赤き力の世界にて

 

 

 

 

 

第13話「それぞれの戦場・・・・《リナ・サイド》」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今よ、行って!!」

「すまない!後は頼む!!ディア、ブロス準備は!!」

「何時でも!!」

『OKだよ!!』

「いくぞ!ジャンプ!!」

 

 

次の瞬間アキトは眩しい虹色の閃光を発し、おさまった後にはその姿は消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ったようだな・・・」

ゼフィーリア
「あっちの方はアキトに任せて大丈夫でしょ」

「まぁな、どっちかって言うとアキトの方が俺達を心配してるんじゃないか?」

「まあ、アキトは結構心配性みたいだからね・・・」

 

 

何時でも周りにいる人を心配している・・・・・気苦労の絶えないというかなんというか・・・・

そのうち心配のしすぎでハゲるんじゃないのかと思ってしまう。

 

 

「あれが異界の技術というヤツか・・・」

「そうよ。といっても私達もあれを実際に見るのは初めてなんだけどね」

「空間を渡るほどの技術をもっているのに・・・・ゼルガディスさんの体は治せないんですか・・・」

 

 

アメリアが悲しそうに呟く・・・・この中で一番心配しているのはこの子だからね・・・・・

 

 

「ああ。キメラ自体がないみたいだからな」

「そもそも魔法という概念そのものがない世界みたいだからね」

 

「アキトさんは魔法も覚えたてなんですよね?

デーモンならまだしも魔族相手に大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫なんじゃないのかアメリア。アキトの奴はガウリイの旦那より強いんだろう?」

 

「剣の腕だけをみればガウリイと大差はないと思うけど・・・・

総合的戦闘力を考えると間違いなくガウリイより上よ・・・・ぶっちぎりにね・・・・・

                                                昂 氣
それに魔族を相手にしても大丈夫よ!アキトには奥の手があるからね・・・」

 

「でも・・・万が一のことがあったら」

 

「心配するだけ無駄よ無駄。アキトが太刀打ちできないのなら私達が行ったところで同じ事よ。

それより私達は自分の心配をする方が先決よ・・・・まだ終わったわけではないんだからね・・・・・」

 

 

まあ何にしても、あれ程の人物がいる世界なんて大変かもしれないわね・・・

 

郷里の姉ちゃん曰く

『強い力がある人が生きる時代は

          それ相応の困難と苦行・・・・そして制約が存在している

                       そしてそれは決して避けることはできない』

 

だそうだ・・・力があるってのも結構難儀なものなのかもね・・・・・・

私は知りたくもないしわかりたくもない。姉ちゃんの人生を縛っているのは正にそれなのだから・・・・

 

 

 

「人間達よ、お喋りはそれぐらいにしておけ・・・」

「全く・・・なんて緊張感がない。よくそれで今まで闘いぬけたものですね」

 

                            ルビーアイ
「全くです・・・まさかいきなり赤眼の魔王様の呪文でくるとは・・・さすがにちょっと痛かったですよ・・・」

 

 

土煙の中から私達にかかる声・・・・

その中からグロウは言葉とは裏腹に平然として現れた!

 

                    フルパワー
ちょっとだけ!!?手加減無しでいったはずなのに・・・・・・・まさか!!

 

 

「蜥蜴の尻尾切り・・・」

「ええ・・・精神体の一部を囮にして逃げさせてもらいました。

完全にという訳にはいけませんでしたけどね・・・

                      スィーフィード・ナイト
おかげで異界の者が『赤の龍神の騎士』の元へ行ってしまいましたが・・・・・・仕方ありませんね」

 

 

そういってグロウは再び空間を歪めた。

ミルガズィアさんとメフィもなんのリアクションもおこさない事からみると

おそらく今度の結界は無用な邪魔が入らないようにするためだけのものだろう。

 

 

               スィーフィード・ナイト
「私の目的は『赤の龍神の騎士』の元よりあなた達を離しておく事だったのですが・・・・・

回りくどいことはやめましょうか・・・・今後の憂いを絶っておくことにこしたことはありませんね・・・」

 

 

くっ!私達を殺すことは念のためということか・・・随分と舐められたものね・・・・・

 

 

ダイナスト
「覇王の一派は随分と私のことを買ってくれているみたいね」

              ダイナスト
「そうですね・・・覇王様はしきりに貴方のことを殺したがっていましたし・・・」

 

 

望むところよ・・・・進んで相対したいわけじゃないけど私にはあいつに恨みがあるからね・・・・

 

 

「またどえらい奴に好かれたものだな、リナ」

 

ヘル・マスター         カオス・ドラゴン               ダイナスト
「冥王・フィブリゾに魔竜王・ガーヴ。その次は覇王・グラウシェラーですか・・・

    ディープ・シー
次は 海王 ダルフィンでしょうかね?」

 

「順序からいってゼロス辺りじゃないのか?」

 

 

この二人は好き勝手いって・・・本当になったらどうする気なのよ!!

 

 

「人間よ。今度は勝算はあるのか?」

ダイナスト
「覇王本人を相手にしたときよりはあると思いますよ」

「それもそうよね・・・油断のならないと言うことは変わりないでしょうがね」

「もう弱音を吐いたって慰めないわよ?」

「ふん!!まあ見ててなさい!私の勇姿をじっくりとね」

「期待しているわよ」

 

 

これならば大丈夫みたいね・・・・

どんな戦いでも精神的に負けたらどんなに技術があろうとも勝てないのだから・・・・・

 

 

「じゃあそろそろ始めるか。リナ」

「そうね。私達も早くゼフィーリアに行きたいし」

「そういうことは勝ってから言ってください」

「むろん。これからそうなるわ」

「良いでしょう。全力をもって相手になりましょう!!」

 

 

こうしてかつてのメンバー+二人の助っ人対覇王神官の闘いは始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダイナスト・ブラス
「覇王電撃陣!!」

エルメキア・フレイム
「閃 烈 砲 !!」

 

最初の攻撃はゼルとアメリアの二人の魔法からだった。

 

 

「かあぁっっ!!」

 

 

                          ダイナスト・ブラス
グロウはゼルの発動させた覇王電撃陣を杖でうち砕き、

                エルメキア・フレイム
アメリアが放った 閃 烈 砲 はグロウの手前で不自然に折れ曲がり、あらぬ方向ヘと飛んでゆく。

おそらく空間を歪めて進路をそらしたのだろう。

 

 

「はあっ!!」

 

 

ガウリイがグロウに斬りかかる!!

相手に魔術を使わせる隙を与えないつもりか、かなりのスピードで攻撃をしている!!

さすがにガウリイの早さには敵わないのか、グロウは避けるので手一杯となっているようだ。

                              プリースト      ブラスト・ソード
杖で受け止めないと云うことは覇王神官でも 妖斬剣 を受け止める自信がないのだろう。

となると・・・・おそらく次に出る手は・・・

 

 

「ハァァッッッ!!」

「うおっ!」

 

 

ガウリイがいきなり吹き飛ばされる。しかし空中で体勢を調えると何事もないように着地する。

おそらく身体全体から全方位に衝撃波をだして吹き飛ばしたのだろうけど・・・

 

今までのガウリイなら不意打ちで吹き飛ばされた後、場合によってはなんとか着地はできたかも知れないが

かなりの確率で受け身をとってから立ち上がるというのが大半だった。

 

 

(ガウリイのヤツ・・・アキトに体術を師事し始めてからますます人間離れしてゆくみたいね・・・

っと、そんな事よりも今は戦闘に集中しないと・・・・)

 

               おぼ
私はついこの間憶えたばかりの呪文をタイミングを見計らって解き放つ!

 

 

  ラ・ティルト
「崩霊裂!!」

 

 

グロウが立っている大地から蒼い柱が立ち上る!!

 

 

「グオオォォッッッッ!!」

 

 

不意に光の柱が欠き消える!おそらくグロウが呪文を押さえつけたのだろう。

 

 

「ルーン・レイブリード!!」

「ゼラス・ファランクス!!」

 

 

いつの間にか左右に分かれていたメフィとミルガズィアさんが同時に攻撃をする。

グロウは大きく後ろに下がり攻撃をやり過ごそうとするが、

                        ゼラス・ブリッド
二人の魔法は私が使う『獣王繰牙弾』と同じような意志により動かせるようなものらしく、

避けたはずのグロウに再び迫る!!

 

 

「うっとおしいですね!!」

 

 

グロウはその手の上に無数の魔力弾を生み出し、二人の攻撃呪文にぶつけようとした。

 

 

  ラ・ティルト
「「崩霊斬!!」」

 

 

ナイスタイミング!!ゼル!アメリア!

かく言う私も次の呪文はすでに唱え終わっていたりする!!

 

 

ドラグ・スレイブ
「竜破斬!!」

 

「グゥオオオオォォ!!」

 

 

グロウの身体を包み込んでいた青白い光の柱が

私の呪文の相互作用により白い火柱となった!!

 

 

           ラ・ティルト              ドラグ・スレイブ
この現象は崩霊斬の二重がけと 竜破斬 が合わさったときに起こる現象だった。

                              ヘル・マスター
以前私達がこれをやったときは 冥王・フィブリゾに対してだったが、

あの冥王が自分の身体の一部を囮にして避難したぐらいだからかなりの威力があるとみても良いだろう。

 

         ヘル・マスター
といっても 本人 は『多少痛そう』としか言ってはいなかったが・・・・・

この際気にしないでおく。魔族の規格外と比べるにはグロウといえども小さすぎるしね・・・・

 

         融合呪文
さすがに コレ は効いたのか苦悶の声を上げるグロウ。

そこへミルガズィアさんとメフィの放った魔術が追いつき、さらに攻撃を重ねる。

 

グロウのいた場所は爆炎を上げ、大量の土煙で視界が不鮮明となった。

 

 

(これでやられてくれたら結構楽なんだけどね・・・・)

 

 

そう私が考えているうちに、煙も大分晴れたようだ。

 

そこには・・・・・・・

 

 

「やった・・・・のか?」

 

 

そうつぶやくミルガズィアさん。

正直やや拍子抜けをした気分なのだろう。私は正直言って信じられないが・・・

 

 

「ミルガズィアさん!!」

 

 

(お?ガウリイがミルガズィアさんをフルネームで呼ぶとはめずらし・・・)

 

 

ズドム!!

 

私の思考はミルガズィアさんの右腕を吹き飛ばした一条の閃光によって中断した・・・

 

 

「おじさま!!」

「おい!大丈夫か!!」

   リザレクション
「今 復活 をかけます!!」

 

「いや、心配無用だ。先程の警告がなかったら危ないところだった、感謝する。

それよりもまだ敵はいる。気をつけろ!!」

 

 

そういって平然と立つミルガズィアさん。

本当は急所などを狙っていたのだろうがガウリイの警告によって気がつきとっさに避けたのだろう。

しかし、いくら竜とはいえ腕を吹き飛ばされたら・・・

 

 

(・・・・あ!!そういやこの人に右腕って義手だったっけ・・・)

 

 

パチパチパチ・・・

 

場違いな音がこの場に響き渡る・・・・・・

 

 

                            心臓
「いやー、大したものですね。急所を狙ったんですがまさか避けられるとは・・・」

 

 

拍手をしている人物・・・それはたった今倒したと思われていたグロウだった・・・

 

 

「やっぱり生きていた訳ね」

「ええもちろんです。まさかあの程度の攻撃で私を倒せたとでも思いましたか?」

                                さば
「信じられん・・・まさかあの攻撃を捌いたとでもいうのか!?」

「いえ、ちゃんとあたりましたし、消滅もしました」

「ならどうして貴方がここにいるんですか!どう考えてもおかしいじゃありませんか!!」

                 アストラル・サイド
「確かに・・・・私は精神世界面の貴様が滅んだところを確認しておる」

「ええ、私にもちゃんと見えました・・・」

 

 

グロウの格好をした奴は滅んだのは確かということか・・・

しかし一体どういうことなのだろうか・・・

 

またトカゲの尻尾切りでもやったのか?

しかしいくら何でもあの二人を目を同時に誤魔化すことは五人の腹心かゼロスじゃないとできないだろう。

 

これが人間ならば自分そっくりに創ったホムンクルスや人形を身代わりにでもしたのかというところなのだが・・・・・

 

ん??『人形』?『身代わり』?・・・・・・まさか・・・

 

 

「あんた・・・さっきのは自分が生み出した魔族なんじゃない?」

「気づいたみたいですね・・・」

「どういうことなんだリナ!!」

「ゼルとアメリアには話してなかったっけ?

魔族に中でも高位に位置する者の中には自分専用の魔族を創る奴がいるのよ。

                             プリースト    ジェネラル
五人の腹心にとっては専用の 神官 や 将軍 といった奴をね」

 

「それが先程の事となんの関係が??」

 

「まあ最後まで聞きなさい。その生み出すヤツの中には武器の形のヤツまであるわ。

実際、こいつの同僚だったシェーラは自分専用で武器の魔族を生み出していたわ・・・・

それがこいつの場合は自分と同じ形になる物なんじゃないのかっていう事よ」

 

「しかし人間よ。魔族は自分と同等の者は作れない。しかし先程のヤツは・・・」

「そうよ!!中級魔族なんてモノじゃなかったわよ!!」

 

「それはおそらくただの偽物というわけじゃなく、

自分の力の中継点みたいに扱えるモノじゃないかと思うのだけど・・・どうかしら?」

 

 

それまで、じっと私の説明を聞いていたグロウに訪ねる。

 

 

                             シャドウ
「ほぼ満点です。私はあれを『影法師』と呼んでいますが・・・

やはり貴方は面白い人だ。よく予想だけでそこまでわかりましたね」

「この程度ぐらい予想できなきゃ私の旅は一年ぐらいでピリオドうたれてるわよ」

 

「「「それは確かに・・・・・・」」」

 

 

なんかそうやって、揃って言われるとちょっとだけむかつくような気が・・・

 

 

「なあリナ。一体全体どういうことなんだ??」

 

「あんたに専門的なこと言ったってわかんないでしょ。

簡単に言うとさっきのは偽物!今度は本物!!」

 

「よくわかった!!」

「いいんですか?そんな事で・・・」

「いいのよ。どっちにしろあんたを倒せばいいって事だけだし」

「正論だな・・・このまま貴様を放って置くのは後味が悪い」

「その通りです!!正義が負けることなんてありません!!」

 

「生を望む者と滅びを望む者。いずれは相対する者同士なのだ・・・

ならば後世にまでその禍根を残さずともよかろう・・・」

 

「お手伝いしますわ!おじさま!!」

 

「それじゃあ、第二ラウンドといきましょうか!!」

 

 

 

 

   ラ・ティルト
「「崩霊斬!!」」

 

 

第二ラウンドも最初の攻撃はゼルとアメリアから始まった。

先程の事といい今の事といい・・・・

二人のコンビネーションは以前より格段に上がっているみたいだ。

 

しかし・・・・・

 

 

「見え見えですよ」

 

 

術が発動した瞬間、グロウはホンの少しだけ後ろに下がる。

先程の戦いで術などの効果範囲などを見切っていたのだろう。

そうなると一度見せた術は不意打ちしない限りは避けられるということか・・・

 

 

「メギド・アーク!!」

 

ズゴォ!!

 

         カオス・ワーズ
メフィの『力ある言葉』に反応してグロウが轟炎に包まれる・・・様に見えた。

炎の上がる瞬間、その姿が空間を渡ったことに私は気がついていた!

しかし一体何処に・・・!!

 

 

「まずは貴方から・・・とりあえずリーダーみたいですからね」

 

 

しまった!!まさか真正面にでてくるとは!!

こういった空間を渡る奴は現れるときに死角に回り込むことが多かったため、私の反応が少し遅れた!

 

 

すでにグロウは杖をこちらに向けている!

 

私の少し遅れた反応が致命的すぎる!!

どんな行動を起こしても迎撃はおろか回避すら出来ない!!

 

 

「リナから離れろ!!」

 

 

比較的近くにいたガウリイがグロウに仕掛ける。

 

しかし間に合わない!!

 

杖より魔力弾が発射される方がわずかに早い・・・

 

 

その時、私とグロウの間に何かが割り込んでだ。

 

 

(これは・・・腕!?)

 

 

ガゥゥン!!

 

私の目の前で魔力弾は飛んできた腕がぶつかり合い、爆発する。

 

その爆発の余波で私は吹き飛ばされたが、直撃を喰らうよりかは何倍もましだ。

 

 

「気をつけろ人間よ!・・・最初に狙われやすいのは混沌の力を扱うお前自身なのだからな!!」

 

 

ミルガズィアさんが助けてくれたのか・・・

ということは・・・さっきの腕は壊れた義手か!!

 

そんな事を考えつつもすでに呪文は唱え終わっている!!

 

      屈辱
この 借り は万倍にして返す!!

 

 

  ゼラス・ブリッド
「獣王繰牙弾!!」

 

 

私が指差した先から魔力の帯がグロウに向かって伸びてゆく。

 

 

「おっと・・・」

 

 

さすがにこれを喰らう気はないのか、軽く身をひねりながら避けてゆく・・・・・・

しかし私の意志により操作されるこの呪文、なかなか避けきれるモノじゃあない!!

 

 

「さすがに目障りですね!!」

 

 

迎撃をしようというのか、杖に魔力を纏わせ

私の呪文を真正面からたたき落とそうとする。

 

 

(かかった!!)

 

 ブレイク
「分裂!!」

 

 

私の意志によりグロウの杖の手前でゼラス・ブリットが二つに別れる!

 

呪文のことを正しく理解したらこういうことも可能になる。

この前のシャプラニグドゥ戦でも使おうとしたのだが、

その時は創り出す魔力と操るだけの集中力・・・・

そして実際には不可能だという私の思いこみによって失敗した。

 

今の私なら二本程度なら何とかなる・・・やっとの事だけどね・・・

いま考えるとあの時、五本に分裂させようなんてかなり無謀だったわね・・・・・

 

 

「な!?」

 

 

さすがにこれは予想外だったのか一瞬動きが止まる。

二つに分かれた魔力の帯はその様子にお構いなしに接近する!!

 

 

「ヴラバザード・フレア!!」

「ルーン・ストライド!!」

「ハアァッッ!!」

 

 

ミルガズィアさんとメフィの魔法、そしてガウリイの衝撃波がグロウに襲いかかる!!

 

 

「くっ!!」

 

 

グロウはすかさず迎撃に入った。

以前、覇王に対しても同じ様なことをしたのだが、

その時は全方位の衝撃波によってかき消されている。

 

となると上司があれだからおそらく部下も・・・

 

 

「ハアァァァッ!!」

 

 

ビンゴ!予想通り!!

 

私はすでに衝撃波をやり過ごすために岩陰に入っていた。

       ゼラス・プリッド
むろん獣王繰牙弾の操作は続行している。

 

 

ゴウッ!!

 

ガガガガガッッ!!

 

 

衝撃波によって魔法の軌跡がかき乱されたためお互いぶつかり合い誘爆したようだ。

ガウリイ達は不幸中の幸いか、先に吹き飛ばされたために爆発には巻き込まれなかったようだ。

 

 

「思っていた以上に戦況を動かす人ですね・・・

                                   ドラゴン・ロード
その機転はある意味そこのエルフや 竜 王  以上に厄介です・・・やはり貴方から排除します!!」

 

「そんな事言いつつも、やっぱり人間を舐めてかかっているからあんた達は負けるのよ!!」

 

 

私の言葉が終わると同時に、地中より飛び出した光がグロウの肩を貫く!!

 

 

「ばかなっ!?」

 

 

かなり動揺したらしく、お決まりの悪人台詞になる。

ばかなっていった奴の結末はもう決まっている様なものだ・・・

 

 

「なるほど、考えたな・・・衝撃波は地中まではおよばん」

「はい。しかもばれないようにする為、私達の魔法の誘爆を隠れ蓑にしたといったところでしょうか」

 

 

あんた達、まともに衝撃波を喰らったわりには元気ね・・・

ガウリイは前みたいに着地をしていたけど・・・

 

 

「ぐ・・・少々効きましたよ・・・」

 

まあそんなモノだろう。もともと一つのモノを二つに分けたのだ。

威力の方は必殺とは遠く離れるだろう。

しかし、こいつは1つ忘れている・・・自分の後ろにあの二人がいることを・・・

そして私は単なる囮役になっていることを!

 

 

  ラ・ティルト
「崩霊斬!!」
「フレイム・ブレス!!」

 

 

ゼルとアメリアが同時に呪文を放つ!!

しかもアメリアにいたっては聞いたこともない呪文。

少なくともこの局面で使用する以上、その威力は生半可な威力ではないはず!!

 

 

「グウオオオオォォォ!!」

 

 

グロウの立っている所から眩しいほどの光を放つ赤い火柱が立つ!

見た形はラ・ティルトの様な形をしていたが・・・・グロウの様子を見るとかなり効いているらしい。

おそらく二人の魔法の合成による現象だろうが・・・

 

 

「ほう!!まさか神聖魔法と精霊魔術を合成するとは!!」

「ええ、人間に知恵にしては大したモノですわ・・・」

 

 

ん?今聞き慣れない単語があったような・・・

 

 

「ねえ、神聖呪文ってのはなに?」

「読んで字の如く、神の力を借りた呪文ですわ」

 

                        ヘル・マスター
「ウム。私も使用している。冥 王が滅んだことにより、

魔族の結界により閉鎖されていたこの地域にも神の力が届くようになって使えるようになったのだ」

 

「しかし、千年以上も前の呪文をよく人間が知っていたものね・・・」

 

 

彼女はセイルーンの王女にしてその国の巫女頭をつとめている。

神殿に伝えられていた何かでもあったのだろう。後で私も教えてもらおっと・・・・・

 

それよりも・・・

 

 

「クッ・・・・よくまあそんなに隠し技が多い・・・」

 

 

予想以上にしぶとい!!が、ダメージは半端じゃないみたいね。

 

 

「みんな!一気にいくわよ!!」

「わかった!!」

「メフィとミルガズィアさんは援護をお願い!」

「わかった」

「ちょっと気に入りませんけど構いませんわ!サポートをして差し上げますわ」

 

(全く・・・どうして素直に言えないかな〜)

 

 

私はそう思いつつも先に走りだしたガウリイに続く。

 

 

「でりゃあぁぁ!!」

 

 

一気に間合いを詰めて切りかかるガウリイ!

衝撃波を使った攻撃より、直接攻撃の方がやはり威力は高く確実だろう。

 

だが、動きが鈍くなったにもかかわらずガウリイの剣の腕をもってしてもなかなか当たらない・・・いや、

よく見ると剣がグロウにある程度まで接近したらその空間が歪んでいるのが見える・・・

 

おそらく空間を歪ませて太刀筋を狂わせているのだろう・・・

 

 

  アストラル・ヴァイン
「魔 皇 霊 斬!!」

 

ゼルが普通の剣を擬似的に魔力剣にする呪文を使いグロウとの戦いに参加する!

                                             わしづか
しかしグロウはなんの躊躇も見せずゼルの剣を鷲掴む。

 

 

 

「なに!!」

       オモチャ
「そんな玩具では話にもなりませんね!!」

 

 

パキィィィン・・・・

 

 

ゼルの剣はすんだ高い音とともに真っ二つにへし折られた。

 

さすがに覇王神官相手では魔力を通わせたとはいえただの剣では荷が重かったのだろう。

 

 

「クソッ!こんな剣じゃあ相手にもならないということか!」

 

 

ゼルはそのままだとガウリイの邪魔になると判断したのか剣を捨てて間合いをとる。

 

 

(何か・・・決め手になりそうな瞬間があれば・・・)

 

   ディスシールド        マナコンバージョン
「封 印 解 除!、魔 力 収 束!」

 

 

ちらっとメフィの方を見ると、鎧の一部を取り外し剣のようなものを腰だめにかまえている。

確か以前見たことがある技だった。

 

 

(なら私も一気に片を付ける!!)

 

「ゼナフスレイド!!」

 

 

確か相手の体内に破壊光を転移させて攻撃する技のはず。

しかしこのグロウはどうやら空間を操ることが得意なように見える。となると・・・

 

 

「フンッ!!」

 

 

パン!!

 

グロウはメフィの方に杖を向けたと思うと、いきなり空気が破裂したような音がした。

おそらく空間の干渉によってメフィの攻撃を防御したのだろう。

 

 

「ハアァッ!!」

 

 

この隙を見逃すガウリイではない!

 

 

「私を甘く見ないことです!!」

 

 

すでに杖を持たない左手に魔力が溜まっていた!

 

                            致命傷にはならない
この短時間で溜めたものなら 威力は低い かもしれないが

相手を吹き飛ばすことはできる・・・そのつもりなのだろう。

 

この時のガウリイは後一歩で剣の届く間合いに居り、

しかも振りかぶっている状態では避ける術はない・・・ように見えた。

 

魔力弾はガウリイにまともに当たり・・・・・・・

 

 

 

はじけた!!

 

 

                                                      アストラル・ヴァイン
まさかの用心のために、ガウリイのブレスト・プレートに 魔 皇 霊 斬 をかけていたのだ。

本来は先程ゼルが使ったようにただの剣に魔力を通わせ、魔族を切り裂く魔剣へと擬似的に変化させる術。

その術を私が改良をして防具にもかけられるように調整したのだ。

 

まあ使われている金属が魔力を通しやすいと聞いていたので期待をしていたのだが・・・

期待以上の結果だった。

 

 

「そんな!?」

 

「もらった!!」

 

 

しかしやはり先程の魔力弾によって間合いが狂ったのか、

紙一重で付けた傷は致命傷にはほど遠いものだった。

が、このチャンスは有り難い!

私は決め手になる呪文の詠唱に入った。

 

 

『悪夢の王の一欠けよ

   空の戒め解き放たれし 凍れる黒き虚無の刃よ

     我が力 我が身となりて 共に滅びの道を歩まん

       神々の魂すらもうち砕き・・・』

 

 

「させません!!」

「カオティック・ミスティングレイド!!」

 

 

ミルガズィアさんより放たれる光の奔流!

さすがに無視できないのか空間干渉を利用した防御をする。

 

いいタイミングでやってくれる!!

 

光が収まるのと、私が間合いに入るのがほぼ同時だった!!

 

 

   ラグナ・ブレード
「神 滅 斬!!」

 

右手に発生させた長さ1メートル位の虚無の刃が

空間干渉による防御場を切り裂きグロウに迫る!!

 

 

「その程度の一撃避けるのはわけな―――――!!」

 

 

その言葉が終わらないうちに、左腕に発生した2本目の虚無の刃によってグロウの腕が切り飛ばされる!!

 

 

「グゥオォォオオオ!!」

 

  ラ・ティルト
「崩霊斬!!」
「フレイム・ブレス!!」

 

 

だめ押しするように攻撃を重ねるアメリアとゼル。

しかし私の目には攻撃があたる前に転移をしているのを確認した。

 

 

「ミルガズィアさん!メフィ!」

「もういない・・・逃げたようだ」

「逃げ足は早かったですわね」

 

 

どうやら・・・・・・こっちは片が付いたみたいね・・・

 

 

                           ラグナ・ブレード
(ふぅ〜・・・・やっぱ完全版の 神滅斬 は結構きついわ・・・・あの時退いてくれなかったら危なかったわ)

 

 

                        ゼラス・ブリッド
私のやったことは先程の獣王繰牙弾と同じく、一つのモノを二つに分けたものだった。

 

小手先の技が多いという事は言わないで欲しい。

とにかく魔族を相手にするには油断をしているところを意表をついて倒すしかないのだ。

 

 

「リナ、大丈夫か?」

「なんとかね・・・みんなは?」

「俺は大丈夫だ」

「私とゼルガディスさんも平気です」

「まあなんとかな」

「ミルガズィアさんとメフィは?」

「人間なんぞに心配してもらうほどやわじゃありませんわ」

「私の方も怪我はない。義手はなくしたがな」

 

 

     プリースト
まあ覇王神官を相手にしての戦果なら上々だろう。

 

 

「ならみんなには悪いんだけどゼフィーリアに急ぐわよ!!」

「どうやってだ?」

「そこに便利な呪文を使う人がいるじゃない」

 

 

そういって私は指差す・・・その先には・・・

 

 

「・・・・もしかして私か?」

「そうよ!ミルガズィアさん。高速移動の呪文あったでしょ?あれで連れていってくれます?」

「緊急事態なのだ・・・・・仕方があるまい。」

「すみません。なるべく早く着くようにお願いします」

「わかった。やってみよう」

 

 

そして私達は街門まで来ていたアルス将軍にあらかたの事情を話し、

事後処理をまかせて(押しつけたとも言う)ゼフィーリアに急いで戻ることとなった。

 

 

 

(さあ、急いで戻らないと・・・・しかし・・・・

あの国の人達がそう簡単にどうにかなるとは思えないのよねぇ・・・・

いろんな意味で私よりたくましい人達ばっかりだからね・・・・・)

 

 

 

 

(後編に続く)