『そっちがその木なら、こっちもその木。徹底的に育てます!』







 「・・・・・・あれ?」


 ふと気がつけば、ハーリーは見知らぬ所にいた。

 何だか背景がごちゃごちゃしていて、甚だ目が疲れること請け合い。


 それはともかく、何だか落書きのような背景の中、不意に人影が浮かび上がってきた。

 「・・・・・・・・・・・」

 小太りの、不恰好な中年の男だった。

 何だか、微妙に羽がついてたりする。

 突込みどころが満載だった。


 「……ここは?」

 ハーリーは思わず口に出していた。

 無論、独り言だ。

 ……とりあえず、目の前の人物は無視することにする。


 「私は、君の中に眠る力――………なのでウィリス。

 そして、ここは私の空間、『ウィリス空間』なのでウィリス」

 聞かなかったことにも、答えてくれた。

 ていうか、聞いてないし。


 「ウィリス空間!?」

 もっとも、ハーリーはその突拍子の無い展開に思わず声を出していた。

 出さないことなど出来ようか?

 いや、出来まい(反語)。

 ウィリス言われてるし。


 「その通りなのでウィリス」

 男は答えた。

 語尾には相変わらずウィリスついている。

 「でも、そんな事はどうでもいいんでウィリス。もう、お前は一生ここから出られないんでウィリス」


 「なっっ――!?」


 「もうお前はこの面白いんだか面白くないんだか判らない微妙なネタに埋もれるんだウィリス。

 タグが突然飛んで五芒星を描いてみたり、

 スクラップ同然のジャスティスロボで怪獣と戦ってみたり、

 包帯男と、楽しげに会話を交わしたり、

 出題者が突然現れ、それに微妙なネタを返したりする世界を、私と一緒に動き回るんだウィリス」




 ………いやだ! そんなチャン○オンでひっそり連載されてる4コマみたいなのは!!


 しかもウィリスだ。


 あ、でもやたら些細なことを気にする小さな羊君や、の○子ちゃんには会ってみたい気もする。


 え、本当?


 いや、やっぱ冗談。




 ハーリーは思わずそこから逃げ出そうとした。

 走り出していた。



 「無駄なんだなウィリス。ここは閉ざされた空間なんだウィリス……お前は一しょ
…・・・・・・・・ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」




 突然! 雷のような閃光が、辺りを包む!!





 

 「えっ?」


 ……不意に、
何だか魔法少女っぽい杖を持った人が、そこに佇んでいた。

 いや、だからと言って目の前の人物が魔法少女という訳ではない。



 一応、後ろの人物を確認しようとしたが、
……………何だか、人間の残骸らしき黒い物体が。

 けっこうキショかったので見るのを止める。



 「危ないところだったな……そいつはニセモノだ」


 「はぁ」


 とりあえず、その人を見つめてみる。

 危ないのはお前のほうだとは、言わなかった。



 「……そんなことより、起きたまえ。君に危険がせまっている」

 「危険?」


 「そうだ。早く起きたまえ」







 「早く」



 「早く」



 「早く」








 声が、空間に反響し、何かが遠ざかっていくような感覚を覚える。











 「待ってください! あなたは! あなたは誰なんですか!?」


  ハーリーは、叫ぶように尋ねた。


















 「ふむ」






 その人は、ニヤリと笑った。




 「我が名は、洗脳探偵ひ――がはっ!」














 ハーリーが思わず突き出した正拳が、
見事に相手のミゾオチを捉えていた。



 「そんなこと言う人、嫌いです」









 もとい、



 そんなネタ使う人嫌いです。









ハーリー列伝

生誕〜終話〜












 『これは何ですか? ハーリー列伝です』





 「……リ君…リ君…………」




 夢




 夢を見ている






 「ハリ君!」


 ――――――!―!?………
  

 覚醒。



 「よぉ、起きたか?……いやいや、けっこう不味い状況なんだ」

 そう言って、彼女は未だ寝ぼけ眼の僕に向かって、何かを放り投げた。


 ズシン。


 その黒光りする重さに、完全に覚醒した。


 ………拳銃!?


 「私が命令することは一つだ。

 右手に赤いものを巻いて、黒い服を着ているもの以外。

 撃て。……わかるな?ハリくん」


 僕は、途端にぼんやりした感じになり、コクンと頷いた。

 とりあえず、僕は右手首に
真っ赤なスカーフが捲きつけてある。

 ヤマトの歌は思いださなかった。

 服は、黒のようだった。

 無論、ランさんも。


 「ついて来い」









 理由はわからない。

 これっぽっちも判らない。


 兎にも角にも、


 わからないことが真実であり、

 わからなくても僕は頷いていた、


 この時の精神状態が、未だにわからない。

 何もかも委ね切ってしまえるなんて、どうして思えたのか。








 しかし、気がつけば僕は駆け出していた。

 ランさんと一緒に、銃を持ちながら駆け出し、人を見つけ、そして撃った。


 
 撃って。


 撃って。


 
殺して。


 自分の意思で。


 それは一介のプラズマにもなるわけではなく。

 ただただ、醜く、見るのに耐えない。


 僕は初めて自身の手で引き鉄をひいているというのに。

 初めて人を殺しているというのに。


 でも、今まさに自分で引き鉄を引いているという感覚がどうしてもおきない。

 殺してる実感が沸かない。


 あたかも、あのナデシコ時代のように。

 いや、あの時あったゲーム的感覚も無い。



 ふと見れば、僕はただ無表情でただただ撃っていた。
 


 向かった先は、ヘリコプターだった。


 僕達はそこに向かい、そして気がつけば。



 「やぁ……遅かったね。クロフォード」


 不意に、周りを囲まれていた。



 銃口をそこかしこで向けられて。

 しかし、恐怖は起きなかった。


 いや、むしろ衝動に従って思わず撃った。



 ドン!




 「・・・・・・・・・・・・・・がっ!!?_」


 男が、血を流しながら崩れ落ちるのを視界で確認した。


 
「――!?…・・・きさ――」


 
「「待て!!」」


 声は、同時に生じた。

 一人はランさんだった。


 そして、もう一人は。


 ………どこかで見たような顔だった。


 ええと。


 「すまんな。……未だ、戦闘モードから抜け出していなかったようでね」


 「構わんよ……とは言えないがね」


 ……ああ。

 名前もわからぬ不憫な人。


 「で、なんだ?」


 苦笑し、

 「相変わらず直接的だな。……まぁ、いい。

 俺が聞きたいのは、君の研究についてだよ。クロフォード」


 「ほぅ?」

 目が細められる。

 「どの……だね?」


 「君が聞き分けが良くて助かるよ」 肩を竦め、 「無論、遺跡についてだ」


 表情は変わらなかった。


 「ふぅん」

 そう呟き、

 「そんなレトロな研究、とっくに止めちまったさ」


 「おやおや」 男は苦笑する。 「ところが、ここに簡易のデータがあったりする訳なんだ」

 そう言って見せたのは、MOディスク。

 「もっとも……立ち上げた瞬間にウィルスが発動したというエピソードがつくが」


 「………まいったね」

 苦笑。

 「私の研究じゃないといったら?」


 「おやおや? クロフォード。それは語るに落ちている。君は今、この資料が知っているものだと認めたね?」


 「ああ」

 ランは答えた。

 「だから何だというんだ?」


 「つれないね……最初に言った通りだよ」

 彼は微笑した。

 「遺跡の秘密を話せ! これはそれに類するものだ!!」


 
「断る!」

 彼女はニヤリと微笑した。

 
 「――っ…がふっ」

 男の蹴りだした右足が、ランの腹部へとめり込んでいた。



 
「ランさん!!」

 僕は思わず叫び、銃を握った。



 「ふむ」 男は悶絶しているランさんを見て言った。 「君に拷問が効くとは思ってない」


 彼はゆっくりと銃口をこちらに向けた。

 「だから、こうさせてもらう」



 
「ハリ君!!」

 彼女が、叫ぶ。



 「君の部屋から
嬌声が聞こえてきたときは、何事かと思ったがね」


 「趣味が悪いな」 体を起こして彼女は言う。 「そして、手段も反吐が出る」


 「光栄だ」


 流れていく状況がひどく気に食わなかった。

 だが次の行動は、そんな『気に食わなさ』など、一瞬の内に霧散させてしまう。


 「ならば、私はこうさせてもらう」

 彼女はそっとナイフを取り出した。

 「直死の魔眼とかあれば状況は一変するのだがね」

 訳のわからない事をあたかも重要そうに呟き、そして、そのまま自身の首筋にあてる。


 「どういうつもりだ?」 驚いたように、彼は尋ねた。


 「ハリ君の命よりも、自身の死を選ぶということさ」


 彼女は笑い、
 「動くな!!」 と、叫ぶ。

 硬直した。


 「ハリ君」

 「えっ?」


 「君に眠る力を解放する。

 創り主の名において、以降は宿主の自由意志に従うものとする」



 そして、そのまま僕へと近づき、唇を軽く合わせる。


 微笑。




 不意に、体が熱くなった。

 何もかも火傷しそうなくらいに。

 もっとも、炎はない。



















 「ナノマシン・ブラッドフォースの起動を承認する」































 








 僕の記憶は、ここで途切れる。





























 

 「……どうして、教えてくれなかったんですか? 僕が………」











 「教える必要がなかったから。……忘れなさいな。ハリ君」












 「忘れる? 何を言っているんですか!!? 何を!!」












 「……好きだよ。ハリ君……だからこそ、忘れて欲しい」











 
 「しゃべらないで!」












 「……本当…うまく行かないもんだよね………人を傷つけようとすれば、自分に返ってくる。

 しかも……どこにも狙っていない末期の一撃とはね」












 「ラン……さん………」















 「……わるかったよ。でも、ハリ君。 私の残した証は、君だけでいい」















 








 「だから、『私のこと、忘れてください』

























 夢。





 夢を見ている。






 楽しかった日々。





 幸福の余韻が常にあり続けるそんな世界にいる。





 誰もかもが、暖かい世界にいた。





 そんな日々を。











 がさっと音が聞こえた。


 
「…………ロンドン・ブリッジ♪ ふぉーりんだん♪ ふぉーりんだん♪ ふぉー……」


 天使のような歌声が響いた。


 無論、それが天使であるはずがない。

 言うならば、堕天使の方が近い。絶対。

 蒼銀とも言える毛並みは、綺麗だと思うけど。




 「さてさて、捉えましたよ?ハーリー君」


 金色の瞳――邪悪そうな猫がそこにいる。


 「レッツだんす♪」

 彼女の手には、その小さな手に似合わぬ『エリミネーター・01』の無骨なナイフ。








 そんな日々。


 だからこそ、ありもしない、あんな夢をみるのだろう。

















 後書き(あるいは終了記念?)

 
 長い間、ご愛読ありがとうございました。風流(かぜる)さんの次回作にご期待ください。



 かぜる 「……ある意味、そんな飛翔の冠を抱く少年誌のごとく終わりを告げるのも」

 風竜  「全然良くない!」

 かぜる 「何故に? 私のHNを取って付けたような輩にそんなことを言われねばならんのだ」

 風竜  「お前が呼んだんだろうが」

 かぜる 「うん、ちょっと後悔してる」

 風竜  「………金、早く返せ」

 かぜる 「……土偶ぅ…内輪ネタは止めて欲しいものだね……第一、私は君のマスターじゃなかったか?」

 風竜  「……気の迷いだった。 それはともかく、続きかけよ」


 かぜる 「・・・・・・・・・・・・・・・・・ま、頑張るよ」


 風竜  「……ところで聞きたいんだが」

 かぜる 「うん?」

 風竜  「これってギャグだったはずだよな」


 かぜる 
「…………………うん」


 風竜  「シリアスだねぇ」

 かぜる 「…………いいんだよ。ヒーローは下積み時代が大切なんだよ」
 
 風竜  「それじゃ、次回は」

 かぜる 「うん、誕生編が終わって、激闘(脱出?)編に突入だよ♪」


 風竜  「妙にハイテンションだな(笑)」



 追記:風流(かぜる)は、ネタを随時
募集しています(爆)
     てゆーか、Thanks♪ いまじーさん。


     本人見ていない可能性大だが(爆)





代理人の感想

似てるとは思ってましたけど・・・・やっぱオレンジのひと(謎爆)?

 

それはさておき何ゆえ洗脳探偵なんでしょう。

何ゆえホウキ少女ではないのでしょう。

 

その点がハーリーくんの謎よりよっぽど気になる私は変ですか(核爆)。