「まいったよなぁ、こんな事になっちまってどうするんだか」

 

 まるで裸一貫で宇宙空間に放り出された気分だ。
 或いは、一人で暴力団事務所を襲えと言われた時のような気分だ。
 本気で困ってしまう。

 

 バイトで請け負っていた仕事に区切りがついたのは昨日の事で。

 

 ワケのわからない記憶が増えたのが、今日だった。

 

 

「やれやれ・・・」

 

 頭を掻いて、気のない溜め息をついた。

 

 

 

 

 

 機動戦艦ナデシコ IF
  あくと・わん『そうして彼はここにいる』

 

 

 

 

 

 

 部屋に居た。
 何処にでもある、普通の部屋だ。

 

 ―――俺の部屋だ。
 しかし。

 

 彼の中で、直前の記憶がすっぽり抜けていた。

 

 ベッドの中に居たのだから、寝ていたのだろうが・・・。
 それでもなんとなく、違和感があるのか、首を傾げる。

 

 俺は何をしていた?
 寝惚けた頭で考える。

 

 俺の名は、てんかわ、あきと。
 俺は・・・、

 

 そう思った瞬間に、

 

 ―――――――ドクン―――――――

 

 記憶が、溢れた。

 

 

 ・・・行く当ての無い自分。
    両親の死。木星蜥蜴。事故―――消える自分と・・もう一人。
    ナデシコ。幼馴染。疑惑。
    利用される事に対する怒り。
    終わる戦争。
    束の間の平和。かつてからの夢。
    結婚式。襲撃。
    爬虫類の目を持つ男。
    消えていく感覚と膨れ上がる憎悪。
    二人の電子の妖精。リンク。
    復讐。輝きに消えていくコロニー。
    遺跡。銀色の彫像と化した女性。
    殺意。憎悪。悔恨。・・・虚無。

 

    そして全てを埋め尽くす虹色の光・・・・・。

 

 

 ――――って。

 

 身に覚えの無い記憶なんですが。

 

 

 だが、彼にそんな感想に浸る余裕は無かった。

 

「・・が・・・・・・・・・ぁ・・・・・っ!」

 

 彼がよく知る記憶と、自分自身でありながら全く身に覚えの無い記憶。
 二つの記憶が、暴力的な速さで駆け巡って、表れては消え。
 そしてまた、表れる。

 

 そのとりとめの無い記憶に、朝っぱらから気分は最悪だった。

 

 頭の中で暴れ続ける記憶に意識を手放しかけ、

 

 

PPPPP・・・・

 

 

 それを救ったのは、目覚し時計の音だった。
  交錯するフラッシュバックが一瞬の内に消え去り、なんとか正気に留まる事が出来た。

 

「・・・・・助かった、と言うべきなのか・・・?」

 

 辛うじて、呟く。

 

 何とも判断がつかなかった。

 

 

 そして現在に至る。訳なのだが。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

 布団から抜け出し、頭を掻いて溜め息を吐く。

 

 困った事になった。

 

 ・・・記憶が増えてしまった。

 

 しかもそれは身に覚えの無いのだ。
 混乱しない様に、概要だけ掻い摘んで整理してみると―――――、

 

 2195年、木星蜥蜴こと木連に襲撃される。
 ボソンジャンプ、というので地球に吹っ飛んで一年後に戦艦に乗ってとんぼ返り。
 そしてその後軍にこき使われて、自分勝手に喚き散らしていたら戦争が終わって。
 戦争終わってラーメン屋始めて結婚しようとしたら拉致られて。
 復讐しようとして暴走した挙句に死んだ、と。

 

 

 ―――デンジャラスな人生だな。

 

 

 全く見に覚えのない事柄ながら、思わず頬をヒクつかせてしまう。

 

 この『記憶』が辿る道筋が正しいのなら―――、
 あと二年と経たずに戦争が始まる、のだが。

 

「・・・・・・」

 

 ・・・確かに今の政府は胡散臭いし、ネルガルも以下同文だ。
 ついでに両親の死亡事故にしたって胡散臭さ大爆発だ。

 

 だが。
 それにしては俺の持つ記憶と整合性が無いような気が。

 

 

 着替えながら、とある方向を向いて、一言。

 

「・・だって今俺大学生だし」

 

 ちょっと特殊っぽいバイトの傍ら、
 現在就職活動と卒論を始めようとしている、所謂学生兼社会人見習というやつだ。

 

 さて、とばかりに首を捻る。

 

(いい加減、この類の与太話とは縁の無いトシだと思っていたが―――。
 ・・・まさか自分がそうなるとはねぇ?)

 

 

 

 

 

 ―――まあ、そんな事を考えていても時間はただ過ぎていくだけの事で。
 自分に用事というものがある以上、何時までもこうしている訳にもいかなくて。

 

 要は飯食う時間が無くなったのだ。

 

 それ所ではなくなった朝食などすっぽかし、戸締りなどしつつも。

 

 ―――ふと思った。
 思ってしまったのだ。

 

(しかし――――、この『記憶』のユリカって―――――。
 “あの”、ユリカか?)
 こめかみに流れるのは、汗だろうか。
 吹き出しては、流れていく。

 

(毎度毎度、人を追っかけまわして、
 挙句の果てには風呂やらナニやらまで追っかけてきた―――、
 あの、ユリカ―――なのかっ?!)

 

 アキトの動きが完全に硬直した。

 

 

 

 ・・・。

 

 

 

 ――――取り敢えず、その内地球まで会いに行ってみますか?

 

 ――――嫌です。

 

 

 

 困った事に一秒の躊躇も無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 続くような続かないような。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 あはは、かわです。
 変なものかいてます。

 

 90万HIT記念に書いてみようとしたのにねえ?

 

 コンセプトは・・・なんだっけ?
 逆行物、というには、いきなり否定してるし。
 逆行(偽、もしくは失敗)+平行物、てのが正解かな?

 

 

 それでは。

 

 

 

管理人の感想

 

 

 

かわさんからの新連載です!!

・・・新連載だよね?(苦笑)

しかし、最初からトんでるねアキト(爆)

しかも大学生ときたもんだ。

・・・年代がズレてるんでしょうか?

それとも、他に何かかわさんの思惑が?

まあ、この調子でユリカと是非再会してほしいですね。

ついでに、ユリカにも未来の記憶を持たさせてさ(ニヤリ)

 

それでは、かわさん投稿有難うございました!!

 

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