揺れる想いと、遥かな幻想の中にいた。


 そこは明るくて、暖かかった。


 とても気持ちよくて、離れたくなかった。


 でも、不安を拭い去ることはできなかった。


 ・・・それに




 どうしてなんだろう?


 どうして、何か大切なものを失ってしまったなどと、思うのだろう。


 しばらくたって、気づいた。





 それは、目が覚めて現実となった。


 確かに、考えた通りなのだ。


 ランさんが、微笑みながら僕を見下ろしていた。








ハーリー列伝
第三話









 「新しい仲間を紹介します」 ランは、静かに言った。


 「どうも、マキビ=ハリと、申します。よろしく」


 どうして、こんな事になってしまったのか・・・・


 「・・・冗談は、止めてくれよ・・・所長」

 「・・・冗談?私は、冗談が嫌いだよ」


 勘弁してくれ。


 ハーリーは、そういう気分だった。


 「・・・子供を?こんな子供が、何の役に立つ?」

 「言ってくれるじゃないか。彼は、コンピューターのエキスパートだよ」


 「エキスパート?ははっ、TVゲームが上手くたって、何の意味もないさ」

 笑い声が上がる。

 少しどころか、ものすごく腹が立ってきた。


 「なら、勝負してみるかい?」


 ハーリーは、思わず彼女のほうを向いた。


 ひゅうっと、誰かが口笛を吹く。


 「この坊やとかい?冗談をいっちゃいけないな・・・所長さん」


 「何だ、口だけか?天才の名が泣くってもんだよ?シュウ」


 雲行きが怪しくなってきた・・・というより、イマイチ僕の実感がわかない。何故だ?


 「・・・俺が負ける?こんな坊やに?・・・いいとも。俺の研究データを賭けてもいい」

 「おやおや、大きく出たね。なら、私は例の『ナノマシン・データ』を賭けてやるよ」




 場が盛り上がる。いつのまにか、スポットライトのあたる壇上の上にいた。


 光が眩しい・・・っていうか、何か、夢のようと言うか・・・・


 「と・・・言うわけで、叩き潰してやれ」


 ランさんの声が、僕を満たした。


 コクリと、頷く。


 そんな様子を、僕はまるで観衆のように見ていた。









 セイジとアランが、話していた。


 「・・・完璧だな」


 「・・・まさか、ここまでとは・・・」


 「言っただろう?」 セイジは肩を竦めた。 「所長の暗示力は大したもんだって」


 「・・・ああ。俺はまだ認識不足のようだったよ」


 「だからこそ、彼女は腕と相まって、『所長』なのさ」


 「なぁ、セイジ・・・」

 「何だ?」



 「どっちが勝つと思う?」

 「賭けるか?俺はあの子に賭けるね」


 「俺も、そう思う。賭けは不成立だ」

 「いやいや」 セイジは言った。 「ここに、成立する奴らはいっぱいいるじゃないか」









 「さぁ、いきな。ハリ君」

 「・・・任してください」 彼女の声は、ハーリーを体の隅々まで満たした。



 もっとも、このビッグカードは、研究所の連中たちには、それほど魅力的に思えなかったようだ。


 所長の道楽程度にしか思えず、自身の研究に戻る者。

 あるいは、セイジやアランに賭けを申し込まれ、それを受けた者。

 ただ、何となく見守っている者。

 どのくらい健闘するのか見ている者など、いろいろだ。




 そして、『天才』と呼ばれるシュウ VS 我らがヒーロー、ハーリーの決戦の火蓋は、切って落とされたのである。



 問題は・・・・



































 その決戦が、20秒で終わってしまった事だ。


 もちろん勝者は、ハーリーだ。









 「・・・馬鹿な」


 そこにいる、ほとんどの人間が呆然とした。


 「私の勝ちだね」 ランが言った。


 「俺の勝ちだな」 セイジが言った。


 「しばらく、研究資材には困らないわな」 アランが言った。









 「うん、うん、良くがんばった。流石は、ハリ君」 






 ランの天使のような声(ハーリー視点)が、ハーリーを満たしていた。
















 乗り物が加速するたび、風景は加速し、


 それが綺麗だと感じる人もいるようだが、


 わけがわからないと言う意見も、間違ってはいまい。



 今のハーリーにとって、


 これは言うならロケットによって打ち上げられた加速によって変わっていく景色であり、


 移り変わっていく物事は、まるで幻のようだ。


 ふと気がつけば、もはや先ほどまで見た自然は、地球の星へと変わってしまっている。



 それは確かに綺麗であろうが、


 落ち着いて考えてみれば、すぐに地球も見えなくなり、落ち着いて愛でることができない。











 ・・・・・何もかも、どうでも良くなってきたと、つくづく思うハーリーであった。
















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 後書き

 ごきげんよう、風流(かぜる)です。

 まぁ、閑話休題のようなものでしょうか?

 短いのはご勘弁を。


 でも、もうそろそろ行きますかね。この幸せな生活を、THE END ってな形で♪

 ふふふ(微笑)



 ・・・そろそろハリ君最強伝説をスタートさせたいのでね。

 ではでは。








代理人の感想

・・・・・やっぱり改造・・・・・かな(笑)。

 

それはともかく、惜しむらくは少々わかりづらいですね。

もう少しわかりやすい(露骨に、と言うのとはまた別)文でないと読者がついてこれないかも。