時の流れに アナザー(?)

 

   己を知らぬは・・・・(前編)

 

 

 

 

 

 

 

 

 災いはいつも唐突に降り注ぐものだ。

 

 そしてその時、その男にとっては取るに足らない何時もの風景の中にあった。
 その男は何時もの如く、女性の諍いに巻き込まれていた。 
 その所為か、通常と比べて著しく注意力が散漫だった。

 

 そしてもう一人。
 十歳にも満たない少年がどういう訳か、どういう原理か、イイ感じに宙を舞っていた。
 恐らく、同年代の桃白色の髪の少女の仕業であろう事は間違い無い。

 

 

 ・・・そしてそれが問題だった。

 

 

 ごん。

 

 

 鈍い音が響いた。
 男の後頭部に、少年が落下の勢いと加速をつけて衝突したのだ。
 そりゃあもう、豪快にして爽快に。
 一瞬、揺れたかと思うと、どさりと崩れ落ちる。
 致命的に打ち所が悪かったのか、ぐったりとしたまま動かない。

 

 いつになく静かになった中、季節外れの木枯らしが見えた気がした。

 

 誰も動かない―――というよりも動けない。
 そして、
 当事者の二人は、揃いも揃って気絶していた。

 

 

 

 

 

    ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 ――――まずは質問。自分自身に。

 

『・・・・俺って誰?』

 

 ――――んでもって答え。

 

『知らん』

 

 ――――絶望的に単純明快な答えだな!

 

 

 

    ◇◆◇◆

 

 

 

 

「というわけで――――――――」

 

 ナデシコ何処とも知れぬ場所。
 そこに十数名の女性もしくは少女がいた。
 その中、白衣を着た妙齢の女性が、何かを説明しながらクリップに何かを記載していた。

 

「・・・アキト君の症状から、記憶喪失と判断します」

 

 その女性の言葉は、衝撃となってその場を駆けた。

 

「ああああきとがあうあうあう」

 

 正しく錯乱する者。

 

「きおくそーしつって何処の国のことばでしたっけ姉さん」

 

「しらない」

 

 静かに、だが何かを錯乱している者。

 

 

 場は確かに混沌と化していた。

 

「・・・・・そこで、提案があるわ」

 

 その時、女性の目は、
  猛禽類の様に底光りしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その当事者である男は、現在迷っていた。
 自分が起きたとき、其処が病院の一室のような場所だったのはいい。
 隣の遮られたベッドのあたりから時々、妙なくぐもった悲鳴が聞こえるのも、まあいい。
 もう片方のベッドで、ロープでがんじがらめに固定された男が昏睡しているのも――――、
  いいのだろう。多分。

 

 ただ―――、

 

「記憶が無いっていうのは、不便だな・・・・」

 

 そう言いながら、立ち上がると――――、

 

 ―――――ゾクッ

 

 どういう訳か、寒気がした。
 物理的な身の危険とは、少し違うような、
 何となく、身に憶えのあるような―――そんな感を覚えた。

 

(ココは危険なのか?そうなのか??)

 

 無言になると、暫く瞑目して・・・・。

 

 その場から逃げ出した。

 

 全力で。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 かわです。
 多分誰もが考えたであろうネタです(苦笑)
 少し長くなるかもしれないので、前後編を予定してます。

 

 何もかも忘れた上で、機動兵器並の戦闘能力。
 ・・・収拾がつかなくなったらどうしませう?

 

 

 それではここまで読んでくれた方に感謝を。

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

 

 逃げ出そうと踵を返して、数歩踏み出して―――振りかえった。

 

 少し、気になった事がある。

 あの、カーテンで遮られた先の唸り声は何だ?

 

「取り敢えず、見てみるか・・・・」

 

 ―――で。

 

「見なかったことにしよう・・・・・・・・・・・」

 

 青ざめた顔で、その場を逃げ出した。

 さっきよりも足が速めなのは、気のせいではないようだ。

 

 

 アキトが何を見たのか―――――。

 

 それは知らないほうが幸せと言うものである。

 

 

 

 

おまけ2

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 何でココにいるんだろう―――――

 本気で思う。

 

 取り敢えずの心当たりを総動員する。

 

(やっぱあれかな?ルリさんのプライベートライブラリ、ウリバタケさんに貰ったのがもうバレたの?

 それともこの間テンカワさんに頼まれて、現在位置が判らなくなるようにオモイカネに細工したのが

 バレたのかな?)

 

 どれもバレた時点で苛烈極まりないお仕置きが待っているだろうが、違っている。

 

 

 どうやらアキトと衝突した事は覚えていないようだ。

 

 急に虚しさを感じて空―――というか天井を見上げる。

 

 

 ―――見上げた天井は真っ白だった。

 

 

 こんな時は後先考えずに泣くのが何時もの事だが、麻酔でも効いているのか、まともに声が出ない。

 

「・・・ひふぉいよぅ(意訳:ひどいよう)・・・・・・」

 

 マトモに声も出せない事実に、さめざめと泣いた。

 

 ―――傷口にしみることに気付いて泣くのを止めたのは五秒後の事だ。

 

 

 

管理人の感想

 

 

 

かわさんからのアナザー物の投稿です!!

前後編ですか。

後編で、どうなるのか楽しみですね!!

まあ、綺麗な放物線を描いていた少年は忘れるとして(爆)

何だか、医療室の常駐組になりつつあるな、アキト・・・

それだけ名誉の負傷が多いのなら解るけど。

・・・不名誉な負傷だもんな〜(爆)

しかし、記憶喪失の機動兵器並みの戦力を持つ男。

ただの危ないお兄さんだね(苦笑)

 

それでは、かわさん投稿有難うございました!!

 

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