赤き力の世界にて

 

 

 

 

第11話「懐かしき再会・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達がゼフィール・シティを出て約八日目・・・・

大きなトラブルもなく、俺達はディルス王国の首都、ガイリア・シティに着いた。

 

 

大きなトラブル・・・と言う代わりには小さなトラブルは山のようにあったわけで・・・・

 

 

時々、リナちゃんが宿から抜け出す気配を感じるときがある。

すると決まって真夜中に爆音が響き、次の日に盗賊団が壊滅したという噂が町に広まっていたり・・・

(人様に迷惑かけてないからいいけどね・・・)

 

 

 

途中の町、たまたま見つけた『銀貨10枚で食い放題の店』の料理が不味く、

リナちゃんが暴れて物理的に潰れたとか・・・その後、口直しと言って宿の厨房で料理を作らされた。

(まあ喜んで食べてくれたからいいけどね・・・)

 

偶に、夜中に大きな破壊音(爆音というレベルではない)と地震があったから飛び起きたら、

山が消えていたり森が焼け野原に変わっていたり・・・

(自然破壊はいけないと思うよリナちゃん・・・)

 

 

 

まあ、些細なことだ・・・たぶん・・・

 

 

道案内をしていたマイアス君・・・最初の頃は心労で倒れそうみたいだったが、

目的の町につく頃には完全に吹っ切れているみたいだった。

なにげに悟ったような目をしていたような気もしたが・・・

まあ人間的に成長したのだろうと思い納得しておく。無理矢理でも・・・

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

町の前、つまり街門の前辺りのことなのだが・・・・そこはかなり酷い惨状だった。

大地はえぐれ、木々は薙ぎ倒され、整備してあっただろう街道など見る影もない。

まさに戦場跡というべき風景がそこに広がっていた。

 

しかし城門を過ぎると其処には何の変哲もない町並みがあった。

どうやら町の中までは被害は及ばなかったらしい。

 

 

だが、メインストリートと思われるこの道でも人混みと称されるには

ややほど遠い感じが否めないのは仕方がないものかもしれない。

やはりデーモンの襲撃などは恐怖の対象なのだろう・・・

 

 

 

 

 

 

「前に来たときより活気がないわね・・・」

「ええ・・・約一年半前の大火事、そして女傭兵による陛下の乱心、

その後、町に頻繁に出現するデーモン。民を守るはずだった兵は沈黙して役立たずに思われ・・・

トドメにそれを示唆していたとはいえ重役二人の死・・・だめ押しに陛下の崩御・・・・・・・」

 

やや悲しげに愚痴るマイアス・・・・・・

 

まあ、表向きには・・・ね、

城にいた重役に魔族が紛れ込んでいてその上、

実は国王が生きていて、無限の苦しみを味わっているなんて言えるわけないものね・・・

 

「路地裏などは逆に怪しい連中が増えているみたいです。

この混乱のさなかに金儲けを感じた者や出世を期待した者が流れてきたみたいですからね」

                      流 れ 者
「まあ、そうでしょうね。あいつらにとっては国の混乱は又とないチャンスに思えるからね」

 

そう言ったとき、私の足下を数匹のネズミが通りすぎた。

口に何かをくわえている様子だった。ネズミ達も生きることで大変なのだろう。

私は何気なくその光景を目で追っていた・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・・・おや?

 

 

 

 

何か私の頭に中に引っかかるものがある・・・

                           ネズミ
私自身わからないが先程の動物が妙に気にかかる。

 

「・・・確かデーモンの襲撃は町の外からよね」

「ええ、そうですけど・・・・何か?」

 

・・・何か、変な感じがする。こう・・・何か引っかかるものがあるというか・・・・

私の今まで旅で培った直感が何かを訴えかけているような気がするというか・・・・

 

「ねえマイアス、今この町に犬とか猫とかの動物はどれくらいいるの?」

「ん?どうしたんだリナ。何か気にかかることでもあるのか?」

「ん、ちょっとね・・・・・・で、どうなの?」

「そうですね・・・先のデーモンが町中に発生事件などでかなり数は減りましたが・・・・

ネズミなどの数が増えやすい動物が最近はよくに見かけることがありますよ。

おそらく物資の運搬などにくっついてきたのが多いのでしょうが・・・

そのうちそれを狙った猫などがこれから増えてゆくでしょうね・・・・それがどうかしましたか?」

「そうなの・・・」

「それが何か気になるのかい?リナちゃん」

「・・・・・・まだ頭の中で整理がつかないからなんとも言えないんだけど・・・・・考えがまとまったら教えるわ・・・」

 

私は思考に没頭した。この事件の事を聞いたときから感じている違和感・・・・

私は何か取り返しのつかないことをしてしまったような気がしてならなかった・・・・

 

(ただの杞憂だったらいいんだけど・・・・・・・)

 

 

 

 

そして私達は王城に着いた。

まともに出ることはあってもまともに入ったことはないような気がする・・・

                       ジェネラル
まあ事情が事情だし・・・竜将軍ラーシャートに呼ばれたときは正門から入った訳じゃなかったからね・・・

 

「えらく落ち着いているな・・・デーモン騒ぎは収まったのか?」

 

なに!?それは困る!!

すぐに帰ったらあの地獄が待ちかまえているし、

礼金ふんだくろうと計画までたててきたのだ!八つも!

 

その内の1つに、攻撃呪文で城の一部を吹き飛ばし

その騒ぎを聞きつけてやってきた兵士達に、

 

「魔族が現れたの!でもたった今私が倒したわ!!」

 

などといけしゃーしゃーとぬかし礼金がっぽり・・・

 

・・・・・・・やっぱ無理か・・・・・・・・

 

姉ちゃんにばれるとお仕置きが待ってるし・・・

よくよく考えたらなんの解決にもなんないしね・・・・・やめとこう・・・

 

 

 

 

「どうなのでしょうか・・・とりあえずアルス将軍の執務室に行ってみましょう」

 

そう言い、私達を案内するマイアス。

確かに、デーモンの群に襲われたわりには落ち着いている。

ただし、落ち着いているとは言っても日常的な静けさとは違い、

どことなく息を潜めている、張りつめた緊張といったものが正しいような気がする静寂だった。

 

 

 

 

 

コンコンコン・・・・・・・

 

「失礼致します!!マイアスです。

リナ・インバース殿、ガウリイ・ガブリエフ殿、両名お連れいたしました」

 

「ああ、入ってくれたまえ」

 

えらく重々しい扉の向こうから返事が返ってくる。

そしてマイアスは扉を開け、私達はその後に続いて入ってゆく。

 

「では私はこれで・・・」

「ああ、わざわざ済まなかったな。よくやってくれた」

「案内ご苦労さん」

「仕事頑張りなさいよ」

「はい。リナさんもガウリイさんも頑張ってください。テンカワさん、道中色々とお世話になりました」

「気にしないでいいよ。ほとんど二人のやらかした事の後始末だしね・・・・」

「ははははは・・・・では私はこれで・・・」

 

 

私達はそこでマイアスと別れた・・・

そして開いた扉の先には・・・・久しぶりに見る顔が並んでいた。

 

「久しぶり!リナ」

 

おかっぱにした髪型、やや童顔ぎみの顔。

端で見ているだけで元気になってくるような明るい女の子。

セイルーンの第2王女、アメリア・ウィル・テスラ・セイルーンその人だった。

 

そして・・・・・・

 

「よう。元気そうだな」

 

銀色の髪、高質化した肌、一目見ただけでは人間には見えない。

ただその瞳には揺るぎない意志と知性が垣間見える。

赤法師・レゾにキメラ化されてしまった青年、ゼルガディス。

 

二人はかつて苦難をともにした仲間だった。

 

「久しぶりね!アメリア、ゼル」

「リナもお元気そうでなによりです!」

「まあ、リナ達に何かあったと聞く方が信じられないがな・・・」

 

(相変わらずのようね、この二人)

 

私も久しぶりに二人に会えて嬉しいのが本音だった。

 

「なあなあ、リナ」

「ん?なにガウリイ」

「この二人・・・・・誰だっけ?」

 

ズッターン!!

 

私とアメリア、そしてゼルは床に頭からダイビングした。

これがまた結構痛かったりする・・・・

 

「こら!ガウリイ本当に忘れたの!?」

「冗談だって!前にも似たようなギャグやっただろう?

ちょっとだけあのトカゲのおっちゃんの真似をしてみただけだよ」

「あんたが言うとね・・・洒落になんないって前にも言ったでしょうが!」

 

いらん所だけ学習しおって!!

ミルガズィアさんの真似なぞしたら凍死してしまうぞ・・・

 

「相変わらずだな・・・ガウリイの旦那は・・・・」

「ええ、まったく変わってませんね・・・というか変なところはパワーアップしているみたいですが・・・」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「ところでリナ。こちらの人は誰なんです?」

「そうだな、紹介をしてくれないか?」

 

・・・・・・・ん?俺のことらしいな。

知り合い同士の話しに話って入る訳にもいけないから一歩退いていたのだが・・・

 

「俺はテンカワ・アキト。アキトと呼んでくれ。訳あってこの二人についてきているんだ」

「私はアメリア・ウィル・テスラ・セイルーンです。アメリアと呼んで下さい。

それにしてもえらく変わった格好ですね・・・」

「ゼルガディスだ。しかし全身黒ずくめとは・・・まあ俺も人のことは言えんがな」

 

まあそうだろうな・・・対照みたいに真っ白だし・・・・

ちなみに今の俺の格好はこの世界に来た時に着ていた戦闘服だ。

何度も言われてきたがこの世界でこの格好は場違いなような気がするし・・・

                自分の世界の
ただやっぱり 元々着ていた 服の方がなんとなく俺は安心する。

 

「まあ・・・・かいつまんで話すとね、アキトは異界から来たのよ。

ちょうど魔族に襲われているときに出会ってね・・・助けてもらったって訳。

アキトはこの世界に着いたばかりで困っていたようだから一緒に旅をしているの」

「「異界(だと)(ですって)!?」」

「まあそう言う事かな?」

 

かなり要約はしているが概ねあっているな。

 

「へ〜、アキトさんって強いんですね・・・・」

「ああ、アキトの奴はかなり強いぞ。戦っても俺は一分も持たないからな」

 

       全  力  で  戦  っ  た  場  合
(まあ、真剣勝負の上に昂氣を使用・・・という前提はつくけどね・・・)

 

最近はガウリイの方も強くなったからそう簡単に勝負がつくことはない。

これもルナさんの特訓のおかげだろう。

 

「そんなに強いんですか!!」

                                           くに
「まぁね・・・私が知る限りまともに戦えるのは郷里の姉ちゃんと以前襲ってきた女魔族ぐらいかな?」

「どういう基準かわからないんですけど・・・」

「私達四人が組んでもおいそれとは勝てないと言う事よ・・・・(もしくは絶対にね)・・・・・」

 

ルナさんはともかく俺については買い被りのような気がするけどね・・・・・・

リナちゃんも強くなったことだしね・・・・

 

 

「アキトといったな・・・いきなりですまないが質問がある。

                                                  キ メ ラ
あんたの世界に合成された動物・・・・・この世界では合成獣というが、

その合成されたモノを元に戻す技術はあるか!!」

 

そう言って俺に迫ってくるゼルガディスさん。

その姿、正に鬼気迫ると言った感じだろう・・・だが・・・

 

「すまないが・・・その様な技術は聞いたことはない」

 

そもそも俺の世界には魔法という概念自体がないのだ。

遺伝子的に創り出す技術はあっても後天的に元の戻す技術はない・・・・・と思う。

イネスさんあたりならやってのけそうな気がするが・・・・この場にいない人ではどうにもならないし

それなりの研究時間、設備が必要だ。しかしこれはあくまで俺の予想に過ぎない。

結果が不可能だということもある。

どちらかというとそちらの可能性の方がはるかに高い。

 

                               帰還前         五感
(もしそれだけの技術があればあの時の俺の身体も治っているだろうな・・・・)

 

「本当か!本当にないのか!!!」

「ああ、悪いが本当にないんだ・・・・・・・すまない」

「いや・・・俺の方こそ勝手なことばっかり言ってすまない」

「・・・・・・その体のことか?」

「ああ・・・・・・俺はレゾって奴の所為でこんな体になっちまったのさ・・・

人間か・・・・化け物かわからない体にな・・・そのおかげで色々な力は得たが・・・

俺は・・・元の姿に戻りたいんだ・・・」

 

「俺にもその気持ちが少しはわかるよ・・・・

俺も昔、似たような事にあってね・・・五感が無くなった時があるんだ・・・

今は色々な事情があって治ったんだ」

 

「そうなのか・・・」

「だからゼルガディスさん・・・希望を捨てずに頑張って欲しい」

「・・・そうだな・・・・・・・前に進むことをやめたらできることもできないしな・・・・ありがとう。

俺のことはゼルと呼んでくれ。もちろん呼び捨てで結構だ」

 

そう言ってゼルは握手を求めてきた。

俺はそれに応えた。かつて似たような状況の者に対する哀れみなどではなく、

元に戻れる術を手助けする友として・・・・

 

「これからよろしく、俺もアキトと呼び捨てでいいよ」

「ああ、アキト。こっちこそよろしくな」

 

 

 

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「そろそろいいかね?諸君」

 

そういえばこの場にはこのアルス将軍に会いに来たんだっけ・・・

すっかり忘れていた・・・

 

「つもる話は終わったかな?」

 

そう言って苦笑しているおっちゃん。

久しぶりの再会で浮かれていたこともあったが・・・悪いことをしてしまった・・・・

 

「済みません」

 

私は素直に詫びることにした。

 

「はっはっはっは・・・かまわんよ・・・・

こんな状況ではなかったらゆっくりとおもてなしをしたかったのだがな・・・

では本題に入る前に、そこの彼に自己紹介でもしようか・・・

私がディルス王国で将軍をやらせてもらっているアルスという者だ」

 

「始めまして、テンカワ・アキトです。よろしく」

 

お互いに挨拶をする。

このおっちゃんも人が丸くなったような気がする・・・

あの事件で人間として大きくなったのかな?

 

「ウム、いい目をしておる若者だな・・・・こちらこそよろしく頼む。

それでは本題に入ろうか。リナ殿とガウリイ殿に来てもらったのは理由は聞いておろうと思うが・・・

デーモンの襲撃、それを率いておったのがシェーラだったということなのだ・・・」

「それは本当にシェーラだったの?」

「ああ、面識のあった騎士達は全員そう言っておった」

「・・・少なくとも見た目はって事か」

 

魔族というのは姿形を自在に変えることが出来る。

見た目だけならシェーラそっくりになることは不可能ではない・・・

不可能ではないが・・・

 

「・・・見た目がそっくりということは何者かが化けていたとしても

少なくとも中級以上の持ち主ということか・・・」

 

魔族という生き物・・・・詳しくいうと精神生命体みたいなモノなのだが・・・は大きく分けて三つに別れる。

 

 

 

まず最初に魔族の中で最高位にあたる高位魔族。

                          ルビーアイ
魔族達の頂点に立つモノ『赤眼の魔王』シャプラニグドゥはもちろん、

                                      ヘル・マスター     カオス・ドラゴン
その配下たる五人の腹心。以前話した 『冥王』 や 『魔竜王』 等や、

直属の配下たる専属の神官や将軍等がこれにあたる。

人間が出会うことは皆無と言っていい程少ない。

人の身で正面きって闘うということは死ぬと同義語と思ってくれても過言ではない。

 

 

次に中級魔族。これは魔族の中でもそれなりの力を持っていたりする。

ちなみに中級から上の魔族は人型になっている。

ただし中級はある程度ダメージを受けたら人の姿を簡単にやめることがほとんどだけど・・・

 

このレベルでも人間が闘うというのは自殺に近い・・・というか自殺そのもの。

ほとんどの人間が相手にすらならないだろう。

 

 

最後に下級魔族。世間一般で魔族というこの階級を差していると考えてもいい。

姿などはグロテスクなモノが多い。間違っても人と見分けがつかない事がないので楽だったりする。

生首だったり人体模型もどきだったり・・・お食事中には会いたくない奴らではある。

 

超一流と言われる魔導士や魔法剣を持った剣士は楽勝とは言えずとも勝てる可能性はなんとかある。

 

 

 

こうして考えると私もずいぶんと無茶したわ・・・よく生きてるもんだ・・・・

 

「ああ、その事なんだが・・・」

「どうしたの?ゼル」

「あの魔族、一体どういう奴なんだ?見た目が別でも本人の情報を知っておきたいんだが・・・」

「まあ、平たく言えばゼロスの同類かな?魔族の階級的に言えば覇王将軍という事よ・・・」

 

「「な!!」」

 

その一言により絶句するアメリアとゼル。

 

まあ確かに、それが当の本人ならば二人だけでは絶対に勝てないだろう。

修行をして力を上げた私とガウリイでも危険なことには変わりはない・・・

 

「リナさん達・・・よく生き残れましたね・・・でも・・・・」

「ああ、聞いた話じゃあそのシェーラという奴はリナ達が倒したそうじゃないか。

そうなると今この町を襲っている魔族は・・・・・・」

「そうね、シェーラの姿を借りた魔族ということになるかしら」

「そのシェーラというのが滅びたのは確かなのかい?リナちゃん」

                                                       ラグナ・ブレード
「それは間違いないと思うわ。確かにあの時に、シェーラを 神滅斬 で切ったわ。感触も確かだった」

「そうか・・・・・・ん???」

 

アキトが不意に言葉をとぎらせる。

どうかしたのかと思って視線の先を見ると・・・・・

そ こ
其処には目を丸くして驚いているゼルとアメリアがいた。

 

「どうしたんだい?二人とも愉快な顔をして」

「ああ・・・いや・・・・もの凄く珍しい言葉を聞いたものでな・・・・」

「リナをちゃん付けで呼ぶ人がいようとは・・・しかもリナは黙認しているし・・・」

 

(そんなに珍しいことなのか?)

 

「うっさいわね!アキトは何回言っても直らないから諦めただけよ」

「それでも珍しいことには変わりないな・・・」

「世界の破滅でも近づいているんでしょうか・・・」

 

こ・い・つ・ら・は〜!!いい加減温厚なあたしでも怒るぞ!!

 

「あんた達なにげに息が合ってるわね・・・

いつの間にやらコンビまで組んでるし・・・隅に置けないわね!」

「ななななな!!!なに言ってるんですかリナ!!」

「そ、そうだぞ。な、なにを根拠にそんな事を」

 

ふっ・・・・・そこまでどもりまくっていて今更なにを・・・・

人をからかった報いはうけてもらわないとね!!

 

《後にアキトはこう語っている・・・「この時のリナちゃんの目は獲物をもてあそぶ猫に似ていた」・・・・と・・・・》

 

「まあいいじゃないかリナ。それよりどうして二人ともこの国に来ていたんだ?」

 

話題が変わったためあからさまにほっとしている二人・・・

ほんとに息ぴったりのような気がするのは気のせいか?

ま・・・追求は後でするとして・・・・今は現状を把握しておかないとね。

 

「そ・・・それはですね。この国の首都、ガイリア・シティの

町の区画について助言を求められたからです」

「??どうしてセイルーンが関係するわけ?畑違いもいいところじゃない」

 

セイルーンは別名『白魔法都市』・・・・都市の名前通り専門は『白魔術』

その手の影響力はなかなか強いものの、町の区画などはお門違いもいいところ・・・

例えるなら教会に大工道具を求めるようなものだ。

それに町の区画や建設関係などはそれ専門の人がそれぞれの国に最低は一人は必ず居るはず。

 

「それについては私がお答えしようか」

 

そう答えてくるアルス将軍・・・そう言えばいたっけこの人。

将軍職に復帰して逆に影が薄くなったような気がするが・・・元々薄いか・・・・

 

「ここの所、魔族による被害が著しくてな・・・何か防ぐ手はないか・・・と考えておったのだ。

議会の結果はセイルーン王国の様に都市を魔法陣の形に区画する計画となったのだ。

と言っても私がなかば無理矢理押し通したというのが本当だがな・・・・」

「ちょっ・・・ちょっと待って!それってかなりの金額が・・・」

 

ただ単に都市の整備をするだけでもバカにならないような金が動く・・・

今更一から作ろうとすれば一体どれだけのことになるのやら・・・

 

                                                                          首 が 飛 ぶ
「ああ、わかっておるよ・・・冗談ではなく国が傾くだろうな・・・おそらく私は再び将軍職解任だろう」

「ではなぜ・・・」

「それはな、こんな事を言うと青臭く思われるかもしれんが、

この国に住む人達のためだと考えておる。

国とは住んでくれる民がおってこそ成り立つものだ。

その為、一時の間、国が傾こうとも民の安全を考えなくてはならん」

「その為の魔法陣都市計画ですか・・・」

 

これがこの人なりの信念なのだろう・・・今までの対象が国王だったのがこの国の民となったのだろう。

ただもうちょっと早かったらこんな事態にならなかったかもしれないが・・・・

今ここで言っても仕方がないことだし・・・・・基本的には悪い人じゃないんだけどね・・・このおっちゃん・・・・

 

                     せ い
「それが、私の失態の所為で亡くなったコードウェル親子に対する償いのつもりだ・・・」

「我がセイルーンの方でもできる限り援助をしてゆくつもりです!」

「まあ、ディルス王国とセイルーンは姉妹都市になるとゆうことだな・・・・」

 

まあ・・・悪い事じゃないわね。被害が少なくなるならそれにこしたことはないし・・・

 

「やっぱり六紡星の形に?」

「いや、五紡星の形にするつもりだ」

 

げげっ!よりにもよって五紡星!?

とことん魔族対策の都市にするつもりね・・・アルス将軍は・・・

 

 

世界の均衡を表す六紡星、それを都市の区画に利用したセイルーン聖王国。

その都市の中では白魔術以外の魔術は軒並み威力が落ちる。

その効力は魔族といえども例外ではない。

 

それが同規模の五紡星ならば?

 

五紡星とは破邪を表すもの。つまりセイルーンよりも黒魔術等の威力は落ちる・・・

下手な三流魔導士ならば魔術の行使すら危ういかもしれないということなもなりえるだろう。

 

 

       徹底的に
「と・・・とことんやるつもりですね」


「むろんだ。カタート山脈に近いこの国の今までの方がおかしいくらいだ」

「まあそうかもしれませんが・・・」

 

私はアルス将軍の決意ある視線になにも言えなくなった・・・・

 

 

 

くか〜・・・くか〜・・・くか〜・・・・

 

 

 

 

不意におとずれた静寂を破るような間抜けな寝息・・・

こ・い・つ・は〜〜!!!

 

「人の話をちゃんと聞け!しかも立ったまま寝るな〜!!」

 

スパコ〜ン!!

 

私の操るスリッパが冴え渡る・・・・・・が!!

 

「ん?話は終わったのか?」

 

全然効果無いし・・・修行によって打たれ強くなったみたいだけど・・・

ちょっぴり悔しいような気がする。

 

くっそ〜〜・・・・ゼフィーリアに帰ったらシンヤのオッチャンに

突っ込みようの携帯できる鉄のハリセンでも作ってもらおうか?

 

「まあまあリナちゃん落ち着いて・・・いつもの事じゃないか」

「「そう(だな)(ですね)」」

 

アメリアとゼルは二人揃って相づちをうつ。やっぱりこの二人・・・・・

 

 

 

その時・・・城の静寂は破られた。

 

いきなり開け放たれる扉・・・血相を変えた兵士が飛び込んでくる。

 

 

「アルス将軍大変です!」

「どうした!!」

「町の外にデーモンの群を確認いたしました!!」

「来たのか!」

「はい!監視兵の報告によるとシェーラの姿があったと事です!

ただいま警戒していた兵が進行を抑えているとのことです!!」

「来てもらったそうそうの事で済まないリナ殿!頼めるか!」

「わかりました!兵士の皆さんは下がっていて下さい。側にいると余り大きな呪文が使えませんから」

 

相手はゼルとアメリアのペアを退けるほどの高位魔族なのだ。

兵士などに遠慮をしていたらやられるのはこっちだ・・・

 

「ガウリイ!行くわよ!」

「おう!!」

 

そう言って飛び出そうとする私とガウリイ。

 

「俺も手伝うよ!いないよりはましだろうからね」

「ありがと!恩に着るわ」

「いいってリナちゃん。俺の方が世話になりっぱなしなんだから」

「それでもよ・・・・ありがとう」

「俺達もいくぞ。やられたままというのはどうにも腹の虫がおさまらん!」

「ええ!その通りです!!正義は必ず勝つんです!」

「ふっ・・・じゃあ行くぞ」

「はい」

 

アメリアとゼルも私達の後に続いてやってくる。

やっぱり仲がいいようね・・・後で冷やかしてやろうかしら?

 

「じゃあ、一丁蹴散らしてやりましょうか!!」

 

「おお!」「ああ!」「はい!」「おう!」

 

そして私達は町の外にいるデーモン達の元に向かった。

 

 

(第12話に続く)

 

 

 

―――――あとがき―――――

 

どうも、ケインです。

今回の話はディルス王国のその後って感じになってしまいました。

ここら辺は(というか、この話の最初から)完全にオリジナルの想像ですので

 

「本当にこうなっているのか?」

 

などの疑問は笑って見過ごしてください。

 

次の話はデーモンとの戦い(予定)です。

あれは本当にシェーラなのか?リナが街で感じた疑問とは?

 

では第13話であいましょう。では!!

 

K・Oさん、カルマさん、川嶋さん、和樹さん、綿貫さん、悠久さん、myameさん。

感想メールありがとうございます!

 

 

 

代理人の感想

 

確かレッサー・デーモンというのは・・・・・・

まぁ、ネタバレになるからやめておきましょう(笑)。

 

シェーラそっくりの方は案外「グラウ」だったりして(爆笑)。