者さんがテンカワさんを見つけては追い掛けている場面も何度か見ましたし。



私の視線に気付いたのでしょうか。

ふとテンカワさんがこちらを見ました。

そしてテンカワさんは機用に食器とグラスを持ってこちらにやって来ました。



「やぁ、初めましてかな?」



戦闘中に通信で会話はしてますが、実際に顔を合わせるのは確かに初めてです。

テンカワさんは何故か分かりませんが少し寂しそうな表情で笑顔を浮かべ、こちらを見ています。



「はい、初めまして。

 オペレーターのホシノ・ルリです。」


「それじゃ、ルリちゃんと呼ばせてもらうよ。

 俺はテンカワ・アキト。

 テンカワでもアキトでも好きに呼んでくれ。

 ん?オペレーターと言う事は・・・俺の事も知ってるのか。

 ま、これから宜しくな。」


「はい、宜しくお願いします。テンカワさん。」


「とりあえず隣り、いいかな?」



テンカワさんは、私の隣りの空いている席を指差しながら聞いて来ました。

私は隅の方に居たので、ちょうど席が空いています。



「構いませんけど・・・。」



別に断る理由も有りませんし、テンカワさんに興味が有ったので丁度よかったです。

オモイカネをも凌駕する射撃能力、それに私の名前を知ってた事。

色々聞きたい事も有りますし。



「こういう場は苦手?」



私が疑問を問いただす前にテンカワさんが話し掛けてきました。

テンカワさんは既に食器とグラスも隣りに置いて、椅子に座ってます。

私は出鼻を挫かれた感じで、とりあえずテンカワさんの話を聞く事にしました。



「・・・はい、苦手です。」


「やっぱり。

 隅で一人座ってたからちょっと気になってね。」


「一人は慣れてますから。」


「人生はもっと楽しまないと損をするよ。

 まぁ、ルリちゃんもナデシコに居ればそのうち慣れるだろうけどね。」



チャンスです。

何故、テンカワさんが私の名前を知っているのか。

ここで聞いておくべきでしょう。



「あの、私、以前に自己紹介しましたか?」


「はっ?」



テンカワさんは何の事が分かって無いようです。



「いえ、先程の戦闘時、テンカワさんが通信で私の名前を呼びましたから。」



私の質問を聞いて、テンカワさんは何かを考えてる様です。



「ん、ん〜ん、そんな事を言ったっけか・・・。

 何かの聞き違いとか?」


「いえ、戦闘データがオモイカネに記録されてますが確かめますか?」


「そっか、それじゃそうなのかもなぁ。

 どうも頭を打ってからの記憶が曖昧で。

 コミュニケで色々調べたし。

 プロスからも色々聞いてたからね。

 だからかもなぁ。」


「そうですか。」



何かハッキリとしません。

ここはもうちょっと聞くべきでしょう。



「それに戦闘開始時に射撃してましたよね?」


「ああ。それがどうかしたの?」


「オモイカネで計算したのですが、普通の人間にはほぼ不可能だという結果でした。」


「うーん、結構エステには乗ってきたからね。

 慣れれば誰でも出来るようになるんじゃないかな?」


「いえ、今までのパイロットの個人データを見てみましたが、不可能です。

 武器、エステのFCSサポート、どれを見てもあの距離からの狙撃は不可能だとオモイカネも結論を出してます。」



私が言うとテンカワさんは苦笑して答えました。



「人間ってさ。

 やる気になれば何でも出来るんじゃないかな?

 ルリちゃんはまだ小さいし、エステのパイロットは無理だろうけどやってみれば出来るかもね?」


「でも、私調べました。

 そんなパイロットが軍や企業のテストパイロットだった形跡は無いです!」



何故かテンカワさんに答えをはぐらかされてる様で、つい語尾が荒くなってしまいました。



「あら、ルリちゃん。

 テンカワさんと仲が良いみたいね。」



そこへミナトさんがやって来ました。

私達の会話を聞いてたのでしょうか。



「ああ、操舵手のミナト・ハルカさん?」



ミナトさんの名前も知ってた様です。

テンカワさんは私の方を見ながら他の人の名前も調べたとアピールしてます。



「ええ、テンカワ君も大活躍だったのにヤマダ君に良い所を持ってかれちゃったわね。」


「まぁ、こっちもガイのお陰で助かったんでね。」


「それじゃ仕方無いか。

 そう言えば、テンカワさん、ルリちゃんと仲が良いの?」


「ああ、一人で隅に居たから声を掛けてみたんだ。」


「そうじゃなくて。

 戦闘中も随分懐かしそうな顔をしてルリちゃんに話し掛けてたから。」



偶然、ミナトさんの質問が重なり、テンカワさんは困った顔をしてます。



「どうも頭を打ってからの記憶が飛んじまって。

 ミナトさんまでそう言うなら、やっぱルリちゃんの名前を呼んだのか。」


「もしかしてルリちゃんとは以前からの知り合いとか?」


「いえ、私はテンカワさんの事は知らないです。」


「あら、それじゃテンカワ君はどうしてルリちゃんの顔を見て懐かしそうにしてたの?

 今も複雑な表情でルリちゃんに声を掛けてたの偶然見ちゃったし。」



追い詰められたテンカワさんは更に困った顔をしてます。

諦めたのか、諦めた表情で軽く溜息を付くとテンカワさんは話し始めました。



「あんまり言いたくは無かったんだけどな・・・。

 昔、義理の娘が居てね。

 それがルリちゃんと同じ名前で、同じ年頃だったんだ。」



テンカワさんは笑って誤魔化してる様ですが、その笑顔が一層悲しく見えました。

ミナトさんも悪い事を聞いてしまったと後悔してるようです。



「まぁ、そんなに気にしないでくれ。

 こう見えても結構歳を食ってるから、懐かしい思い出さ。

 それでもルリちゃんを見ると思い出してしまってね。」



そう言って、テンカワさんは私を見て懐かしそうに微笑みました。



「ごめん、悪い事聞いちゃったわね。」


「いや、だから気にして無い。」


「そう?そう言ってもらえると助かるわ。

 でも・・・義理の娘ね・・・。

 また変な事を聞いちゃうけど・・・テンカワ君ってさ・・・何歳?

 もしかして・・・私より年上って事は無いわよね?」


「それは秘密だ。

 外見よりは全然年上って事だけは言えるけどな。」


「ははは・・・もしかして、やっぱり?

 テンカワさんって呼ぶべきかしら?」



ミナトさんの笑いが乾いて聞えます。



「いや、別にいいさ。

 こんな童顔の外見だからな、もう慣れた。

 こっちこそ口が悪くて済まない。」



確かに私と話す時と、ミナトさんと話す時では口調が違います。

ミナトさんもそれに気付いてたのでしょう。

そして義理の娘が居たと言う事で、テンカワさんの年齢に疑問を持ったのだと思います。

私を同じ名前を持ったテンカワさんの義理の娘。

外見以上の年齢。

ますますテンカワさんに興味が湧いてきます。



「ま、そう言う事で、ルリちゃんにお節介を焼こうと思ったんだけど。

 ミナトさんが見ててくれるようだし安心かな。」



雰囲気が沈んでしまったのを戻すべく、テンカワさんが明るい声で言います。

私はテンカワさんに聞きたい事がまだ有ったので、ちょっと困ってしまいました。



「あの・・・私は・・・。」


「あら、ルリちゃん。

 せっかくだからテンカワ君にお世話してもらったら?

 テンカワ君なら下心とかも無さそうだし、きっと安心よ。」



ミナトさんはテンカワさんとの話し方を変えないのか、テンカワ"君"と呼ぶ事にした様です。



「ちょっと、ミナトさん。

 下心って・・・ルリちゃんはまだ子供でしょうに。」


「あら、意外に純情なのね。

 冗談よ、冗談。」



テンカワさんは困った顔をしてます。

ミナトさんはイタズラが成功した子供の様に微笑んでますが、ちょっと今の言葉は聞き流せません。



「私、少女です。」


「ははははは。」



私の言葉を聞いてテンカワさんとミナトさんは声を上げて笑ってしまいました。

暗い雰囲気を振り払おうとしている様にも感じられます。



「そうだな。」



テンカワさんは、そう言って私の頭を撫でました。



「あ、あのテンカワさん?」



そう言いかけてテンカワさんの顔を見た私は抵抗するのを止め、なすがままにされます。

私を見るテンカワさんの顔がとても優しく、そして懐かしそうだったから。

でも、その表情は少し悲しそうで見ている私も胸が痛いです。



外見の年齢と程遠いテンカワさんの表情。

そして私と同じ名前を持つテンカワさんの義理の娘。

私はますますテンカワさんに興味を持ってしまった様です。



まだテンカワさんは私の頭を優しく撫でています。

私はうつむいて、ちょっと赤くなった顔を隠しました。

こうされてると気持ち良いと言うか、心が落ち着くのが不思議です。



「それじゃ、俺はそろそろ部屋に戻る。

 ミナトさん、後は宜しく頼む。」


「分かったわ。

 テンカワ君、お疲れ様。」



そう言ってテンカワさんはパーティー会場を後にしました。

もうちょっと撫でて欲しかったのは私だけの秘密です。



「テンカワ君、いい男ねぇ。」



ミナトさんがボソッと呟いた言葉で、何となく私は不機嫌になってしまいました。

こんな感覚は初めてです。

テンカワさん・・・不思議な人。

私は改めて、そう感じました。







後書きと言う言い訳のコーナー

いやはや、随分投稿に間が空いてしまいました。
しかもこの先の展開があまり思い浮かばないっす。
まぁ、TV版にそって進めて行くつもりですが、ストーリーを考えるのって難しいですね。
ファンフィクションのストーリーを考えるだけでも難しいぐらいですから、脚本家(?)さんって凄いと再認識してます。


あと、ちなみに私の認識では、ブースター=メインのジェット推進力。
スラスター=少ないジェット噴出で姿勢制御などを行う補助的な物だと考えてます。
間違ってたらすみません(^^;;


さてさて、今回のお仕置きはどうなるかな・・・ドキドキ(笑)

 

 

管理人の感想

閑古鳥さんからの投稿です。

・・・・・・・・・・・すんません、私にお仕置きを期待するのは無謀ですぜ、閑古鳥さん(苦笑)

でも、緒戦で活躍したガイっていうのは珍しいですね。

大抵は怪我をして、ブリッジは何処かで唸ってるだけなのに(笑)

ちょっと不思議だったのが、どうして他のクルーがアキトを無視していたのか?ですね。

ミナトさんやルリが普通に接している以上、戦闘時のアキトが怖かった・・・という設定は使えませんし。

他のクルーに、いきなり嫌われてるのか、アキトよ(汗)

 

 

艦長、名前さえ出てないし(笑)

副官にいたっては、存在すら記されてないのな?(爆笑)