そして、ネルガルが下した結論とは……テンカワ夫妻の暗殺……

 

〜すれちがいの反抗者〜

あるいは、欲望に素直な者達の物語

by.katana

 

第四話 思いがけない再会 


 

ナデシコ艦内、プロスペクターの私室にて――……

 

「……そうですか……彼はテンカワ夫妻の息子さんですか……もしやとは思っていたのですが」

「やはり、ネルガルにおけるテンカワと言えば、あのテンカワ夫妻ですか」

 ゴートさん、テンカワ夫妻死亡の件は今だ謎と疑惑が多く、あまりそう言った事は二人きりの時でも言って欲しくは無いですね。

 ……いかにここが私の私室であるとは言え。

 私のナデシコにおける私室は、同時にバーでもあります。これは純然たる趣味なのですが、利点として酒が入ると人は口が軽くなる、と言う交渉が仕事である私には重宝する事実もありました。

 今も、ゴートさんがジンを片手に少々赤い顔をして、カウンターの向こうでオリジナルカクテルを研究中の私を見上げています。

 いえ、現在火星にいると思われている“彼女”のように危険な薬物を混入させていたりはしませんよ。あくまでもアルコールのみです……なんですか、ゴートさん……その疑わしげな眼は。

 ふむ、ごつい中年男性の赤ら顔での上目遣いというのはなんとも言えないほどに不気味な物ですな。

 同性の私にはそうとしか思えないのですが、異性はここに何か魅力を感じるのでしょうか? うむ、女性と男性の価値観はいつも大きく異なり、だからこそ共にいる事を望むのかもしれません。

 ……皆無ではないにしろ、異性との付き合いが深くなった事の少ない私が言ってもあまり説得力がありませんな。やれやれ、花より血、の人生ですか……?

 ――失礼、申し遅れておりました。

 私、ネルガル重工所属、元・火星支部司令代行、現・機動戦艦ナデシコ会計、プロスペクタ―と申します。

 あ、これは本名ではなくてペンネームのような物ですので、あしからず。

 


  

 ネルガルとテンカワ博士夫妻との因縁は今から約十年前の火星空港テロ事件に全てが集約されます。 

 当時火星において、軍の高官であるミスマル提督が娘である現ナデシコ艦長のミスマルユリカ嬢(不在)を連れてかつては赤かった星を後にしました。その直後。

 本当に直後であったと聞きます。空港がテロリストに襲われ、テンカワ夫妻を含めた多くの命が犠牲となりましたが……ここで私は幾つかの疑問を抱きました。

 一応の犯行声明は何処の者とも知れぬ犯罪組織が名乗りをあげたそうですが、私は信じてなどいません。

 空港が襲われたのは宗教的政治的なテロリズムの動機など、犯人グループ以外は誰にも分からない主張で引き起こされる物です。

 故に、当時火星の空港(宙港とも言います)がテロリズムの犠牲になったとしても……理解は出来なくとも納得は出来るでしょう。しかし、何故にテンカワ夫妻だけが『殺されなければ』ならなかったのか?

 この疑問が私の中では、この十年間と言う長い年月くすぶりつづけているのです。

 例の空港テロ事件。

 この事件は空港が何らかの爆発物によって炎上させられたと言う、多くの死傷者を出した事件です。その際犯人は真っ先に自分達の爆弾で吹き飛ばされたと言う話を聞きましたが……

 そう、この事件の死傷者はそのほとんどが爆発と火事、それらが巻き起こした混乱の渦によって生み出された物なのです。しかし、たった二人だけ明確な殺意を持って頭部に銃創を刻まれた人物がいます。

 そう、私としても火星支部司令代行時代に懇意にお付き合いをさせていただいていたテンカワ夫妻――現在ナデシコに乗艦し、私どもの注目の的となっているテンカワアキト氏のご両親にして、火星支部においてある特殊技術の研究第一人者であった方々です。

 私も彼らが生前はささやかながら交流を持っておりました。だからこそ胸にくすぶらせてきた仮定があります。

 ずばり、空港テロ事件はテンカワ博士夫妻を暗殺するために起こされた事件ではないのか、と。

 そしてテンカワ夫妻の暗殺は、我がネルガルと軍が共謀して起こした茶番劇ではないのか、と……空港テロ事件に対して、これ程大きな事件であったにも関わらず軍とネルガルの対応があまりもそっけない……対外的なポーズだけでしかないと見る目のある者にはわかってしまう程度の捜査しかなされなかったのです。

 むしろ、調べようとしている私の方こそ煙たがられていましたからね。先代の会長がこの件に関しては何か隠しているとは間違いの無い事でしょうな。

 実は先ごろまで、火星においてテンカワ一家と懇意にしていたミスマル親子もそれに関与していたのではないかと疑っておりました。彼らの見送りにいかなければテンカワ夫妻の殺害は……起こらなかったわけです、少なくとも空港では……

 テンカワ博士夫妻がターゲットであるとし、軍が関係しているとあれば当時も高官であるミスマル提督が関与していないという可能性は少ないものでしょうからな。しかし、それであれば、娘のユリカ艦長のあの性格は納得がいきません。

 脳天気にテンカワさんを慕う……と素直に言い切るには少々ためらいを感じる行動ですが、本当にミスマル提督が空港テロ事件に関与していたのであれば、恐らくはテンカワ夫妻をおびき寄せる役回りであったはず。そんな真似をした男が、果たしてその夫婦の忘れ形見である少年を娘が慕うような事を見逃したりするものでしょうか?

 むしろ、口を酸っぱくしてテンカワ一家を忘れるように言い聞かせるか、嘘を教えるか、聞かれても無視するかのどれかでしょうな。幸いにしてこの戦争のおかげでテンカワアキト氏の消息は不明になってましたから……

 しかし、艦長のあの様子からして、そのような事を提督がなさっていたとも思えませんし……いえ、あの艦長はあらゆる意味で規格外なアレの人ですからな〜〜……親御さんにも思考回路の出した結論が読めない方のようですし。

 天才というのは精神の中に突出した部分と著しく未熟な部分がある事にあるような人を示す言葉でもあるのだそうです。端的に説明しますと、そのような精神の方は何らかの傑出した才能を示す事があるのだとか。

 もちろん、アレな精神の持ち主が全員何らかの天才だなどという気はありませんが事、艦長に限定しますと何らかの才能が『軍人の娘』という家庭環境と合わさり、士官学校主席卒、シュミレーション無敗という華々しい経歴を作る結果となったのではないでしょうか? 

 ひどい事を言っているようですが、何しろアレな女性ですからな〜〜……

 え? 何故そのような、きつい言い方をすれば実戦経験の無い小娘を艦長に選んだのか、ですって? 

 彼女の性格ゆえ、です。彼女はまさしくクイーン・オブ・ポジティブですからな。

 才能、容姿、家柄、あらゆる点で恵まれてこれまで挫折らしい挫折を味わった事はないでしょう。失礼を承知で言わせて頂くと、苦労知らずのお嬢さん……何故だか副長(現在艦長代理)に二人分の苦労が向かっているような気がしないでもないですが、やはり努力家と言うよりも、才能ですいすいと人生をわたっているような気がします。

 いえ、苦労を苦労と認識しない心の持ち主なのではないしょうか? それは何にも勝る『才能』といえます。何しろ、彼女が勤めるのは『艦長』です。艦長とは即ち、艦の責任をとると言う事です。これは他の全ての『長』とつく役職にもあてはまるでしょうが、他の何よりもこれこそがまず大切なのです。

 けして、表面的な才能ではなく……

 艦の中にいる人間はもちろん、後ろにいる味方と前にいる敵への責任に押しつぶされない前向きな精神がユリカさんにはあるのだと思います。

 私がジュンさんではなくユリカさんを推したのはそのため――ジュンさんは生真面目ですからな。彼が艦長になるのなら、サポートの副長を厳選しなければナデシコの目的たる敵占領下へ救出目的の航海などはできません。おそらくは途中でつぶれてしまうでしょう。

 彼は彼で得がたい才能の持ち主ですが基本的にサポート、もしくは堅実型であり非常時には目立った失敗も成功も無い――突発的な事件にも弱いかもしれません。

 全く正反対に艦長。

 彼女は正しく非常の人。平時にあの性格ははっきり言って迷惑以外の何物でもありませんが(だからあの副長が必要なわけです)非常時にあの驚異的なマイペースはありがたいものです。加えて、戦術指揮で無敗を誇った才能。

 前向きな精神、マイペースな性格、戦術における稀有な才能……この三本の矢をもつ彼女を私はナデシコと言う自ら苦境に飛び込む戦艦長に推薦しました。

 そして、日常を統括する副長、アオイジュン……このように適材適所に人材を配置するのはまさしく、スカウトマンたる私、プロスペクターの面目躍如ですな。

 今のところ、ジュンさんは実力を発揮し上手く艦内を統括してくださっているようですし。

 ナデシコが連合軍の拿捕を振り切ってから三日後、ゴートさんが私の部屋で高いびきをかいたのをハリセンでたたき起こしてから二日後……目の前でうぐうぐと涙ぐんでいる長髪のどことなく子供の雰囲気を漂わせた美女を見て、私は己の先見の明を誇るのです。 

 ええ、負けませんとも、私は! ……アオイさん、テンカワさん、何故そのように共感と友愛に満ち満ちた眼差しで私を見るのです? ミナトさん、メグミさん、なぜ肩をもむのです? フクベ提督? あ、お茶のおすそ分けですか。

 なんですか、ヤマダさん……滝のような涙を流さないでください。私のような中間管理職は熱血と言う文字とは無縁ですよ!? 何故私の背中を押しますか!? 

「くううっ!!! プロスのおっさん! あんたも熱い男の友情、熱血の持ち主だったんだな! あんたには俺と共にゲキガンガーをマラソンする資格があるぜぇぇえええぇぇっ!」

 は……?

 ル、ルリさん!? どうしてそこでハンカチなどを私に!? た……手向けのハンカチなどいりませんよ!? ヤマダさん、私はアニメ観賞のギネス挑戦などする気はありません!

 ……号泣しないでください! まるで私がいぢめたような気分になるじゃありませんか!

  え? これは感動の涙だ?

 


 

ナデシコブリッジにて――……

 

 プロスさんがヤマダさんに引っ張られてブリッジを後にしたのを見て、私ことホシノルリは合掌しました。なむなむ。

「成仏してください、プロスさん」

「あらあら」

 そんな私を見て、姉貴分のミナトさんが苦笑いしてます。

「いいの? ルリルリ……プロスさんをヤマダ君の生贄にしちゃって……」

「かまいません。プロスさんなら信用できます――ヤマダさん色にはなりませんよ」 

 そう、今ちょっと残念そうな顔をアキトさんと違って……一度『教育』が必要でしょうか、アキトさん?

「……寒気がするな。空調がおかしいぞ?」 

『私を無視しないでよ〜〜! アキトアキトアキトアキトアキト〜〜〜!!!

 オモイカネに苦情を言うアキトさんを他所に、他の一同は目の前でブリッジ一杯に広がる巨大なコミュニケ・ウィンドウを一人で占領する涙目の美女に注目していました。ちなみに振袖未装備です。

 事の起こりは約十分前。

 私達機動戦艦ナデシコクルー一同は、火星を目指すために地球を守る七層の防衛ラインを一時解除してもらうための交渉を連合軍へと持ちかけました。

 ちょうどナデシコをどうするかで喧喧囂囂、もっぱらナデシコ許すまじで盛り上がっている軍のお偉いさん達の会議にウィンドウ越しに乱入したわけです。

 で、私達の登場に苦虫を噛み潰していたお偉いさんのトップらしい人が渋々ながらも偉そうに用件を聞こうとした時……どたばたと足音立てて一人の、ここにくる権利がなさそうな見るからに新人少尉さんの若い女性がノックもなしに乱入して、回りの視線など一切気にせずに私達……というか、アキトさんにくってかかったわけです。

 ナデシコ槍玉上げ会議(ミナトさん命名)の一角を担う極東方面第三艦隊提督、ミスマルコウイチロウの娘、ナデシコ艦長ミスマルユリカ、二十歳です。

 三日前に我らが機動戦艦ナデシコをシージャックした不届き者、ベニテングダケ改め養殖シメジをとりあえずはボコにして、コンテナ詰めにした上で、キノコと呼応したシージャックの共犯、ミスマル提督率いるトビウメにリョーコさんが配達にいきました。これでヤマダさん助かってしまいます。

 ヤマダさんが『前回』――私達タイムトラベラーの基準でアキトさん、イネスさん(仮定)、サユリさん、リョーコさん、そして私の記憶にある歴史を『一回目』もしくは『前回』と呼称します――キノコ一党に射殺された事件はキノコをトビウメに届けた事で回避されたのです。

 アキトさんの希望どおりといえばそうなのでしょうが、あの人が生き延びてしまうとアキトさんへの汚染が進みそうでちょっと心配です。

 『前回』と『今回』の、その他の相違点で特に大きなものは二点。まずは副長のアオイジュンさん……彼は前回、はっきり言えばお間抜けな事にトビウメでの交渉に勝手についていったあげく、置いてけぼりにされてしまいました。

 これはアオイさんの間抜けぶりを示すエピソードとして印象深いですが、同時に彼を置いてけぼりにして気づかなかったユリカさんの無神経さとプロスさんの薄情さも示すエピソードとも言えます……前者がインパクト大で他の事はあんまり印象薄いですけど。

 しかし、今回のアオイさんは一味違います。

 アキトさんに『艦長不在の艦を守るのは副長の勤め』と諭されナデシコに留まったのですが、そこで軍艦の危機に直面し、なかなか迅速な指揮を行い、見事敵チューリップを殲滅してのけたのです。

 『前回』は帰艦したユリカさんが何を考えたのか何と敵の内部に入り込んでグラビティ・ブラストを発射するという実に豪快な奇策(……そもそもこんな事する必要あったんでしょうか?)で敵を殲滅しました。

 未来の知識ある私としては、それがどれだけ危険な事かどうかを知っていますから、正直かなりぞっとしています。

 なにしろ、ディストーション・フィールドなしで敵――つまりチューリップの中に入り込んだら死んでしまい、ジャンパーによるイメージが無ければ無限の可能性を持つ時空間のどこに、いつ飛ばされるか、知れたもんじゃありません。

 それを考えると前回はかなり無茶をしたと言えます。一応A級ジャンパーのユリカさんがいるとはいえ、当時はその自覚が無かったわけですから……一口に言って、無駄な死線をくぐった事になりませんか……私達?

 で、私達にその無駄な死線をくぐらせた当人ですが……今回はなんと、ケーキにかまけてトビウメに留まってしまいました……で、現在は火星に向けてぐんぐんと、のナデシコに乗っておらず。

 はあ……ホント、お馬鹿。結果、今こうしてナデシコ対策会議(ゴートさん命名)に乱入、コミュニケ・ウィンドウを独り占めしている訳です。あ、とんでもない大声でアキトアキトと連呼しているせいで幕僚一同、ミスマル提督を除いて悶絶してますね。こちら,ブリッジは音量調節によって守られていますが……偉いですよ、オモイカネ。

「う〜ん、耳栓無駄になっちゃったわね」

「またどこかで使う機会は必ずありますよ」

 そのお馬鹿……『前回』は確かアキトさんのご両親の死因について何か知らないか聞きにいったはずですが、今回はそれらしい事はアキトさんも話していません。そもそも言葉を交わした事自体が数えるほどですし……

 はてはて、なにをしに行ったんでしょうか? ホントに父親に呼ばれたからいっただけ、と言う可能性大なところが艦長の恐ろしいところです。ひたすらケーキにがっついて交渉はプロスさん任せのノータッチだったと言うからにはそうなのかもしれません。

 ……なぜ軍艦にケーキが、しかも大量に備蓄されているんでしょうか? 大体察しはつきますが。

 で、今は置いてけぼりのミスマルユリカ艦長が自分がいかにさびしかったか、アキトさんやジュンさん、プロスさんをはじめとして私達がいかに薄情者揃いか、声を大にして訴えていると言うわけです。自分の事を棚上げしたユリカさんの身勝手な言い分に、メインクルー一同の視線は否が応にも冷たくなります……一応、彼女が有能である事は知っている私でもついつい……元、もしくは未来の家族であった欲目でジュンさん以外の他の人よりはまだしも柔らかい視線を向けているんですが……

『ふえ〜〜ん、ホシノさんの視線が特に怖いよ〜〜!』

 ……失礼ですね、通信切っちゃいましょうか。でも、まだ“ホシノさん”なんですね。こんな呼ばれ方された事無いから違和感バリバリです。かみなりどっかんです。

「ユリカ、君はそこで何をしているんだ!?」

 今回のイレギュラーさんが、ユリカ……いえ、艦長にそんな事を言ってます。いけませんね、この私はユリカさんとはほとんど面識が無いんですから気をつけないと…… 

『だってだってだって〜〜! みんなユリカの事おいていくんだもの〜〜! ひどいよ〜〜!』 

「ユ、ユリカ! 僕だけは違うぞ!」

 確かに、ジュンさんくらいですね……ユリカさんを置いてけぼりにした事を抗議したのは。まあ、今回のユリカさんはハッキリと言ってしまいますと、アキトさんの活躍により艦長らしい事をしていないわけですから出会って一日たたないクルーにとっては積極的にかばおうと言う動きは整備班以外には見られません。

 でも、そのジュンさんこそがミスマルユリカ艦長復帰の最大のライバルであるのです……艦長代理は前回見事な指揮を見せた事でそれなりの人望を集めていますので。サユリさんなんか、エリさん達がアキトさんになびかないように一生懸命ジュンさんの良さを伝えています。

 サユリさんがアキトさん派なのはアキトさん初登場の際にハッキリしていますから(怒)あんまり意味は無く、むしろ楽しそうにからかわれています。

 アキトさん、ナデシコに乗って以来実に颯爽としていましたから、おかげでエリさん達までなびきそう……サユリさんの活躍に期待しましょう。

『う〜〜! じゃあじゃあ、はやくユリカをナデシコに乗せてよ! ユリカ、艦長さんなんだよ! 一番偉いんだからね、ぷんぷ〜ん!』 

 ……この人は。

「……私には、彼女が異世界に片足突っ込んでいるように見える」

 ゴートさんはおでこに脂汗を浮かべています。こう言う人ですから、女子大生のような雰囲気そのままのユリカさんのテンポについていくのは厳しいのでしょうね……まあ、すぐになじんでしまうのはわかってますけど、ご愁傷様。

『ミスマル少尉! そこをどきたまえ! ……ええい、提督! 君の娘だろう、何とかしたまえ!』  

 あ、 後ろの方でぼそぼそと何か言ってます。艦長の大声にかき消されてよく聞こえませんが、たぶん深刻な生命の危機を実感した幕僚さん達が最後の力を振り絞って自分の身を守ろうと言うのでしょう。

 ……少尉? ユリカさん民間企業に来たのにまだ軍の階級があるんでしょうか? 連合軍に復帰したのかな? 提督が何か手を回したのかもしれません。

 ……あ、艦長の背後に人影が……

 

 ごす 

 

 意外な事に中身のたっぷり詰まっていそうな重い音をたてて、艦長が頭を床に打ち付け、そのまま静かになりました。その彼女を、右手に灰皿を持った……ちらりとしか見えませんでしたが黒髪の美人さんが足を持ってずるずると引きずっていきます。

『失礼しました』

 彼女はごんがんと音をたてて艦長をドアの前まで引きずっていくと、敬礼をして素早く退室しました。恥かしかったのか、早口です。声がどことなくサユリさんに似ていましたね。

 何者でしょう?

『……失礼をしたようだな……』

 しばし目が点になっていた高官さん達が現実回帰しました。こっちもほとんどの人が似たような状態ですから問題ないですけどね。      

 さて、ミスマル提督が娘の名前を雄たけんで退場したので、これ以降はまともな話し合いになりそうです。

 


 

同ナデシコブリッジにて――……

 

『ビッグ・バリアを解除しろだと!? ふざけるな!』

 一同の中心に座する堅物そうな、軍国主義的な男の罵声に副長が身をすくませたのを見て、プロスもいない今、アキトはこれは自分が交渉するしかないかと覚悟を決めて一歩前に出た。 

『ん? 誰だね、君は』

 黒ずくめのマント男と言う、あからさまに胡散臭い男が現れた事に国粋主義者の色がはっきりと顔を覆っている男が眉をしかめ、黒いバイザーが顔の半分を覆っている胡散臭い男はこういう男と話をしなければならないわが身の不遇を嘆く……と言うのは大げさだが。

「明日香インダストリーよりの派遣社員、テンカワアキト。ここでは先日以来パイロット扱いでスキャパレリ・プロジェクトに参加している」

 ちなみに給料はなんと明日香インダストリー社長令嬢たるカグヤのポケットマネーから支払われている。これは、カグヤがアキトの戦闘データを要求し、それに対する報酬である。これを要求として出された時、アキト受け入れを決断したアカツキは頭を抱えたが、それが純然たるサレナ(アキト)のみの映像、データ集であると知り、不承不承ながらも受け入れた。

 付け加えれば、アキトの知らないところでアキトの戦闘データをカグヤが映画感覚で歓声を上げながら見ているのは秘密だが、アキトのアサルトピット内での表情集をまるで某妖精二名のごとくコレクションしている事までは彼女以外は知らない。ちなみに撮影対象は自分の映像をコレクションしている物好き三名の存在をいずれも知らなかった。

 当人の許可もなく様々な映像をコレクションしている不届き者その一は、今も人知れず彼の映像をオモイカネに整理させている。以前、ハリモグラを連想させる少年が彼女のフォト・ライブラリを勝手にあれこれ弄くろうとしてかなり苛烈な『お仕置き』をされた事があるそうだが、その少年の正体も『お仕置き』の内容も一切が沈黙のヴェールの向こう側で静かに眠っている。

『君も我々にバリア解除を要求するのかね? それは明日香の公式見解なのかね?』

「俺は明日香インダストリーよりの派遣社員という形をとってはいるが、実際には明日香社長の血族に個人的に世話になっているにすぎん。公式見解かと聞かれれば、否と答えるより他は無い」

 明日香とは一応切り離した答えを用意しなければ、世話になったカグヤとミカドの立場が悪くなる。未だに火星に向かう事を納得していないジュンに交渉を任せる訳にはいかないのでなければ、彼はできるだけここでは引っ込んでいたかったくらいだ。

「ネルガルの要求として、もう一度言う。我々は火星に向かう。そのためにはビッグ・バリアの解除を願いたい」

『断る! ムネタケ准将をはじめ、軍の人間を追い出した分際で何を言う! お前が今乗っている艦は軍が地球防衛に使うべきだ!』 

 高官――四角張った顔の表面に脂を浮かせて唾を飛ばしながらわめく男は、驚いた事に正気の目をしていた。意外な事実である。

「本気で言っているのならば、貴様の頭の中には良識と自省が根本的に欠けているという事だな。ナデシコをネルガルが私的運用する事に貴様らは既に許可を出していたではないか。出来がいいから横取りしようなどと言う漫画に出てくるガキ大将のような理屈を振りかざして女子供に銃を突きつけた分際で何を抜かす?」

 中年男の鼻息を荒くした紅い顔に好感情を抱く感性の持ち主は幸いな事にナデシコには一人としていなかった。

 言葉に詰まるイノシシのような男にアキトは更に畳み掛ける。しかし、イノシシと言ってもこの男がウリ坊のように愛らしかった時期などはあるまい。

「そもそも、ネルガルにとってナデシコはあくまでも実験艦。その戦闘データを利用した艦はいずれ軍に協力するとプロスペクターが断言していた。それが戦艦を民間で運用する事への見返りであると。正式に取引を交わし、双方契約書にサインをしたはずだ」

 アキトは話している間に徐々に気分が盛り上がっている事に気がついた。幼児のような理屈をさも当然のように振りかざすこの男をはじめとする軍部全体に、大きな嫌悪と怒りがどろどろと、腐食したコールタールのように粘液質の怒りを彼に与える。

 アキトは黒い粘液が己の胃の腑から食道を通り、まるで吐血のように引き締めた唇の端からたれてくるのを自覚する。そのイメージは、リンクを通してルリに伝わっているが、目の前のむさい中年男に集中しているアキトは気が付いておらず、ルリはまだアキトの背骨に絡む濁った黒い闇を確認し、果たして自分はそんな彼にどう対応すべきかと思いを馳せる。

 否定すべきか、受け入れるべきか。

 ナデシコクルーの、『どうして彼が交渉するんだろう?』という視線を向けられながら交渉に挑む彼の胸の奥で未だどろどろと粘りを持って淀む闇を……

『……いや、駄目だ! 我々に必要なのは今、敵と戦える戦力だ。それだけの性能を持つ艦を民間で運用するなど危険きわまる! 大体、みすみす火星なんぞにやるものか!』

 彼らにとっては、銃を突きつけて人を脅す事など危険でも暴挙でもないのだろう。素晴らしさのあまり、アキトのハラワタの奥の奥からとうとう粘りが吐き出され、纏う黒衣が更に濁った黒に上染めされていくのを自覚した。

 アキト、そして彼とリンクしているルリ以外には認識できない濁り、もしくは粘りを口元から滴らせ――闇色の男は映像越しにも感じる凄みを発揮する。

「ほう……火星なんぞ、ね……いいだろう。ならばナデシコはこれより実力を持ってビッグ・バリアを突破させてもらう! ……一体誰にケンカを売ったのか、思い知らせてやろう」

 アキトはそこで、彼自身が凄みを自覚できるほどの太く重い笑みで、敵意を表現した。

「せいぜい、愉快な泣きっ面の練習でもしておく事だ。俺達が大笑いできるような、な……そして貴様らなど遠く及ばぬ我々の実力を褒め称えろ

 所詮、アキトはコックと傭兵と暗殺者を足して三つに割ったような男であるに過ぎず、プロスやエリナのような技能はない。

 防衛ラインを力づくで突破した後でも、軍との関係その他一切全てが、ネルガルの手腕によって紆余曲折はあったかもしれないが回復した事を彼は初めから考慮してしまっていたために……彼は軍に従わなければならない事態にならなければそれでよかったのだ。

『な、何だと、若造! ッそう言えば貴様、あの黒い機体のパイロットだそうだがちょっと腕が立つからって……――』

 あんぎゃー、と吼え猛るウィンドウの向こうのイノシシ(成獣指定)の口元に手をやり、闇の王子はウィンドウを消し去って振り返る。  

 バイザーに覆われていない唯一の部位であるその口元には、素晴らしくさわやかな笑みは浮かんでいる。

「皆、穏便な話し合いの結果、彼らは実力で突破しろと言ったよ。よろしく頼む」

 ――それに、率直に言ってアキトは軍にケンカを売りたかった……それは一部を除いてナデシコの総意である。だとしても、しれっとした事をいうアキトに一同は副長除いて苦笑いを返す。 

 もっとも、戦闘オブザーバーとオペレーターのそれはわかりづらかったが。

「……今回は、前と何も変わらず派手なケンカになりそうですね……」 

 黒い復讐者の行動は結果的にはかつてミスマルユリカが同じ時間、同じ相手に行った事と同一であった……それに気が付いたルリはなんとも複雑な気分を味わい、お約束のセリフを口にするのであった。

「はあ……ホント、馬鹿ばっか」

 久かたぶりに、アキトを馬鹿の範疇に入れたルリだった。しかし……英語をしゃべれないその馬鹿の為にオモイカネを使って同時通訳をしていたのは彼女である。

 とにもかくにも、かくしてナデシコのディストーション・フィールドには嫌がらせの意図ではないが、雨のごときミサイルが降りかかってくる事になった。

 


 

ヤマダジロウの私室にて――……

 

「ゲキガァン・フレアアアァァァァァアァアッ!!!」

「げ、げきがんふれあぁぁあああ!!?」

 ネルガルシークレットサービスの長、プロスペクター……彼は某所において、熱血教の洗礼を受けていた。 

 あ、そろそろ目が虚ろだね。

 


 

地球圏、第三次防衛ラインにて――……

 

 木星蜥蜴から地球圏を守る、第一層のビッグ・バリアに代表される七層の防衛ライン……

 私はその内の第三次防衛ライン……機動兵器デルフィニウムを始めとする最も能動的な防衛を行うラインに配置された衛星の中で、自分に支給されたデルフィニウムの最終調整を行っています。

 デルフィニウム……主に成層圏などの超高空と宇宙戦闘を目的に開発された純白の機体……この空気中の塵もないような空間ではなかなかに汚れはせず、配備された時と変わらぬ輝く純白を見せています。

 純白……そう、この機体は薄汚れるほどの戦いを経験してはいないのです。

 地球を守るビッグバリア……七層の防衛ライン……しかし、敵は地球の都市近郊にまで侵入しています……防衛ラインなんていっても……何も守れてはいない……ただの飾り……

 チューリップの存在が防衛ラインを無意味にしています。

 あれはそれなりに攻撃能力も持っていますが、本来の目的は輸送……あの巨大質量で一気にのしかかり、ビッグバリアもミサイルも、全てを無意味にしてしまう……極端に大雑把なやり方でも、なぜか吐き出される全ての無人兵器にまるで損傷がない……内部を調べる事に成功したと言う話も聞かないし……

 地球を守るというビッグ・バリア……しかし一体何を守れているのか。これは、ただの……飾り。

 私はその飾りの上で踊るダンサー……敵の勢力は火星圏に留まり、地球圏に侵入する敵をとどめる事も出来ない。

 私の名前はイツキ・カザマ――火星出身、十七歳。

 生まれ故郷を取り戻す事も、出来ない……火星パイロット訓練校出身……

「デルフィニウム部隊、イツキ・カザマ……出ます!」 

「待っててね、アキト……いまから、あなたのユリカが行くからね! ナデシコに帰ったら、艦長権限で同じ部屋にして、同じベッドに寝て、う、うえぇへへへっぇへへへぇ……」

 これでも一艦をあずかる艦長だと言う、顔面の造形を狂わせている不気味な女性を背後の補助席に載せなければならない事にかなり真剣な悲しみと恐怖を覚える、一パイロットです……しくしく。

 


 

「目標発見! 任務内容確認。ネルガル重工所属、機動戦艦ナデシコの拿捕!」

 自分の唇から出てきた言葉に、私はふと奇妙な感触を覚えました。自分のよく知っている文字を見て、訳もなく、それが全くそぐわない、そもそも文字でさえないように思えてしまう奇妙な錯覚。

 たまに感じる違和感を唇から出てきた言葉に感じます。軍人となり、任務に従うようになってからの時間はけして長いとは言えませんが、それでもこんな事は初めて……

 考えてみれば、少なくとも私個人にとっては今の状況は全く奇妙なものです。

 私個人の感情で言えば、機動戦艦ナデシコ――火星へと救援活動……何しろ相手は営利企業体、名目をそのまま信じていいものかとは思いますが、それでも火星を目指すと、木星に火の星が占領されて以来、初めて明言した船を拿捕したいとは思えません。

 しかし、同時にたった一隻で火星に向かおうとするこの船に無謀と言うのおこがましいと呆れ返るものもあります。訓練をみっちり受けた軍人でも厳しいミッションを素人の寄せ集めで向かうなんて……しかも、艦運営のための訓練や模擬戦闘も行っていない……はっきり言って、彼らは捨て駒なのではありませんか?

 ネルガルのスタッフはごくわずか。外部からスカウトしてきたスタッフというのにもネルガルの底意地の悪さが垣間見えます。スキャパレリ・プロジェクトとやらは成功すれば儲けもの、といった程度で、実際には未知の機能を持った敵と、これまでの概念を覆しかねない新兵器の戦闘データ、火星の現状……そう言ったものを調べるためだけの航海……彼らは使い捨てではないのか、と……思えます。

 現に、ナデシコとやらのデータを見る限り、一パイロットに過ぎない私のところに回ってきたモノから判断できるだけでもこの船は試作品です。

 武装は主砲のグラビティ・ブラスト……艦前面に固定されて、融通が利かず――ミサイルはやはり前面に設置されているものだけ。真正面から突撃でもする気ですか? 

 背部からかかってこられたら、上部、下部からかかってこられたらしかもそれが同時だったなら? 袋叩きが精々ですね。いくら艦載機を複数積んでいても……一隻で火星に向かうのは無茶苦茶です! 

 これは、よほど艦長が卓抜した能力を持っていなければ、行き着く事は出来ても帰る事はまず無理でしょう。少なくとも、最近の風潮である見栄えのいい、艦の象徴としてだけの艦長では駄目なのです。 

 で、問題の艦長ですが……

「――ミスマル少尉。申し訳ありませんが、少しお静かに願えませんでしょうか? ただいま作戦行動中ですので」

「う、うぇへへへへえへ――ア〜キ〜〜〜ト〜〜!」

「……………少尉」

 私の背後でぎこちなくパイロットスーツを着込み、少々うらやましいボディラインを露にした、壊れた目つきと赤ら顔のまるで酔っ払いのような目をした、二十歳程度のきりっとしていれば『見栄えのいい女性』です。

 ……あの船には火星を奪還できる可能性があります!

 こーゆー艦長を乗っけてみすみす破壊させていいものでしょうか!?

 否、否、断じて否です! 

「……少尉。そろそろナデシコとの接触ポイントですので――……」

「えへへへへへへへへへへへぇへへへ〜〜〜――……アキト、そんなにユリカの料理おいしいの? や〜、そんなに誉められたら……アキトって正直♪」

「……」

 ぷっちり♪ 

 

 めごし

 

 私は、連合軍最高幕僚会議に乱入した彼女を『引き取り』にいった折に入手したかなり頑丈な灰皿(ガラス製、安価)を少々勢いよく後ろに放り投げる事により、静寂を手にいれて精神の良好、安定を手にいれる事に成功しました。

 背後から聞こえた湿った重い物がどこかにぶつかる音など、完全無欠の気のせいです。

 けして、日頃男っ気のない生活をせざるを得ない(軍なら男の方が多いはず? いえ、注目するのが失礼なところをなめるように見るような輩は男ではなく“オス”ですので)自分のストレスを発散したのではありませんので、あしからず。 

「ふふふ……その“アキト”とやらにもちょっとばかり痛い目を見てもらおうか・し・ら♪」

 ……耳の錯覚です、忘れてください。

 気にしては駄目なのです!

 


 

ナデシコ艦内、テンカワアキトの私室にて――……

 

「敵機確認、おそらくは第三防衛ラインのデルフィニウム部隊かと思われます」

 オモイカネよりの報告を、ルリが抑揚に欠けるが通りのいい声で読み上げる。その銀の輝きを連想させる声は、本職通信士の喉を介して艦内全域に余す事無く通達される。

 耳に馴染んだ声を耳にして、アキトは自室の壁から背を離し、天井を見上げた。なんでもいいが、黒尽くめの男が部屋でぽつんと何をするでもなく座り込んでいる姿は無気味である。これで暗闇だったら完璧であろう。

「……以前よりも早い?」

「アキトさん、どうかしましたか?」

 アキトの自室で包丁を握っていた私服姿のサユリ(!)がアキトのいぶかしむ声に振り返る。

 後頭部でくくった馬の尾を模した髪がふわりと揺れながら、熱せられた空気をジュンのわめきから逃げてきた、自室でもバイザーをはずさない黒の皇子の元へ運ぶ。

 連合軍に喧嘩を売った男を巡る女性の中では家庭的という言葉が唯一似合う、そんな彼女は、アキトがナデシコに乗艦してからというもの欠かさず彼の食事を一日一度は作りに来ていた。

 ――結局、あのキノコ一家によるナデシコのっとり事件の際に無理矢理連れてこられた時以外には、黒衣の青年の姿を食堂で見かける事はなかった。

 さすがは食堂勤務、たった半日でその事実に気が付いた彼女は、オモイカネによる食堂利用者リストを閲覧したルリが駆けつけるよりも一歩早くアキトの部屋に夕食を作りに参上したわけである。

 ――ちなみに、パイロットとしての訓練時間は同僚のスバルリョーコがほぼ完全にアキトを独占している。

 さらに、サユリが食堂利用者の数と質にちょっと個人的な不満を抱いた際に、事情を知ったホウメイがアキトが食堂にこない理由を聞き出してこいとハッパをかけて送り出したり、サユリがエプロン以外身につけずにアキトの元へと行くべきか、かなり真剣に悩んだのは渦中の人物の意外と立派な胸に隠されたささやかな笑い話である。

 その話を聞いたわけではないが、アキトはサユリに向かって子供に向けるような苦笑を見せる。自分こそがある意味底なしに子供じみた部分を捨てきれていないくせに、神も魔王も恐れぬ男である。

「随分調理に集中してたんだな。警報だよ――デルフィニウム部隊だ」  

「えっ!?」

 本気で驚くサユリに、怒りや呆れよりも微笑ましさを感じる自分をこそ笑いながら青年は足を部屋の出入り口に進める。その背中は颯爽として、躍動感を秘めた動作と共に止める事かなわずと思わせる。

「……出撃ですか」

「デルフィニウムの攻撃は……ディスト―ションフィールドでは防げないだろう。少なくとも、艦に張り付かれる危険性はある。こちらも機動兵器で対抗するのがベストだ」

 サユリは慕う男の動き一つ一つに命の輝きを感じる事が出来、その事実を喜ばしく思う。しかし……繰り返される日常の中で、アキトの様子にいぶかしく思うところがある。

 十七歳の肉体とはいえ精神年齢は二十歳を過ぎる――それも、尋常ではない経験をつんできた女だ。青春時代の半分を戦艦で過ごし、その後はアイドルグループのリーダーとして、実は何度か芸能界の黒い噂の真実に直面した事もある。

  ウェイトレス、アイドル、ともに様々に人と接する機会のある仕事だ。更に、サユリはグループ内のリーダーでもある。そんな彼女だ、人の内面を察する目はおそらくナデシコでも指折りだろう。

 他人の内心を気にする事が極端に少ないナデシコの面々では比較対象があんまりよくはないのだが……

「……今回は素人パイロットのジュンがいないから、随分と面倒くさい事になるのかもしれんが……出来るだけスムーズに終わらせよう……いってくる」

 サユリの愁眉の対象は、言ってにこりと笑顔を作りながら部屋を後にする。なんとなく火打石で送り出したい気分で見送るサユリ……

 時代劇には詳しくないので、本当に火打石なのかはわからないが、適当なもので代用してみようかとも考える彼女だが……元々生々しい桃色の脳味噌の半分くらいを少女漫画の桃色に……残った半分の更に三分の一をポルノチックなピンクに染めていながらも、残った部分を使って、女として、人としてアキトの心配を始めた。

 なかなかに器用なものである。女性と言うのはすべからくマシンチャイルド並みの演算能力を持っているのかもしれない……素晴らしい。

 さて、男は女が自分の内面をいぶかしんでいるとは思いもよらないのだろう。ここ数年間はマイナス・ダーク方面に発揮されていた熱血思想をエネルギー源にして、素晴らしい速さで格納庫に向かう――アキトは口元に凄みのある笑みを浮かべていた。

「ふ……今回ジュンは敵に回っていないから派手に殺れるな。くっくっく……待っていろ、連合軍……くくく……」

 バイザーがなくとも顔がわからないくらいにうつむきながら艦内を爆走する黒尽くめ。どうやら軍に公然と喧嘩を売れるのが嬉しくてたまらないらしい。殺すのはいくらなんでもまずいのだが……

 そんな彼だから、己の内面を心配している女の存在にも、新たな世界への旅立ちを果たさんとする男の存在にも気がつかなかった。

 ――サユリがその秀麗な容貌に似合わない暗い表情を浮かべながら一人部屋に佇んでいる時、格納庫では敵襲に応じ、無理に出撃しようとした一人の男が赤い海が支配する世界へと旅立っていたのだ。

 彼は、そこで一人の線の細い少年に熱血の素晴らしさを心赴くままに語り尽くし、意気揚揚と帰還した。

 目がさめた時には何故だか彼は赤い水溜りに顔をうずめていたが、その理由と紅い海に旅立つ際に感じた後ろからの衝撃との関連を考えるよりも先に、彼はよく馴染んだ暗闇の世界への第一歩を己の内側に刻み込んだ。

 男の名はダイゴウジガイ。

 後に、ナデシコ医務室の支配者の手により検出される特殊自己再生能力保持細胞、ダイゴウジガイ細胞――通称DG細胞を備えた男として医学界、生物学界に旋風を巻き起こすと、まことしやかにデマを流されたが欠片も気にしなかった男である。 

 


 

ブラック・サレナ、アサルトピット内にて――……

 

 何故だか、女の服には赤い色が映えていた。

 いやに目につくそれを俺――テンカワアキトは見ない事にした……一応、聞くだけ聞いてみるが。

「……リョーコ……その、肩のあたりが少しばかり不規則な色合いで赤いんだが……心当たりはあるか?」 

 ウィンドウの向こうで、緑に染めた髪を俺が最もよく馴染んでいる髪形に整えた彼女は朗らかに笑った。

『そうかな? テンカワの気のせいだろ?』

 ――地球を覆う七層の防衛ライン第三層、機動兵器デルフィニウム部隊による迎撃を面として行う風と宙の境目で俺は愛機ブラック・サレナを駆り、同僚たるスバルリョーコの空戦エステと並んで、地球件脱出を図る機動戦艦ナデシコを拿捕せんとする軍を迎え撃つべく黒い空をにらみつけ、そこにいるであろうデルフィニウムを待っていた。 

 ディストーションフィールド……言い方を変えれば空間歪曲場、か。

 ナデシコを守るこれは相転移エンジンの関係で真空にならなければその性能を十全に発揮は出来ない故に、単なるミサイルではなく機動兵器が相手の場合はこちらも機動兵器で出る必要がある。

 俺はかつての戦いを思い出しながら、それによってリョーコ――背中を任せる戦友の白々しい作り笑いが示すものを力づくで忘れる事にした。何とはなしに彼女の肩に染み込んだ赤い色の提供者には心当たりがあった為に……

「さ、さてデルフィニウム部隊との対決か」 

 わざとらしい確認を口に出すと、俺はかつて一度だけ戦ったデルフィニウムと言う機体について思い返していた。

 デルフィニウム……たぶんこれも例に倣って花の名前なのだろうが、外見ははっきり言えばミサイルを装備したイカである。俺が参戦したこの時点での最新鋭機はリョーコが乗っているエステバリスであり、その後は軍に正式採用されたため廃れていったデルフィニウムと言う機体を俺はよく知らない。

 ロケットに作業用機械の上半身を取り付けて、ミサイルを複数装備した機体……無人兵器やエステバリスと比較すると、直線的なスピードや活動時間限界についてはどうか知らないが小回りや武装の幅は狭く、人間同様の五体を持つエステバリスと違うためにIFSでの操縦も少々難しいらしい。

 これは全てリョーコに聞いた事だ。彼女もエステが支給されるまではデルフィニウムで訓練に明け暮れた時期があったらしい。

 かつて、素人パイロットの俺が敵の情報も何もなかったのにあの戦いを切り抜けられたのは、全面的に相手がどっこいの素人であるジュンであったために他ならない。それ故に、彼女のもたらした情報は嬉しい……訓練にも頻繁に付き合ってくれるし、前回俺と共にいたガイとは偉い違いだ。

 ちなみに、ルリにこういったらヤマダさんの方がまだましです! と突然怒りだした……何故だろう? 今度サユリに聞いてみるか。

 脳裏にサユリ……俺の前で常に彼女のしている白いエプロンを思い返す。

 アレはある意味、俺の過去の幸せの象徴……共に歩む女性がしているよりも自分がしている事の方が幸せだと言う事に俺の女性関係のちょっとした特殊さが表現されているような気もするが、ともかく、常々あの白さは俺の過去だと思っている。

 過去、か……

 彼女達は俺をどう思っているんだろうかと、戦場にいるにも関わらず、そんな益体もない事が唐突に気になりはじめる……きっと、ルリ達は誰もが俺が昔のコックに戻る事を期待しているのだろう。

 ――それはつまり、彼女達もユリカと同じで今の俺を認められないと言う事なんだろうか?

 俺を否定した女の顔を思い出す度に、胸の奥に怒りとも憎悪とも似ている、しかしどこかが決定的に違う痛みを感じる。これは……嘆きなのだろうか?

 悲しみと怒りの狭間に位置するマイナスの感情を心臓の裏側に感じながら俺はナデシコに……彼女が否定した俺がいた場所に帰ってきて過ごした数日間、少し暇を持てば雑草のように俺の頭蓋骨の中にはびこる想いに、こんな時でさえも支配される。

 俺は、ユリカをどう思っているのか。

 皆は――イネスを入れれば四人は俺をどう思っているのか。

 一年間……この時代に期せずして乱入してから義務となった、考えたくはないのに考えなければならない、これはそういう問題だった。

 俺は……ユリカをどう思っているのだろうか。

 憎んでいるのか。

 嫉妬しているのか。

 愛しているのか。

 抱きたいと思っているのか。

 それらの感情はこの時代のユリカに当てはめてもいいものなのか。

 この時代のユリカに当てはめていいものならば、俺は彼女に怒りと悲しみ……負の感情をまず向けるだろう。俺は結局、あの時、あの部屋で彼女に拒絶された事をしっかりと胸の奥に刻み込んでいる。

 時を変え、場所を変えても……その程度で変わるくらいならばあんな風に無様にしたりはしないだろう。

 そして、俺は時を越えても彼女に強い思いを抱いている。

 俺を拒絶した彼女を憎んでいるのだろうか?

 同じ相手にさらわれたにも関わらず、二年もの間をただ夢を見ていただけの彼女に嫉妬しているのだろうか?

 ――それとも、この想いはこの時代の彼女とは無関係だときっぱりと忘れるべきなのだろうか。

 事ある毎に俺を好きだといった彼女を、最も平穏で、楽しかった時期を共に作り上げた彼女を愛しているのだろうか?

 妻である彼女のぬくもりを求め、抱きたいと願っているのだろうか?

 彼女――ミスマルユリカとテンカワユリカを別人と考えるのであれば、俺は彼女を愛するべきではない。全ては……俺がテンカワユリカを忘れられないからだ。あらゆる意味で……

 実際、あーゆー無意味に自己主張の激しいインパクトの強いキャラクターを忘れるのはかなり難しい事だろうが……

 これまで彼女のせいで幼い頃から不必要にくぐった死線を反芻し、不覚にもげっそりとしてしまった俺の前に、唐突に一枚のウィンドウが開く。

 単調な電子音と共に開いたそれが、通信可能領域にまで接近した真っ白なデルフィニウムからのそれだという表示を目にした俺は、自分が戦場で物思いにふけるという度し難い愚かな真似をした事に深く自省する必要を感じた。

 帰ったら瞑想ルームにでも篭ろう、と心に誓い、俺は視認出来る位置に来た真っ白なデルフィニウムと、開かれたウィンドウに意識を集中する。

『ミ、ミスマル少尉! いきなり何をするんですか! ちょ、ちょっと……むぎゅ』

 ……? どうやら、通信をつなげたのはいいが向こうはなにやらもめているらしい。声ははっきりと聞こえないが、どうやら女性のようだ。

『……どうする、アキト。なんかもめてんぞ?』

「……この隙に敵を観察させてもらおう。伏兵の有無なんかをな。それと、こちらから発砲する事は避けた方がいいと思うが……後はブリッジの指示待ちでどうだ?」  

 敵機はきりのいい所で全十機――ミサイルは完全フル装備、こちらを誘い込むようなVの字に展開された陣形から察するにどうやらこちらを問答無用で拿捕する方針らしく、パイロットの腕はまあまあというところか。

 ……なんでもいいが、あのデルフィニウム達は旧式の機体なのに新品同様だな。こなした実戦の数が少ない俺のサレナやナデシコ、エステじゃあるまいし……どうなっているんだ?

 開いたウィンドウよりもデルフィニウムにこそ、くだらない事に向けられそうになる意識を集中し……開かれたウィンドウからの通信を待つ。

 さて『以前』はジュンがユリカ(艦長にではない)一人にナデシコを戻すように嘆願するという、極めつけに個人的な始まり方でこの戦闘は開始したわけだが……今回はいくらなんでもそんな事はあるまい。

 さて、軍はどう出る……?

 俺は自分でも陰惨と思える笑みを浮かべてデルフィニウムからの通信を待ち……そしてウィンドウに――訳のわからないものが映る。

『あん? ……なんだ、コレ』

 やはり俺と同じく、謎の物体について理解不能の顔をしているリョーコと一瞬目を見交わす。俺にはそれが珍種の魚に見えた、が、そんなわけもないだろう。さながら画像クイズを解いているような気分で俺はその珍魚(仮定)に向かって目を凝らす。と、思い当たるものが三秒後に見つかった。

「……もしや……」

 肌色と黒と白の三色が交じり合った珍妙なそれが、思いっきりカメラにかぶりついた人間の顔だという事を察した俺の鼓膜――そこに超振動が襲い掛かってきた時には、果たして防御のための時間が一秒でも間にあっただろうか?

『ア〜〜〜〜キ〜〜〜ト〜〜〜〜〜!!!』

 アサルトピットの空気がまるで気流のように激しく動いたのを俺は復活した皮膚感覚で、激しく覚った。

 極めて狭いアサルトピット内で吹き荒れる爆風はまるで鉄の箱の中に撃った銃弾のごとく跳ね回り、俺の全身をさながら渦潮の中の小鳥の羽のようにさいなむ。

「うおおぉぉぉぉぉおっ!?」

 ……俺の想いは、あいつの騒音の前には台風の前のろうそくに過ぎないという事だろうか?

『テ、テンカワ……きゅう』

 リョーコをはじめ、複数の人間の苦渋の呻きをジェットストリームの隙間に聞きながら、俺は震える指先でコミュニケの音量調節を最小にしぼってそれを最後につっぷした。

 ――三十秒後、何とか回復してから確認した俺はデルフィニウム、エステ、サレナを残し、ナデシコはさっさと第三防衛ラインの終わりにまで到達しているのを発見した。

 どうやら、この戦場において唯一被害を免れたオモイカネが艦を先に進めておいたらしい。

「……爆声で戦場を支配しやがったか……このサウンドウェポンめ……っ!」

 いまさらお前に精神の良識は期待しない、だからせめて肉体の常識だけは持っていてくれ――ミスマルユリカっ! 

 開いた複数のウィンドウの中で敵味方問わずに悶絶している一同と、バチバチと一時的な故障を訴えるスピーカーを見比べながら俺は切実にそう願った。

 


 

 未だに耳の奥で呪いのように反響する痛みを痛切に感じながら、俺はサレナをリョーコ機に寄せて、青い機体とともにナデシコとデルフィニウム部隊の間に位置する。

 戦場の支配者は相変わらず俺に向かってなにやら話し掛けようとしていたが、俺が音声を切っていることに気が付いたのか、今度はガチャガチャと適当にレバーやスイッチを押してマニュアルでデルフィニウムを動かそうとしている。

 その静かになった間に何とか回復した一同は、最も激烈に被害をこうむったであろうユリカが乗っているデルフィニウムのパイロットを除いて何とか機体を立て直し、それぞれ臨戦体勢へと移行する。どうやら、ナデシコが先に進んだ事で事を力づくにする気になったらしいな。

 ユリカ機(本来は違う)を除く九機から感じる切羽詰った敵意はナデシコ逃がすまじの意気か。

 真空に限りなく近い空間を渡った敵意と焦燥を察して、ちろりと舌なめずりをしながらワラウ俺……視界の端で、外から見れば一応沈黙を保っている一機はこの際無視する。

 あの機体の本来のパイロットがIFSでデルフィニウムを支配しているのだ、IFSが優先されて、マニュアルの操縦は出来ない。なら、無視していても大丈夫だろう。どうせユリカだ、中でもまた騒ぎ始めてパイロットにはトドメをさしてくれるに違いない……あいつも、ジュンのようにナデシコを地球に戻すために来たんだろうか?

 いや、艦長として再度乗艦に来たのか?

「まあ、それはこの戦いが終わってから考える事だな」

 呟く俺の右掌が淡く光り、黒い鬼に俺の意思を伝える。

 サレナのカノン砲は極限に薄められた大気を通して、主の思いのままにデルフィニウムへとまっすぐに向けられ、敵意を行動で示されたイカモドキから緊張が伝わってくる。

『戦艦ナデシコ所属の機動兵器、警告する! ただちに敵対行動をやめて武器を放棄せよ! 同時に戦艦ナデシコに警告する! ただちに艦を地球に戻したまえ、これは連合軍最高幕僚会議の総意である!』

「……と、言う事だそうだ。さて、プロスさん……対してネルガルの返答は?」

 俺はカノン砲の銃口を勧告を向けてきたデルフィニウムに定めながら、ナデシコに通信を送る。恐らくは事前に対応は決めていたのだろう、艦からは素早い返答が返ってきた。

『仕方ありませんな〜〜。テンカワさん、スバルさん――軍人さんを死なせてしまうと後々面倒が増えます。戦闘不能を目標にして戦ってください』

 チョビ髭の男はお気楽な態度でそんな事を言う。しかし、けして不可能ではない……何しろ俺もリョーコも歴戦のパイロットだ。サレナどころかエステバリスにも性能が大きく劣るデルフィニウム相手ならば戦闘不能にして追い返す事もたやすい。

 それ以前に、デルフィニウムは主武装のミサイルを撃ちきれば、燃料が減れば帰還するしかないしな。

『おっしゃあ!』

『ふ、ふざけるな! 貴様ら、軍に逆らう気か!』

 リョーコの歓声に続いて、いまさらそんな事を抜かしてあわをくうデルフィニウム部隊のパイロット……俺はまずはそいつに向けてカノンの引き金を引く!

「なら……始めようか!」 

 鋼鉄の人殺しが十一機――星空と青い星を部隊に一斉に飛び交い、火の花を咲かせた!

 


 

デルフィニウム・コクピットにて――……

 

 その姿はまさに悪魔だった。

 パーソナルカラーもさる事ながら、その大きく張り出した肩部装甲が蝙蝠の翼を思わせてイツキの心に迷信じみた恐怖の楔を打ち込む。

 イツキ・カザマはネルガルのそれに比べてかなり武骨なデルフィニウムパイロット専用スーツの中で、背中に冷や汗を感じる……何とか取り押えた生体爆音発生装置にぐりぐりとヘッドロックをかましながら。

 まだかすかに朦朧としている意識でも、彼女のパイロットしての高い技量は目の前で踊るように戦う見た事も聞いた事もない機体……その性能も、パイロットの腕も桁外れだという事実を冷静に認めた。

 その機体――ブラック・サレナという名を後に知る黒い鬼は、最初の一発の後は両手に備えたカノン砲をしまい、日本刀を思わせるリーチの長い片刃のナイフと頭部から孔雀の尾羽のように伸びた紅く輝く鞭を使って、友軍機のブースターを狙い続ける。

 味方が撃つミサイルは、外れるどころかあまりの高速機動にろくに撃つ事さえも出来ず――たまに破れかぶれで撃ったミサイルはもう一機の青いエステバリスのライフルにことごとく破壊される。

 機体の性能差もあるあろうが、それ以前に腕が違った。

「あれで軍人じゃないっていうの!? 冗談じゃないわよ!」

 イツキは火星を取り戻す事を願って訓練を続けてきた自分を否定される気分だった。ヒステリックに叫んでから、そんな自分に赤面して薄めの唇を噛み締める。

 エステバリスの方は、イツキでも機体さえ同じならば互角の戦いが出来るだろう。今見せている動きが全力であるのならば。しかし、黒い悪魔は桁が違う。もしも彼女がこの戦いに加わっていたのならば、恐らくは意味のない事を叫びながら逃げまわり、ミサイルを撃つのが関の山。

 きっとパニックになるだろう、絶え間なく悲鳴と驚愕の声をあげる、悪夢を見ているかのような顔をしている今の友軍のように。 

 あれが彼らの全力である事を期待しながら、黒い鬼の戦いの外から目で追う事さえも困難な戦いを見続ける。円を描く軌道、回転する動きは中の人間を殺しかねないGがかかっている事をたやすく理解させる。あの機体には慣性を殺すシステムが備わっているのか、それともパイロットが異常なのか。

 前者であってほしい……そう思うイツキの前で五機目のデルフィニウムがブースターを破壊され、しかも装備されたミサイルの誘爆からサレナに救われた。それを見て、火星の奪還を願いながらも軍の命令でナデシコに敵対せざるをえなかった少女はこの戦争が終わった事を悟り、全身から力を抜く。

 この戦いで、味方のデルフィニウムは燃料を基地衛星に帰還するだけしか残していない事を彼女は通信で知らされた。帰還するより他はない。イツキは例え望んではいなかったとはいえ任務を果たせなかった無力感を感じ、重くなった頭をヘルメットごしに支える。

「出来るの……? 彼らは火星を取り戻せるの?」

 そこには、期待と悔しさが込められているのだろうか? 彼女は遠く、もう見えなくなっているナデシコを追いかけはじめたブラック・サレナとエステバリスの闇に溶け込んでいく背中を見つめる。イツキは、自分が彼らを追いかけたがっている事に気が付いていなかった。

 そして同時に、自分の背後でなにやらわきゃわきゃ踊りながら騒いでいる女が、さっきからえんえんとデルフィニウムのスイッチ類をでたらめに押している事にも……

 そして――IFSのついたイツキの右手がどこにあるのか……彼女の手は自分の頭を支えていたりする。

「え〜〜ん、動いてよ〜〜! アキトがいっちゃうよ〜〜! アキトアキトアキト―――っ!!!」

 IFSは専用のレバーに接触する事でパイロットを認識する。そして、今イツキの右手はレバーではなく彼女の頭を支えており……つまり、ユリカによるマニュアル操作おっけいなのである。  

 無意識にだが、このような機会を逃さないのがミスマルユリカである。彼女はいきなり狭いコクピットの中で思いっきり両手を振り上げ、肘がイツキの後頭部にぶつかったのに気が付かずに全力で握り拳を振り下ろした。

「う〜〜〜!! アキトの、アキトの馬鹿〜〜〜〜〜っ!」 

 いっておくが、アキトはけしてミスマルユリカがナデシコに戻れないように何かした事はない。が、ユリカ的にはアキトはここで彼女の元に颯爽と現れて、ユリカをナデシコにエスコートしなければならないのである。けっして、戦っている最中にどんどんと遠ざかっているナデシコを追いかけて、大急ぎで飛んでいってしまってはいけないのだ――その彼女の怒りの拳が、思いっきり八つ当たりでコンソールに適当に叩きつけられ……

「あうう、痛いよ〜〜! 皆、ひどい〜〜!」

 この場合の皆とはどこの誰達を指すのだろうか? そんな事を考えるイツキの前で、ピッと音をたててウィンドウが開かれる。そこに表示された文字は――……

『リミッター解除、メインブースター最大出力!』

「え?」

 目が点になった事は生まれて初めてだったと、某パイロットIは後に語る。

 え〜〜? Yのそばにはそういう人は一杯いるよ。Iちゃんってけっこう世間知らずなんだね、と振り下ろした拳の下に目に痛いほどの真っ赤に塗装されたボタンがある某艦長Yは語った。

 その後で問題の艦長Yは、パイロットIにドラゴンスリーパーを極められたが。

 しかし、目が点になろうとプロレス技を見事に極めようとイツキの目はしっかりと赤いスイッチを捉えている。彼女の魂は白い霧状になって口からはみで、空気を震わせた。

「……嘘でしょ?」

『本当です』 

 けっこう芸の広い搭載AIがイツキの疑問に律儀に答えた。そのウィンドウは一瞬で消え、続いてデルフィニウムのブースターが臨界点に突破した事を教える。

 ……………どっぎゅう――ん。

「ひょおぇぇぇえぇえぇぇぇぇ〜〜〜〜〜っ!!?」

「あれぇ!? あはは、やった――っ! アキト達に追いついた!」

「喜んでんじゃな〜〜〜い!」  

 白い弾丸が轟音を引き連れて、特大ミサイルそのものといった風に成層圏を駆け抜け、一気にサレナとエステバリスを追い抜く! 

 極小彗星が通過した後には、機体越しにも驚いているのがわかるサレナとエステが残されたが、さすが歴戦たる二人はすぐに自分を取り戻し、デルフィニウムを上回る加速で後を追う! ちなみに、アキト達が呆然としていたのはデルフィニウムの不意の加速ではなく、慌てて開いたコミュニケから聞こえてきたすっとんきょうな二組の悲鳴(?)のためだ!

「少尉! リミッター解除には複雑な手順が必要なんですよ!? どうして素人のあなたがこんな事出来るんです!?」

「え〜〜? そんな事いわれても、ユリカは適当にその辺弄くっただけだし。あ! きっとこれも私とアキトの愛の生んだ奇跡なのよ!」

「こ、この妖怪娘……っ!」

 奇跡の生んだ軌跡は一直線に思慕の花へとコースを取っている。ナデシコのディストーション・フィールドがいかに強力といっても、この勢いでデルフィニウムに激突されてはもたない!

「ナデシコ、よけろ! 緊急回避だ――っ!」

『クルー完全沈黙。回避運動不可!』  

 まだ気絶していたんかい! 

 何故だかブリッジにいるガイの白目のアップをオモイカネに見せ付けられたアキトはぎりり、と歯をきしませると、エステバリスを大きく突き放して更なる急加速をかける!

 肉をきしませるGはユリカボイスと戦闘にダメージを受けたアキトを更に傷つける……この一年間の鍛錬がなければ、アキトは加速に耐え切れずここで気絶していただろう。しかし鍛え上げた肉体は鋼の強さを発揮し、サレナとアキトをデルフィニウムがナデシコの後部ブースターに激突するギリギリの手前で受け止める事を成功させた!

『わ〜〜! アキト迎えに来てくれたんだね! ユリカ感激♪』

 がっぷりと力相撲のようにデルフィニウムと組んだ黒い悪魔の中で、アキトはこのままデルフィニウムにベアハッグを極めたい衝動にかられたが……彼は素晴らしい精神力を発揮してユリカを無視し、ウィンドウの奥の方で必死に機体を制御しようと奮闘しているパイロットにむけて叫ぶ。

「デルフィニウムパイロット! 状況はわかっている、何とかして機体を止めろ!!」

『無理です! 既にシステムは起動したから、リミッター機構そのものをどうにかしないと、燃料切れを待つしかありません!』  

「ジーザス……」 

 パイロットのIFSとは通常、テレビのリモコンのようなものだ。

 機械を動かす事は自由自在に出来るが、機体を動かすプログラムそのものにはせいぜい自分用に合わせる調整ぐらいしか出来ない……処理能力が追いつかないのだ。それをクリアしたのがホシノルリらがつけているオペレーター用IFSなのであるが、彼女らはいまデルフィニウムに乗っていない。

『……燃料切れ待ちって事か!』

 追いついてきたリョーコが結論を下すが、しかし……!

「駄目だ! 機体がそれまでもたない!」

『ええぇっ!!?』

 見れば、サレナに押さえつけられているデルフィニウムの装甲がへこみ、ひび割れている……力比べに機体が負けてきているのだ。本来のデルフィニウムはこのような格闘戦向きの機体ではないし、ブースターはそのものが焼けつきそうな程の大出力でもってナデシコをかたくなに目指し続けている!

『――こちらでも確認しました。このままでは遠からずにデルフィニウムは大破しますね……』 

 その声は努めて冷静でいようとしているが、それでも隠し切れない恐怖と不安に震えているのがアキトにもリョーコにもわかった。その震えがアキトに一つの決断をさせる。

「リョーコ、一足先にナデシコに帰艦しろ! 後は俺がやる!」

『な、なにぃ!?』

 冗談じゃねぇとばかりにくってかかろうとしたリョーコであるが、アキトはそれを予測し先に口を出す。

「このデルフィニウムは何としてもナデシコに着艦させてみせる! だから先に戻ってウリバタケ達を起こしておけ!」

 確かに、この壊れかけたデルフィニウムには最終的にはどうしてもウリバタケの助けがいるだろう。それを理解したリョーコは舌打ちをしたそうな顔のままナデシコを目指す。

『くっそぉ……いいか、テンカワ! 三人とも無事に戻ってこいよ!』

 答えはウィンドウの中、無言でかざされた左腕のとったガッツポーズだった。それを見届けたリョーコが全速力で帰艦し、案の定気絶していたウリバタケらを蹴り起こして事情を説明している間に、アキトはデルフィニウムを取り押えているサレナの右腕から武骨な黒百合に似合わない繊細な情報処理用の端子を出す。

『……何をするんです? まさか、システムにハックするつもりですか!?』

「……いいカンだ」

 狭いコクピットの中でも器用にスリーパーホールドをユリカに極めるイツキに向かってにやり、と凄みのある笑顔を見せるのは……アキトがこの時思い出していたからだ。

 かつて、桃色の髪の娘に頼んだ最も望んだモノへの道を閉ざす扉へのハッキングを。

「あの時、俺を見守るリョーコとルリがいた……あの時、現れた北辰がいた……!」

 ぎり、と口の中でイツキに聞こえないように呟いた後は再び歯を噛み締める。アキトにとって、アレは苦い敗北の記憶だからだ。そして、その胸の奥で滾る激情の命じるままに彼は愛機に命令を下す!

『ナノマシン・アスフォデル――システムハッキング、GO!』 

 アキトの号令に従って、右手のIFSが光り輝き――その光が右腕全体へとまるでつたのように広がる!

『な、なによ、アレ?』 

 その様子を克明に見ていたイツキは唖然とした。自分も身につけているIFSに、あんな現象が起こるなど見た事も聞いた事もない。まるで微速度撮影による植物の成長記録映像を見ているようだ。

『ナノマシンパターン、なの?』

 ――そう、それはナノマシンの輝き。  

 ごくり、とイツキの喉が、その異様な光景に対する緊張感で大きく音をたてる。

 ごきゅり、とユリカの首の骨が、その拍子に力が入ったイツキの腕の下で鈍く音をたてる。

 二人(意識を保っているのは一人)の目の前でサレナの腕から出てきた端子はデルフィニウムのコクピット近辺から接続口を見つけ出し、そこからシステムに侵入する!

 その途端、イツキの目の前に目まぐるしくウィンドウが開いては消えていく! 彼女には早すぎて読み取れなかったが、この半分のスピードであったならば彼女にもハッキングに対する警告文と迎撃システムからの報告であるとわかっただろう。

 そして――……

『デルフィニウム緊急停止? あ、あなた……一体何をしたんです!?』

 時間にして、5秒もかかってはいない。

 たったそれだけの時間で、イツキの周囲に展開している無数のウィンドウは全てがデルフィニウムが暴走を終えた事を知らせていた。それを恐怖と驚愕で麻痺したイツキの脳が安堵感という形でじわじわと理解してきているのを、アキトは微笑みながら見ている。

「……ナノマシンを投入しただけだ。これでもう暴走はしない」 

『……ナノマシン!? それでどうやってシステムに干渉……』

 これまで見た事もない機動兵器ブラック・サレナ――……

 驚異的なその腕前。

 謎の発光現象。

 そして、凄まじい速さでのハッキング。

 それら全てがイツキの冷静さを奪っていた。

『ぐ、ぐええ……』

 絞められた首。

 次いで壁に押し付けられた。

 頭を握る握力。

 それら全てがミスマルユリカの意識を奪っていた。

「悪いが、これ以上は秘密だ」 

 何故だかアキトの視線が少し端の方にずれているが、ともかく人の悪い笑顔だと、正直彼女は思う。

 その感想が、自分の取り乱した姿を見られていたから気恥かしいのだと、イツキは自覚していた。ちなみに、もっととんでもない現場を目撃され続けているという事を彼女は自覚していない。

「さて、ナデシコに帰艦する。悪いが君にはしばらく我々と行動を共にしてもらうぞ」

 そういって、アキトは返答を待たずに停止したデルフィニウムをつかんで皆の待つ純白の船へと、黒い宙へと飛び立つ。地球が照り返した太陽の光を反射させ、黒百合は鷲のごとく飛ぶ。

『……私は捕虜ですからね。文句は言いませんよ……待遇がよければ、ですけど』

 肩をすくめて拗ねたような顔をするイツキにアキトは笑って保証をし、艦へと向かいサレナを飛ばす。

「そういえば、名前を聞いていなかったんだが……」

『お互い様ですよ、戦場で自己紹介なんて普通はしませんよ?』

 最もな返答に、アキトは恥かしくなって早口で自己紹介をする。

「俺はテンカワアキト。明日香インダストリーよりの派遣社員。ブラック・サレナ専属パイロットのテンカワアキトだ」

『あら、やっぱり』 

「……なんだ。そのやっぱりって言うのは」

『だって、ミスマル少尉が大声で何度もあなたの名前を連呼していましたし……ここに来るまでも随分と騒いでいたんですよ、彼女は。聞いてくれますか、その時のエピソード』

「……イヤだ」

 心の底からいやそうな顔をするアキトにくすくすと笑顔を向けるイツキ。ここに来て初めてアキトはイツキが女性だという事に気がついた。

「……やっぱ、ユリカと同乗するパイロットに男性を許すわけないか、あのコウイチロウおじさんが……」

 納得するアキトだったが、しかし彼女が武骨なヘルメットをはずして素顔を見せた時には、表にこそ出さなかったが随分と驚いた。

『イツキ・カザマ少尉……第三防衛ライン、第八衛星基地デルフィニウム部隊所属パイロット……遅ればせながら、助けてくださってありがとうございます……あれ、どうかしましたか?』

 さらり、という音を伴い流れる艶やかな黒髪、現れる和風の凛々しい顔立ち――……そこに、アキトは己の『前回の記憶』の中にいる一人の女性との類似点を見つけた。

『あれ? あの……どうしたんです? お〜い、やっほー?』

「――に、似てるなんてものじゃない……当人じゃないか」 

『は?』

 きょとん、と首をかしげるイツキは自分は認めない朴念仁であるアキトでも魅力を感じるほどであったが、今の黒の皇子はそれどころではなかった。彼は何とか平静さを取り戻すと、話題を変える。

「い、いや、なんでもない。ところでユリカはどうしてデルフィニウムに乗っているんだ? まさか、彼女もナデシコの拿捕に協力していたのか?」

『……協力……いえ、なんでもないです。彼女でしたら、ナデシコの艦長として火星に向かおうとしていたみたいで……ミスマル提督を完全沈黙させてまでして、ここまで来たんですよ』 

「………ともあれ、ならこれでユリカの艦長復帰、ジュンの副長復帰、かな……?」

 アキトはイツキの教える所業に少なからず呆れを感じながらも、ユリカに艦長としての熱意が失われていないのならばおそらくかつてのように戦争を終わらせるきっかけを作った名艦長になるのだろうと“かつて”の彼女を思い出してシートに背を預けるのだった。

 そして、呪いと恋――二つの名を冠する花は空を飛び越えて星を目指す。

 蝶のようにまずは思慕の花を宿にして……

「……次は、サツキミドリか」

 黒衣の帰還者は過去である未来に、未来である過去に思いを馳せて闇色の弧を空に描く。

 ――思慕の花は、大地を覆う檻を蹴散らして自由なる天空へと飛び出した。

 


 

ナデシコ艦内、デッキにて――……

 

「あれ、プロスさん。デッキにいるなんて珍しい」

「テンカワさん、熱血とは素晴らしいものですね!」

 は……? 

「そう、世界を動かすのは経済ではない! 男――いいや漢達の熱い思いがこの世を動かす! そして私達は木星の大地にて叫ぶのです! この偉大なる魂の咆哮を!」

 突然どうした、プロスゥゥウっ!?

「さあ、テンカワさんもご一緒に! ゲキガン・フレアアァァアァァァッ!!!」 

 唖然とする俺を他所に、プロスは彼いわく『魂の咆哮』を上げながらどこへともなく駆けだしていった。

「……………」

 この時、俺は気がつかなかった。

 ルリ達曰くの『汚染源』にして俺の『心友(と呼べと言われた)』が思いっきり面食らうウリバタケを相手にエステバリスの設計図を間に挟んで熱く『漢の浪漫』を語っていた事を…… 

「……恐るべし……ゲキガンガー……」 

 ――俺の言葉は、やけにはっきりと聞こえた。

 

 その後、プロスペクタ―の『病気』は某妖精の手腕による『教育』によって完治したらしい。

「ルリ……あの、一体……いや、やっぱりなんでもない。さて、サユリの作った料理を頂くかな……」

 俺は、温かそうに湯気をたたせているチャーハンの皿を片手に手招きするサユリの元へと足早に駆けていった。  

 


 

路目指す、炎の星。

そこは始まりと終わりの場所、私達の思い出の場所、大切な人の生まれた場所……

 後ろを見れば、青い星。

人の始まり、世界の始まり、戦争の始まり……

  始まりは今終わりを告げ、そして、物語は動き出す。

 

 

 

to be continue.......


 

 さてさて、Actionに移転してから始めての新作です。

 さて、今回のポイントはイツキ・カザマ嬢がナデシコ乗艦! 熱血プロス登場! ブラック・サレナが少しづつその能力の片鱗を明らかにする!   

 この熱血プロス、例のエステを出すための布石と壊れゴートへの対抗馬という事で出しました。適当な人物を壊してみたくて、しかしゴートではありがち……そこでプロスです。

 これが私なりの『個性』ですね。他にも色々意表をつくためのプランはあるんですが――たとえば、オモイカネが反乱をおこした時に選んだ最強の存在『リュウ・ホウメイ』とか。

 この方をここで出すと手がつけられなくてアキトが負けてしまうんで、さすがにやめました(苦笑)。

 このプロスもあくまでも謎フレームのための存在ですので、わたしの手におえなくなる内に封印です。

 さて、次回なんですが……なんと今まで忘れてました、サツキミドリとデビルエステバリス!

 これをなんとかせねばなるまい! という事で次回予告!

 

 

  男の友情、炎よりも熱し!

  遂にその魂を真の熱血の境地へとのし上げたプロス! 

 ガイよ、アキトよ、さあ行こう、あの紅く燃え盛る熱血の星へと!

 しかし、彼らの前に立ちふさがるはアンチ熱血の魔女、ブロークン・ルリ!

 執拗にアキトを狙う彼女を相手に男達は声を張り上げ、夕陽を背にして、拳を握るのだ!

 放て、魂の叫びを! 

 ゲキガン・フレアアアァァァアアアアアアァァァァァァッ!!!

次回、『握れ、熱き炎の拳!』を皆で見よう!

 

 この予告は八割以上ジョークです。ここからが本当の予告。

 次回は、某真紅の羅刹がサツキミドリの混乱にまぎれてナデシコに乗艦! ガイの特別フレームが徐々にそのヴェールを脱ぐ! 

 かつては彼らを振り回したデビルエステバリスをアキトはどうやって打ち倒すのか。

 次回、『紅い髪の女(仮)』をどうぞよろしく!

 

 

 

代理人の感想

・・・・・プロスさん元に戻っちゃうんですか?

なんて勿体無いっ!

 

必殺技名を連呼するプロス!

素敵じゃないですかっ!

背中に浪漫の夕日を背負い、瞳に熱血の炎を燃やすプロス!

格好いいじゃないですかっ!

 

 

問題はナデシコにまともな事務方がいなくなることだけ(爆笑)。

 

 

 

>「紅い髪の女」

 

・・・・・・・・ハイパー化しますか、ひょっとして(核爆)。