時の流れに アナザー(?)

 

   己を知らぬは・・・・(中編、或いは諸行無常(意味ナシ))

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――ナデシコ内、某所。

 

 通称「お仕置き部屋」。
 そこでは某同盟の面々が勢揃いしていた。
 いつもより数割増で真剣なのは、気の所為ではないだろう。

 

 その証拠に、イネスの説明をしっかりと聞いていた。
 そして現在、クリップボードに何やら書きこみながら、説明を展開している。

 

「―――取り敢えず今、『彼』の記憶を取り戻すのに必要な要素は、精神的な物が多分に強いわね。
 肉体的には何処にも問題は見られないし」

 

「そこで――――――」

 

「待って下さい」

 

 そう言い放った本人は俯いて表情が見えなくなっていた。
 銀髪が微かに震えている。

 

「・・やられました」

 

「ど、どうしたの?」

 

 ドスの効いた声音でこぼすルリに、ミナトが引きが入った声で問いかける。
 ルリはただ無言で小指の爪先半分くらいのチップを見せる。
 そして、指で粉々にすり潰す。

 

「―――盗聴機です。
 ・・・ハーリー君にしては、イイ仕事―――と言っておきましょうか」

 

 微塵も誉めていない顔で一応誉めると、
 殺気のこもり出した眼で、一言、呟く。

 

「ハーリー君。・・・・・本格的に、死ンで見ますか?」

 

 そしてくすくすと笑う。

 

「・・・・」

 

 そんな状態の彼女に、

 

 何処に仕掛けてあったの?

 

 とは、とても聞けなかった。
 ・・・気温が下がった気がするのは、自分の気のせいではない筈だ。
 ミナトは頭の片隅でそう洩らしつつも、
(いったい、何がいけなかったんだろうねぇ―――――)
 ナデシコ搭乗時まで遡って、全てを見つめ返していた。
 人はそれを現実逃避とも言うが。

 

 

 それを横目に、
 イネスが講釈を締めくくる。

 

「・・・聞いての通りよ。
 そこで『彼』と接触を取る人物を数人、選別するわ。
 それから洩れた人達は行動を開始したであろう某組織の殲滅に当たって頂戴」

 

 

 で。

 

「――――で、その選別方法なんだけど・・・・・・・・」

 

 瞬間。
 殺気が否応無しに、増した。
 ミナトが逃げの態勢に入る。

 

 それを何処吹く風かと受け流して、イネスはこうのたまった。

 

「ジャンケンよ」

 

 まぢですか?

 

 

 

 

 

 ―――――これまたナデシコ内、某所。

 

 とはいっても先程とは違う、別の場所。
 そこでは殆どの照明を落とし、
 そして、
 暑苦しいほどに熱気があった。

 

 某組織。
 その緊急の幹部会が開かれていた。

 

 円卓に座る、幾人かの男。
 その内、中心に位置している男、某会長ことアカツキが口を開いた。

 

「我が同士諸君、
 情報部長の捨て身の“事故”により、TAの記憶が無い。
 もしくはそれに極めて近い状況にあるようだ」

 

 予め聞いていたのか、誰も動揺は見せない。
 ただ、熱気だけがいや増していた。

 

「・・敢えて言おう。これは絶好の好機だ。
 そして、事は緊急を要する。全部隊を緊急召集して―――――」

 

 

 

「会長!!!」

 

「どうした?」

 

「参謀が行動を開始しました!」

 

 円卓に居た男たちの表情に緊張が走る。

 

「チッ、先走りやがったか・・・」

 

 アカツキの横にいたウリバタケが吐き捨てる。
 その時、
 アカツキの決断は、早かった。

 

「――――僕達も行動を開始するぞ!!!」

 

「「「「おおぅ!!!!!!」」」」

 

 彼等は今、
 無駄なくらいに熱かった。

 

 

 行動を開始した某組織の面子を余所に、
 それらを他人事の様に見守る男、二人。

 

「隊長、どうします?」

 

「・・・ふむ」

 

 シュンは深く目を閉じる。
 某組織がこれほどのチャンスを逃す筈もないのは、目の前で展開されていた通りだ。
 某同盟も当然それを見逃しはしないだろう。彼女達にしてみてもチャンス

 

―――であろう事だし。

 

 それに当然巻き込まれる当事者―――アキトの迎えるだろう結末を思い。

 

「・・ほっとくか」

 

 結構薄情だった。

 

 

 

 

 んで、その本人。テンカワ・アキトは医務室を逃げ出したはいいが、
行くアテなどある筈も無く、ふらふらとさまよっている内に一気に開けた場所―――

 

「なんだ、ココは?」

 

 答え:格納庫です。

 

 

 

 そして、それを殺気丸出しで見つめる影、一人分。
 某組織参謀こと、アオイ・ジュン―――

 

 ・・・なのだが。

 

「ク・・クク・・・・」

 

 長年の宿敵の記憶がトんでるとあって、
 その興奮の余り、かどうかは知らないが、
 何故か、目が爬虫類の目と化していた。

 

 ついでとばかりに木製バット持参で。

 

 某組織構成員が到着した時、既にそんな“絵”が展開されていた。

 

「これは・・・・」

 

「いかん・・・暴走している・・・・・」

 

 大柄な男が呻く。

 

「すぐに報告を」

 

 もう一人が告げると、残りの男達が走り去っていく。

 

 そんな遣り取りがされている中も、
 アキトはあちこち見ながら歩き回り、
 丁度ジュンから見てその背を見せた―――瞬間。

 

 ジュンは一足飛びで詰め寄っていた。

 

「勝ぉぉおお機ぃぃぃいいいい!!!!」

 

 そして、バットを振りかぶって、後頭部めがけて振り下ろす。

 

 正に絶好の勝機だった。
 恐らく、彼にとって全ての光景がスローモーションの様に見えていたに違いない。
 世界。その中の、唯一人。自分だけの世界―――
 そう思っていた事だろう。

 

 

 だが―――――、

 

 

 アキトはそのスローモーションの世界の中を普通に動いていた。

 

 そして、

 

 ――――――馬鹿め――――――

 

 こう唇が動いているのを、後方から済し崩しで観戦していた某組織二名は
、どういう訳かしっかりと見えてしまっていた。

 

 アキトの浮かべたそれは、正に狩猟者の笑みであり、その動きは獣の動きであった。
 その攻撃を一瞬で側面に回り、避ける。―――バットが砕ける。
 ジュンが態勢を変えようとする頃には、アキトの脚が視界いっぱいに広がっていた。
 体重の乗りきった後ろ回し蹴りが、ジュンの顔面に吸いこまれていく。

 

 そして、卵を中身ごと壊すような、何かがはぜるような微妙な音。

 

 生身でアクロバット飛行をするかのように吹っ飛び―――、
 キラキラ光る“何か”を迸らせながら――――、

 

 ジュンに付いてきた二人の前に転がる。

 

「・・・・っ!!」

 

 男達が何かを叫―――――ぼうとするには、遅すぎた。

 

 アキトの身体から、蒼銀の光の粒子が溢れる。
 それはプロミネンスの如く、噴き上がっては、身体の周囲を漂う。
 まるで彼の身体が、一つの太陽だとばかりに。

 

 掌を天高く掲げる。
 自らの身体を漂うそれら全てを握り締める様に、掌を拳に変えていく中、
そこへ向かって輝きが速やかに収束していく。

 

 ・・・そして―――――開放。

 

「「「うぅぅぎゃぁぁぁああああああああぁぁぁぁ・・・・・!!!!」」」

 

 男達は、その輝きに飲み込まれ―――――

 

 

 

 

 

 ズ・・・・・・・ズン・・・・・・・

 

 

 

「おや?」

 

 ナデシコ食堂では、
 いきなり人手も客も居なくなって暇になったホウメイが、

 

「・・・・・始まりましたか・・・」

 

 既に悟りきった表情のプロスと将棋をしていた。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・はっ」

 

 気が付いたら、瓦礫の山と化した場所に佇んでいた。
 ・・何か、アレな感じの男に襲われたような気がしないでもないが。
 ―――夢か?
 そう思って、首を動かすと。

 

 丁度そのまま固まった。

 

 ・・・・・・。

 

 目の先にあるそれは。

 

 何と言うか―――、
 赤かった。

 

 赤と言うよりは、朱色っぽくて。

 

 朱色と言うよりは、紅!

 

 ・・・という色だった。

 

 

 

 

 間。

 

 

 

 

 アキトは天を仰ぐ。

 

 あ〜あ〜〜あぁあぁあ〜〜〜〜

 

 取り敢えず。
 何処からともなく妙なメロディが聞こえてるくらいには、混乱してた。

 

 

 

 ―――――拝啓―――――、

 

 顔も思い出せない、お父さんお母さん。

 

 ・・・・御免なさい。

 

 俺――――、

 

 何か・・・・、

 

 何かさぁ俺―――――、

 

 何か殺っちゃったみたいでス――――――

 

 独白を終えると、

 

 ほろり、と。
 溢れ出る何かを拭う真似をし、

 

 彼は逃げ出した。

 

 

 

 ―――アテなんざぁ、何処にもなかった。

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 アキトの去った格納庫(元)――――、
 そこは既に意味をなさない瓦礫の山―――、つまり廃墟である。
 頑強なエステバリスも、一番付近にあった機体―――特にガイの使っている機体が半壊状態だった。

 

 

 その一方、
 直撃を食らったジュン達はというと―――、

 

「・・・・・」
「・・・」
「・・・・・・・・・ぅ・・・・・・・・うぅ」

 

 勿論ほったらかしだ。
 居る事に気付いてもらえるかも怪しい所だ。

 

 ふと、ジュンが弱々しく目を開く。
 見えない何かを掴む様に、手を空に向ける。
 そして、一言。

 

「・・・・と・・・・時が見える・・・・ぅ・・・・」

 

 あ、力尽きた。

 

 

 

 つづくっぽい。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 中編――――になっちゃいました(汗)

 

 最初考えていた(書いてみた)のよりは結構薄味っぽくなりましたが。
 残りも大体仕上がってますが、まだ壊れてます。
 ジュンの暴走も予定外でしたし(既に沈黙してますが)。

 

 そこらへんを何とかすれば、次回はもっと早く送れるかな。

 

 

 ちなみに、
 ジュンとアキトのアレは、
 某CM参照(爆)

 

 いやぁ、あのCM好きなんですよ(笑)

 

 

管理人の感想

 

 

 

かわさんからのアナザー物続編です!!

ジュン・・・ここでも壊れているのか?(笑)

まあ、あの組織に属しているモノは、自己再生能力のスキルが付くらしいし。

次の回には復活をしているでしょう(爆)

それにしてもアキト・・・意識が無くても凶器みたいな奴だな(汗)

ガンガー半壊してるし。

・・・ウリピーは二重の意味で大変だ(苦笑)

 

それでは、かわさん投稿有難うございました!!

 

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