赤き力の世界にて

 

 

 

 

第12話「発動する罠・・・」

 

 

 

 

 

 

俺達は先程通った通りを走って戻っていた。

街の住民はデーモンの襲撃があったことを知っているらしく、ほとんど避難した後の様だった。

 

おかげで気兼ねすることなく通りのど真ん中を走っている。

 

「くそっ!!あれ以降、襲撃がなかったから油断した!!」

「???どうゆうことなんだ?ゼル」

 

俺はゼルの言葉に疑問を感じて訪ねた。

 

(あれ以降とはどうゆうことだ?)

 

「ああ、前回の襲撃はシェーラという奴を交戦したのが最後なんだ!」

「だいたい3週間前にあったのを最後にぱったりと・・・」

 

そう答えてくれるアメリアちゃん。ということは何回もあったということか・・・

 

「それまではどうだったんだい?アメリアちゃん」

「ア、アメリアちゃんって・・・・・今はそんな事を言っている場合じゃないですね。

最後の襲撃より以前はだいたい三日から四日おきぐらいに計5回ほどです。

そのどれも私とゼルがディスさん。そしてこの国の騎士や兵隊達によって撃退しました」

 

「その襲撃でデーモンが町の中で発生したことは?」

「無いです。毎回町の外からの襲撃です」

 

その答えの後、いきなり考え込むリナちゃん。

何か気になる点でもあったみたいだ・・・

 

「何かわかったことでもあるのか、リナ」

「まずはデーモンを蹴散らすことに専念しましょう。

そこでシェーラの偽物にでも会えば答えは出てくると思うわ」

 

リナちゃんがその結論出した。俺達は無言で足を早める。

 

ドォォーーン・・・・ドドォォーーーン・・・・・

 

交戦している兵の中には魔導士でも居たのか、爆発系の音がここまで聞こえてくる。

かなり激戦になっているのかもしれない。

 

             ザ コ
「先に行ってデーモン達を蹴散らしてくる!」

 

俺は一足早く戦場におもむくためスピードを上げた。

 

そう言えば戦場に向かうために走るのはけっこう久しぶりのような気がするな・・・・

 

「はえ〜〜〜・・・もう見えなくなった・・・」

「本当に人間ですか?」

「正に疾風の如く・・・・と言うヤツだな」

「あんた達!感心してないで急ぐわよ!そうじゃないと見せ場を全部アキトにとられるわよ」

「「「わかった!!」」」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

それからまもなく私達は街門に到着した。

兵士が退避し始めているところを見ると、アキトが連絡を入れてくれたようだ。

約四分の三ぐらいの数の兵士が門の所まで退避している。

 

 

すでにアキトは外に出ていてデーモンをかなりのスピードで掃討していた。

それでもって退避しようとしている兵士達のフォローもしているのだから大したものだ。

 

(私達も負けてらんないわね!!)

 

「私とアメリアは負傷した兵の手当を!ゼルは私達のサポートをお願い!」

「わかりました!」

「任しておけ!」

「ガウリイはアキトと一緒にデーモンの掃討を!」

「わかった!」

「できるだけ私達に近づけさせないようにお願い。

もしもシェーラもどきがでてきたら注意して、個人の戦闘はなるべく避けて!じゃあ散開!!」

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか!?すぐに手当をします」

                                                             リカバリィ
「アメリアと私は重傷を担当するわ!ゼルは比較的軽傷の人に 治癒 をかけて!

何とか動けるようになったら町にある病院に移すように指示して」

「リナ!呪文の方は?」

          リザレクション
「大丈夫! 復活 を覚えているから安心して」

「わかりました」

「リナ。ガウリイの旦那とアキトの方は大丈夫なのか?」

「それも大丈夫・・・というかむしろこっちの方が心配される方かもよ」

 

そう言って私はガウリイ達の方に目を向ける。

そこには常人には信じられない光景があった・・・・・

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「ガウリイ、左の方を頼む!俺は右に行く!」

「わかった!俺は左の方だな」

 

ここで『右はどっちだ?』なんて言ったらその方向に投げ飛ばそうと思ったが・・・・

そんな心配はないみたいだな・・・・

戦闘中はかなりまともな思考になってるみたいだし・・・

 

「じゃあ頼んだぞ!」

「オウ!まかせておけ!!」

 

俺達はそれぞれの方向に向かって走り出した。

 

                こ い つ ら
(あの呪文・・・・デーモン達にどれほどの威力があるか試してみるか・・・・)

 

俺は素早く呪文の詠唱にはいる。

詠唱についてはいちいち頭で考えずとも唱えることが出きるように訓練している。

それぐらい熟練してこそ初めて実践レベルといえる。

いちいち考えていたら北斗レベルの闘いには何の役にも立たないだろう。

もっともこの程度の呪文ならまともにやっても牽制にしかならないと思うけどね・・・・・・

 

そして俺は完成した呪文をデーモンが固まっている辺りに向かって解き放つ!!

 

 

 エルメキア・アロー
「烈 閃 矢!!」

 

俺の周りに十数本の光の矢が現れ、すぐさまデーモン達に向かって飛んでゆく!

 

 

ズドドドドド!!

 

「よし!まあまあだな」

 

5匹ぐらい集まっていたデーモンは全て倒され、消滅していた。

 

「よし次いってみようか!」

 

俺は次の標的に向かって走りだした。

レッサーデーモン等を倒すのにDFSを起動する必要もなく、

素手の攻撃と気功だけで次々に標的を倒していった。

 

(・・・やっぱり氣の攻撃には弱いな・・・・修行の成果も出ているし・・・・

しかしあの呪文・・・・結構威力があったな〜・・・・

                                          シンヤさんやランツ達
あんなの喰らって次の日平然としている ルナさんファンクラブ の精神っていったいどうなっているんだ?)

 

 

 

 

 

 

 

「お!?アキトの奴張り切っているな!俺も負けられないぞ!!」

 

そういったガウリイはブラスト・ソードを上段に構える。

次に軽く息を吸い込むと、全身に力を溜め込んだ。

 

 

「ハアァッッ!!」

 

振り下ろして剣の軌跡をなぞるように黒い衝撃波が飛ぶ!

 

ズガガガガ!!!

 

大地を削るように・・・否、削りながらデーモンを蹴散らす。

 

「よっしゃぁ!!絶好調!!」

 

今のガウリイにとって、黒い衝撃波によって個々に分断されたデーモンを

撃破してゆくのは造作もないことだった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

ゼルとアメリアはボーゼンとその光景を見ていた・・・

よく見ると避難しようとしている兵士までボーゼンとしているようだった・・・・

 

(まぁ・・・仕方ないかもね・・・・)

 

「なんなんですか!ガウリイさんのあの強さは!

以前旅していた時より遙かに強くなってるじゃありませんか!!」

「それにアキトに奴はなんなんだ!素手でデーモンを倒しているぞ!強いという常識を越えている!

それになんであの呪文がまともに使えるんだ!!」

「落ち着きなさい!

簡単にいうとガウリイのは郷里の姉ちゃんの修行のおかげよ。

ああ見えても結構きつい修行受けたからね・・・・」

 

何回・・・・いや、何十回死ぬかと思ったことか・・・・

これで修行の成果がまったくでていませんなんて事になったらさらにきつくなるからね・・・・

いや〜・・・久方ぶりに必死だったわ・・・・・

 

「アキトの方はデーモンを殴ったときに氣ってヤツをたたき込んでいるらしいのよ・・・

強さの方は本人曰く『人よりちょっと努力したから』だそうよ」

 

「「ちょっとどころの問題(か)(ですか)!?!」」

 

二人は見事にはもって言った。

かくいう私とガウリイも初めて聞いた時も同じ様なものだったのだが・・・

 

「まあそれはおいといて・・・あの呪文はどういう事だ?」

 

話題そらしたなこいつ・・・・まあ信じられないのも仕方がないけど・・・・

この質問の答えも似たようなものなのよ?

 

「ゼル、あの呪文の開発が放棄された理由って知ってる?」

 

私は逆にゼルに質問した。

ゼルとて答えはわかっているのだ。ただ、にわかに信じられないだけなのだろう。

 

                 キャパシティ
「ああ・・・魔力や魔力許容量 の問題じゃなく、集中力の問題だと聞いた事があるが・・・・」

「それが答えよ」

「それじゃあ・・・アキトさんは」

「そうゆうこと。桁外れなのよ・・・・・・集中力が」

 

 

フレア・アロー  フリーズ・アロー
炎の矢 や 氷の矢 等は他の呪文に比べ、比較的簡単に扱える。

       エルメキア・アロー
しかし、 裂閃矢 については誰一人まともに使えた者はいないとされている。

理由は魔導士協会の方でも謎のままだったりする。

                                   アストラル・サイド
炎や氷はイメージしやすいからだの、精神世界面では感覚がわかりづらいから等と云々言われているが

どれも予想に過ぎず、結局は一番無難で信憑性の高い『集中力の問題』ということで開発は頓挫していたりする。

 

そもそも発動だけならだいたいの魔導士ができる。ただし二・三本しか発生しないが・・・

かくいう私もやってはみたが、どんなに集中しても五本が限界。

しかも身動きがとれないくらい集中力を使うため結局使い道がなかった。

戦場ではいちいち相手の呪文を待ってやるほどの時間はない。隙を見せれば死あるのみ・・・・

                        エルメキア・ランス
二・三本程度なら従来の 裂 閃 槍 の方が勝手が良いということで開発が中止された。

 

だが・・・・もし魔導士協会の発表が本当だと仮定して・・・

             ハードル     クリア
集中力と言う問題点さえ克服すればこの呪文は完成していると言ってもいいのではないか・・・・

 

私はそう思い、集中力がずば抜けているアキトにあえてこの呪文を教えてみることにした。

その結果、やはり集中力の問題か・・・もしくは何らかの原因があったのかは判らないが

アキトが使えばちゃんと発動したというわけである。

 

 

 

「以前にね、アキトの持っている武器を使うのにはかなりの集中力が必要だって聞いてね。

試しに教えてみたのよ。結果がアレだったという事よ。教えた私が呆れるわ・・・」

「アキトさんの世界の人間ってああゆう人ばっかりなんでしょうか・・・」

「もしそうだったら絶対に行ってみたくはないな・・・」

 

 

話を聞く限りではそういう感じじではないようなんだけど・・・・・

あっちの世界の代表がアキトだからねぇ・・・・話聞いてなかったら私だって誤解するわ・・・・

 

 

 

「そんな事よりも!!私達も早めに済ますわよ!残りは後どれぐらい?」

「はい。兵士の皆さんの退避の方は終わっています。

怪我人の方も最初の二割ほど残っているだけです」

「このままじゃあ俺達の作業が終わるよりも先にガウリイ達がデーモンを倒してしまう方が早いぞ・・・」

 

確かに・・・ガウリイ達のデーモンを倒すスピードは遅くなるどころか早くなっているようにも見える。

アキトもガウリイも疲れというものを知らないかのように動き回る。

しかしよく見ると必要最小限の動きで敵を倒しているのが私にはわかった。

 

「・・・どう考えてもあっちの方が早いかな?」

「それならば私も手を貸そうか?」

「あ!あんたは・・・」

 

その時、私の言葉を遮るように戦場に眩いほどの閃光と同時に爆音が鳴り響いた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「―――――!!!下がれガウリイ!」

 

俺は瞬間的に嫌な気配を感じた!

敵意は俺達には向いてはいないが、敵への攻撃の延長上に俺達がいるような感覚・・・

混戦時によく感じることのある感覚である。

 

「わかった!!」

ガウリイも同じ様な気配を感じたのだろう。

素直に攻撃の気配が向いている所より離脱する。

 

俺とガウリイが飛びのいたと同時に閃光が走る!!

 

 

カッ!!ズガガガガガ!!

 

 

閃光が走った後に残るは大きな溝のみ・・・

 

・・・・・・これで水さえ流れれば川といっても誰も疑わないかも知れないな・・・

 

「ガウリイ・・・この世界ではこんな事は日常茶飯事なのか?」

「たぶん違うんじゃないのか?・・・でもリナの周りでは日常茶飯事になるかな・・・」

「そ、そうなのか・・・・・まあ、おかげでデーモンも掃討できたようだし」

 

「お〜〜ほっほっほ!!そこの人間達!感謝しなさい!」

 

そちら(閃光と声の発生源)を向くと、奇妙な鎧を着た耳の長い二十歳頃の女性がいた。

 

「ずいぶんとデーモンごときに手こずって「この極悪エルフ!!」

 

スコーン!・・・・・・ポテッ・・・・

 

どうやらリナちゃんが遠くから石を投げて当てたみたいだな・・・

 

しかし・・・いいコントロールしているね・・・どう考えても100メートルはありそうなのに大したものだ。

 

ぴくりとも動かなくなった女性が気になり俺は近づいてみる。

 

(うわっ!でかいたんこぶ。完全に気絶しているみたいだな・・・・)

 

                    リカバリィ
さすがにそのままは可哀想なので治癒をかける。

 

「アキト、その女は大丈夫なのか?」

「ああ、詳しいことはわからないが気絶しているだけのようだ。

それよりもガウリイ。リナちゃんがこの娘の事知ってるようだけど・・・ガウリイは知らないのか?」

「う〜ん・・・知っているような気が・・・」

「あんたさんざん迷惑掛けられといてこいつのこと忘れたの!?

一度あったら二度と会いたくない奴のブラックリストに載りそうなこの極道エルフを!!」

 

リナちゃん達が来たみたいだな・・・・・??・・・知らない奴がいるな・・・

感じる気配から、人ではないことは確実のようだが・・・魔族とも違うみたいだ・・・・何者だ??

 

「お〜あんたは・・・」

「トカゲではないぞ!!」

 

そういいながらガウリイに無表情の顔を近づける。

何か嫌なことでもあったのか?

 

「わかった!わかってますって!!」

「そうか・・・ならばいい」

「ヤモリだろ?」

「やはり一度じっくり話をしないといけないようだな、人間よ・・・」

 

「ガウリイ・・・あんたやっぱりわざとやってない?」

「どうなんでしょうね・・・リナさんが分からないんじゃあ誰もわかりませんよ」

「ま、その通りだな」

「あんた達ね・・・・・」

 

三人とも何を話しているのやら・・・・

でも確かにガウリイの事はリナちゃんが一番理解しているからな・・・・

 

「あの・・・そろそろ手を離していくれない?」

「ああ、ごめん。もう大丈夫なようだね」

 

もう大丈夫な様子に安心して笑いかける。

 

ボフッ!!

 

「し、ししししし・・・心配は、無用です!!」

 

顔を赤くしながら、どもりながら答える。・・・当たり所が悪かったのか?

 

「本当に大丈夫かい?」

「も、ももも、もちろんです!!」

「それはよかった」

「は、はい・・・・」

「はいそこ!!変な雰囲気作らない!私の明るい人生計画が頓挫しそうだからね」

 

??何でリナちゃんの明るい人生計画に俺が関係するんだ??

 

「とりあえず簡単に自己紹介でもしておきましょうか」

 

しかもあっさりと話題かえるし・・・・・

 

「そうだな。俺とアメリアはそこのエルフにあったことはないからな」

「そうですね。私はアメリアといいます」

「俺はゼルガディスだ」

「おじさまから聞いたことはありますわ。よくこんな性悪な小娘に付いて旅ができましたね」

「あんたね・・・いっぺん性悪って言葉の意味を百人くらいにアンケートをしてみたら?」

「どういう意味かしら」

「たぶんあんたが考えている意味よ」

「落ち着けリナ」

「メフィも落ち着け。まだ自己紹介が終わってないだろう。そういうことは後にしろ」

 

後ならいいっていう問題じゃないんだけどな・・・・

この国が壊滅しそうだから俺的には出来るだけやめて欲しい。

 

「はい、おじさま・・・私の名前はメンフィス。見ての通りエルフよ」

「私はそこの人間とは初めてだな。私はミルガズィアという。こう見えても人間ではない。
              ドラゴンズ・ピーク
カタート山脈をのぞむ 竜たちの峰 に住まいし竜達の長をやっている」

「だから人間離れした気配だったのか・・・納得したよ。」

「ほう・・・・わかるのか?」

「まあ、ある程度の気配は読めますので一目見て分かりました。

今度は俺ですね、俺はテンカワ・アキト。この世界から見たら異界の人間ということになります」

 

俺の言葉にミルガズィアさんとメフィちゃんは驚いたようだ。

 

「異界から!?道理で見慣れない格好なわけね・・・」

「珍しいこともあるものだな」

「まあ初めは皆そう言いますね」

「あんた達よく素直に信じるわね・・・・・・」

 

俺もそう思う・・・俺だったらこんな与太話はすぐには信じないだろう。

 

「今さらそこの人間がそう言った冗談を言う理由が見あたらないのでな。それにテンカワ アキトといったか・・・・

なんとなくだが信じても良いような気にさせる雰囲気を持っているからな」

「そうですわね・・・確かにこの人は嘘を言っていない。信じても良いって思えるような気がしますね」

 

そんなご大層な雰囲気はもってはいないと思うんだけどな〜・・・・

 

ピッ!!

 

 

ん?ディアとブロスからの通信みたいだな・・・

 

「アキト兄大変だよ!!ルナ姉が!!」

『大変!大変!異常事態発生!!』

 

ディアとブロスは繋がると同時に一気にまくしたてる。

 

(ル・・・ルナ姉!?一体ディアとルナさんの間になにがあったんだ!?)

 

俺は驚きながらも二人に事情の説明を求めた。

 

「どうしたんだディア?」

「ゼフィーリアに大量のデーモンが現れて!

それに何だかわからない人間みたいなモノまで現れたらしいの!!」

 

「ディア、姉ちゃんは?姉ちゃんだったらどんな奴が攻めてこようともへっちゃらなんじゃあ・・・・」

「ルナ姉は前に現れた女魔族のニースと戦っていて手が放せないの!!」

「(姉ちゃんが手が放せないほどの闘い!?姉ちゃん並と考えてはいたけど本当に互角なの!?)

王国の騎士たちは!四騎士とかはどうしたの?」

 

「それが三日前から国境近くや近隣の町にデーモンが現れて!

だから町に待機している騎士達の数が少ないって、昨日ルナ姉がいってたの!

町のみんなも戦っているみたいだけど・・・」

 

(レナさんやロウさん・・・街のみんなは大丈夫なのだろうか・・・・)

 

俺は今この場にいることをホンの少しだけ悔やむ・・・・

 

「くっ!!やっぱりディルスの騒ぎは陽動だったみたいね・・・」

「どういうことだ人間よ?」

「デーモンの騒ぎ事態陽動だって事です。

理由はわからないけど私達をゼフィーリアから離すのが目的みたい」

「しかしどうして陽動だとわかるんですか?ただ単に事件がブッキングしただけでは?」

 

「よく考えなさいアメリア。町の中にはデーモンが発生していない。

町の中の動物が前回の事件で少なくなっているけど、居なくなったわけじゃない。

むしろ増えているみたいだからね・・・・と言うことは・・・」

 

「滅ぼす気があるのならとっくの昔にやっている・・・・ということですね」

「つまり、関わりのあったリナ達を、この町の人間が呼ぶように仕向けた・・・」

「そういうこと。現に私への使いが出てからは襲われてなかったみたいだしね」

「シェーラの偽物というのが現れたの理由はゼルとアメリアちゃんがデーモンを撃破しているから
                        因縁のある
二人を倒すのと同時にシェーラの顔を使ってリナちゃん達を呼ぶ可能性を上げたかったからと言う訳か・・・」

 

しばし沈黙する一同・・・

 

         スィーフィード・ナイト
「しかし『赤の龍神の騎士』を襲うなんて正気の沙汰とは思えませんわ!

それに、なぜこんな小娘なんかを遠ざける必要があったのか・・・」

「ちょっと言い方が気になるけど・・・確かにその通りよね・・・

魔族にとって私達はうっとおしい相手かもしれないけど、

決して意識して邪魔の対象にするほどの考えはないと思ってたんだけど・・・」

「アキト兄!そんな事よりも!!」

「そうしたいのはやまやまだが一体どうやってゼフィーリアに―――――誰だ!」

 

なかなか強い魔気を感じてその方向に振り向く。

 

そこには一人の女性が闇から滲み出るように現れた。

 

「行ってもらったら困るんだけどね・・・」

 

年の頃は17歳前後くらい、黒い剣をもった蒼い色の神官服みたいなのを着込んだ少女がいた。

 

おそらくこいつがリナちゃんの言っていたヤツなんだろうな・・・・・

 

(どうやらそう簡単にはゼフィーリアに行く事はできそうにないようだな・・・・しかしこいつは・・・・)

 

俺は出てきた魔族の気配に疑問を持ちつつも、次にとるべき最善の策を模索し始めた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

  ジェネラル
「覇王将軍・・・シェーラ・・・」

「なに!?」

 

驚いたように私達を見るミルガズィアさん。

そうだった。初対面というか、初めて見る顔なのよね・・・

 

「どうなっていますの!?覇王将軍は貴方が倒したのではなかったの!!」

「見ての通りよ・・・(本物かどうかはわからないけど・・・)」

 

後の言葉は心の中でつけ足す。私とてどうなっているのかはまだ分からない。

結論を出すにはまだ判断材料が圧倒的に少ないのだ。

 

「リナ、俺達はこいつにやられたんだ」

「かなり強いです!!」

「そう?まあ死なないように戦ったから・・・手加減って思ったよりけっこう難しいのね・・・・

まあ何にしてもリナ・インバースを呼び出してもらうために死んでもらったら困るからね・・・」

「ふざけやがって!!」

「正義の団結力、今こそお見せします!!」

 

(端から見ればどっちが悪者かわかりゃしないけどね・・・・)

 

どう見ても私達は女性を虐めようとする集団にしか見えないだろう。

戦闘力は相手の方が圧倒的に上だとしても・・・・・・

 

「なあ・・・」

「なにガウリイ。まさかシェーラを忘れたとかいうんじゃないでしょうね」

「いや覚えてるよ。たしかこんなんだったよな」

 

そういってガウリイはシェーラもどきを指差す。

 

「いや、まあ・・・それはあってはいるんだけどね・・・・」

「俺が言いたいのはそうじゃなくてだな・・・そこにいるヤツがなんで女になっているかが聞きたいんだが・・・」

 

あんたねぇ元々シェーラは女・・・・・・って女になっている!?

 

「それどういう事!!」

「つまりガウリイはなぜグロウがそんな姿をしているか聞いてるんだよ。」

「おお!そうだそうだ、グロウって名前だ!」

 

忘れてとったんかい!!

 

「よく・・・わかりましたね。かなり精密に化けたつもりなんですけどね・・・・」

 

そういった言葉はすでに男のモノとなっている。確かにこの声は聞いたことがある。

 

「まあ何となくニオイでな」

「俺は氣を感じてな・・・全く一緒だから分かりやすかったよ」

「まだ貴方達を甘く見ていたようですね・・・」

 

姿がぶれたと思ったら次の瞬間にはこの前あった時と同じ格好をしたグロウが立っていた。

・・・たまに思うけど魔族って便利よね・・・着替えとかいらないみたいだし・・・

 

「人間よ・・・こいつは何者だ」
  プリースト
「覇王神官。シェーラの同僚よ・・・」

「なるほどな・・・」

「余り驚きませんね」

「これほどの魔気を放っておるのだ。だいたいの予想はつく」

「余り相手にはしたくないレベルの相手ですけどね・・・」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

さてどうしたものか・・・・

グロウ
此奴を倒すのはいいとして・・・・ゼフィーリアまでどうやっていくか、だ・・・・・

 

馬を使ったところであちらに着く頃には全て終わっているだろう。

俺が走ったところでも同じ事だ。むしろこの距離では疲労して役に立たない可能性の方が高い。

                 レイ・ウィング
リナちゃんが使う 封翔界 では辿り着くことすらできないだろう。

 

・・・・・・・ブローディアが完全なら一足飛びなのだが・・・・・

 

「ディア、ブロス。機体の修復状況は?」

「つい最近にやっと相転移エンジンが治ったところなの・・・・機動系までは・・・・・・」

『全体の修復状況は30%未満。歩くのがせいぜいだよ・・・・』

 

そうか・・・・まあこれは予想していたしな・・・そうそう都合よくはいかないものだ・・・・

後・・・・のこる手はボソンジャンプしかないのだが・・・・

 

「遺跡はどうなっているんだ?稼働しているのか?」

「うん、しているみたいだよ。いまもボソンジャンプの演算しているみたい」

「そうか・・・・・俺はジャンプできそうなのか?」

「できないと思うよ・・・・アキト兄のジャンプのイメージを完全に無視しているみたいだから・・・・」

 

こんな時にまで・・・・・・遺跡というのはどこまで俺をもてあそべばすむというのだ・・・・

 

「・・・・・あっ!!もしかしてこれならアキト兄ジャンプできるかも!」

「手があるのか!?」

「うん・・・・アキト兄のジャンプのイメージを私達を通して遺跡に伝えるという方法が使えるかも・・・・・」

『早い話が、遺跡の代わりに僕たちがジャンプの演算をするっていうことなんだけど・・・・・』

「けど・・・・なんなんだ?」

「ちゃんとジャンプさせる自信はあるんだけど・・・その際に私達にどれだけの負荷がかかるか・・・・

人格が壊れたりすることはないと思うんだけど・・・・・・・・」

 

つまりは連続したジャンプは不可能と考えていた方がいいという訳か・・・・

しかも不確定要素があるのが心配だな・・・・

 

「どうする?やめておくか?」

「・・・・・・ううん、やる!やらないと私・・・・・絶対後悔する」

『僕も精一杯頑張るよ!!』

 

(それなら・・・俺も二人の期待に応えないとな!)

 

俺はグロウとにらみ合っているリナちゃんに近づいた。

 

「リナちゃん!」

「なに?さっきから三人で話して・・・・・何かあったの?」

「ああ、ゼフィーリアに戻るためにね色々と策を練ってたんだ」

「で?そんな策あったの?」

「やや危険な賭だけどね・・・・ボソンジャンプをやってみようと思っているんだ」

「ボソンジャンプってアキトがこの世界に来た原因ってヤツでしょ・・・・大丈夫なの?」

「ジャンプ自体の問題はディアとブロスが頑張ってくれるから大丈夫だよ」

『頑張るよー!!』

「みんな頑張ってるんだもん!これぐらいへっちゃらへっちゃら!!」

 

そんな二人をリナちゃんは頼もしそうな眼差しで見つめた。

 

「ならアキトはさっさと行って!此処は私達だけで十分よ!」

「しかし・・・・・」

「しかしもかかしもないの!何の為にあたしとガウリイがあの辛い特訓うけたと思ってるの!!

それともなに?私達が信用できないとでも言うの?」

 

そうだね・・・・リナちゃん達はあの辛い修行(人によっては苦行ともいう)に耐えたんだ。

それに信用できる仲間もいることだし・・・・・きっと大丈夫だろう。

 

「・・・・・わかった!それじゃあ一足先に行っているよ!」

 

俺はジャンプフィールドを発生させる。

おそらく今の俺の体はナノマシンの活性化により光の紋様が浮かんでいるだろう。

 

ただ・・・この場に黙っては送ってくれない奴は確実に一人いたが・・・

 

「それは困りますね・・・せっかくおびき出した私の苦労が水の泡になってしまいます。

もう少し付き合っていただかないと困ります」

 

そう言うとグロウは杖を掲げた。

すると周りの景色が揺らぎ始め、魔の気配が濃厚になってくる。

 

(空間をねじ曲げようとしているのか!?)

 

「結界!?アキト!ジャンプってやつは大丈夫なの!?」

「正直言ってわからない!」

 

ただでさえディアとブロスに頑張ってもらう上に異世界でのジャンプなのだ。

なるべく不安な要素は取り除いておきたい・・・それが俺の本音だ。

 

「メフィ!!」

「はい!おじさま!!」

 

 

 

ウォオオオォォォーー!!

 

ヴヴヴヴヴヴ!!

 

 

 

ミルガズィアさんが咆哮をあげる。

それと同時にメフィちゃんの鎧も奇妙な振動を始める。

それと同時に徐々に空間の揺らぎが元に戻ってゆく・・・

 

(あの二人が戻しているのか!?)

 

「アキト!空間が元に戻ったらその瞬間に行って!」

「わかった!」

  スィーフィード・ナイト
「赤の竜神の騎士・・・ルナさんによろしくね」

「有り難うメフィちゃんにミルガズィアさん」

「当たり前のことをするだけだ。気にするな」

「さ、先程の治療のお礼なだけです!」

「何度でも言わせてもらいますが・・・それは困ります!!」

 

グロウの体から黒いオーラのようなものが漂い始める。

どうやら力を上げたらしく、元に戻ろうとした空間の揺らぎがまた大きくなろうとしているようだ・・・

 

「ぐっ!!」

「なんて圧力!?これでは!!」

 

空間の揺らぎは大きくなったり小さくなったりしている。力の差はほぼ互角のようだ。

 

「ガウリイ!ゼル!アメリア!攻撃して気をそらせるわよ!!」

「わかった」

「了解しました!でも後でその空間移動の詳しい説明して下さいよ」

「右に同じだ。後は俺達が何とかするからアキトはさっさと行け!」

「アキトはそのままの状態でタイミングを待って!

チャンスができたら私達に構わずそのジャンプってヤツをやって!!」

 

四人はグロウに向かって戦闘を始めた。

ここまできたら俺のやることはただ一つ。みんなの協力を無駄にしないことだ。

 

「わかった!みんな気をつけてくれ!!」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ハァ!!」

ガウリイが剣を真横に一閃させる。

剣から発生した黒い衝撃波はグロウに向かって一直線に飛んでゆく!!

 

 

 

ガウリイが先程から放っているこの衝撃波・・・・

実は魔力を使って放っていたりするから魔族にも有効だったりする。

ガウリイ自身は魔力は扱えないが、剣の機能を応用してるらしい・・・

 

        ブラスト・ソード
もともと 妖斬剣 という武器は、周りの魔力を取り込み、切れ味に転化させている仕組みらしい。

そこで魔力を切れ味に転化せず、刀身に溜めて衝撃波として放つ方法を私がおもしろ半分で発案し、

姉ちゃんの教えのもと、ガウリイが練習したらしい。

まさか私自身本当にできるとは思ってもみなかったが・・・・そこはガウリイの努力の賜物というヤツだろう。

 

しかしガウリイ自身は完全に扱えていないらしく、三回に一度の割合にしか出なかったらしいが・・・・

実戦になって何かコツを掴んだらしい。素晴らしい上達ぶりだろう。

 

まあしかし・・・・ガウリイは頭よりも体の方が賢いから納得できないものでもない・・・

頭で覚えるよりも体で覚えるというのを体現しているヤツだからね・・・・・

 

 

 

「ぐっ!余り邪魔はしないで欲しいですね!」

 

グロウは杖の一振りで衝撃波をうち消す。

しかし予想外に衝撃波が強かった為か完全には威力を押さえられなかったようだ・・・

 

グロウはなんとかその場に踏みとどまりながらも体勢を大きく崩した。

 

その瞬間を見逃すゼルとアメリアではない!

 

 エルメキア・フレイム
「 烈 閃 砲 !」

ヘル・ブラスト
「冥魔槍!」

 

ゼルとアメリア
 二 人 の呪文がグロウに迫る。

さすがに空間に干渉しながらの攻撃の相殺は限度があるのか

その場から大きく飛びずさる・・・

 

私はこの瞬間を待っていた!!

       高位魔族           結界の維持と私達の相手
いくら覇王神官とはいえ、二つ以上の動作をしている以上何時かはその行動に限界がでてくるはず!

 

詠唱の方はもう終わっていて、後はその力を解き放つだけになっている!

 

そして私はこの瞬間を見逃してやるほど甘くはない!!

 

  ドラグ・スレイブ
「竜破斬!!」

 

グロウに向かって、赤光が収束してゆく!!

 

「な!?しま・・・・・」

 

                              ドラグ・スレイブ
言葉を最後まで言わせないまま 竜破斬 が炸裂し、辺り一面に爆風が吹きすさぶ。

 

            フ ル パ ワ ー
さすがに 手加減一切無し のこれは効いたのか結界を維持することができなくなったらしく、

空間の揺らぎがメフィとミルガズィアさんの力によって素早く修復されていった。

 

「今よ、行って!!」

「すまない!後は頼む!!ディア、ブロス準備は!!」

「何時でも!!」

『OKだよ!!』

「いくぞ!ジャンプ!!」

 

次の瞬間、眩しい虹色の閃光と発し、おさまった後にはアキトの姿が消えていた。

 

                  空間移動みたいなもの
どうやら無事に ボソン・ジャンプとやら を成功させたようだ。

 

 ゼフィーリア
 あっち の方は全てアキトに託すしかない。

私は私で厄介な相手と闘わなければならないのだから・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(第十三話に続く)

 

 

 

 

 

 

―――――あとがき―――――

 

どうも、ケインです。やっとの事でこれをお送りします。

 

シェーラの正体ですが・・・・笑って見過ごして下さい。

前回の最後で書かれたので実はゼロス・・・・という風にしようと思ったのですが・・・・・

さすがにリナ達では荷が重すぎると思いまして・・・・

(出してほしいと思っている人いるかな?もしそうなら考えた方が良いのかな??)

 

この話はこれから数話ほどの起点となる話なので、訂正する可能性が高いのですが・・・・

まあほとんどしないと思います。

 

今年中に次の話が出せるように頑張ります。

 

最後に、川嶋さん、カルマさん、K・Oさん、悠久さん、涼水夢さん。

わざわざ二度も送ってくれた綿貫さん。感想ありがとうございます。

この文章に気がついた人は教えて下さい。先着三名様まで試作型十三話をプレゼント!

それでは第十三話『それぞれの戦い・リナパート』であいましょう。

しかし・・・次の話はアキトの出番がほとんどない・・・・良いのかなぁ・・・・・・・

 

 

 

代理人の感想

・・・・言わない方が良かったのかな〜。

・・・・でもバレバレだったよな〜(核爆)。